総合商社の双日が、2018年夏にも「完全養殖マグロ」を出荷すると報じられました。
双日は2008年に大手商社で初めてマグロの養殖産業に参入し、10年もの歳月をかけて得た知見を積み上げ、今回の初出荷にこぎ着けました。
他社の動向を見てみると、「近大マグロ」で有名な近畿大学と豊田通商が養殖マグロの事業に進出したり、三菱商事も養殖マグロを回転すしチェーン「スシロー」において、期間限定のにぎりずしとして登場させるなど、大手商社が養殖産業に本腰を入れはじめています。
今年、双日は2000匹の完全養殖のマグロを出荷する計画があり、大きな商機を迎えています。この取り組みが成功すれば、完全養殖マグロの勢力図が変わるかもしれません。
双日は三菱商事や三井物産、伊藤忠、丸紅などと並び、7大商社に数えられており、自動車や機械だけではなく、エネルギーや食品に至るまで幅広く扱っている総合商社でもあります。
商社と言えば「高給」のイメージがあるように、実際に東洋経済オンラインの「平均年収ランキング」では常連として知られています。
それでは、双日の年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。
双日の平均年収は1038.2万円
まずはじめに双日の平均年収を見ていきましょう。双日の平均年収は1038.2万円です(双日有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に双日の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で600〜650万円、30歳代で850〜900万円、40歳代で1080〜1130万円という結果がでました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.1倍の額です。
■双日の平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 1038.2万円 | 41.8歳 | 15.4年 | 2558人 |
2021年3月期 | 1095.8万円 | 41.5歳 | 15.4年 | 2551人 |
2020年3月期 | 1154.6万円 | 41.7歳 | 15.8年 | 2460人 |
2019年3月期 | 1139.1万円 | 41.9歳 | 15.8年 | 1919人 |
2018年3月期 | 1103万円 | 41.9歳 | 16年 | 1880人 |
出典:双日・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
双日の平均年収は前年を下回り1038.2万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
双日の年代別平均年収と中央値
■双日の年収中央値は30代で866.8万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 623.8万円 | 40.5万円 | 109.9万円 | 561.42万円 |
30代 | 866.8万円 | 55.8万円 | 152.8万円 | 780.12万円 |
40代 | 1098万円 | 70.3万円 | 193.6万円 | 988.2万円 |
50代 | 1302.1万円 | 83.2万円 | 229.7万円 | 1171.89万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
双日と競合他社の平均年収を比較
双日の競合や同業界である三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、住友商事、豊田通商の7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、双日が1038.2万円、三井物産が1549.1万円、三菱商事が1558.8万円、伊藤忠商事が1579.7万円、丸紅が1469.2万円、住友商事が1406.3万円、豊田通商が1114.1万円です。
この7社の中で最高額は伊藤忠商事の1579.7万円で、最低額が双日の1038.2万円。その差はおよそ542万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では双日は7番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
伊藤忠商事 | 1579.7万円 | 42.2歳 | 1.2年 | 4170人 | 33172.88億円 |
三菱商事 | 1558.8万円 | 42.8歳 | 18.5年 | 5571人 | 20173.1億円 |
三井物産 | 1549.1万円 | 42.1歳 | 18.2年 | 5495人 | 40535.87億円 |
丸紅 | 1469.2万円 | 42.3歳 | 17.6年 | 4379人 | 17556.53億円 |
住友商事 | 1406.3万円 | 43.1歳 | 18.5年 | 5150人 | 5184.95億円 |
豊田通商 | 1114.1万円 | 42.8歳 | 17.1年 | 2648人 | 15140.45億円 |
双日 | 1038.2万円 | 41.8歳 | 15.4年 | 2558人 | 6782.62億円 |
双日の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
双日の年収が高い理由
■従業員1人あたりの利益率は1500万超
双日の年収が高い理由の一つに、収益と利益額が大きいことが挙げられます。
2018年3月期の連結決算発表(国際会計基準)によると、収益は4兆2090億7700万円で、当期純利益は616億9400万円となっています。資源価格の上昇により石炭・金属事業において増益となった他、海外自動車卸売事業では販売台数が増加するなど好調です。
2019年3月期の単体の業績では、売上高は2兆5159億9800万円、人件費を含む諸経費を抜いた純利益は368億8300万円となっています。
双日の従業員数2410人で純利益を割ると、従業員一人あたり1530万円もの利益を出していることになり、こうした利益が社員の待遇に還元されることによって年収が高くなっていると考えられます。
双日の昇給額やボーナスの水準は高く、ボーナスとして支給される額は年間の基本給相当です。さらに住宅手当や出張手当、海外赴任手当など各種手当が手厚いことも年収を引き上げている大きな要因です。
双日社員の給与明細(キャリコネ)
30代に入ると、さらにアップ!
20代・海外営業(非管理職)の 給与明細
30代・海外営業(非管理職)の 給与明細
ボーナスの有無の差は想像以上!
20代・海外営業・賞与あり(非管理職)の 給与明細
20代・海外営業・賞与なし(非管理職) の 給与明細
双日で働く上での懸念点・課題
■激務と海外赴任は商社につきもの
双日に限らず、総合商社での業務は何と言っても激務であることが挙げられます。
残業は深夜までに及ぶこともしばしばあり、休日出勤が多いことも免れません。これらの時間外勤務手当が高いことも、給料が高い大きな要因の一つです。
国内や海外への出張も多くあります。世界の至るところへ出向き、さまざまな経験ができることが商社で働く醍醐味ですが、その反面、テロが多発する地域や山奥などの危険な場所にさえ行かなければならないこともあります。
商社には「ものを右から左へ動かすだけの仕事」というイメージが付いていることもあって、利益率が非常に高いと思われがちです。しかし実際は「薄利多売」であることが多く、モノを大量に動かすことによる「スケールメリット」で利益を得ているため、ひとつの事業がうまくいかなくなった場合は、業績への影響が極めて大きくなってしまいます。
双日は収益の大きな部分を石油ガス、石炭、金属など需要に左右されてしまう「資源系」ビジネスが占めていることもあり、業績の変動が激しいといった面が懸念材料です。
結局双日は就職・転職先として選んでもいいのか
双日は日本企業初の海外病院官民連携医療事業という新しい分野へ進出しています。
トルコのイスタンブールで大型病院の運営事業に参画するなど、新興国でのプレゼンスが高まっており、今後の業績拡大が期待できます。
その他に、双日にとって北米市場では初となる米国北東部の電力供給投資案件に参入し、新しいプロジェクトモデルに挑戦している点も注目したいポイントです。
さらに今回の最終利益は前年に比べて39.5%とかなり業績が好調で、いまだに右肩上がりの成長を続けていることも心強いところです。そして何より、世界中を舞台にした大きな仕事に携われるというやりがいは、大変魅力があります。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」