※本記事は、株式会社セブン&アイ・ホールディングス の有価証券報告書(第20期、自 2024年3月1日 至 2025年2月28日、2025年5月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. セブン&アイ・ホールディングスってどんな会社?
同社グループは、コンビニエンスストア事業を核に、スーパー、金融など多角的に展開する世界的リテーラーです。
■(1) 会社概要
2005年、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの3社が株式移転により同社を設立しました。同年、米国7-Eleven, Inc.を完全子会社化し、グローバル展開を加速させました。2006年にはミレニアムリテイリング(後のそごう・西武)を子会社化しましたが、2023年に全株式を譲渡しています。2021年には米国Speedwayを取得し、北米事業を拡大しました。
同社グループの連結従業員数は62,012人(単体1,097人)です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業家一族の資産管理会社である伊藤興業です。第3位も信託銀行が名を連ねており、機関投資家と創業家の双方が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 15.86% |
| 伊藤興業株式会社 | 8.16% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.37% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長執行役員社長最高経営責任者(CEO)は井阪 隆一氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井阪 隆一 | 代表取締役社長執行役員社長最高経営責任者(CEO) | 1980年セブン-イレブン・ジャパン入社。同社社長を経て、2016年より同社代表取締役社長。2023年より最高経営責任者(CEO)としてグループ経営を牽引。 |
| 伊藤 順朗 | 代表取締役副社長執行役員副社長スーパーストア事業管掌最高サステナビリティ責任者(CSuO)最高管理責任者(CAO) | 1990年セブン-イレブン・ジャパン入社。同社常務等を経て、2024年より同社代表取締役副社長、最高管理責任者(CAO)。スーパーストア事業及びサステナビリティ領域も管掌。 |
| 永松 文彦 | 取締役専務執行役員国内CVS事業統括 | 1980年セブン-イレブン・ジャパン入社。ニッセンホールディングス副社長等を経て、2019年セブン-イレブン・ジャパン社長。2023年より同社専務執行役員国内CVS事業統括。 |
| 丸山 好道 | 取締役常務執行役員最高財務責任者(CFO)財務経理本部長 | 1982年日本長期信用銀行入行。2008年同社入社。財務企画部シニアオフィサー等を経て、2023年より最高財務責任者(CFO)。7-Eleven, Inc.取締役も兼務。 |
| 脇田 珠樹 | 取締役執行役員最高戦略責任者(CSO)経営企画本部長 | 1995年ニチメン(現双日)入社。ニッセンホールディングス社長等を経て、2023年より最高戦略責任者(CSO)兼経営企画本部長。 |
社外取締役は、スティーブン・ヘイズ・デイカス(元Hana Group SAS CEO)、米村 敏朗(元警視総監)、井澤 吉幸(元三井物産代表取締役専務)、山田 メユミ(アイスタイル取締役)、八馬 史尚(J-オイルミルズ取締役)、ポール 与那嶺(元日本アイ・ビー・エム社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内コンビニエンスストア事業」、「海外コンビニエンスストア事業」、「スーパーストア事業」、「金融関連事業」、「その他の事業」を展開しています。
■(1) 国内コンビニエンスストア事業
国内において「セブン-イレブン」ブランドのコンビニエンスストアを直営およびフランチャイズ方式で展開しています。顧客層は広く一般消費者であり、日々の生活に必要な食品や日用品を提供しています。
収益は主に、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入や直営店での商品販売収入から得ています。運営は主に株式会社セブン‐イレブン・ジャパンが行っており、株式会社セブン‐イレブン・沖縄なども事業を担っています。
■(2) 海外コンビニエンスストア事業
北米を中心に、世界各国でコンビニエンスストア事業を展開しています。米国では「7-Eleven」や「Speedway」ブランドで店舗運営を行っており、ガソリン販売も手掛けています。
収益源は、商品やガソリンの販売収入、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入です。運営主体は主に米国の7-Eleven, Inc.であり、その他、中国やオーストラリアなどの現地法人が各地域での事業を展開しています。
■(3) スーパーストア事業
「イトーヨーカドー」や「ヨークベニマル」などのブランドで、食料品や衣料品、住居用品などを総合的に提供するスーパーマーケット事業を行っています。地域ごとのニーズに合わせた店舗展開を進めています。
収益は、顧客への商品販売による売上高が中心です。運営は、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社ヨークベニマル、株式会社ヨーク・ホールディングスなどが担っています。
■(4) 金融関連事業
銀行業を中心に、クレジットカードや電子マネー事業を展開しています。セブン銀行のATMネットワークを活用した決済サービスや、グループ店舗でのキャッシュレス決済手段などを提供しています。
収益は、ATM利用手数料やクレジットカードの年会費・取扱手数料などから得ています。運営は、株式会社セブン銀行、株式会社セブン・フィナンシャルサービス、株式会社セブン・カードサービスなどが行っています。
■(5) その他の事業
専門店事業や不動産事業、IT関連事業などが含まれます。「ロフト」や「赤ちゃん本舗」などの専門店や、デニーズなどのレストラン事業を展開しています。
収益は、各専門店での商品販売収入や飲食代金、不動産賃貸収入などです。運営は、株式会社ロフト、株式会社赤ちゃん本舗、株式会社セブン&アイ・フードシステムズなどの各事業会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、経常利益は2024年2月期にピークを迎えた後、当期は減少に転じています。当期純利益(親会社所有者帰属)は変動が見られますが、当期は前期から増加しました。全体として利益水準は高いものの、直近では経常減益となっており、成長軌道の中での調整局面とも見受けられます。
| 項目 | 2021年2月期 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(営業収益) | 5兆7,667億円 | 8兆7,498億円 | 11兆8,113億円 | 11兆4,718億円 | 11兆9,728億円 |
| 経常利益 | 3,574億円 | 3,586億円 | 4,759億円 | 5,071億円 | 3,746億円 |
| 利益率(当期純利益率) | 3.1% | 2.4% | 2.4% | 2.0% | 1.4% |
| 利益率(経常利益率) | 6.2% | 4.1% | 4.0% | 4.4% | 3.1% |
| 当期利益(親会社株主に帰属) | 1,793億円 | 2,108億円 | 2,810億円 | 2,246億円 | 1,731億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益および営業利益率は前期と比較して低下しており、コスト増や事業環境の変化による影響がうかがえます。売上総利益の規模は拡大していますが、利益率の維持・向上が課題となっています。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9兆8,505億円 | 10兆3,423億円 |
| 売上総利益 | 1兆7,896億円 | 1兆8,565億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.2% | 18.0% |
| 営業利益 | 5,342億円 | 4,210億円 |
| 営業利益率(営業収益ベース) | 4.7% | 3.5% |
| 営業利益率(売上高ベース) | 5.4% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が8,566億円(構成比28%)、従業員給与・賞与が7,237億円(同24%)を占めています。売上原価の内訳は記載がありません。
■(3) セグメント収益
海外コンビニエンスストア事業が売上の大部分を占め、かつ成長を牽引していますが、当期の利益は減少しました。国内コンビニエンスストア事業は安定していますが、微減傾向です。スーパーストア事業は減収減益となりました。金融関連事業とその他の事業は増益を確保しています。
| 項目 | 売上(2024年2月期) | 売上(2025年2月期) | 利益(2024年2月期) | 利益(2025年2月期) | 利益率(2024年) | 利益率(2025年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 国内コンビニエンスストア事業 | 9,194億円 | 9,022億円 | 2,505億円 | 2,336億円 | 27.2% | 25.8% |
| 海外コンビニエンスストア事業 | 8兆5,142億円 | 9兆1,684億円 | 3,016億円 | 2,162億円 | 3.5% | 2.4% |
| スーパーストア事業 | 1兆4,733億円 | 1兆4,285億円 | 136億円 | 104億円 | 0.9% | 0.7% |
| 金融関連事業 | 1,780億円 | 1,856億円 | 382億円 | 320億円 | 18.4% | 15.1% |
| その他の事業 | 3,864億円 | 2,873億円 | 27億円 | 58億円 | 0.7% | 1.8% |
| 調整額 | 6億円 | 6億円 | ▲724億円 | ▲770億円 | - | - |
| 連結(合計) | 11兆4,718億円 | 11兆9,728億円 | 5,342億円 | 4,210億円 | 4.7% | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)に該当します。
| 項目 | 2024年2月期 | 2025年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6,730億円 | 8,765億円 |
| 投資CF | -4,318億円 | -7,324億円 |
| 財務CF | -3,771億円 | -3,926億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業時より重んじる「信頼と誠実」を社是としています。お客様、取引先、株主、地域社会、そして社員に信頼される誠実な企業でありたいという理念のもと、「変化への対応と基本の徹底」を基本方針に掲げ、イノベーションの推進と新たな体験価値の提供に努めています。
■(2) 企業文化
社是である「信頼と誠実」を不変の礎とし、お客様ニーズや社会の変化に迅速に対応する柔軟性を重視しています。また、サステナビリティの取り組みを経営の根幹に据え、環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』を通じて、環境課題や社会課題の解決に向けた行動を推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2021-2025」において、2025年度の財務目標を設定しています。資本コストを上回るリターン拡大とキャッシュ・フロー創出力の向上を目指し、以下の指標を掲げています。
* EBITDA:1.1兆円以上
* ROE:11.5%以上
* ROIC(除く金融):8.0%以上
* EPS成長率(CAGR):18%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「食」を中心とした世界トップクラスのリテールグループを目指し、コンビニエンスストア事業に注力します。北米およびグローバル市場での成長加速、国内CVSの進化、スーパーストア事業の変革を進めるとともに、IT/DX戦略による基盤強化を図ります。また、株主価値最大化のため、7-Eleven, Inc.のIPOやSST事業グループの非連結化、自己株式取得などの資本構造変革を実施します。
* SST事業グループの譲渡(8,147億円規模)
* 2030年度までに総額2兆円の自己株式取得
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を成長力の源泉と位置づけ、経営戦略と一体となった人材戦略を推進しています。「人材とともに成長する企業」として、社内外から専門的な知見を持つ人材を求めるとともに、社内育成にも注力しています。また、多様性を尊重し、柔軟な働き方を支援する環境整備や、エンゲージメント向上委員会を通じた組織活性化に取り組み、社員と会社の相互成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年2月期 | 44.6歳 | 16.8年 | 8,320,143円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.6% |
| 男性育児休業取得率 | 72.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 85.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、カルチャー(職場)(70%)、エンゲージメント(会社)(50%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 中長期視点リスク(経営視点リスク)
中長期的な外部環境の変化として、政治的混乱や紛争による地政学リスク、ガソリン需要の低下、食料危機、人材不足などが挙げられます。また、人権尊重への要請の高まりや技術革新の加速、脱炭素化などの環境・社会課題への対応遅れが、将来的に同社グループの成長戦略や持続可能性に影響を与える可能性があります。
■(2) グループ経営戦略・成長戦略に関するリスク
2030年に目指す「食を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」の実現に向けた施策において、経営資源の配分ミスや「食」の強みの毀損、コンビニエンスストア事業戦略の停滞などが発生した場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ガバナンス体制の強化や社外取締役によるモニタリングを実施しています。
■(3) 北米コンビニエンスストア事業
7-Eleven, Inc.が進めるオリジナル商品強化やデジタル化、コストリーダーシップ向上などの成長戦略において、物流混乱、食品安全問題、競争激化、情報セキュリティ問題などが発生した場合、期待される成長や効率化が実現できない可能性があります。また、M&Aや環境規制変更、人材確保難などもリスク要因となります。
■(4) 情報セキュリティ・システムリスク
サイバー攻撃の高度化により、顧客データや営業秘密情報の漏洩、システム停止などの被害が発生するリスクがあります。また、システム開発の不備や障害、外部サービスの停止なども事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、専門チームによる監視や教育訓練、システムの冗長化などの対策を講じています。



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