口コミと公開データを元に転職者目線で企業研究。業績と待遇の2つの面で志望企業を掘り下げます。今回取り上げるのは航空事業にも進出している大手輸送機器・機械メーカーの本田技研工業(ホンダ)です。
世界累計生産台数1億台を達成した働く二輪車の代表「スーパーカブ」、ミニバンの人気車種「フリード」「ステップワゴン」など、生活を支える実用車を生み出している本田技研工業(株)(以下「ホンダ」)。主力の二輪・四輪に加え、2018年から日本国内でも出荷が始まった小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」は、米セスナのライバル機を抑えて2017年、2018年と2年連続で出荷数世界一となりました。常に新しく、そして役立つものを生み出しているホンダでは、コネクテッドカーなどIT分野との融合を目指す研究開発職の中途採用が活発です。
ホンダの年収や待遇、採用事情はどうなっているのでしょうか。これから志望する人が知っておきたい事業内容も含めて詳しく見ていきましょう。
ホンダの事業概要~どんな事業をしているのか
■60周年を迎えた「スーパーカブ」
ホンダの事業は、
・二輪事業
・四輪事業
・パワープロダクツ事業及びその他の事業(航空機関連事業を含む)
・金融サービス事業
に大きく分類できます。二輪、四輪、パワープロダクツを合計した世界販売実績(2017年)は累計3104万台。いずれも世界的な人気・知名度を誇っています。
なお、パワープロダクツとは、耕運機、除雪機、発電機、船外機やポンプなど、小型のエンジンを備えた製品群のこと。金融サービス事業は、子会社のホンダファイナンスがクレジットやカーリースを手がけています。
ホンダの二輪車に関しては、根強い人気の「スーパーカブ」シリーズが2018年に初代誕生から60週年を迎えたことでも話題に。初代の良さと進化した性能を融合させた最新車種「スーパーカブC125」も発売されました。約40万円という競合モデルと比べて高額な価格設定でありながら、発売約半年で国内年間目標を上回る3000台出荷を突破しています。
グローバルでの二輪車販売実績をみると、アジア・太洋州が1660万台と圧倒的に多く、続いて中国が114万台、南米が99万台です。スクーターが人気の新興国で特に販売実績を伸ばしています。
本田技研工業株式会社 2017年世界販売実績(『一目でわかる会社概要』より)
四輪車では、「フィット」「フリード」「ステップワゴン」「ヴェゼル」などの人気車種を多数抱えています。地域別販売実績では北米が最も多く、195万台。2018年には、北米カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)を「アコード」が受賞しました。また、中国市場では中国専用EV「理念VE-1」を投入するなど、各国のニーズに合わせて開発・生産を行っています。
ホンダの業績・財務状況~業績はどうか
■全体の業績と財務状況
次に、ホンダの業績についてみていきましょう。ホンダは2015年に国内自動車メーカーとして初めて国際会計基準(IFRS)を適用した企業です。グループとしては国内外に連結子会社368社、持分法適用会社72社を抱えています(2017年度末時点)。
以下の図の通り、2017年度の連結売上収益15兆3611億円に対し、2018年度は15兆8886億円。全ての事業で増加し、前年度にくらべ3.4%の増収に。過去最高となっています。営業利益(本業の儲け)は為替や四輪車の生産体制の変更等の影響により12.9%の減益で、7263億円で着地しました。為替や一過性の減益要因を除けば実質822億円の増益となっていますが、四輪事業に課題もみえます。
本田技研工業株式会社 2018年度 決算概要(『2018年度 決算説明会』より)
■セグメント別の業績と現在の取り組み
では、セグメント別の業績をみていきましょう。
ホンダの事業の柱は、売上の約70%を占める四輪事業です。続いて金融サービス事業、二輪事業がそれぞれ13~15%程度、パワープロダクツ事業と航空機エンジンなどのその他の事業は2%強となっています。これら全ての事業で売上収益が増加しました。
2018年度の二輪事業は、ベトナムやインドネシアでの販売台数増加により、四輪事業の営業利益を上回りました。これは、タカタ製エアバッグの影響を強く受けた2016年3月期以来のことです。また、金融サービス事業はオペレーティング・リースなどが好調で、全体の伸びに貢献しています。
一方、主力の四輪事業の状況は、販売数は伸びているものの厳しめ。営業利益は2096億9400万円でした。英国とトルコでの工場生産中止が決まり、そうした生産体制の変更による影響もありますが、それらを考慮したうえでも米国を中心に苦戦を強いられています。特に2019年3月期の第4四半期にホンダの四輪事業が赤字に転落したことは、メディアでも注目されました。地域ニーズに対応すべく、グレード、オプションなどの組み合わせ(派生)数を増やしすぎたことが原因と考えられています。
本田技研工業株式会社 事業の種類別セグメント情報(自 2018年4月1日 至 2019年3月31日)(『2018年度 決算報告書』より)
2018年度の二輪事業は、ベトナムやインドネシアでの販売台数増加により、四輪事業の営業利益を上回りました。これは、タカタ製エアバッグの影響を強く受けた2016年3月期以来のことです。また、金融サービス事業はオペレーティング・リースなどが好調で、全体の伸びに貢献しています。
一方、主力の四輪事業の状況は、販売数は伸びているものの厳しめ。営業利益は2096億9400万円でした。英国とトルコでの工場生産中止が決まり、そうした生産体制の変更による影響もありますが、それらを考慮したうえでも米国を中心に苦戦を強いられています。特に2019年3月期の第4四半期にホンダの四輪事業が赤字に転落したことは、メディアでも注目されました。地域ニーズに対応すべく、グレード、オプションなどの組み合わせ(派生)数を増やしすぎたことが原因と考えられています。
ホンダの事業戦略~今後の展開は
■全体の事業戦略と事業計画
では、今後の展開についてみていきましょう。
2019年度は、増税等の影響で全体の販売台数の減少が見込まれているものの、コストダウンを進めることで事業体質の安定を図る計画となっています。主軸である四輪事業の収益力を強化していけるかどうかが明暗を分けるといっていいでしょう。
四輪事業を取り巻く環境は大きく変化しており、他の自動車メーカー同様、いわゆる「CASE(ケース)」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応を迫られている状況。2019年度は前年度より高額な設備投資や研究開発支出を見込んでいます。
世界各国でCO2削減に向けた取り組みが国レベルでも急速に進められるなか、ホンダは
2030年、 Hondaは世界で販売する四輪車の3分の2を電動化することをめざします。
と宣言。2019年度は、電動化に向けて米国や中国で生産体制強化や新たな工場の稼働などが開始されます。
なかでも中国は、自動車メーカーに対して一定の比率でNEV(新エネルギー車)の生産・販売を義務付けていることから、注目が高まっています。その他、新興国でも社会状況によって一足飛びに電動化が進む可能性があり、その地域のニーズにあわせて効率よく対応していくために、地域間の連携も進めていくとのこと。
また、中途採用ではコネクテッドカー関連の募集も目を引きます。2017年にソフトバンクとの共同研究を発表するなど、第5世代移動通信システム「5G」(高速大容量・低遅延・同時多接続を実現する通信システム)に対応する研究開発を進めてきました。「最適ルート配信」「車内決済」「カーシェアリング」「緊急通報・盗難車追跡」など、安全・便利に利用できるサービスの実現を目指していきます。
■セグメント毎の事業戦略
二輪事業や航空機事業に関する戦略もみていきましょう。
・アジアで成長する二輪事業
四輪事業が苦戦を強いられるなかで、グループを支え、高い営業利益率を誇っているのが二輪事業です。生産工場を拡充するなど、スクーターを中心に成長を続けてきたインド市場は、自賠責保険制度の改定などの影響で2018年度下期に低迷。2019年度も引き続き伸びは見込めません。しかし、南米や中国での好調が見込まれ、シェア拡大を目指します。
・航空機事業は開発から事業安定期へ
ホンダが苦労しながらも長年注力してきた航空機事業は、2017年、2018年とセスナを超えて同カテゴリー内での出荷数世界1位となりました。また、ホンダジェット開発を主導した航空機事業子会社ホンダエアクラフトカンパニー社長の藤野道格氏は、国際的な賞を次々受賞。ホンダの企業イメージ向上に多大な貢献をしています。まだ事業としては赤字ですが、2018年12月にはいよいよ日本での機体引き渡しも始まりました。2019年は前年度より出荷数が増える見込み。徐々に販売台数を伸ばして安定させ、長期的に黒字にもっていく考えです。
ホンダの年収~報酬はどれぐらいか
2018年3月期の
有価証券報告書によると平均年収は808.6万円。平成29年度の
民間給与実態統計調査(国税庁)によると、男女を合わせたサラリーマンの平均年収は約432万円、業種別モデル平均年収
「輸送用機器(自動車含む)」(マイナビ)では533万円となっており、それと比較しても高いことが分かります。平均年齢は44.9歳と偏りが少なく、妥当な金額といえます。
キャリコネに寄せられた給与明細から算出した年代別年収レンジは、20歳代で480〜580万円、30歳代で650〜750万円、40歳代で810〜910万円となっています。
ホンダでは公平さを重要視しており、賃金体系も年齢・学歴・性別・職種で区別しないと明言しています。2002年から役職者でない一般層に成果型の賃金体系が導入され、上位層は定期昇給を廃止(課長以上の役職者は1992年から成果型、定期昇給なし)。また、評価に際しては上司・部下での面談がありますが、自己申告をもとに話し合うことで、社員一人ひとりの納得感を高めています。面談等で自らアピールできるかどうかも重要になってくるでしょう。
本田技研工業株式会社 Hondaの賃金制度の外観(賃金カーブモデル)(『Hondaの賃金・評価制度』より)
社員の口コミでは、実際に「高学歴かどうかは関係しない」という声がみられるほか、ボーナスの高さや海外赴任時や異動時などの各種手当、社宅などの福利厚生制度の充実さに満足する口コミも。
一方で、「基本給は高くない」「年功序列が残っている」と不満を感じている口コミもみられました。管理職になるかどうかで大きく年収が変わってくるようです。
■技術職の年収実態(30代/男性)
年収口コミ
給与は同業他社同等であり生活する上でも問題ないレベルである。
しかしながら…(続きを見る)
具体的な年収額をお知りになりたい場合は、キャリコネの給与明細投稿をご覧ください。
本田技研工業社員の給与明細(キャリコネ)
同じ20代でも技術職のほうが年収が高め?
20代技術職の
給与明細
20代営業職の
給与明細
30代になると年収が大幅アップ
20代技術職の
給与明細
30代技術職の
給与明細
ホンダの働く環境~働きやすさはどうか
ホンダの口コミには働く環境について様々な意見が届いています。その中でも特徴的な点を3つ挙げます。
有給休暇取得率ランキングで連続トップ
東洋経済新報社による『有給取得率の高い300社ランキング』でホンダは2018年まで7年連続トップにランクインしています。口コミでも、「休みをとりやすい」「有休を消化しなければいけない」という声が複数みられました。
制度面では、次年度への繰り越しの際に限度日数(20日)を超えて消滅してしまう有休をなくす「有給休暇カットゼロ運動」が行われています。年次有給休暇の取得計画をもとに、人員の不足をあらかじめ算出して補充するという徹底ぶり。また、3日連続や5日間連続で有休を取得することも推奨されており、土日を絡めて長い休みをとり、リフレッシュすることもできます。
なお、残業に関しても「厳しく制限されている」という声が多くみられました。本社では毎週水曜日と第2・第4週の週休日前日がノー残業デーとなっているなど、社員の労働環境が守られています。
長年女性活躍推進に取り組む
自動車業界全体にいえることですが、女性の割合は少なめ。ホンダの場合、女性従業員比率が7.4%、女性管理職比率は0.8%(2017年度)です。
しかし、2008年から意識改革や両立支援制度の導入などを行い、その後もキャリア支援や企業所内託児所の設置、配偶者転勤に伴う帯同転勤や休職制度の整備など、さまざまな取り組みに注力してきました。ベビーシッターや保育所、育児用品、不妊治療、介護サービスなどに関する費用補助もあり、プライベートと両立しやすい環境が整っています。
口コミでは、女性の人数が圧倒的に少ないため「男性社会」だと感じている人が多い一方、「女性のキャリア支援に力を入れている」「女性も実力があればチャンスがある」との声も。
大企業ならではの充実した福利厚生
独身者向けの福利厚生では、寮を完備。ホンダの研究開発拠点がある埼玉県の和光/朝霞地区寮の場合は、家賃月額約2万2000円~2万6000円でエアコン完備のワンルームに入居することができ、住居費の負担が軽く済みます。
長期勤続者向けの福利厚生では、 勤続25周年の記念旅行クーポン制度も。旅行を希望した社員には35万円相当のクーポン券が支給され、社員の長期勤続を支えてきた家族も一緒に利用可能です。
ホンダ住宅共済会、ホンダグループ従業員持株会制度、ホンダ互助会制度などグループ共通の保障制度、積立支援制度もあります。ホンダ互助会制度では、加入する従業員が支払った会費を運用し、万一の入院や火災などの際に見舞金が給付されます。掛け捨てではなく、退職時には利息が上乗せされて「退職慰労金」として全額払い戻し。大企業ならではの安心感があります。
■営業の残業時間の実態(20代/男性/法人営業)
残業時間口コミ
月の残業上限は30時間。年間360時間も厳守である。しかし一部…(続きを見る)
ホンダの職種~どんな職種があるのか
続いては、ホンダの職種についてみていきましょう。大きく分けると「営業」「生産」「研究開発」「購買」「管理」の5系統があります。
中途採用ページ(2019年5月現在)をみると、研究開発部門では特に四輪事業でコネクテッドカー・サービス、電動車、AI技術に関わる求人が多数掲載。次世代のモビリティ開発を担う人材が求められています。ホンダは「理系採用数が多い企業ランキング」(2018年/東洋経済新報社調べ)でもトップとなっており、理系採用比率は86.1%。新卒でも中途でも理系採用に力を入れています。
営業部門では、すべての募集が海外営業です。欧州、北米、中国など海外と関わる仕事ができ、将来的には海外事業所への異動の可能性も。TOEIC730~800点レベルの英語力やHSK6級相当の中国語スキル、契約書・財務諸表を読む知識などがあることが望ましいポジションもありますが、TOEIC600点以上(日常会話レベル以上)を歓迎、とする募集もあります。
会社として効率化が重要なミッションとなっているなか、購買も重要な職種です。新設されたばかりの部門もあり、組織づくりやグローバル競争で勝ち残っていくための企画に携われるやりがいあるポジションが複数あります。
管理部門では、人事・経理といった常時募集中の職種に加え、製作所や鈴鹿サーキットまで多様な不動産を管理する職種での経験者募集も。
ホンダの採用試験~面接に合格する方法は
ホンダの中途採用の採用プロセスは、以下の通りです。
書類選考→適性検査→一次選考→最終選考→条件提示面談
口コミによれば、適性検査はSPIが使われているようです。また、研究開発職に応募したところ、面接でかなり突っ込んだ技術的な質問をされたという声も。人事担当者と所属先の部署の管理職が同席し、応募した職種に関連する質問をされるケースもあるようです。
また、
「なぜホンダでなければならないのか」
「入社して何がしたいのか」
「これまでどんな仕事をしてきたか」
といったことを深く聞かれることもあるため、論理的に答えられるよう十分に準備しておく必要があるでしょう。
■35歳女性/購買・資材【結果:入社】
質問
この会社で何がしたいか?
回答
ホンダのブランド力を高めたい。…(回答の続きとアドバイスを見る)
最後に~ホンダを転職先としておすすめする理由
ホンダの英国の四輪車工場閉鎖は大きな話題となりましたが、こうした生産体制の再編も行いつつ、四輪車の電動化をはじめとしたさまざまな挑戦を続けています。
モノづくりへの熱い想いを持った理系人材を多く採用しており、闊達な企業風土のなかで新しいことに挑戦しやすいこと。そして、挑戦した人が高い評価を受けやすい点がホンダの魅力です。グローバル企業だからこそ、スケールの大きい仕事もできるでしょう。
また、安定と挑戦は両立しないものと思われがちですが、有休カットゼロなどワークライフバランスに関する取り組みも多く行われています。プライベートを大事にしながら、やりがいを持って働きたい人におすすめしたい企業です。