本田技研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

本田技研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

本田技研工業は東京証券取引所プライム市場およびニューヨーク証券取引所に上場し、二輪、四輪、金融サービス、パワープロダクツ事業を展開しています。2026年3月期の売上収益は21兆7,966億円と増収の一方、四輪事業におけるEV関連損失の影響等により、営業損失4,143億円の赤字となっています。


※本記事は、本田技研工業株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 本田技研工業ってどんな会社?


二輪・四輪・パワープロダクツの開発・製造・販売と金融サービスをグローバルに展開するモビリティカンパニーです。

(1) 会社概要


1946年に本田技術研究所を開設し、1948年に本田技研工業を設立しました。1949年に二輪車生産を開始し、1953年にはパワープロダクツ、1963年には四輪車の生産を開始しました。1957年に東証へ上場し、1977年には米国預託証券(ADR)をニューヨーク証券取引所に上場して海外展開を拡大しています。

従業員数は連結195,109名、単体32,547名です。大株主の筆頭は資産管理等を行う信託口の日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行、第3位は米国預託証券の預託機関の株式名義人であるモックスレイ・アンド・カンパニー・エルエルシーです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.50%
日本カストディ銀行(信託口) 7.08%
モックスレイ・アンド・カンパニー・エルエルシー 5.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性23名、女性3名の計26名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表執行役社長 最高経営責任者は三部敏宏氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三部敏宏 取締役 代表執行役社長最高経営責任者 1987年同社入社。本田技術研究所代表取締役社長等を経て、2021年4月より現職。
貝原典也 取締役 代表執行役副社長 1984年同社入社。購買本部長、北米地域本部長等を歴任し、2024年4月より現職。
藤村英司 取締役 執行役専務 1993年同社入社。事業管理本部長、最高財務責任者等を経て、2026年4月より現職。
井上勝史 取締役 1986年同社入社。欧州地域本部長、中国本部長等を経て、2026年4月より現職。
鈴木麻子 取締役 常勤監査委員 1987年同社入社。人事・コーポレートガバナンス本部長等を経て、2021年6月より現職。
森澤治郎 取締役 常勤監査委員 1989年同社入社。事業管理本部長や米国子会社社長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、酒井邦彦(元高松高等検察庁検事長)、國分文也(元丸紅社長・指名委員長)、小川陽一郎(元デロイトトーマツグループCEO・監査委員長)、東和浩(元りそな銀行社長・報酬委員長)、永田亮子(元日本たばこ産業執行役員)、我妻三佳(元日本アイ・ビー・エム常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス事業」および「パワープロダクツ事業及びその他の事業」を展開しています。

二輪事業


二輪車、ATV、Side-by-Sideおよび関連部品の研究開発、生産、販売を展開しています。世界中の顧客に対して多様なモビリティを提供し、市場のニーズに応える商品を展開しています。

製品の販売収益を主な収益源としています。事業運営は同社のほか、本田技術研究所、アメリカンホンダモーターカンパニー、ホンダモーターヨーロッパなどの国内外の連結子会社および持分法適用会社が担っています。

四輪事業


四輪車および関連部品の研究開発、製造、販売を行っています。ICE(内燃機関)車に加え、ハイブリッド車やEV(電気自動車)などの多様なラインアップを提供し、環境対応や安全技術の向上に努めています。

車両および部品の販売を主な収益源としています。同社をはじめ、本田技術研究所、ホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカ、東風本田汽車などのグループ会社が事業を運営しています。

金融サービス事業


同社の製品を購入またはリースする顧客および販売店に対する金融サービスを提供しています。自動車ローンやオペレーティング・リースなどを通じて、製品販売のサポートを行っています。

顧客からの利息収益やリース料を主な収益源としています。運営はホンダファイナンス、アメリカンホンダファイナンス・コーポレーション、ホンダファイナンスヨーロッパなどの金融子会社が担っています。

パワープロダクツ事業及びその他の事業


発電機、除雪機、芝刈機などのパワープロダクツや関連部品、航空機および航空機エンジンの研究開発、製造、販売を行っています。日常生活からビジネスまで幅広い場面で役立つ製品を提供しています。

これら製品および部品の販売収益を主な収益源としています。事業の運営は同社や本田技術研究所、アメリカンホンダモーターカンパニーをはじめとする連結子会社や持分法適用会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5年間で継続して拡大し、2026年3月期には21兆7,966億円に達しています。一方、税引前利益は2024年3月期をピークに減少傾向にあり、2026年3月期は四輪事業におけるEV関連損失や関税影響などにより大幅な赤字に転落しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 145,527億円 169,077億円 204,288億円 216,888億円 217,966億円
税引前利益 10,702億円 8,796億円 16,424億円 13,176億円 -4,033億円
利益率(%) 7.4% 5.2% 8.0% 6.1% -1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 7,071億円 6,514億円 11,072億円 8,358億円 -4,239億円

(2) 損益計算書


売上収益は微増となっていますが、売上総利益は減少しており、売上総利益率も低下しています。さらに、研究開発費やその他の営業費用が大幅に増加したことにより、営業利益は前期の黒字から当期は大幅な赤字へと転落し、収益性が悪化しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 216,888億円 217,966億円
売上総利益 16,565億円 14,881億円
売上総利益率(%) 7.6% 6.8%
営業利益 12,135億円 -4,143億円
営業利益率(%) 5.6% -1.9%

(3) セグメント収益


売上の柱である四輪事業は売上が減少し、EV関連損失の影響で巨額の営業赤字となっています。一方、二輪事業は販売増等により増収増益を達成し、高い利益率を維持しています。金融サービス事業は増収ながらも経費増により減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
二輪事業 36,266億円 40,188億円 6,634億円 7,319億円 18.2%
四輪事業 144,679億円 141,669億円 2,439億円 -14,111億円 -10.0%
金融サービス事業 35,122億円 35,327億円 3,156億円 2,755億円 7.8%
パワープロダクツ事業及びその他の事業 4,146億円 4,204億円 -94億円 -107億円 -2.5%
調整額 -3,325億円 -3,423億円 - - -
連結(合計) 216,888億円 217,966億円 12,135億円 -4,143億円 -1.9%


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。また、「地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、すべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


基本理念である「人間尊重」を重視し、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで共に喜びを分かち合う文化が根付いています。2023年にはグローバルブランドスローガン「The Power of Dreams」を再定義し、「夢」を原動力に独創的な技術とアイデアを発揮し続ける組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な成長に向けて、2029年3月期には過去最高となる営業利益の達成を目指し、2031年3月期にはROIC(投下資本利益率)10%の実現を目標としています。また、株主還元としてDOE(調整後親会社所有者帰属持分配当率)3%を目安に安定的・継続的な配当を実施する方針を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


環境負荷ゼロと交通事故ゼロの実現に向けて戦略的な資源配分を行います。2029年3月期までの3年間で、ソフトウェアに1兆円、ICE・ハイブリッド車に4.4兆円、EVに0.8兆円の合計6.2兆円を投入します。米国でのEV市場の拡大スピード鈍化を踏まえ、需要の高いハイブリッド車を強化し、柔軟かつ機動的に商品展開を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自由な移動の喜びをサステナブルに創造し、夢に向かって動き出そうとする人のパワーになる」の実現に向けた人的資本経営を推進しています。「従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合」および「将来の競争力を支える人と組織基盤の強化」を人材マテリアリティに掲げ、一人ひとりが挑戦できる組織風土の醸成と先行投資に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.9歳 21.0年 9,326,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 116.8%
男女賃金差異(全労働者) 72.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 96.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(肯定回答率66%)、インクルージョンスコア(3.7pt)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 地政学的リスク


各国の通商政策の変化、関税、輸出入規制などの経済安全保障リスクや、国家間・地域紛争の長期化によってサプライチェーンの寸断や調達価格の高騰が生じる可能性があります。また、人権に関する法規に対応できない場合、ブランドイメージ低下や対応費用の増加により、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 市場環境変化リスク


消費者の価値観の変化や競争激化に加え、北米や欧州における環境政策の転換、米国政府による追加関税導入などにより、市場環境が急激に変化するリスクがあります。これらの需要変化に対して競争力をもって適切に対応できない場合、商品投入計画の見直しに伴う損失が発生し、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 購買・調達リスク


多数の外部取引先から原材料や部品を調達していますが、一部は特定の取引先に依存しています。地政学的な要因や需給逼迫により、原材料や部品の継続的な供給を受けられなかった場合や価格が高騰した場合、生産活動の停滞や遅延を招き、同社の競争力の損失や業績悪化につながる可能性があります。

(4) 情報セキュリティリスク


自動運転やコネクテッド技術などソフトウェア領域のニーズが高まる中、サイバー攻撃の手法も高度化しています。サイバー攻撃やインフラ障害により、重要な業務やサービスの停止、機密情報・個人情報の漏洩、データの改ざん等が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償、生産停滞を招き、業績に悪影響を与える恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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本田技研工業は二輪・四輪を中核とする輸送機器メーカーです。直近の売上収益は約21.7兆円、営業利益は約1.2兆円です。2050年のカーボンニュートラルに向け、電動化やソフトウェア開発を最重要課題とし、2040年までにEV・FCEV販売比率100%を目指しています。グローバルで人材確保とリスキリングを強化中。



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