【年収研究シリーズ】日本郵船工業の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
2018年10月末に高円宮家の三女・絢子さまのご結婚式が執り行われ、世間を賑わかせました。お相手の守谷慧さんの勤務先である日本郵船も一躍話題になりましたが、日本郵船とは、そもそもどのような会社なのでしょうか。
日本郵船は、2019年10月で創業134年を迎える国内大手の海運会社です。祖は三菱の基礎を築き、明治の日本の海運に大きく貢献した岩崎彌太郎です。もとは1873年に興した九十九商会(のちの三菱商会)で、三菱グループの源流企業でもあります。
矢継ぎ早に新規航路を開設していった日本郵船は、瞬く間に世界有数の海運会社となり、客船ビジネスでも成功を収めたことから、かつての呼び名は「客船の郵船」でした。チャップリンやアインシュタイン、ヘレン・ケラー、リンドバーグなど国際的著名人などが乗船した歴史もあるのです。
そんな日本郵船は、現在国内の海運業界の中でも高い売上高を誇っています。国内の有名な海運会社には、日本郵船の他に商船三井や川崎汽船がありますが、各社の直近の有価証券報告書による売上高を比較すると、商船三井が1兆6523億円、川崎汽船が1兆1620億円に対し、日本郵船は2兆1832億円と群を抜いています。
また日本郵船は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
日本郵船の平均年収は1082万円
それでは、はじめに日本郵船の平均年収について見ていきます。日本郵船の平均年収は、日本郵船の有価証券報告書によると、1082万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した日本郵船年代別年収レンジは、20歳代で790〜840万円、30歳代で1030〜1080万円、40歳代で1170〜1220万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.19倍の額です。
■日本郵船の平均年収推移
日本郵船・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
日本郵船の平均年収は前年を上回り1082万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
日本郵船の年代別平均年収と中央値
■日本郵船の年収中央値は30代で1047.9万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
日本郵船と競合他社の平均年収を比較
日本郵船の競合や同業界である商船三井、川崎汽船の3社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、日本郵船が1082万円、商船三井が1072.8万円、川崎汽船が990.4万円です。
この3社の中で最高額は日本郵船の1082万円で、最低額が川崎汽船の990.4万円。その差はおよそ92万円で、そこそこの差があります。
この比較企業の中では日本郵船は1番目に位置します。
日本郵船の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
日本郵船の職種別特徴はなにか
■海上職には手当ありだが免許が必要
日本郵船の職種は海上職と陸上職にわかれ、それぞれの職種の給与体系は大きく異なっているようです。2017年4月実績の初任給は21万4800円で同一ですが、海上職は乗船手当等が別途付与されるため、職種によって年収に差が出てきます。日本郵船の平均年収は、海上職の乗船時の高い給与によって底上げされている可能性があるといってもよいでしょう。
ただ海上職に就くには、船員教育機関で免許を取得するか、航海士・機関士候補として日本郵船の養成コースで経験を積まなくてはならないため、強い覚悟と高い努力が求められます。こういたことから、高度な知識と技術、そして経験が求められる専門職に見合っている給与体系といえるのではないでしょうか。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
日本郵船社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代では賞与に120万も差が!
20代・海外営業の
給与明細
30代・海外営業の
給与明細
時間外手当の有無で年収に100万以上の差
20代・物流・時間外手当ありの
給与明細
20代・物流・時間外手当なしの
給与明細
日本郵船で働く上での懸念はなにか
■商社並みの海外勤務あり
日本郵船の場合では、勤務地に関することはあらかじめ確認しておくとよいでしょう。というのも日本郵船の海外拠点は、ニューヨークやロンドン、アントワープ、シドニー、シンガポールなど65か所と多く、陸上職では5人に1人の割合で海外勤務があります。また海上職においては、一度海に出ると6か月間は土日関係なく働く生活となり、夜も当直制である点を念頭に置いておきましょう。
さらに外部環境として、原油高の問題や米中の貿易戦争に対する不安も懸念されます。燃料の大幅な値上がりは収益に直接影響しますから、突然赤字に陥ることも考えられます。また諸外国の貿易摩擦に左右される可能性がある業界でもあり、情勢によっては業績が安定しないという不安要素があるのです。
日本郵船には年収以外にメリットはある?
ここまで日本郵船の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
年収の高さ以外にも日本郵船を選ぶメリットは2つあります。
メリットの1つ目に、特定の拠点に依存せず、世界中にある拠点の数だけリスク分散ができる点です。日本郵船における国内の売上高は、全体の約30%程度と決して多くはありません。中国ショックの時に大きな武器となったリスク分散は、新しい手法を取り入れながら続いているのです。
2つ目は、収益が安定しない事業を安定させるべく、徹底して取り組んでいる点です。定期船におけるライトアセット戦略やドライバルク船事業のミスマッチ解消など、リスクの高い事業に対して取り組みを強化しています。
日本の航路を切り開いた133年という長い歴史を持ちつつ、ここまで生き残ってこれたのは、業界首位を獲得しているにもかかわらず、それに甘んじない徹底したリスク管理があったからといえるでしょう。日本から世界のフィールドへ漕ぎ出すことを志す人へ、心からお勧めしたい企業です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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