キッコーマン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キッコーマン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キッコーマンは東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外でのしょうゆ等の食料品製造・販売や海外での東洋食品卸売を展開する企業です。直近の業績では売上収益が7,455億円、税引前利益が841億円となり、国内外の食料品製造・販売事業や海外食料品卸売事業が好調に推移したことで増収増益を達成しました。


※本記事は、キッコーマン株式会社の有価証券報告書(第109期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. キッコーマンってどんな会社?


同社グループは、しょうゆなどの食料品製造・販売と海外での東洋食品卸売を主力とする食品メーカーです。

(1) 会社概要


1917年に野田醤油として設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。1964年にキッコーマン醤油、1980年にキッコーマンへと社名を変更しています。1990年にはデルモンテ商標の日本およびアジア・太平洋地域の永久専用使用権を取得し、2009年に持株会社制へ移行しました。

現在の従業員数は連結で7,911名、単体で672名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行となっています。第3位には千秋社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.85%
日本カストディ銀行(信託口) 8.22%
千秋社 3.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は17.6%です。代表取締役社長CEOは中野祥三郎が務めています。社外取締役比率は41.2%です。

氏名 役職 主な経歴
中野祥三郎 代表取締役社長CEO 1981年同社入社。CFOや取締役常務執行役員などを経て、2019年にキッコーマン食品代表取締役社長に就任。2021年に代表取締役社長COOを務め、2023年より現職。
堀切功章 代表取締役会長 1974年同社入社。国際事業本部長や取締役常務執行役員、キッコーマン食品代表取締役社長を経て、2013年に代表取締役社長CEOに就任。2021年代表取締役会長CEOを経て、2023年より現職。
茂木友三郎 取締役名誉会長取締役会議長 1958年同社入社。海外事業部長や常務取締役、代表取締役副社長、代表取締役社長などを歴任。2004年に代表取締役会長CEOに就任し、2011年より現職。
茂木修 代表取締役専務執行役員国際事業本部長 1996年同社入社。海外事業部長などを経て、2017年に取締役常務執行役員および国際事業本部長に就任。2021年に取締役専務執行役員を務め、2023年より現職。
島田政直 取締役専務執行役員 1973年同社入社。執行役員や常務執行役員を経て、2012年にKIKKOMAN SALES USA,INC.の取締役社長に就任。2013年に取締役常務執行役員を務め、2016年より現職。
松山旭 取締役常務執行役員研究開発本部長 1980年同社入社。2008年に執行役員および研究開発本部長に就任。2014年に常務執行役員、2017年にキッコーマンバイオケミファ代表取締役社長を経て、2018年より現職。


社外取締役は、福井俊彦(元日本銀行総裁)、井口武雄(元三井住友海上火災保険代表取締役会長)、飯野正子(元津田塾大学学長)、杉山晋輔(元外務事務次官)、遠藤信博(元日本電気代表取締役会長)、アーサーM. ミッチェル(ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所シニアアドバイザー)、国谷裕子(元日本放送協会キャスター)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内食料品製造・販売」「国内その他」「海外食料品製造・販売」「海外食料品卸売」事業を展開しています。

(1) 国内食料品製造・販売


国内におけるしょうゆ、つゆ・たれ等のしょうゆ関連調味料、デルモンテトマト加工品・缶詰、業務用食材、豆乳飲料、野菜果実飲料、みりん、ワイン等の製造・販売を行っています。一般消費者や業務用顧客に対して幅広い商品を提供しています。

顧客への商品販売を通じた代金を主な収益源としています。事業の運営は、主にキッコーマン食品、日本デルモンテ、キッコーマンソイフーズ、マンズワインなどのグループ各社が行っています。

(2) 海外食料品製造・販売


海外市場に向けたしょうゆの製造・販売、およびデルモンテトマト加工品や缶詰の製造・販売を行っています。北米、欧州、アジアなど世界各地の消費者や業務用顧客向けに商品を展開しています。

海外顧客への商品販売を主な収益源としています。事業の運営は、主にKIKKOMAN FOODS, INC.やKIKKOMAN SALES USA, INC.、KIKKOMAN FOODS EUROPE B.V.などの海外子会社が行っています。

(3) 海外食料品卸売


東洋食品等の仕入れおよび卸売販売を行っています。北米、欧州、アジア・オセアニアの各地域におけるスーパーマーケットやレストランなど、業務用および家庭用の幅広い顧客に商品を供給しています。

卸売先からの商品販売代金を収益源としています。事業の運営は、JFCジャパンをはじめ、JFC INTERNATIONAL INC.やJFC INTERNATIONAL (EUROPE) GmbHなどの各地域のグループ子会社が行っています。

(4) 国内その他


医薬品や化成品の製造・販売、不動産賃貸、物流業務、さらにはグループ内への間接業務の提供などを行っています。医療関係者や一般企業のほか、グループ各社が主な顧客となります。

製品の販売代金や賃貸料、物流手数料、業務委託手数料などを主な収益源としています。運営は、主にキッコーマンバイオケミファ、キッコーマンビジネスサービス、総武物流などのグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上収益は5,164億円から7,455億円へと一貫して右肩上がりで成長を続けています。税引前利益も同様に増加傾向にあり、堅調な収益拡大を示しています。利益率は約10%から11%台を安定して維持しており、安定した収益基盤が構築されていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 5,164億円 6,190億円 6,608億円 7,090億円 7,455億円
税引前利益 542億円 608億円 756億円 838億円 841億円
利益率(%) 10.5% 9.8% 11.4% 11.8% 11.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 389億円 437億円 564億円 617億円 616億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から当期にかけて約365億円増加し、堅調なトップラインの伸びを示しています。一方で、売上総利益は微減となり、売上総利益率もやや低下しています。しかし、営業利益は前期から増加しており、営業利益率も10%台を維持して安定的な収益性を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 7,090億円 7,455億円
売上総利益 644億円 624億円
売上総利益率(%) 9.1% 8.4%
営業利益 737億円 759億円
営業利益率(%) 10.4% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、主要な費用として人件費が64億円、研究開発費が26億円、委託事務手数料が16億円、広告宣伝費が11億円を占めています。

(3) セグメント収益


国内食料品製造・販売は、しょうゆ部門や食品部門が堅調に推移し増収となりました。海外食料品製造・販売は、北米や欧州、アジア市場での拡売により増収を達成しています。また、海外食料品卸売も各地域で順調に売上を伸ばし、全体としてすべてのセグメントで前年を上回る売上収益を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
国内食料品製造・販売 1,543億円 1,601億円
国内その他 216億円 218億円
海外食料品製造・販売 1,672億円 1,735億円
海外食料品卸売 4,075億円 4,329億円
調整額 -416億円 -428億円
連結(合計) 7,090億円 7,455億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 740億円 905億円
投資CF -385億円 -432億円
財務CF -461億円 -531億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「消費者本位」を基本理念とし、「食文化の国際交流をすすめる」「地球社会にとって存在意義のある企業をめざす」という3つの経営理念を掲げています。消費者の声に耳を傾け、価値のある商品やサービスを提案するとともに、安全で高品質な商品を適正価格で安定的に供給することを企業の基本的使命としています。

(2) 企業文化


同社は「食品の製造と販売」および「『食と健康』に関わる商品とサービスの提供」を事業領域とし、グローバルに展開する文化を持っています。また、「新しい価値創造への挑戦」をテーマに掲げ、創業当初から育んできた人と社会を大切にする企業文化を醸成しながら、社会の持続可能な発展への貢献を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2027年度を最終年度とする「中期経営計画」を策定し、持続的な成長と収益力の向上を目指しています。具体的な連結業績目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上成長率(為替差除き):年平均5%以上
* 事業利益率:10%以上
* ROE:12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


海外事業では、しょうゆの主要市場深耕と新規開拓を進め、北米での新工場稼働や欧州・アジアでの拡売を図ります。また、東洋食品卸売事業では業務用と家庭用市場のバランス構築を進めます。国内事業では、ITやデジタル技術を活用した高付加価値化と生産性向上に取り組みます。財務面では、営業キャッシュ・フローを成長分野やDX、人財、研究開発への投資に振り向ける方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「基幹ポストの可視化とサクセッションプランの構築」「グローバル人財の育成と確保」「専門スキルの向上」を人財戦略の3本柱としています。主体的かつ自律的に行動し高度な専門能力を有する「プロ人財」の育成を基本方針とし、多様な人財が一人ひとり活躍し、能力を最大限に発揮できる組織環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 13.4年 8,210,646円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 68.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 38.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大豆・小麦等の原材料市況の変動


主力製品であるしょうゆや豆乳に使用される大豆、小麦の国際商品市況、および原油価格の変動リスクです。地政学リスクや異常気象による価格高騰や生産量不足が生じた場合、代替方策の検討や価格見直しを行うものの、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバル展開における競争環境の変化


商品開発やマーケティングの強化によって競合との差異化に努めています。しかし、消費者の価値観や嗜好の中期的な変化、新たな競争相手の出現、競合品の品質向上などにより、提供する商品やサービスに対する需要が低下するリスクがあります。

(3) 食の安全性に関わる品質管理リスク


食品企業として安全で高品質な商品の安定供給を基本使命としています。品質保証や品質管理体制を強化していますが、偶発的な事由によって製品事故などが発生し、同社の取り組みの範囲を超える事象が生じた場合、社会的信頼が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報システムおよび情報セキュリティ


DXを推進し、開発・生産・物流・販売等の業務システムや重要情報を保有しています。デジタルの活用遅れや、災害・不正アクセスなどによるシステム障害、情報漏洩等が発生した場合、事業運営に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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