【年収研究シリーズ】キヤノンの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
デジタルカメラ市場はここ数年縮小傾向にあり、その勢いは止まりません。携帯電話やスマートフォンのカメラがデジタルカメラの市場を脅かし、現在デジタルコンパクトカメラの総出荷数は最盛期の10分の1となっています。デジタル一眼レフカメラなど、レンズ交換式カメラはコンパクトカメラよりは持ちこたえているものの、2012年のピーク時に比べると6割弱にまで減少しています。
キヤノンは、カメラやプリンターなどで知られる国内大手精密機器メーカーの一社で、一眼レフとコンパクトカメラで世界のトップに君臨する企業です。それだけにデジタルカメラの市場縮小は、キヤノンにとっては非常に大きな問題です。
カメラに加えて事務機器など主力事業の成熟化が進む中、次の成長分野の育成を目的に、キヤノンは2016年に東芝から医療機器会社を約6600億円で買収しました。買収した会社は2018年に「キヤノンメディカルシステムズ」に社名変更し、キヤノングループの一社として本格的に始動しました。
またキヤノンは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
キヤノンの平均年収は759.7万円
それでは、はじめにキヤノンの平均年収について見ていきます。キヤノンの平均年収は、キヤノンの有価証券報告書によると、759.7万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出したキヤノン年代別年収レンジは、20歳代で450〜500万円、30歳代で620〜670万円、40歳代で780〜830万円となっています。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.54倍の額です。
■キヤノンの平均年収推移
キヤノン・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
キヤノンの平均年収は前年を上回り759.7万円でした。
過去5年間では2番めに低い額になりました。
キヤノンの年代別平均年収と中央値
■キヤノンの年収中央値は30代で644.3万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
キヤノンと競合他社の平均年収を比較
キヤノンの競合や同業界であるニコン、リコー、オリンパス、コニカミノルタの5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、キヤノンが759.7万円、ニコンが811.8万円、リコーが804万円、オリンパスが922.4万円、コニカミノルタが747.7万円です。
この5社の中で最高額はオリンパスの922.4万円で、最低額がコニカミノルタの747.7万円。その差はおよそ175万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではキヤノンは4番目に位置します。
キヤノンの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
キヤノンで給与を上げるには
■社内昇格試験が給与の明暗を分ける
キヤノンでは30歳手前から「社内昇格試験」を受け、その合否の結果によって基本給に大きな違いが出てくるようです。合格率は3割から4割ということですから決して高くありません。
G2と呼ばれる階級からG3へ昇格すると、基本給が約28万円から約37万円と一気に跳ね上がります。ただしG3へ昇格するには試験があります。論文試験とマークシート試験があり、それにパスすると面接試験に進むことができるというもので、合格率10%にも満たない超難関試験です。
月々の基本給で約10万円もの差があれば、年収にすると何百万円といった差となります。キヤノンでは、昇級試験の結果がその後の年収の高さにかなり大きく影響するといえます。
キヤノン社員の給与明細(キャリコネ)
年齢だけでは、意外と差がない!?
20代・研究開発(化学)の
給与明細
30代・研究開発(化学)の
給与明細
同年代でも年収●●●万円の差があるのは、「社内昇級試験」の影響?
30代・メカトロ設計・基本給40万円の
給与明細
30代・メカトロ設計・基本給33万円の
給与明細
キヤノンで働く上での課題・懸念点は
■「ミラーレス」には複数ライバルあり
キヤノンの問題点としては、家賃補助などの住宅に関する福利厚生が他社と比較して少ないといったことがあります。独身寮や社宅がなく、住宅手当や家族手当がないといった声もあります。昇格試験を受けることができる年齢になるまでは一般的な給与水準であるため、家賃などの出費もあり生活に影響を及ぼすかもしれません。
また、もう一点の懸念点は「ミラーレスカメラ」市場の拡大です。一眼レフやコンパクトカメラの不調により減少傾向にある「デジタルカメラ」が、このミラーレスの伸びに助けられ、前年比総出荷量3%の増加となりました。しかしこの分野において、首位をソニーに奪われています。出荷台数を見ると、キヤノンは91万台だったところ、ソニーはその倍以上の184万5000台となっています。
キヤノンには年収以外にメリットはある?
ここまでキヤノンの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
キヤノンの平均勤続年数は、全国の上場企業約2800社の平均13.5年を大きく上回る19.2年となっており、長く勤められる土壌があることがわかります。またリストラはほぼないということですので、福利厚生が不十分な問題は昇格試験を受け、年齢があがれば十分に解消されそうです。
またミラーレスカメラについては、ソニーの躍進を何もせずに見ているわけではありません。キヤノンは2018年9月に「EOS R」を発表しました。参考価格23万7500円(税別)の、初の高級ミラーレスカメラです。
ミラーレスは、一眼レフよりはるかに小さいサイズであることが特徴でもあったのですが、EOS Rは「フルサイズ」と呼ばれる一眼レフと同じサイズです。イメージセンサーを搭載するなど、キヤノンが世界トップを誇る一眼レフの技術を応用しています。
挑戦にとらわれ人材を削る会社も少なくない昨今ですが、社員を切るのではなく既存事業の強みを活かして活路を模索する姿勢こそが、国内首位を保持してきた背景であり、キヤノンの最大の強みともいえます。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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