SUBARU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SUBARU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SUBARUは東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車部門を中心に航空宇宙部門やその他部門を展開する企業です。直近の業績トレンドは、主力の自動車事業における価格構成の改善等により増収となった一方、米国の追加関税影響や環境規制関連費用、電動車関連費用の計上などにより減益となり、増収減益となっています。


※本記事は、SUBARUの有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. SUBARUってどんな会社?


SUBARUは、自動車およびその部品の製造・販売を主力とし、航空宇宙関連機器の製造等も展開しています。

(1) 会社概要


1917年に中島知久平氏が創設した航空機の研究所を起源とします。1953年に富士重工業として設立されて航空機生産を再開し、1960年には群馬製作所を開設しました。2017年に現在のSUBARUへ商号変更し、2019年にはトヨタ自動車と新たな業務資本提携に合意するなど事業基盤を強化しています。

従業員数は連結で37,542名、単体で17,948名です。筆頭株主は事業会社のトヨタ自動車で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 21.46%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.88%
日本カストディ銀行(信託口) 4.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は大崎篤氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大崎篤 代表取締役社長CEO(最高経営責任者) 1988年同社入社。品質保証本部長やCQOなどを歴任し、2021年に取締役専務執行役員製造本部長に就任。2023年より現職。
早田文昭 代表取締役会長CRMO(最高リスク管理責任者) 1986年同社入社。経営企画本部長、海外第一営業本部長などを経て、2021年に取締役専務執行役員に就任。2026年より現職。
藤貫哲郎 取締役専務執行役員CTO(最高技術責任者) 1986年同社入社。技術統括本部長などを歴任。2021年に常務執行役員CTOに就任し、2023年に取締役専務執行役員。2026年より現職。
戸田真介 取締役常務執行役員CFO(最高財務責任者) 1990年日本興業銀行入行。みずほ銀行欧州地域本部長などを経て、2023年に同社常務執行役員に就任。2025年より現職。
中村知美 取締役 1982年同社入社。スバル海外第一営業本部長などを歴任し、2018年に代表取締役社長CEOに就任。2023年に取締役会長を務め、2026年より現職。


社外取締役は、土井美和子(元東芝研究開発センター首席技監)、八馬史尚(元J-オイルミルズ代表取締役社長)、山下茂(元ピジョン代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車」、「航空宇宙」および「その他」事業を展開しています。

自動車


自動車部門では、自動車ならびにその部品の製造、販売および修理を提供しており、一般消費者や法人を主な顧客としています。トヨタ自動車とはスポーツカー等の共同開発や生産を行っており、ダイハツ工業からはOEM供給を受けています。

自動車の販売代金や部品・修理代金を収益源としています。運営は同社を中心に、部品製造を担う富士機械などの子会社、および米国等の海外販売・生産子会社と協働して展開しています。

航空宇宙


航空宇宙部門では、航空機、宇宙関連機器ならびにその部品の製造、販売および修理を提供しており、官公庁や民間航空機メーカーなどを主な顧客としています。

航空機等の製作や定期修理などの請負契約に基づく代金を収益源としています。運営は主に同社が行い、部品製造などを担う子会社の輸送機工業とともに事業を展開しています。

その他


その他部門では、不動産の賃貸などを提供しており、法人などのテナントを主な顧客としています。

不動産の賃貸による賃料などを収益源としています。運営は主に子会社のスバル興産などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上収益は順調に拡大を続け、当期は4兆7850億円に達しました。利益面では前期まで増益基調が続いていましたが、当期は米国の追加関税や環境規制関連費用の計上などが影響し、税引前利益は1075億円へと減益に転じました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 27,445億円 37,745億円 47,029億円 46,858億円 47,850億円
税引前利益 1,070億円 2,784億円 5,326億円 4,485億円 1,075億円
利益率(%) 3.9% 7.4% 11.3% 9.6% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 700億円 2,004億円 3,851億円 3,381億円 908億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加したものの、売上総利益および営業利益は大幅な減益となりました。売上総利益率は12.8%から5.8%へと低下し、営業利益率も8.6%から0.8%へ低下しました。これは、原材料や物流費の高騰、米国の関税影響等が原価や販管費を押し上げたためと考えられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 46,858億円 47,850億円
売上総利益 6,004億円 2,790億円
売上総利益率(%) 12.8% 5.8%
営業利益 4,053億円 401億円
営業利益率(%) 8.6% 0.8%


販売費及び一般管理費のうち、一般管理費の研究開発費が1,588億円と大きな割合を占めており、次いで販売費の運賃梱包費が344億円となっています。

(3) セグメント収益


主力の自動車セグメントは販売価格の改善等で増収となったものの、米国の追加関税や環境規制関連費用の影響で大幅な減益となりました。航空宇宙セグメントは民間機事業の納入増加により増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
自動車 45,712億円 46,407億円 4,204億円 321億円 0.7%
航空宇宙 1,116億円 1,417億円 -196億円 35億円 2.5%
その他 296億円 280億円 37億円 36億円 12.9%
調整額 -265億円 -254億円 9億円 9億円 -
連結(合計) 46,858億円 47,850億円 4,053億円 401億円 0.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4,921億円 3,582億円
投資CF -4,041億円 -1,147億円
財務CF -1,873億円 -2,178億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.7%となり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、『“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す』という経営理念を掲げています。ありたい姿である「笑顔をつくる会社」の実現に向け、提供価値である「安心と愉しさ」を進化させ、自動車事業と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドへの持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


「現場の力」を重視し、「まずやってみる」「途中で修正する」「失敗を恐れず、何度でも挑戦する」という姿勢が定着しつつあります。制約となる既存ルールや慣習を壊し、どんな状況でも現場が自ら考え、行動し、全員のポテンシャルを引き出す組織風土の醸成に取り組んでいます。また、誠実に、愚直に、本質を追求し続ける姿勢を貫いています。

(3) 経営計画・目標


「SUBARU 2025方針」等のもと、多様なニーズに応える商品ラインアップの大幅拡充により、2030年代前半には世界で120万台の販売規模を実現することを目指しています。また、2030年を見据えた長期的目標として「業界高位の収益力」と「ROE10%以上」を掲げています。

* 2030年代前半の世界販売規模:120万台
* 長期的目標:ROE10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「モノづくり革新」と「価値づくり」を推進し、電動化やソフトウェアアップデート等の次世代技術を核とした商品ラインアップの拡充を図ります。さらに、2,000億円規模のコスト低減に向けた「原価維新20-30」プロジェクトを始動し、超効率生産の実現や収益基盤の拡大に挑戦し、業界高位の利益率確保を目指します。

* 原価維新20-30プロジェクトによるコスト低減

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「真の競争力をもった人・組織」をありたい姿と定め、人的資本経営を推進しています。「個の成長」と「組織の成長」を基点に、「自律への働きかけ」「より良い組織風土の醸成」「つながりの強化」の3つの施策を中心に取り組んでいます。多様な個が能力を発揮し、互いを尊重しながら協働できる組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 15.7年 7,643,520円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 82.6%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用) 79.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(54%)、障がい者雇用率(2.60%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の事業および市場への集中


同社の自動車事業の売上収益は9割以上を占め、販売市場も北米等の先進国に集中しています。北米での需要減少や価格競争の激化、米国の関税政策の変更による追加関税などが生じた場合、収益の悪化やコスト上昇を通じて、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格・調達コストの変動


特定の原材料やお取引先に依存している場合があり、地政学リスクや需給逼迫、中東情勢の悪化等を背景とした原油・原材料価格の高騰が生じるリスクがあります。原価改善や製品価格への転嫁で吸収しきれない場合、調達コストや物流費の増加が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 市場における需要・競争環境の変化


自動車業界は電動化へのシフトや異業種からの参入、自動運転の普及などにより、お客様の価値観やニーズが多様化しています。こうした急速な変化に対して的確に対応できず、新型車などの販売が計画に達しない場合、同社の事業基盤や財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。