【年収研究シリーズ】大林組の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
震災復興や東京オリンピック・パラリンピック、そして外国人観光客の増加など、観光産業の需要が高まっています。これによりホテル建設や、都市の再開発事業よるタワーマンションに高層オフィスビル建設などに伴い、建設業界は業績が好調です。
その好調ぶりは約30年前のバブル期を思い出させる程勢いが増しています。
とく鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組といった俗に呼ばれる「スーパーゼネコン」の2017年4月~12月期の純利益は、清水建設を除く3社が過去最高を更新しました。
しかし2017年12月に、リニア中央新幹線の工事を巡るゼネコン大手4社の入札談合事件が発覚し、好調な業界に水を差すような出来事も起きています。
ゼネコン大手4社の2018年3月期連結決算が2018年5月に出そろい、鹿島建設と大成建設の2社が増収増益を達成し、独占禁止法違反の罪で法人として起訴された大林組と清水建設は、罰金などの納付を見込んで特別損失を計上により減益となりました。
建設業界の中でも、とくにスーパーゼネコンは平均年収が高いことでも知られています。その中で今回は大林組にスポットを当てて見たいと思います。
それでは、大林組の年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。
大林組の平均年収は1024.9万円
大林組の有価証券報告書によると、平均年収は1024.9万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考に大林組の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で590〜640万円、30歳代で830〜880万円、40歳代で1070〜1120万円となりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.07倍の額です。
■大林組の平均年収推移
大林組・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
大林組の平均年収は前年を下回り1024.9万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
大林組の年代別平均年収と中央値
■大林組の年収中央値は30代で848.8万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
大林組と競合他社の平均年収を比較
大林組の競合や同業界である清水建設、大成建設、鹿島建設、竹中工務店の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、大林組が1024.9万円、清水建設が977.9万円、大成建設が963.5万円、鹿島建設が1127.9万円、竹中工務店が989.8万円です。
この5社の中で最高額は鹿島建設の1127.9万円で、最低額が大成建設の963.5万円。その差はおよそ165万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では大林組は2番目に位置します。
大林組の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
大林組の年収が高い理由
■好調の波に乗る建設業界
大林組の年収が高い理由の一つに、建設業界の業績が好調であることが考えられます。これにより、社員の賞与が増額しています。
2018年3月期の連結決算を見てみると、売上高は前期比1.5%増の1兆9006億5500万円という結果でした。また最終利益は前期比1.9%減の926億6200万円となっています。建設事業の売上高増加を背景に、完成工事総利益が増加していることも伺えます。
最終利益がマイナスとなった要因は、昨年に完全子会社化した大林道路株式会社の舗装工事受注を巡り、独占禁止法関連の損失を特別損失に計上したためです。しかしそれがなければ最終利益は1031億9100万円となり、過去最高を記録したところでした。
大林組の年収が高い理由に、好調な業績以外では従業員の年齢が関係していると考えられます。在籍する従業員の平均年齢が42.3歳と高く、全体の平均年収を押し上げているという見方もできるのです。
大林組社員の給与明細(キャリコネ)
基本給、ボーナス共に大幅アップ
20代・工事管理者(非管理職)の
給与明細
30代・工事監理者(非管理職)の
給与明細
ボーナス有無でも年収は同程度
20代・建築設計・賞与なし(非管理職)の
給与明細
20代・建築設計・賞与あり(非管理職)の
給与明細
大林組の課題・懸念点は
■「ポスト五輪」景気の揺り戻しをどう乗り越えるか
中長期的に見れば、東京五輪後の需要低下や少子化に伴う大型再開発事業の鈍化などによる業績の低下が懸念されます。
また建設業界の2大コストである、労務費と資材費についても上昇する可能性があります。現在は資材の価格が下落傾向の状態になっていますが、今後価格が高騰するかもしれません。また若年層の就職先として人気があるとは言えない業界のため、人材確保が厳しいといった面があります。その影響で在籍している従業員の平均年齢が年々上がるため、労務費が上昇していくことも懸念材料です。
また建設業界全体が好調であることから、談合による競争激化も予想され、事件による社会的信用の低下も問題点の一つとなります。業績の悪化からボーナスのカットにつながるなど、従業員に直接影響を与えかねません。
今後も大規模な再開発に伴う談合などが発生するリスクはつきものです。案件が確定すれば完成に向けての収益が見込めますが、着手するまでの競合他社との競争激化など、獲得するまでの道のりも長く険しいものになっています。
結局、大林組は就職・転職先として選んでもいいのか
さまざまな課題や問題点もありますが、国内需要の伸び悩みという点においては、海外プロジェクトを増やすことでカバーすることができます。
また今後ますます需要が高まると言われている、ICTやAI、ロボティクスといった最新技術の導入など、業界のパラダイムシフトを間近で見ることができるというのは大きなメリットになるのではないでしょうか。
自分が作ったものが後世にも残り、地図を変えてしまうようなビッグプロジェクトに関わることができるやりがいや喜びは、他の業種では味わえないことです。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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