※本記事は、本田技研工業株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 本田技研工業ってどんな会社?
世界的な輸送用機器メーカーであり、二輪車で世界首位、四輪車やパワープロダクツ、航空機事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1948年に本田技研工業として設立され、翌年には二輪車の生産を開始しました。1957年に東京証券取引所へ上場し、1963年からは四輪車の生産も開始して事業を拡大しました。1977年にはニューヨーク証券取引所に米国預託証券(ADR)を上場し、グローバル企業としての地位を確立しています。
同社グループの従業員数は連結で194,173名、単体で32,088名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位はADRの預託機関に関連する名義人となっており、国内外の機関投資家が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.77% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.49% |
| モックスレイ・アンド・カンパニー・エルエルシー(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行) | 5.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性22名、女性3名の計25名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表執行役社長は三部 敏宏氏です。取締役会における社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三部 敏宏 | 取締役取締役会議長指名委員 代表執行役社長最高経営責任者 |
1987年入社。四輪事業本部生産統括部等を経て、本田技術研究所社長、同社専務取締役ものづくり担当などを歴任。2021年4月より現職。 |
| 貝原 典也 | 取締役 代表執行役副社長コンプライアンス&プライバシーオフィサー企業風土改革担当 |
1984年入社。カスタマーサービス本部長、北米地域本部長、米国現地法人社長などを歴任。2024年4月より現職。 |
| 藤村 英司 | 取締役報酬委員 執行役常務最高財務責任者コーポレート管理本部長 |
1993年入社。事業管理本部長、経理財務統括部長などを経て、2023年4月最高財務責任者に就任。2024年6月より現職。 |
| 鈴木 麻子 | 取締役常勤監査委員 | 1987年入社。東風本田汽車有限公司総経理、人事・コーポレートガバナンス本部長などを経て、2021年6月より現職。 |
| 森澤 治郎 | 取締役常勤監査委員 | 1989年入社。事業管理本部長、アメリカンホンダファイナンス・コーポレーション社長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、酒井邦彦(元広島高等検察庁検事長)、國分文也(元丸紅社長・指名委員長)、小川陽一郎(元デロイトトーマツグループCEO・監査委員長)、東和浩(元りそなホールディングス社長・報酬委員長)、永田亮子(元日本たばこ産業執行役員)、我妻三佳(元日本アイ・ビー・エム常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス事業」「パワープロダクツ事業及びその他の事業」を展開しています。
■(1) 二輪事業
二輪車、ATV(全地形対応車)、Side-by-Side(多目的四輪車)および関連部品の開発・生産・販売を行っています。コミューターからFUNモデルまで幅広いラインアップを揃え、新興国から先進国まで世界中の顧客に製品を提供しています。
収益は、製品の販売対価として個人や法人顧客から受け取ります。運営は、国内では本田技研工業が、海外ではアメリカンホンダモーターカンパニーやホンダモーターサイクルアンドスクーターインディアなどの現地法人が主体となって行っています。
■(2) 四輪事業
四輪車および関連部品の開発・生産・販売を行っています。主要製品には「アコード」「シビック」「CR-V」「ヴェゼル」「N-BOX」などがあり、グローバルで多様なニーズに対応した車種を展開しています。
収益は、車両および部品の販売対価として得ています。運営は、本田技研工業のほか、製造開発を行うホンダディベロップメントアンドマニュファクチュアリングオブアメリカや、販売を担う各国の連結子会社が行っています。
■(3) 金融サービス事業
同社製品の販売をサポートするための金融サービスを提供しています。具体的には、製品を購入する顧客へのローンやリース、および販売店への在庫資金の融資などが含まれます。
収益は、顧客および販売店からの金利収入やリース料として受け取ります。運営は、国内では株式会社ホンダファイナンス、海外ではアメリカンホンダファイナンス・コーポレーションなどの金融子会社が行っています。
■(4) パワープロダクツ事業及びその他の事業
汎用エンジン、発電機、除雪機、船外機などのパワープロダクツ製品および関連部品の製造・販売を行っています。また、「HondaJet」などの航空機および航空機エンジンの事業もこのセグメントに含まれます。
収益は、製品販売による対価として得ています。運営は本田技研工業および各国の連結子会社が行い、航空機事業についてはホンダエアクラフトカンパニーなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は過去5期間において増加傾向を維持しており、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では変動が見られ、2024年3月期に高い利益水準を記録したものの、直近の2025年3月期は減益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 131,705億円 | 145,527億円 | 169,077億円 | 204,288億円 | 216,888億円 |
| 税引前利益 | 9,141億円 | 10,702億円 | 8,796億円 | 16,424億円 | 13,176億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 7.4% | 5.2% | 8.0% | 6.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6,574億円 | 7,071億円 | 6,514億円 | 11,072億円 | 8,358億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費、研究開発費などの営業費用が増加したため、営業利益および税引前利益は減少しました。売上総利益率は低下しており、コスト負担の増加が利益を圧迫した形となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 204,288億円 | 216,888億円 |
| 売上総利益 | 15,456億円 | 16,565億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.6% | 7.6% |
| 営業利益 | 13,820億円 | 12,135億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 5.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が11,208億円(構成比48%)、製品保証引当金繰入額が1,184億円(同5%)を占めています。売上原価には、製品製造に関わる材料費や労務費などが含まれます。
■(3) セグメント収益
二輪事業は販売台数の増加により増収増益となりました。四輪事業は為替換算の影響で増収となったものの、品質関連費用や研究開発費の増加により大幅な減益となりました。金融サービス事業は増収増益で堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 二輪事業 | 32,202億円 | 36,266億円 | 5,562億円 | 6,634億円 | 18.3% |
| 四輪事業 | 137,915億円 | 144,679億円 | 5,606億円 | 2,439億円 | 1.7% |
| 金融サービス事業 | 32,518億円 | 35,122億円 | 2,740億円 | 3,156億円 | 9.0% |
| パワープロダクツ事業及びその他の事業 | 4,223億円 | 4,146億円 | -89億円 | -94億円 | -2.3% |
| 調整額 | -2,570億円 | -3,325億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 204,288億円 | 216,888億円 | 13,820億円 | 12,135億円 | 5.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で得た資金と外部調達資金を組み合わせて、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7,473億円 | 2,922億円 |
| 投資CF | -8,673億円 | -9,420億円 |
| 財務CF | 9,186億円 | 2,805億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは基本理念として「人間尊重」と「三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)」を掲げています。「人間尊重」とは自立した個性を尊重し合い、共に喜びを分かち合う理念であり、「三つの喜び」は顧客の喜びを源として関係者全員で喜びを実現する信念です。この理念に基づき、質の高い商品を適正な価格で世界中に供給することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「The Power of Dreams」をグローバルブランドスローガンとし、夢を原動力に独創的な技術とアイデアで挑戦を続ける文化を持っています。2023年にはこのスローガンを再定義し、「時間や空間といった制約からの解放(Transcend)」と「人の能力と可能性の拡張(Augment)」という価値を提供することで、人や社会を前進させる存在となることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2031年3月期に向けた経営目標として、ROIC(投下資本利益率)10%の達成を掲げています。また、環境目標として2040年にグローバルでのEV・FCEV販売比率を100%にすることを目指しており、2050年には全製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現と、交通事故死者ゼロの達成を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「環境負荷ゼロ社会」と「交通事故ゼロ社会」の実現に向け、電動化と知能化に注力しています。四輪事業ではEVブランドと事業基盤の構築を進めつつ、ハイブリッド車の強化も図ります。二輪事業では電動化を加速し、2030年までにグローバルで多様な電動モデルを投入します。また、ソフトウェア定義型モビリティや新たなサービス領域への展開を通じて、付加価値の向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「一人ひとりの夢を原動力に人と社会を前進させる」ことを目指し、事業戦略から逆算した人材ポートフォリオの形成を進めています。中長期的には従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合を図り、短中期的には注力領域における人材の量的・質的充足を目指しています。また、挑戦や目標に対する支援意欲を高めることで、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 21.3年 | 8,955,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 96.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、先進国 四輪車「Honda SENSING 360」先進安全装備適用率(100%)、注力領域の人材充足率(97%)、従業員エンゲージメントスコア(肯定回答率46%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学的リスク
世界各国での事業展開において、関税や輸出入規制、戦争・テロ、政治体制の変化などのリスクに直面しています。特に経済安全保障や国家間紛争、人権規制の強化などがサプライチェーンの寸断や事業活動の停止を引き起こす可能性があり、業績に悪影響を与える恐れがあります。
■(2) 購買・調達リスク
原材料や部品の一部を特定の取引先に依存しており、供給不足や価格高騰、取引先の喪失などが生産活動の遅延や停止を招く可能性があります。特に電動化に伴う重要鉱物の需要急増や特定の国による輸出規制などが懸念されており、これらが競争力の低下や業績悪化につながる可能性があります。
■(3) 情報セキュリティリスク
自動運転やコネクテッド技術の進化に伴い、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まっています。システム障害やデータの破壊・改ざん、個人情報の漏洩などが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償責任、生産活動の停止などを招き、事業や業績に深刻な影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。