【年収研究シリーズ】武田薬品工業(タケダ)の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
武田薬品工業は、売上高では1.4兆円の大塚ホールディングスを大きく引き離し3.3兆円で堂々の1位(2020年3月現在)であり、世界ランキングでもアメリカのブリストルを抑えて9位と、世界の製薬メーカーにも引けを取らない存在になっています。
同社は、本社が大阪府大阪市にあり、医療用医薬品では「ハラヴェン」「ルフィナマイド」など、幅広く扱っています。
かつては「チョコラBB」や「サクロン」「ベンザブロック」「アリナミンV」など、誰でも一度は聞いたことのある一般用医薬品を扱っていましたが、2020年9月にそれらを扱っていた武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンド大手、ブラックストーン・グループに売却すると発表。2021年3月31日までに売却を完了させる予定です。
製薬会社は平均年収が高いことで知られていますが、国内売上高1位の武田薬品工業の年収はとりわけ気になります。。
では武田薬品工業の年収はいったいどれくらいもらっているのか、どんな人あるいはどこの部署が高いのか、高年収というメリットに隠れた留意点はないのかなどを探っていきましょう。
武田薬品工業の平均年収は1105.1万円
それでは、はじめに武田薬品工業の平均年収について見ていきます。武田薬品工業の平均年収は、武田薬品工業の有価証券報告書によると、1105.1万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した武田薬品工業年代別年収レンジは、20歳代で660〜710万円、30歳代で920〜970万円、40歳代で1140〜1190万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.23倍の額です。
■武田薬品工業の平均年収推移
武田薬品工業・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
武田薬品工業の平均年収は前年を上回り1105.1万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
武田薬品工業の年代別平均年収と中央値
■武田薬品工業の年収中央値は30代で936.7万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
武田薬品工業と競合他社の平均年収を比較
武田薬品工業の競合や同業界である第一三共、アステラス製薬、エーザイ、中外製薬の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、武田薬品工業が1105.1万円、第一三共が1094.9万円、アステラス製薬が1064.4万円、エーザイが920.1万円、中外製薬が1155.8万円です。
この5社の中で最高額は中外製薬の1155.8万円で、最低額がエーザイの920.1万円。その差はおよそ236万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では武田薬品工業は2番目に位置します。
武田薬品工業の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
武田薬品工業の給与が高い理由
■医療用医薬品事業が牽引
製薬メーカーは軒並み平均年収が高い傾向があります。
これは、業界の傾向として、グローバル規模で活動していることから売上高が大きく、特許による独占的収益を確保できることで利益率も高くなるといった要因が挙げられます。
中でも、武田薬品工業の売上高は日本一です。
武田薬品工業の2016年度の業績について見てみましょう。
売上高 1兆7320億5100万円
営業利益 1558億6700万円(利益率9.0%)
次にセグメント別の売上高や営業利益を見てみましょう。
・医療用医薬品事業
売上高 1兆5689億円
営業利益 1284億円
・コンシューマーヘルスケア事業
売上高 826億円
営業利益 205億円
上記をみても、医療用医薬品事業が売上高のうち、大部分を占めていることが判ります。
コンシューマーヘルスケア事業については、消費者の健康志向の高まりが後押しをしているようです。
売上高などから推測しても、市場シェアは相当大きいと考えられます。
こうして得た利益を社内に還元する仕組みが整っていることが、武田薬品工業の年収が高くなっている理由の一つです。
ここまでで十分高い収入を得られることも、年収が高い理由もわかりました。では社内でどんな人、どんな仕事をしている人がより給与が高いのでしょうか。
武田薬品工業で給与が高いのは誰か
■フロントマンであるMRが高報酬
武田薬品工業の職種は、営業(MR)、研究・開発、企画・管理の各部門があります。
報酬体系は従来の年功序列型が残っていますが、なかでも医薬情報担当であるMRがもっとも高いです。
MRは製薬メーカーと病院(医師)をつなぐ重要な存在で、製薬会社としては高い報酬を支払うことで、他社からの引き抜きを阻止し、人材を確保しているとも言えます。
営業であり医薬情報担当であるMRは、何十もの病院をまわって薬を採用してもらうことだけではなく、権威ある先生には講演会を依頼し、有効性の実証や普及を手伝ってもらわなければなりません。
そのためには、知識に長け、コミュニケーション能力の高い人材でないと務まらないという実情があります。こうした優秀な人材確保のため、給与が高く設定されているのです。
武田薬品工業社員の給与明細(キャリコネ)
社員に満足を感じさせる待遇
研究開発・20代(非管理職)の
給与明細
研究開発・30代(非管理職)の
給与明細
賞与で差がつく!
MR・20代・賞与なし(非管理職)の
給与明細
MR・20代・賞与あり(非管理職)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
武田薬品工業で働く上での懸念点・課題
■巨額M&Aに端を発した組織最適化でどうなるか
武田薬品工業は2020年8月17日に、国内で勤務する医薬情報担当者(MR)などを対象に希望退職を募集すると発表しました。
対象は30歳以上で勤続年数3年以上と比較的若い世代にまで及んでいます。
これは2019年1月にアイルランド製薬大手のシャイアーを6.2兆円もの巨額な金額で買収したことによるもので、膨らんだ負債を圧縮し組織を最適化し経営効率を上げるために行われました。
冒頭でも触れた、武田コンシューマーヘルスケアの売却もその一環です。
研究開発(R&D)や生産部門の社員は何事も内容ですが、ビジネス部門の社員にとっては今後も不安定な状況が続く可能性があります。
結局武田薬品工業は就職・転職先として選んでもいいのか
ここまで武田薬品工業を見てきました。結局「就職・転職先として選んでもいいのか」なんですが、
結論から言うと「選ぶべき」です。
2018年4月5日、武田薬品工業はブラジルの完全子会社であるマルチラブを、同国の製薬大手のノバメドに売却すると発表しました。
ブラジル事業拡大に向けて2012年に買収した会社でしたが、ここ数年は営業赤字が続いたため、売却することに決めたとみられます。
こうした動きからもわかるように、武田薬品工業はM&Aをする一方で、余剰資産や不採算部門の売却を進めており、経営資源を新薬の研究開発に集中させようとしています。このような動きは、経営がしっかりとしている証拠です。
なにより薬品を扱う事業に関わることは、人を治療するのみならず、人に喜びを与えることにもつながり、やりがいを感じられる仕事です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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