※本記事は、株式会社SUBARU の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. SUBARUってどんな会社?
自動車部門と航空宇宙部門を柱とし、「安心と愉しさ」という価値を提供するグローバルモビリティブランドです。
■(1) 会社概要
1917年に中島飛行機株式会社として航空機研究所を創設したのが始まりです。1953年に富士重工業を設立し、1958年には「スバル360」を発売しました。その後、日産自動車やGMとの提携を経て、2006年にトヨタ自動車と業務提携を開始。2017年には創業100周年を機に、社名をブランド名と同一のSUBARUに変更しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は37,866名、単体では17,885名です。筆頭株主は業務資本提携先のトヨタ自動車で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。トヨタ自動車とはスポーツカーや電気自動車の共同開発を行うなど、協力関係を深めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 21.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 14.77% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は大崎 篤氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大崎 篤 | 代表取締役社長CEO(最高経営責任者) | 1988年入社。商品企画本部、技術本部を経て、2017年執行役員品質保証本部長。CQO(最高品質責任者)、製造本部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 早田 文昭 | 代表取締役副社長CRMO(最高リスク管理責任者) | 1986年入社。経営企画本部長、海外第一営業本部長、SIA会長兼CEOなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 中村 知美 | 取締役会長 | 1982年入社。戦略本部長、スバル オブ アメリカ会長などを歴任。2018年代表取締役社長CEOに就任し、2023年6月より現職。 |
| 水間 克之 | 取締役専務執行役員 | 1984年日本興業銀行入行。みずほ銀行常務等を経て2016年同社入社。海外営業本部長、CFO兼CRMOなどを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 藤貫 哲郎 | 取締役専務執行役員CTO(最高技術責任者) | 1986年入社。技術統括本部長、技術研究所長などを歴任。2020年CTOに就任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、土井 美和子(元東芝研究開発センター首席技監)、八馬 史尚(元J-オイルミルズ社長)、山下 茂(元ピジョン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車」「航空宇宙」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車
当セグメントでは、自動車ならびにその部品の製造、販売および修理を行っています。主な顧客は一般消費者であり、北米市場を最重要市場と位置付けています。トヨタ自動車とは開発・生産で協力関係にあり、スポーツカーや電気自動車の共同開発を行っています。
収益は、車両や部品の販売代金、修理・アフターサービス料などから得ています。運営は主にSUBARUが行い、米国では子会社のスバル オブ インディアナ オートモーティブ インクが生産を、スバル オブ アメリカ インクが販売を担うなど、各国の連結子会社が事業を展開しています。
■(2) 航空宇宙
当セグメントでは、航空機、宇宙関連機器ならびにその部品の製造、販売および修理を行っています。防衛省向けの防衛事業、ボーイング社向けの民間機事業、ヘリコプター事業などを展開しています。
収益は、防衛省やボーイング社などの顧客からの製品納入代金や修理・整備料から得ています。運営は主にSUBARUが行っています。
■(3) その他
当セグメントでは、不動産の賃貸などを行っています。
収益は、保有する不動産の賃貸料などから得ています。運営は主に子会社のスバル興産などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上収益は2024年3月期に大きく伸長しましたが、2025年3月期は微減となりました。利益面では、2024年3月期に高い水準を達成した後、直近では減益傾向にあります。全体として、コロナ禍からの回復を経て高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 28,302億円 | 27,445億円 | 37,745億円 | 47,029億円 | 46,858億円 |
| 税引前利益 | 1,140億円 | 1,070億円 | 2,784億円 | 5,326億円 | 4,485億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 3.9% | 7.4% | 11.3% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 765億円 | 700億円 | 2,004億円 | 3,851億円 | 3,381億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比微減となり、売上総利益もわずかに減少しました。売上総利益率は約21%で推移しています。営業利益は研究開発費の増加や一時的な費用の計上などにより減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 47,029億円 | 46,858億円 |
| 売上総利益 | 9,924億円 | 9,803億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.1% | 20.9% |
| 営業利益 | 4,682億円 | 4,053億円 |
| 営業利益率(%) | 10.0% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が1,083億円(構成比26%)、給与手当及び賞与が991億円(同24%)を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車事業は、販売奨励金の増加や売上台数の減少により減収減益となりました。航空宇宙事業は防衛事業の生産増などで増収となりましたが、工事損失引当金の計上などにより損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車 | 45,966億円 | 45,712億円 | 4,615億円 | 4,204億円 | 9.2% |
| 航空宇宙 | 1,043億円 | 1,116億円 | 27億円 | -196億円 | -17.6% |
| その他 | 378億円 | 296億円 | 36億円 | 37億円 | 12.5% |
| 調整額 | -358億円 | -265億円 | 4億円 | 9億円 | - |
| 連結(合計) | 47,029億円 | 46,858億円 | 4,682億円 | 4,053億円 | 8.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良な状態にある「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7,677億円 | 4,921億円 |
| 投資CF | -7,037億円 | -4,041億円 |
| 財務CF | -6,647億円 | -1,873億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「“お客様第一”を基軸に『存在感と魅力ある企業』を目指す」という経営理念を掲げています。ありたい姿として「笑顔をつくる会社」を、提供価値として「安心と愉しさ」を定義し、自動車と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドへの成長と、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「品質方針」として、何よりも品質を大切にし、法令・社会規範を遵守して顧客の信頼に応える姿勢を重視しています。また、サステナビリティ方針では、人・社会・環境の調和を目指し、高品質と個性を大切にしながら、多様な価値観を尊重し、従業員が働きがいを感じられる職場環境の向上に取り組む風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2023年から2028年までの5年間を重要期間と位置づけ、2030年を見据えた長期目標として以下の数値を掲げています。
* 業界高位の収益力
* ROE 10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「モノづくり革新」と「価値づくり」で世界最先端を目指し、特に電動化への対応を強化しています。BEV(電気自動車)への移行を見据えつつ、市場変化に柔軟に対応できる体制を構築します。
* BEVラインアップ拡充:2026年末までに4車種、2028年末までにさらに4車種を投入予定。
* 生産体制再編:国内工場でのBEV生産開始や大泉新工場の段階的立ち上げ。
* モノづくり革新:開発手番、部品点数、生産工程の半減を目指す。
* 米国市場:最重要市場として「Love Promise」活動を継続し、ブランド価値を向上。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「真の競争力をもった人・組織」の実現を目指し、「個の成長」「組織の成長」「つながりの強化」に取り組んでいます。自律的なキャリア形成を支援する公募型ジョブローテーションや、DX推進による生産性向上、組織の壁を越えた連携強化を推進しています。多様な個性を尊重し、挑戦を後押しする風土づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.8歳 | 15.9年 | 7,307,644円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 65.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.59%)、従業員エンゲージメント指数(51%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 米国の関税政策
米国市場への依存度が高いため、米国の関税政策の影響を強く受けます。日本からの輸入車や現地生産車の一部部品が関税対象となる可能性があります。政策の長期化や需要減少が生じた場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場における需要・競争環境の変化
自動車業界の電動化や自動運転などの技術革新、異業種参入により競争が激化しています。同社は「モノづくり革新」と「価値づくり」を推進していますが、新商品が販売計画に達しない場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 気候変動
各国の燃費規制強化や電動化の進展に対応できない場合、販売機会の損失やコスト増のリスクがあります。また、異常気象による災害でサプライチェーンが寸断され、操業に支障が出る物理的リスクも認識されています。



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