セブン&アイ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セブン&アイ・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するセブン&アイ・ホールディングスは、国内外のコンビニエンスストア事業を主力に展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で減少した一方、営業利益は微増となり、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益を達成しました。グローバル成長に向けた事業変革を推進中です。


※本記事は、セブン&アイ・ホールディングス の有価証券報告書(第21期、自 2025年3月1日 至 2026年2月28日、2026年5月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セブン&アイ・ホールディングスってどんな会社?


国内外でコンビニエンスストア事業を軸に展開するグローバルリテール企業です。

(1) 会社概要


2005年9月にセブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの共同株式移転により持株会社として設立され、東京証券取引所市場第一部に上場しました。同年11月に米国の7-Eleven, Inc.を完全子会社化し、その後ミレニアムリテイリングやヨークベニマルを完全子会社化して事業を拡大しました。2023年にそごう・西武を譲渡、2025年にはセブン銀行を持分法適用会社とするなど事業再編を進めています。

従業員数は連結で35,967名、単体で866名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は資産管理会社等の伊藤興業、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.08%
伊藤興業 9.16%
日本カストディ銀行(信託口) 6.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性4名の計18名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)はスティーブン・ヘイズ・デイカス氏です。社外取締役は8名就任しています。

氏名 役職 主な経歴
スティーブン・ヘイズ・デイカス 代表取締役社長執行役員社長最高経営責任者(CEO) ファーストリテイリングやウォルマート・ジャパン・ホールディングス等の幹部を経て、2025年5月より現職。
伊藤 順朗 代表取締役会長執行役員会長 1990年セブン‐イレブン・ジャパン入社。同社常務執行役員やセブン&アイ・ホールディングス専務執行役員等を経て、2025年5月より現職。
木村 成樹 代表取締役副社長執行役員副社長最高管理責任者(CAO)情報管理統括責任者 1986年セブン‐イレブン・ジャパン入社。同社取締役副社長やセブン&アイ・ホールディングス人事企画本部長等を経て、2025年5月より現職。
丸山 好道 取締役常務執行役員 1982年日本長期信用銀行入行。2008年セブン&アイ・ホールディングス入社。最高財務責任者(CFO)等を経て、2022年3月より現職。
脇田 珠樹 取締役常務執行役員最高戦略責任者(CSO)経営企画本部長 ニッセンホールディングス社長等を経て、2023年4月より最高戦略責任者。2025年5月より現職。


社外取締役は、八馬史尚(元J-オイルミルズ社長)、井澤吉幸(元ゆうちょ銀行社長)、山田メユミ(アイスタイル取締役)、ポール与那嶺(元日本アイ・ビー・エム社長)、澤田貴司(元ファミリーマート社長)、秋田正紀(元松屋社長)、寺澤達也(元経済産業省経済産業審議官)、クリスティン・エドマン(元エイチ・アンド・エムヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内コンビニエンスストア事業」「海外コンビニエンスストア事業」「スーパーストア事業」「金融関連事業」および「その他の事業」を展開しています。

国内コンビニエンスストア事業


同社グループは日本国内でセブン‐イレブンの直営方式およびフランチャイズ方式によるコンビニエンスストア事業を展開しています。来店客に対して加工食品、ファスト・フード、日配食品、非食品などの多様な商品を提供しています。

収益は主に直営店での商品販売収益と、フランチャイズ加盟店から受け取る売上総利益に基づくロイヤルティです。運営は主にセブン‐イレブン・ジャパン、セブン‐イレブン・沖縄などが担当しています。

海外コンビニエンスストア事業


北米を中心に海外で直営方式およびフランチャイズ方式によるコンビニエンスストア事業を展開しています。来店客への食品や日用品の販売に加え、ガソリンスタンドを併設した店舗では燃料の販売も行っています。

収益源は直営店での商品および燃料の販売収益と、加盟店からのロイヤルティ収入です。運営は米国の7-Eleven, Inc.や7-Eleven International LLC、豪州の7-Eleven Stores Pty Ltdなどが担当しています。

スーパーストア事業


食料品や日用品などの生活必需品を総合的に提供する総合スーパーおよび食品スーパー事業を展開しています。大型店舗や地域密着型店舗を通じて、顧客の多様なニーズに応える商品やサービスを提供しています。

収益は主に自社店舗での商品販売収益や、テナントから受け取る売上高に基づく賃料等のサービス提供収益から構成されます。本事業は持分法適用会社のBCJ-95などを通じて運営されていましたが、事業再編により連結範囲から除外されました。

金融関連事業


銀行業、クレジットカード事業、リース事業など、リテール事業と連携した金融サービスを提供しています。全国の店舗網を活用したATMサービスや決済サービスを通じて顧客の利便性を高めています。

収益源は、ATMの利用手数料やクレジットカードの決済手数料、リース取引に伴う手数料収入などです。セブン・フィナンシャルサービスなどが運営を担っていますが、セブン銀行などは事業再編により連結範囲から除外されました。

その他の事業


報告セグメントに含まれない専門店事業や不動産事業、IT関連事業などを展開しています。店舗運営の効率化やデジタル化を支援するサービス、エンターテインメント関連サービスなどを提供しています。

収益はそれぞれの事業モデルに基づくサービス提供対価やシステム受託料などから構成されます。SpireXやテルベなどの子会社に加え、タワーレコードやぴあなどの関連会社が運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は2024年2月期まで増加傾向にありましたが、直近2期間は3,700億円台で推移しています。当期利益は2023年2月期にピークを迎え、その後は事業再編などの影響により変動が見られますが、直近の2026年2月期には回復傾向を示しています。

項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期
経常利益 3,586億円 4,759億円 5,071億円 3,746億円 3,774億円
当期利益(親会社所有者帰属) 1,071億円 1,798億円 429億円 1,096億円 1,194億円


直近2期間の利益水準を比較すると、売上総利益は前期の18,565億円から当期は15,935億円へと減少しています。一方で、営業利益は前期の4,210億円から当期は4,230億円へと微増しており、利益率の改善やコストコントロールの成果がうかがえます。

項目 2025年2月期 2026年2月期
売上総利益 18,565億円 15,935億円
営業利益 4,210億円 4,230億円


販売費及び一般管理費のうち、主要な費目としてEDP費用が236億円、減価償却費が141億円、支払手数料が114億円を占めています。

セグメント別の売上推移を見ると、国内コンビニエンスストア事業は堅調に推移し増収となりました。一方、海外コンビニエンスストア事業は為替や消費環境の変化により減収となりました。スーパーストア事業や金融関連事業、その他の事業については、グループ構造の最適化に向けた事業再編(子会社の連結除外など)の影響で大幅な減収となっています。

区分 売上(2025年2月期) 売上(2026年2月期)
国内コンビニエンスストア事業 9,022億円 9,122億円
海外コンビニエンスストア事業 91,684億円 85,562億円
スーパーストア事業 14,285億円 6,876億円
金融関連事業 1,856億円 1,218億円
その他の事業 2,873億円 1,512億円
調整額 6億円 13億円
連結(合計) 119,728億円 104,303億円


キャッシュ・フローの推移を見ると、営業活動で得た資金を元手に、投資活動や借入金の返済などを手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況となっています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.6%で市場平均を上回っています。

項目 2025年2月期 2026年2月期
営業CF 8,765億円 6,667億円
投資CF -7,324億円 -4,773億円
財務CF -3,926億円 -11,099億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「信頼される、誠実な企業でありたい」という社是を経営理念として掲げています。これは顧客、取引先、株主、地域社会、そして従業員を含むすべてのステークホルダーに対する基本姿勢であり、グループ経営の根幹として位置づけられています。持続可能な社会の実現と企業価値の向上を両立させることを目指しています。

(2) 企業文化


社是に掲げる「信頼と誠実」の精神に加え、創業者たちが確立してきた「変化への対応」を普遍的な企業行動指針としています。謙虚に学び、積極的に変化を起こす姿勢を持った企業文化の育成を重視し、従業員一人ひとりが自ら挑戦し、主体性を発揮できる組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に目指すグループ像として、「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」を掲げています。また、環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」にて、店舗運営に伴うCO2排出量を2030年に50%削減、2050年に実質ゼロにする定量目標を設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「7-Elevenの変革」と題したグローバル戦略を策定し、コンビニエンスストア事業に特化した体制での成長を推進しています。国内では「フレッシュフードの差別化」や「店舗ネットワークの強化」により、2030年度までに約1,000店舗の純増を目指しています。海外では北米でのデリバリー拡充やコスト適正化を進めつつ、欧州など新規市場への進出を加速し、グローバルでの一体的な経営と企業価値向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グローバル成長を支えるため、「挑戦・革新し続けるカルチャーの醸成」「働きがい・働きやすさの向上」「戦略実現のための人財育成・採用」を人材政策の柱としています。国境を越えた人材交流や研修プログラムを通じたグローバル人材の育成を進めるとともに、多様なバックグラウンドを持つ外部人材の採用を積極的に行い、変化の激しい市場での競争力強化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 45.1歳 17.5年 8,550,415円


※平均年間給与は、賞与を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.7%
男性育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 78.6%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 77.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 80.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、カルチャースコア(76.0%)、エンゲージメントスコア(57.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 政治・安全保障に関するリスク


展開国における政権交代や政策転換、地域紛争等により、法規制の変更やサプライチェーンの寸断が発生する可能性があります。これにより、営業許可や税制、店舗・物流網の安定稼働に支障が生じ、事業継続や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) M&A・事業再編に関するリスク


事業拡大や成長戦略の実現に向けてM&A等の戦略的投資を行っています。しかし、買収後の統合プロセスが計画通りに進まない場合や、想定したシナジー効果が発現しない場合には、のれんの減損損失が発生し、企業価値や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティ・システムリスク


顧客の個人情報や営業秘密を取り扱う中で、高度化するサイバー攻撃やシステム障害のリスクに直面しています。重要情報の漏洩やデータの破壊、サービスの中断が発生した場合、顧客や社会からの信頼失墜に加え、多額の対応コストが生じる可能性があります。

(4) 人的資本の確保・育成に関するリスク


労働環境の変化や人口動態の推移により、店舗運営や物流、商品製造を担う人材の確保が困難になるリスクがあります。人手不足による賃金インフレーションや労働環境の悪化が生じた場合、サービスの質低下や事業成長の制約につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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