大林組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大林組 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場する大手総合建設会社です。国内外での建築・土木工事を主軸に、不動産開発やグリーンエネルギー事業も展開しています。直近の業績は、国内建設事業における大型工事の進捗や採算性改善に加え、政策保有株式の売却等もあり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社大林組 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大林組ってどんな会社?


創業130年を超えるスーパーゼネコンの一角です。国内外の建設事業を中核に、不動産開発や再生可能エネルギーなど多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1892年に大阪で創業し、1936年に設立されました。1960年には東京証券取引所に上場し、日本のインフラ整備や都市開発を支えてきました。2010年に東京本社を本社と東京本店に改組し、2017年には大林道路を完全子会社化して土木事業を強化しました。近年では2023年に米国で水処理施設建設を行うMWH社を連結子会社化するなど、グローバル展開を加速させています。

現在の従業員数は連結17,305名、単体9,386名です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位が日本カストディ銀行(信託口)となっており、機関投資家が上位を占めています。第5位には創業家出身で取締役会長の大林剛郎氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.79%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10.42%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表者は代表取締役社長 兼 CEOの佐藤 俊美氏が務めています。社外取締役比率は35.7%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 俊美 代表取締役社長 兼 CEO 1985年入社。海外支店北米統括事務所副所長、本社経営企画室長、副社長執行役員などを歴任し、2025年4月より現職。
大林 剛郎 取締役会長 兼 取締役会議長 1977年入社。代表取締役副社長、代表取締役会長などを歴任。2023年4月より現職。
蓮輪 賢治 取締役副会長 1977年入社。土木本部本部長室長、技術本部副本部長、代表取締役社長 兼 CEOなどを歴任し、2025年4月より現職。
笹川 淳 代表取締役副社長執行役員 1980年入社。横浜支店長、営業総本部長などを経て2023年4月より現職。建築全般・営業総本部長を担当。
佐々木 嘉仁 代表取締役副社長執行役員 1984年入社。大阪本店土木事業部長、土木本部長などを経て2025年6月より現職。土木全般・土木本部長を担当。


社外取締役は、折井雅子(元サントリーホールディングス顧問)、加藤広之(元三井物産代表取締役副社長)、黒田由貴子(ピープルフォーカス・コンサルティング創業者)、注連浩行(元ユニチカ代表取締役会長)、池川喜洋(元三菱ケミカルホールディングス執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内建築事業」「海外建築事業」「国内土木事業」「海外土木事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

国内建築事業


オフィスビル、商業施設、工場、病院、学校などの建築工事の請負を行っています。また、内装工事や建設用資機材の販売、建物総合管理業なども手掛けています。

建築工事の請負代金が主な収益源です。運営は、同社が建築工事の受注・施工を行うほか、子会社の内外テクノスが内装工事を、オーク設備工業が設備工事を、大林ファシリティーズが建物管理を担当しています。

海外建築事業


北米や東南アジアを中心に、オフィスビルや工場などの建築工事の請負を行っています。現地企業や多国籍企業からの受注に加え、日系企業の海外進出に伴う建設需要にも対応しています。

建築工事の請負代金が主な収益源です。運営は同社のほか、現地のグループ会社であるウェブコー(米国)、ジャヤ大林(インドネシア)、タイ大林(タイ)、大林ベトナムなどが担当しています。

国内土木事業


トンネル、橋梁、ダム、鉄道、高速道路などの社会インフラ整備に伴う土木工事の請負を行っています。道路舗装工事や土壌浄化工事なども含まれます。

土木工事の請負代金が主な収益源です。運営は同社が土木工事の受注・施工を行うほか、子会社の大林道路などが道路舗装工事等を担当しています。

海外土木事業


北米や東南アジア等において、トンネル、橋梁、水処理施設などの土木工事の請負を行っています。

土木工事の請負代金が主な収益源です。運営は同社のほか、現地法人のMWH(米国、水処理関連)、ケナイダン(カナダ)などが担当しています。

不動産事業


オフィスビルや商業施設、物流施設、住宅等の開発、賃貸、売買を行っています。国内の都市部における再開発事業や、海外での不動産開発も推進しています。

不動産の賃貸収入や販売収入が主な収益源です。運営は同社および子会社の大林新星和不動産、大林プロパティズUKなどが行っています。

その他


PFI事業、再生可能エネルギー事業、ICT関連事業などを展開しています。再生可能エネルギーでは太陽光、風力、バイオマス、地熱発電に取り組んでいます。

PFI事業からのサービス対価や売電収入、システム開発等の対価が収益源です。運営は、大林クリーンエナジー(再エネ)、オーク情報システム(ICT)などの子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで推移しており、特に直近2期は2兆円台半ばまで伸長しています。経常利益も第118期に一時落ち込みましたが、その後は回復傾向にあり、当期は1500億円を超えました。当期純利益も同様に回復し、当期は過去最高水準となっています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1兆7669億円 1兆9229億円 1兆9839億円 2兆3252億円 2兆6201億円
経常利益 1288億円 498億円 1008億円 915億円 1534億円
利益率(%) 7.3% 2.6% 5.1% 3.9% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 812億円 188億円 626億円 497億円 1157億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も大幅に増加しました。これにより売上総利益率は改善しています。営業利益も売上総利益の増加に伴い大きく伸長し、営業利益率も上昇しました。販管費は増加していますが、増収効果と利益率改善により、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2兆3252億円 2兆6201億円
売上総利益 1888億円 2678億円
売上総利益率(%) 8.1% 10.2%
営業利益 794億円 1434億円
営業利益率(%) 3.4% 5.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が610億円(構成比40%)、調査研究費が164億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。特に海外土木事業は売上が倍増しています。利益面では、国内建築事業が大幅な増益となり、国内土木事業も好調でした。海外土木事業は黒字転換しました。一方、不動産事業は増収ながらも減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内建築事業 1兆2642億円 1兆3372億円 242億円 627億円 4.7%
海外建築事業 4578億円 4988億円 129億円 134億円 2.7%
国内土木事業 3694億円 4023億円 264億円 405億円 10.1%
海外土木事業 1154億円 2587億円 -38億円 83億円 3.2%
不動産事業 669億円 729億円 183億円 161億円 22.1%
その他 515億円 503億円 13億円 22億円 4.4%
調整額 -471億円 -471億円 1億円 -4億円 -
連結(合計) 2兆3252億円 2兆6201億円 794億円 1434億円 5.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.1%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 504億円 856億円
投資CF -845億円 96億円
財務CF -519億円 -506億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地球に優しいリーディングカンパニー」を企業理念として掲げ、持続可能な社会の実現を目指しています。創業以来の精神である三箴「良く、廉く、速い」と企業理念、そして「企業行動規範」を合わせた「大林組基本理念」を共有し、企業活動を通じて社会的責任を果たすことで、企業価値の向上に努めています。

(2) 企業文化


同社は「事業に関わるすべての人々を大切にする」ことを理念に掲げ、多様性を受け入れ相互に尊重し合える企業風土を、守るべきDNAと捉えています。この風土の下、仕事を通じた成長機会の提供や働きがいのある職場づくりを進め、社員のエンゲージメント向上を目指しています。また、安全の確保を経営の最優先事項とし、安全文化の変革に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「大林グループ中期経営計画2022」およびその追補に基づき、「建設事業の基盤の強化と深化」「技術とビジネスのイノベーション」「持続的成長のための事業ポートフォリオの拡充」の3つの基本戦略を実行しています。長期的な視点に立ち、経営の効率化と収益力の向上によって企業価値を高めることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「事業基盤の強化と変革の実践」に向け、海外建設事業、開発事業、グリーンエネルギー事業、新領域ビジネスに注力しています。海外ではM&Aや現地法人との連携により事業領域を拡大し、開発事業ではアセットタイプの多様化やグローバル化を推進しています。また、建設DXやスマートシティ等の新領域にも積極的に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資源の一つと捉え、「大林グループ人材マネジメント方針」に基づき、能力本位での登用やダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。新卒・キャリア採用者への研修や階層別・職種別教育など、多様な教育施策を展開しています。また、健康経営の推進やエンゲージメント向上施策、物価上昇を上回る賃上げなどを通じ、働きがいのある職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 16.4年 11,404,238円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 68.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員満足度(84.5%)、エンゲージメント指標平均(74.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労務単価及び建設資材価格の変動と調達難


建設事業において、技能労働者の不足による労務単価の高騰や、地政学的情勢、サプライチェーンの混乱等による建設資材の価格高騰・調達難が生じた場合、工事原価の上昇や工期遅延を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は協力会社との関係強化や早期購買、自動化技術の開発等で対応しています。

(2) 海外事業におけるリスク


アジアや米国などで事業展開しているため、進出国の政情不安、経済情勢の変動、為替レートの急激な変動、法制度の変更などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は比較的政情の安定した地域での事業展開や、現地通貨での取引による為替リスクヘッジ等で対応しています。

(3) 取引先の信用リスク


発注者や協力会社等の信用不安が顕在化した場合、資金回収不能や事業遅延が発生し、業績に影響を与える可能性があります。同社は取引前の与信確認の徹底や、出来高に応じた取引条件の確保等によりリスク低減に努めています。

(4) 建設市場の動向


国内外の景気後退等により建設市場が著しく縮小した場合、工事受注量の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は営業力・調達力の強化や生産性向上に加え、事業領域の拡大による収益源の多様化や強固な財務体質の構築に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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