2022年09月05日

【平均年収2182.7万円】キーエンスの給与・ボーナスが高いのはなぜなのか

【年収研究シリーズ】キーエンスの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。


キーエンスは、1974年に現名誉会長である滝崎武光氏によって設立された、FA用センサーや自動制御装置(PLC)を始め電気・電子部品の開発・販売を行うBtoB企業です。
本社は大阪府大阪市にあり、現在では自動車や半導体、電子・電気機器など、製造業のあらゆる分野において世界45か国・200拠点で事業を展開する企業へと成長しました。

キーエンスは「年収ランキング」「生涯給与ランキング」の常連として有名であり、国内企業でトップクラスの年収を維持しています。創業者である滝崎武光氏もアメリカの経済紙「Forbes」が発表する日本長者番付2017では、資産額1兆3880億円で4位、世界でも102位にランクインしていて、富豪の一人として有名です。

なぜここまで高給なのか、その理由がベールに包まれていることから、世間では「謎の大企業」と呼ばれることもあります。

それでは、キーエンスの年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。

キーエンスの平均年収は2182.7万円

キーエンスの平均年収は2182.7万円です(キーエンス有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にキーエンスの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で1450〜1500万円、30歳代で2020〜2070万円、40歳代で2510〜2560万円という結果になりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約4.41倍の額です。

キーエンスの平均年収推移

グラフが表示されない場合はこちら
キーエンス・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
決算月平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数
2022年3月期2182.7万円36.1歳12.5年2599人
2021年3月期1751.7万円35.8歳12.2年2607人
2020年3月期1839.2万円35.6歳12年2511人
2019年3月期2110.6万円35.8歳12.1年2388人
2018年3月期2088.5万円35.9歳12.2年2253人

出典:キーエンス・有価証券報告書

過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
キーエンスの平均年収は前年を上回り2182.7万円でした。
過去5年間では最高額になりました。

キーエンスの年代別平均年収と中央値

キーエンスの年収中央値は30代で2035.7万円

続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。

キーエンスの年収実態
年代平均年収平均月収平均ボーナス年収中央値
20代1472.3万円88.9万円302.5万円1325.07万円
30代2035.7万円122.4万円418.4万円1832.13万円
40代2530.4万円151.9万円520.2万円2277.36万円
50代2992.1万円179.4万円615.2万円2692.89万円

※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出

キーエンスの年収が高い理由

ファブレスと独自商品で利益率50%を確保

キーエンスは、自社工場を保有せずに製造業を行うファブレス企業です。
そのため製造設備の投資費やランニングコストが極端に少ないことが、高収益高収入の一因です。

セールス手法に注目してみると、顧客の話を徹底して聴くコンサルティングセールスが特徴です。顧客の潜在ニーズを追求しFAセンサーをはじめとした精密機器の製品開発をしていることから、新商品の7割が業界初であり、「世界初」「世界最小」など付加価値のある商品力が強みで、選ばれる製品を世に送り出しています。

キーエンスは代理店を通さない直販体制のため、中間マージンを取られることがなく、メーカーでありながら利益率は50%以上にのぼります。
製造業において、営業利益率が5%未満の企業が多いなかで、社員が2000人も在籍していてこの数字を出すことは驚異的だと言えます。

そういった理由から、利益は社員に還元されやすいといってよいです。
キーエンスでは、基本給を基準とした賞与とは別に、連結営業利益の一定割合を社員に支給する業績連動賞与の制度があることも、年収が高い理由です。

キーエンスの年収の内訳は

年4回のボーナス額は営業利益の還元率

続いてキーエンス内部に目を向けていきましょう。職種や能力によって年収の差はどのぐらいあるのでしょうか。

職種は
 ●ビジネス職【営業、海外、マーケティング、生産管理、人事、経理、総務 ほか】
 ●エンジニア職【商品開発、ソフトウェア開発、生産技術、コンサルティングエンジニア ほか】

 ●S職 事務専任職【営業事務、人事、経理、総務、販売促進、購買、生産管理 ほか】


に分かれています。

給与テーブルによってベースが決まるため、職種による年収の差はほとんどありません。

新卒社員の場合、入社してから3年間は能力や実績とあまり関係なく自然と昇給しますが、4年目からは部署や能力によって昇給に差が出てきます。

特筆すべきことは、利益の一部が年4回、業績賞与として社員に還元される仕組みです。
営業利益の10%が新卒社員を含む全社員に分配されます。
キーエンスの単体売上高は4307億円。その10%となると約430億円。直近の決算期の人数が2388ですから、一人当たり1800万円にもなります。

キーエンス社員の給与明細(キャリコネ)

20代でも十分高いが、30代になれば大台に!

20代コンサルティング営業(非管理職) の 給与明細

30代コンサルティング営業(非管理職) の 給与明細

同年齢でも能力によっては◯倍の格差が!

30歳コンサルティング営業(非管理職)の 給与明細

30歳コンサルティング営業(非管理職)の 給与明細

キーエンスの見落とされがちなデメリット

残業禁止で、時間内パフォーマンスの高さが求められる

キーエンスは「40代で墓が立つ」といわれるほど、激務だと噂されていました。
しかし現在は、ルールとして21時半以降は繁閑問わず残業をすることは厳禁とされ、会社の資料やパソコンを自宅に持ち帰るのも一切禁止です。さらに接待をすることも許されていないため、クライアントと飲みに行ったり、土日に接待ゴルフに行くこともありません。

その一方でキーエンスのルール上、長時間労働ができないことから、限られた時間のなかで成果を出していかなければなりません。
営業はテリトリー制を採用しているので、担当範囲でどれほど売り上げたかを問われます。営業目標の設定は担当者の自己申告がベースとなっていて、入社後早い段階で裁量権のある仕事に取り組むため、どのように運用するのかは個人次第です。

徹底した成果主義で、甘えは許されないという雰囲気があり、仕事に対するプレッシャーは大きいです。高い報酬を得るわけですから、要求される仕事へのハードルは厳しく、精神的にかなり負担がかかります。

キーエンスと競合他社の平均年収を比較

キーエンスの競合や同業界であるオムロン、TDK、太陽誘電、日東電工、村田製作所、京セラの7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、キーエンスが2182.7万円、オムロンが849.7万円、TDKが782万円、太陽誘電が741.4万円、日東電工が805万円、村田製作所が797.6万円、京セラが725.2万円です。
この7社の中で最高額はキーエンスの2182.7万円で、最低額が京セラの725.2万円。その差はおよそ1458万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではキーエンスは1番目に位置します。

社名平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数(単体)売上高
キーエンス2182.7万円36.1歳12.5年2599人6057.2億円
オムロン849.7万円45.5歳16.7年4610人3109.89億円
日東電工805万円40.5歳13年6091人5174.58億円
村田製作所797.6万円40.1歳14.3年9771人12334.64億円
TDK782万円43.4歳18.3年5719人4203.79億円
太陽誘電741.4万円42歳17.8年2878人3127.8億円
京セラ725.2万円40.5歳16.4年20560人8482.53億円

キーエンスの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください

結局キーエンスは就職・転職先として選んでもいいのか

キーエンスでは、長時間労働にならない仕組みづくりを徹底しています。
年間休日126日という実績が示すように「Work Hard、Play Hard」、つまり本気で働いて、本気で遊ぼうというスタイルでメリハリのある生活を送ることができます。
仕事は激務といわれていますが、ブラック企業ではありません。

近年では、誘導型や光学式、接触型等5つのタイプのセンサーを製造しています。その営業利益率は米国のコグネックスやオムロン等の競合他社をはるかに上回り、大変好調です。

今後、人手不足やAI化の背景から飛躍的にハイテク化・効率化が進み、ファクトリーオートメーション関連の需要が益々伸びることが予想されています。
このような背景の中で、コンサルタントが顧客の要望に沿って製品を販売するスタイルはよりいっそう重要度を増していきます。

そしてビジネスフィールドの面では、未開拓な海外のエリアも存在しており、企業として成長し続けている魅力があります。
国内外で、“付加価値の高い商品”と“課題解決のアイデア”を提供することで、モノづくりの現場を支える仕事に挑戦できることはかなりの醍醐味だと言えます。

就職・転職先として非常に魅力的だと言っていいでしょう。

出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」

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