九州旅客鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州旅客鉄道 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

九州旅客鉄道は、東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、九州全域を中心に運輸サービス、不動産・ホテル、流通・外食、建設、ビジネスサービスを展開する企業です。直近の業績は、鉄道旅客運輸収入や不動産・ホテルの収入増などにより増収となり、営業利益や経常利益も大幅な増益を達成しています。


※本記事は、九州旅客鉄道株式会社の有価証券報告書(第39期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 九州旅客鉄道ってどんな会社?


九州旅客鉄道は、九州全域で鉄道などの運輸サービスを中心に、不動産や流通などの事業を展開しています。

(1) 会社概要


1987年4月、日本国有鉄道改革法により設立されました。2004年3月に九州新幹線(新八代~鹿児島中央間)、2011年3月に全線が開業しました。2016年10月には東京証券取引所および福岡証券取引所に上場し、完全民営化を達成。2022年9月に西九州新幹線が開業し、現在に至ります。

現在の従業員数は連結で15,365名、単体で6,483名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位はJP MORGAN CHASE BANK 385642、第3位も資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.80%
JP MORGAN CHASE BANK 385642 4.18%
日本カストディ銀行(信託口) 3.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性5名の計15名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員最高経営責任者監査部担当は古宮洋二氏が務めています。社外取締役比率は53.3%です。

氏名 役職 主な経歴
古宮 洋二 代表取締役社長執行役員最高経営責任者監査部担当 1987年に同社入社。鉄道事業本部各部長や総務部長を経て、取締役常務執行役員鉄道事業本部長などを歴任。2022年4月より現職。
森 亨弘 代表取締役専務執行役員事業開発本部長 1991年に同社入社。ドラッグイレブンホールディングス代表取締役社長などを経て、2019年6月に取締役常務執行役員に就任。2025年6月より現職。
松下 琢磨 取締役常務執行役員最高財務責任者総合企画本部長フロンティア創造部長広報部、財務部担当 1991年に同社入社。JR九州ドラッグイレブン代表取締役社長などを経て、2022年6月に取締役常務執行役員に就任。2026年4月より現職。
赤木 由美 取締役常務執行役員総合企画本部副本部長経営企画部長デジタル変革推進部担当 1991年に同社入社。ジェイアール九州ファーストフーズ代表取締役社長や人事部長などを経て、2023年6月に取締役常務執行役員に就任。2025年6月より現職。
貞苅 路也 取締役常務執行役員鉄道事業本部長北部九州地域本社長 1992年に同社入社。鉄道事業本部電気部長や大分支社長を経て、2021年6月に上席執行役員鉄道事業本部副本部長に就任。2025年6月より現職。
青柳 俊彦 取締役会長取締役会議長 1987年に同社入社。鉄道事業本部長などを経て2014年6月に代表取締役社長に就任。2022年4月に代表取締役会長執行役員となり、2025年6月より現職。
東 幸次 取締役監査等委員(常勤) 1990年に同社入社。トランドール代表取締役社長や財務部長、熊本支社長などを経て、2022年4月に常務執行役員総務部長に就任。2022年6月より現職。


社外取締役は、山本ひとみ(元全日本空輸執行役員客室センター長)、田中卓(元東洋テック代表取締役会長)、小笠原浩(安川電機代表取締役会長兼社長)、藤林清隆(元三井不動産レジデンシャル代表取締役社長)、小澤浩子(元スター・チャンネル代表取締役副社長)、小田部耕治(元警察庁生活安全局長)、藤田ひろみ(税理士法人さくら優和パートナーズ代表社員税理士)、大神朋子(國武綜合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「運輸サービス」「不動産・ホテル」「流通・外食」「建設」「ビジネスサービス」事業を展開しています。

運輸サービス


主に九州の7県において新幹線2路線、幹線8路線、地方交通線13路線の合計23路線を運営する鉄道事業や、乗合・高速・貸切バス事業を行っています。九州全体のブランド価値向上や誘客促進の役割も果たしています。

収益源は、顧客からの乗車券購入や定期券購入による旅客運輸収入などです。運営は、親会社である同社のほか、JR九州バスなどが担当しています。

不動産・ホテル


主に九州の主要都市において駅ビル等の商業施設やオフィス、マンションの賃貸・分譲を行う不動産事業と、九州・東京・京都・沖縄および海外でのホテル運営を行っています。

収益源は、テナントからの賃料収入、マンションの販売代金、顧客からの宿泊代金などです。運営は同社のほか、JR博多シティ、JR九州ホテルズアンドリゾーツなどが担当しています。

流通・外食


土産専門店「銘品蔵」やコンビニエンスストアなどの小売業、およびファストフード店などの飲食業を展開しています。駅構内等を中心とした店舗運営により、利用者の利便性を高めています。

収益源は、店舗における顧客からの商品購入代金や飲食代金などです。運営は、小売業をJR九州リテールが、飲食業をJR九州ファーストフーズなどが担当しています。

建設


鉄道の専門技術を活かした土木・軌道・建築工事やメンテナンスを主体としつつ、官公庁工事や民間工事も手掛けています。鉄道の安全・安定輸送の確保に貢献しています。

収益源は、顧客からの請負工事契約に基づく工事代金収入などです。運営は、九鉄工業などの関係会社が担当しています。

ビジネスサービス


建設機械やディーゼルエンジン、発電機等の販売・レンタル・メンテナンス事業のほか、清掃整備業、広告業、システム関連事業など幅広いサービスを提供しています。

収益源は、顧客からの建設機械の販売・レンタル代金や各種サービス提供に対する対価などです。運営は、キャタピラー九州をはじめとする多数のグループ会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は毎期着実に増加しており、収益基盤の回復と成長が伺えます。一方で親会社所有者帰属の当期利益は、直近の期においてわずかに減少しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 - - - - -
経常利益 92億円 357億円 489億円 596億円 740億円
利益率(%) - - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) 90億円 254億円 329億円 311億円 288億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上に関するデータは提供されていませんが、営業利益は前期から大きく増加しており、本業における収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - -
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 590億円 740億円
営業利益率(%) - -

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、全セグメントにおいて前期から増収となっています。特に主力である運輸サービスや不動産・ホテルが売上の大半を占めており、グループ全体の収益成長を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
運輸サービス 1,643億円 1,857億円
不動産・ホテル 1,384億円 1,515億円
流通・外食 667億円 714億円
建設 431億円 481億円
ビジネスサービス 419億円 437億円
連結(合計) 4,544億円 5,004億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスの「積極型」です。これは営業で利益を出し、借入などの資金調達によって将来の成長に向けた積極的な投資を行っている状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 967億円 729億円
投資CF -1,074億円 -871億円
財務CF -69億円 125億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.4%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「わたしたちの夢」「使命」「おこない」を掲げています。夢は「九州の元気を、世界へ」とし、魅力あふれるまちづくりを通じて九州ににぎわいをもたらすことを目指しています。また、使命として「安全を最優先し、お客さま視点で考え、安心で快適な毎日と“わくわく”するときをつくる。」ことを定めています。

(2) 企業文化


行動様式としての「おこない」に「誠実」「共創」「挑戦」を定めています。常に誠実さを貫き誇れる仕事をすること、人や地域、多様な仲間と未来につながる価値を共創すること、そして柔軟な発想を持ち成長のための挑戦を続けることを重視し、社会に貢献する持続的な企業グループとしての文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


「JR九州グループ中期経営計画2025-2027」において、長期的な目線で持続的な成長を遂げるための戦略を実行しています。本計画では、2050年のカーボンニュートラルを見据え、2035年度の野心的な目標として2023年度比でグループ全体のGHG排出量60%削減を掲げるなど、数値目標を定めて環境課題の解決を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「サステナブルなモビリティサービスの実現」「事業間連携の強化によるまちづくり」「未来への種まき」の3つの重点戦略を推進しています。運賃改定を契機とした安全・サービス向上や、MaaSアプリなどを活用したデジタルサービスの拡充、さらに駅ビル等の開発による沿線価値向上に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「価値創造の源泉である人づくり」をマテリアリティの一つに掲げ、社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる環境整備を進めています。待遇や働きやすさを改善するための投資を拡充するとともに、キャリアデザイン研修やリーダー研修などを通じて、人間力と実務力を兼ね備えた人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.5歳 13.4年 6,399,403円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 6.4%
男性労働者の育児休業等取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 79.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規労働者) 72.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規労働者) 84.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリアデザイン研修対象者(約5,000名)、リーダー研修受講者数(約700名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 鉄道事業における安全確保


鉄道事業において重大な事故が発生した場合、損害賠償の発生や修繕費用の増加、運休による収入減少が生じる可能性があります。また、ネットワーク全体への影響から社会的信頼やブランド価値が毀損するリスクがあり、同社は安全管理体制の維持・向上に努めています。

(2) 少子高齢化等の人口動向


主力事業エリアである九州は人口減少や少子高齢化が進行しており、通勤・通学などの定期収入やビジネス・旅行等の利用が減少するリスクがあります。また、駅ビルやマンション等の利用者減少にもつながるため、定住人口の増加やインバウンド需要の取り込みを図っています。

(3) 情報技術(IT)システム障害とサイバー攻撃


鉄道運行や予約システムなど多岐にわたるITシステムを利用しているため、システム障害やサイバー攻撃、人為的ミスが発生した場合、鉄道の遅延や発券機能の停止といった事業運営上の重大な支障が生じ、安全性や信頼性の低下につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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