「会社も若手の流出には気付いている」
ホンダの2019年3月期決算は、過去最高の売上高を計上しながら前期比で減益という不本意な内容になりました。
その要因は四輪事業の収益性の低さ。グローバルでの地域ニーズ対応にコストが掛かりすぎ、四輪事業単体で赤字が出る体質にまで落ち込んでいます。
自動車業界に自動運転や電動化などの大波が押し寄せる中、ホンダの存在感は弱くなっていると言わざるを得ません。法人営業を担当する20代の男性社員は「若手の流出は本当に激しい」と明かしています。
憧れの先輩的なロールモデルがいない。ここで一生まったり暮らすなら良いが、この会社もいつまで続くかわからない。週に1回は「お世話になりました」メールがくる。会社も若手の流出には気付いているが、何の対策もない。正直、ピークは過ぎた会社(2018.9.15)
ホンダといえばトヨタや日産に比べて、かつては先進的で若々しいイメージがありました。いまは変わってしまったのでしょうか。法務部門で働いていた20代女性は、こう書き残して退職しています。
大企業的な雰囲気がある。(社内)政治的なことも多くあり、うまくやらないと難しいことも多くある。平均年齢も高いがゆえに、若者にとっては辛いと感じる(2018.7.11)
従業員の平均年齢は2012年3月末で43.6歳でしたが、2019年3月期には45.6歳に上昇。若手・中堅の人材採用と比べて、中高年社員の退職が進んでいないのかもしれません。
年功序列で「働かないおじさん」がいる職場も
ホンダの創業者、本田宗一郎は「ワイガヤ」と言われる自由闊達な議論を好んだ技術者でしたが、1991年に没。その雰囲気はいまも残っているでしょうか。前出の20代女性は自社の給与制度についてこう説明しています。
(報酬は)大企業的な給与テーブルがあり、それに基づき年功序列で決まる(2018.7.11)
給与が高くても、年齢が上の人たちが仕事をバリバリしてくれれば納得できます。しかし逆の場合には強い不満が高まるでしょう。前出の20代男性社員の周囲にいる中高年社員は、後者のタイプでした。
極めて古い日本企業。Yahoo! JAPANを眺めてタバコを吸って帰るおじさんたちがまだ沢山いる。一方で若手は仕事が多く、その大半が雑務(2018.9.15)
年功序列という評が目につく一方で「中途採用の方が早く出世している」という指摘もあります。生え抜きの出世があまりにスローということでしょうか。
中途で入った方が単純に優秀なのかもしれないが、私の周りは役職についている人はほとんどが中途採用である。(新卒入社よりも)管理職になりやすいのかもしれない(2019.4.12)
生え抜き社員は年功序列で、年齢が上がれば給与は上がるものの働かなくなり、中途入社組がその穴を埋めている――。そんな職場が社内にあったりするのかもしれません。
研究所「ホンダスピリットはイメージだけ」
なお、ホンダは研究開発(R&D)を本田技術研究所という別会社で行っています。これは自由度が高くクリエイティブな商品開発を行える環境を作るべきという創業者の思いによるものです。
しかし、従来の延長線上にはない開発が課題となる場合には、過去のノウハウが蓄積された研究所を独立させるデメリットもあるのかもしれません。
好調の二輪事業では2019年2月、研究所の二輪R&Dセンターが本体の二輪事業本部に統合されており、四輪事業にも同じ流れが来る可能性があります。本田技術研究所で働いていた40代男性社員は退職を決め、その背景を次のように書き残しています。
個々のスキルや経験を軽視した配置転換が散見される。技術がまったく見につかないため、技術者として成長できない。最近、周りの人はどんどん辞めている。また、残っている人は個性的で、話や方針が合わないことが多くある。仕事にチャレンジした社員に対しては、非常によくない雰囲気である(2019.5.4)
この40代男性社員によると、研究所でも本体と同じように中高年社員が多くなっているようです。
CMで宣伝するようなホンダスピリットはイメージに過ぎず、中身としては社内に存在しない。昭和の体育会系の社風で50代前後の社員が多いため、しょうがないと感じる部分はある(2019.5.4)
なかなか辛辣ですが、その一方で「現場での考えが重要視されているボトムアップスタイルであり、挑戦的なことが多くなされている」(20代男性SE、2018.7.14)という口コミもあることを、念のため書き添えておきます。