【年収研究シリーズ】兼松の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
商社の事業モデルといえば「トレーディング」と「資源投資」ですが、あえて資源投資を行わない商社があります。それが1889年創業の老舗商社「兼松」です。兼松は資源への投資を行わない代わりに、電子・デバイス、食料、鉄鋼・素材・プラント、車両・航空など、幅広い分野で事業を展開し、その独自性が同社の強みにもなっています。現在の事業モデルの背景には、1990年代後半の苦境と苦境から脱出するために打ち出した方向転換があります。
バブル期前後は多くの企業が不動産投資に過度に入れ込みました。それは兼松も同様で、バブルが崩壊した後は資金繰りうまくいかなくなり、自力での事業継続を断念せざるを得ませんでした。取引銀行に1700億円の債務免除を要請する状況に追い込まれ、さらに経営陣の退陣や従業員のリストラ、そして増減資なども断行しています。従来のメイン事業繊維や紙パルプ、不動産事業などから撤退し、営業利益の多くを食料やITサービスで占める現在の収益構造の基礎をつくったのです。
また兼松は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
兼松の平均年収は931.4万円
それでは、はじめに兼松の平均年収について見ていきます。兼松の平均年収は、兼松の有価証券報告書によると、931.4万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した兼松年代別年収レンジは、20歳代で610〜660万円、30歳代で850〜900万円、40歳代で1080〜1130万円となっています。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.88倍の額です。
■兼松の平均年収推移
兼松・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
兼松の平均年収は前年を下回り931.4万円でした。
過去5年間では2番めに低い額になりました。
兼松の年代別平均年収と中央値
■兼松の年収中央値は30代で871.4万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
兼松と競合他社の平均年収を比較
兼松の競合や同業界である長瀬産業、稲畑産業、三谷商事、加賀電子、日鉄物産、双日の7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、兼松が931.4万円、長瀬産業が1029.4万円、稲畑産業が860.9万円、三谷商事が895万円、加賀電子が780.4万円、日鉄物産が830.1万円、双日が1038.2万円です。
この7社の中で最高額は双日の1038.2万円で、最低額が加賀電子の780.4万円。その差はおよそ258万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では兼松は3番目に位置します。
クボタの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
それにしても兼松の年収が高いのはなぜなんでしょうか?
兼松の年収が高い理由
■電子・デバイス事業だけで営業利益の70%を叩き出す
兼松は現在、電子・デバイス事業と食料、そして鉄鋼・素材・プラント事業の3本柱で約90%の収益を占めています。電子・デバイス事業では、製造業やサービス業向けを中心に順調なICTソリューションズ―ション事業、中国向け販売が拡大した半導体製造装置事業、携帯電話販売代理店子会社の統合などが見られるモバイル事業などいずれも好調です。穀物や油脂原料、飼料、畜水産物の安定確保および提供が持続している食料分野でも、収益は前年同期比1.5%のプラスとなりました。また、原油価格の上昇により大きく改善した北米での油井管事業など、鉄鋼・素材・プラント事業では同16.7%プラスと増収になっています。
なかでも電子・デバイス事業の営業利益は約176億円で、同社全体の営業利益262億円の約70%を稼いでいます。さらにITベンダーの兼松エレクトロニクス、モバイルの兼松コミュニケーションズといった子会社の収益も好調で、ROE(自己資本利益率)は、2017年3月期の8.4%から大幅に改善し、2018年3月期には15.1%となりました。これら事業の好調が、兼松の高年収に結び付いているのです。
兼松社内で年収(給与・報酬)が高い職種・役職は?
兼松の入社時の初任給は、最初に選択するコースで異なります。大卒の初任給は、勤務地に制限がない広域採用では25万5000円、勤務地を特定するエリア特定採用では21万円となっています。
入社後しばらくは、給与は「職群」と呼ばれる職位ごとに決まり、入社後2年目からは「職群1」のくくりで基本給がプラス5万円以上の大幅増で、その後しばらくはゆるやかに上昇するようです。TOEICや簿記、社内試験などの要件を満たせば、入社後4~5年目に「職群2」へ上がるのが一般的といいます。入社後7年目以降はこれまでの横並びではなく、評価と部門評価に応じて給与やボーナスが個人によって異なるため、当然年収にも差がついてくるでしょう。年収の目安としては、30代で800~900万円程度、40代の課長で大台を超えてくるイメージです。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
兼松社員の給与明細(キャリコネ)
着実な基本給アップで、年収1.5倍に!!
20代・海外営業(非管理職)の
給与明細
30代・海外営業(非管理職)の
給与明細
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30代・海外営業・賞与なし(非管理職)の
給与明細
30代・海外営業・賞与あり(非管理職)の
給与明細
兼松の課題やデメリットは?
■飲み会の回数が多い
人によって合うか合わないか、好みが極端に分かれそうな「飲みニケーション」が盛んな文化が兼松にはあります。たとえば寮では、バスをチャーターして近郊へ出かけ、朝6時から夜9時まで飲み続けるイベントがあるそうです。また同期同士の飲み会もあり、翌日に仕事を控えているにも関わらず、夜遅くから明け方近くまで飲むといったことも珍しくないといいます。お酒が好きでない人や飲めない人にとっては苦痛に感じる可能性があるでしょう。
また入社後5年目から住宅手当が出ないという懸念点があります。年収が高水準なため、収入が安定する5年目以降は自身の采配で住宅を手配することが当たり前の文化となっているのでしょう。とはいえ住宅手当に加え、日常で使える福利厚生が十分ではないという不満の声もあるようです。
兼松には年収以外にメリットはある?
ここまで兼松の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
日本の有給休暇平均取得率が48.7%のところ、兼松は65.6%と非常に高い数値を誇ります。政府は2020年度に同取得率を70%にする目標を掲げていますが、すでにそれに近い数字に達しているのです。
この高水準の理由には、兼松特有の「ブロンズウイーク制度」という制度があります。年間に3連休や飛び石連休が何度かありますが、その日の前後に有休を入れることで「4連休」になる日を候補日として社員へ提示します。それを毎年新年度がスタートする4月に1人が2日ずつ選んで計画表を提出し、課単位で調節していく仕組みです。あえて候補日を提示することが、結果的に実際の取得につながっているといいます。それだけ同社は社員のワークライフバランスを大切にする会社といえるでしょう。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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