「製薬業界でもトップクラス」の高給取り
タケダの従業員の年間平均給与は1094万円(2019年3月期)。「キャリコネ」に投稿された給与明細の中には、32歳で960万円、31歳で988万円、34歳で1132万円というものもありました。
特に給与が高いのは、MR(医薬情報担当者)と呼ばれる営業職。31歳男性の場合、定期賞与が200万円、インセンティブ賞与が200万円。自分の年収に満足しており、労働時間にも特に問題を感じていないようです。
製薬業界は平均給与が高い傾向にありますが、さすが業界首位。管理部門で年収900万円を得ている30代男性も「日本の製薬企業ではトップクラス」と評しています。
20代で比較すると外資系のコンサル会社の方が高いと思いますが、その後、徐々に追い上げていきますので、40代では同等レベルになっている気がします。30代で1000万に到達するのはザラです(2018.3.21)
その一方で、このような高給にも不安を抱く人がいます。MRとして働いていた30代男性は年収800万円を得ていましたが、いまは退職しています。
報奨については、(これは会社というよりも業界の話に置き換わるかもしれないが)実際の仕事内容と比べてややもらいすぎと感じるほど高い水準である。ただこれからは間違いなく業界自体が厳しくなるはずなので、今以上の報酬を得ることは難しくなってくると思うし、給与見直しが必要になってくる(2018.6.23)
ジェネリックと薬価改定という危機
この退職者の男性社員は「この業界に将来性を感じなくなった」理由について、さらに詳しく述べています。
社会保障費がこの国の最大の課題であり、薬剤費はその筆頭になっていることを考えると当然のこと。ジェネリック(後発医薬品)が普及する一方で、新たに開発される新薬が減ってきている。加えて薬価改定により薬価がどんどん下げられ、市場が衰退することは明らか。別分野での事業を成長がないと厳しいことになると感じた(2018.6.23)
ここで指摘されている危機については、経営陣も当然認識していたはずです。
2015年からクリストフ・ウェバー氏が社長となり、2019年1月にアイルランドの製薬大手シャイアーを約6兆円で買収するなど海外企業のM&Aを積極的に進めてきたのも、国内大手では未来がないと考えたからでしょう。
2019年6月のある記事によると、世界で約5万人いる武田の従業員の9割が日本人以外の外国人になっているそうです。社内の雰囲気はどうなのでしょうか。30代の男性退職者は2018年の投稿でこう振り返っています。
グローバル化してきているので外国人の割合が多くなってきていますが、日本のオフィス内は外国人がいても日本語ができる人が多数でまだまだ日本という感じ。ただ、海外の事業所の外国人は本当にザ・外国人という人たちばかりなので、そういう人たちと仕事をするとグローバルな一面を肌で感じます(2018.3.21)
国内オフィスの雰囲気については、研究開発を担当していた女性退職者も同じような口コミを残しています。
グローバル化といいつつも、国内での組織は旧態然とした組織体系、意思決定を実施しているため意思決定が遅い。ただし、現場レベルでの職場の雰囲気は悪くなく働きやすい。レイヤーが多いため根回しが上手な人むき(2018.2.14)
「かなり良すぎ」な福利厚生はいつまで
武田薬品工業は最近「ホワイト企業認定」や「プラチナくるみん」といった働きやすさに関する認定を返納しています。社内で労働基準法に違反するケースが発生したためですが、全体としては無理なく働ける職場といってよさそうです。
研究開発職の40代男性は、女性の働きやすさについて太鼓判を押しています。
出産、育児に関する環境は完璧。それらを理由にすれば、ほぼ要望が通り、自由に休みが取れる素晴らしい環境。他にはあまりないだろうと思います。研究所にはタケダキッズなるものが存在し、子どもを預けることができ、極めて安心で楽(2018.10.29)
「タケダキッズ」とは、神奈川県藤沢市の湘南研究所にある事業所内保育施設のこと。他の事業所でも、ベビーシッターや育児サポートの補助券の配付などを行っているようです。
この男性は福利厚生についても「かなり良すぎ」と絶賛。「社宅なんて美味しすぎ。これを社員が当たり前と思ってしまうので、外に出るとかなり辛い」と付け加えています。
しかし、このような好待遇も好業績があっての話。グローバル展開に失敗したとき、逆にリストラで給与や福利厚生のカット、人員削減などが実施されないとも限らないことは、就職や転職をする際に頭に入れておく必要があるでしょう。