森永製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

森永製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する大手菓子食品メーカーです。主力事業は菓子食品、冷菓、inゼリー等の製造・販売で、米国や中国など海外展開も推進しています。2025年3月期は、主力ブランドの伸長や価格改定効果により、売上高は前期比7.3%増、経常利益は6.0%増、当期純利益は16.9%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社森永製菓 の有価証券報告書(第177期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森永製菓ってどんな会社?


1899年創業、「チョコボール」や「inゼリー」など多くのロングセラー商品を持つ大手菓子食品メーカーです。

(1) 会社概要


1899年に森永西洋菓子製造所として創業し、1910年に株式会社森永商店を設立しました。1912年に森永製菓へ改称し、1949年に株式を上場しています。2008年には米国森永製菓を設立して海外展開を本格化させました。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で3,153名、単体で1,538名です。大株主は、信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭で、第2位は取引先持株会、第3位は資産管理を行う日本カストディ銀行となっています。特定の親会社は存在せず、独立した経営体制を維持しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.06%
森永製菓取引先持株会 7.50%
日本カストディ銀行(信託口) 6.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役会長CEOは太田栄二郎氏、代表取締役社長COOは森信也氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
太田 栄二郎 取締役会長CEO(代表取締役) 1982年同社入社。冷菓事業本部長、営業本部長などを歴任し、2019年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
森 信也 取締役社長COO(代表取締役) 1984年同社入社。ヘルスケア事業部長、研究所長などを経て、2019年取締役上席執行役員に就任。2025年4月より現職。
藤井 大右 取締役常務執行役員 1987年同社入社。総務部長、経営戦略部長、戦略投資部長などを歴任。2023年6月より現職。
松永 秀樹 取締役上席執行役員 1990年同社入社。営業本部長、マーケティング本部長などを歴任。2025年4月より海外事業本部長を委嘱され現職。
髙木 哲也 取締役上席執行役員 富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)、ツインバード工業(現・ツインバード)等を経て2021年同社入社。2022年6月より現職。
高波 健二 取締役上席執行役員 1994年同社入社。マーケティング本部各部長、アントステラ代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、浦野邦子(元小松製作所取締役常務執行役員)、榊真二(元東急ハンズ代表取締役社長)、澤村環(元アフラック生命保険執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食料品製造」、「食料卸売」、「不動産及びサービス」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食料品製造


菓子食品事業(「ハイチュウ」「森永ビスケット」等)、冷菓事業(「チョコモナカジャンボ」等)、in事業(「inゼリー」等)、通販事業、米国事業などを展開しています。一般消費者を主な顧客とし、国内外で多様な食料品を提供しています。

製品の販売による収益が主となります。運営は主に森永製菓が行うほか、製造を高崎森永、森永エンゼルデザートなどの子会社が担い、海外では米国森永製菓や台湾森永製菓などが製造・販売を行っています。また、アントステラがクッキー専門店等を展開しています。

(2) 食料卸売


業務用食品の卸売を行っており、主に食品メーカーや外食産業などを顧客としています。

商品の販売による収益を得ています。運営は連結子会社の森永商事が行っており、同社製品の販売や業務用食品の取り扱いを担っています。

(3) 不動産及びサービス


不動産賃貸およびゴルフ場の経営を行っています。オフィスビルや商業施設のテナント、ゴルフ場利用客が主な顧客です。

不動産の賃貸料やゴルフ場の利用料が主な収益源です。運営は森永製菓が不動産賃貸を行い、子会社の森永高滝カントリーがゴルフ場経営を行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、研究用試薬の製造販売などを行っています。

製品の販売などによる収益を得ています。運営は、子会社の森永生科学研究所などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で着実な増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高を更新しています。経常利益も原材料価格高騰の影響を受けつつも回復基調にあり、当期純利益は2022年3月期以来の高水準となりました。全体として、コスト増を価格改定や増収効果で吸収し、成長を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,682億円 1,813億円 1,944億円 2,134億円 2,290億円
経常利益 198億円 182億円 158億円 210億円 223億円
利益率(%) 11.8% 10.1% 8.1% 9.9% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 134億円 278億円 101億円 152億円 177億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長に伴い売上総利益も増加していますが、原材料費等のコスト上昇により売上総利益率は若干低下しました。一方、営業利益は増益を確保しており、効率的な事業運営がうかがえます。販管費の増加をコントロールしつつ、収益性を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,134億円 2,290億円
売上総利益 867億円 900億円
売上総利益率(%) 40.6% 39.3%
営業利益 203億円 213億円
営業利益率(%) 9.5% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、運賃保管料が183億円(構成比27%)、広告宣伝費が112億円(同16%)、給料手当が105億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の食料品製造セグメントが増収を牽引しました。「ハイチュウ」等の菓子食品や「チョコモナカジャンボ」等の冷菓が好調でした。食料卸売セグメントも大幅な増収増益を達成しています。不動産及びサービスは微減収減益となりましたが、全体への影響は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食料品製造 2,038億円 2,176億円 199億円 199億円 9.1%
食料卸売 69億円 87億円 4億円 14億円 16.6%
不動産及びサービス 19億円 19億円 8億円 8億円 42.8%
その他 7億円 8億円 1億円 2億円 20.2%
調整額 11億円 11億円 -10億円 -10億円 -
連結(合計) 2,134億円 2,290億円 203億円 213億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を、設備投資や株主還元、借入返済に充当する「健全型」のキャッシュ・フロー構造です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 302億円 108億円
投資CF -53億円 -98億円
財務CF -141億円 -180億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「おいしく たのしく すこやかに」というコーポレートメッセージのもと、世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し、世界の人々の笑顔を未来につなぐことを使命(パーパス)としています。2030年には「ウェルネスカンパニー」へ生まれ変わることをビジョンとして掲げ、顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する文化を持っています。多様な人材が活躍できる環境・風土をベースに、社会課題の解決につながる新しい価値(イノベーション)を創出することを目指しています。また、サステナブル経営を推進し、持続可能な社会の実現への貢献を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2030経営計画」およびその第2ステージとなる「2024中期経営計画」を推進しています。2030年の目指す姿に向け、飛躍に向けた成長軌道の確立に取り組んでいます。2024中期経営計画の最終年度である2027年3月期の数値目標は以下の通りです。

* 売上高:2,460億円
* 営業利益:246億円
* 売上高営業利益率:10.0%
* ROE:12%以上
* ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「2030経営計画」達成に向け、事業ポートフォリオの転換と構造改革を進めています。高い収益性と成長性が見込める「inゼリー」などのin事業、冷菓事業、通販事業、米国事業を重点領域と定め、経営資源を集中投下します。

* 重点領域への経営資源集中:in事業、冷菓事業、通販事業、米国事業の拡大。
* 基盤領域による安定的なキャッシュ創出:菓子食品事業等の収益力向上。
* 探索・研究領域の取組み:ウェルネスを基軸とした新事業の育成。
* 機能部門を中心とした構造改革:生産・物流等の効率化による収益力底上げ。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「ウェルネスカンパニー」への変革を実現する原動力は「人」であるとし、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を経営戦略の中核に据えています。「人材育成」および「健康経営の推進」を重要戦略と位置づけ、プロティアン・キャリアの考え方に基づき、従業員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、次世代リーダーの育成や専門人材の確保・育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.4歳 19.1年 8,151,296円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 82.9%
男女賃金差異(全労働者) 61.5%
男女賃金差異(正規雇用) 63.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、D&Iポリシー浸透研修 受講者数(419名)、全社健康増進イベント「ハビット」参加率(88.7%)、労働災害率(度数率)(0.24)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料調達・資材調達のリスク


気候変動や人口動態、地政学的リスクによる原料不足や価格高騰が発生した場合、調達コストが増加し業績を圧迫する可能性があります。同社は、調達拠点の分散や代替原料の検討、戦略的な在庫確保などにより、調達の安定化とコスト管理に努めています。

(2) サイバー攻撃


システムへのサイバー攻撃により、個人情報や機密情報が漏洩したり、生産・物流等のサプライチェーンが停止したりするリスクがあります。これに対し、24時間監視体制の構築やセキュリティ診断の実施、従業員教育の徹底など、情報セキュリティ対策を強化しています。

(3) 商品欠陥・リコール


商品への異物混入等による品質問題が発生した場合、リコール費用や損害賠償が発生するだけでなく、ブランドへの信頼が失墜し売上が減少する恐れがあります。同社は厳格な品質保証体制を構築し、国内外の工場で食品安全マネジメントシステムの認証を取得するなど、安全・安心な商品提供に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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