2022年08月04日

【平均年収977.9万円】清水建設の給与・ボーナスが高いのはなぜなのか

【年収研究シリーズ】清水建設の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。


震災復興や東京オリンピック・パラリンピック、さらには外国人観光客の増加に伴う観光産業需要によるホテル建設、そして都市の再開発事業に関わるタワーマンションや高層オフィスビルの建設など、建設業界はさまざまな影響を受けて業績が絶好調です。

とくに鹿島建設や清水建設、大成建設、大林組といった、俗に呼ばれる「スーパーゼネコン」の2017年4月~12月期の純利益は、清水建設以外の3社が過去最高を更新しました。

しかし2017年12月には、リニア中央新幹線の受注を巡って、ゼネコン大手4社による入札談合事件が発覚し、東京地検特捜部が強制捜査に入りました。

これら4社の2018年3月期連結決算が2018年5月15日に出そろい、鹿島建設と大成建設の2社は、国内の堅調な建設需要を受けて増収増益となっています。前述のリニア中央新幹線建設工事の談合事件で、独占禁止法違反の罪で法人として起訴された大林組と清水建設は、罰金などの納付を見込んで特別損失を計上したため、減益となりました。

大きな業績を上げるスーパーゼネコンは、平均年収が高いことでもよく知られています。その中で、今回は清水建設にスポットを当てていきます。

それでは、清水建設の年収はいったいどれくらい高いのか、またなぜそんなに高いのか、そして就職・転職先として適しているのかを探っていきましょう。

清水建設の平均年収は977.9万円

清水建設の有価証券報告書によると、平均年収は977.9万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考に清水建設の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で560〜610万円、30歳代で790〜840万円、40歳代で1020〜1070万円となりました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.98倍の額です。

清水建設の平均年収推移

グラフが表示されない場合はこちら
清水建設・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
決算月平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数
2022年3月期977.9万円43.1歳15.6年10688人
2021年3月期971.2万円42.8歳15.3年10494人
2020年3月期1006.7万円42.9歳15.3年10384人
2019年3月期1010.1万円43歳15.4年10336人
2018年3月期967.3万円43.1歳16.2年10348人

出典:清水建設・有価証券報告書

過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
清水建設の平均年収は前年を上回り977.9万円でした。
過去5年間では3番目の額になりました。

清水建設の年代別平均年収と中央値

清水建設の年収中央値は30代で809.9万円

続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。

清水建設の年収実態
年代平均年収平均月収平均ボーナス年収中央値
20代579.5万円37.5万円104万円521.55万円
30代809.9万円51.9万円145.5万円728.91万円
40代1039.5万円66.2万円186.8万円935.55万円
50代1313万円83.3万円236万円1181.7万円

※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出

清水建設と競合他社の平均年収を比較

清水建設の競合や同業界である大林組、大成建設、鹿島建設、竹中工務店の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、清水建設が977.9万円、大林組が1024.9万円、大成建設が963.5万円、鹿島建設が1127.9万円、竹中工務店が989.8万円です。
この5社の中で最高額は鹿島建設の1127.9万円で、最低額が大成建設の963.5万円。その差はおよそ165万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では清水建設は4番目に位置します。

社名平均年収平均年齢平均勤続年数従業員数(単体)売上高
鹿島建設1127.9万円44.1歳18.3年8080人12449.23億円
大林組1024.9万円42.6歳17年9026人13741.32億円
竹中工務店989.8万円44.1歳18.5年7757人9890.54億円
清水建設977.9万円43.1歳15.6年10688人12873.52億円
大成建設963.5万円42.9歳18.2年8579人12192.67億円

清水建設の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください

清水建設の年収が高い理由

最終利益850億円

清水建設は2018年5月に、2019年3月期の連結純利益が910億円(前期比7%増)となる見通しを発表しました。大型の工事案件により、2期ぶりの増益となる業績の好調が期待されています。この好調の波に乗り、社員の賞与も増額となっています。

2018年3月期の連結決算について、具体的な数字を見てみましょう。
・売上高  1兆5194億3500万円(前期比3.1%減)
・最終利益 849億7800万円(前期比14.1%減)

前期比減とマイナスに沈んだ要因は、一部の工事で収益計上が繰り延べになったことが挙げられます。またリニア中央新幹線の受注を巡って独占禁止法違反の罪で起訴されたことを受け、罰金と課徴金の納付を見込み特別損失として20億円もの計上がなされました。

この件が存在しなければ、最終利益は869億7800万円の計算となりますが、それでもなお、前期分にはおよびません。

業績に浮き沈みはあるものの、いずれにしても高水準での推移のため、会社としての利益は高く、社員への還元も大きいという結果になっています。
また社員の平均年齢が42.3歳と高いことも、平均年収が高くなっている一因です。

キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。

清水建設社員の給与明細(キャリコネ)

30代に向かって、順調な伸び!

20代・建築・土木施工管理(非管理職)の 給与明細

30代・建築・土木施工管理(非管理職)の 給与明細

賞与の有無で、年収に差が出る!

20代・建築・土木施工管理・賞与なし(非管理職)の 給与明細

20代・建築・土木施工管理・賞与あり(非管理職)の 給与明細

清水建設の課題・懸念点は

大規模イベント後の需要減は建設業界全体の問題

中長期的には、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後の需要低下やますます進行する少子高齢化の影響で、新設工事の減少や大型再開発事業の鈍化などにより、業界の売上は低下していくと見られています。

さらに建設業界は、建設コストの上昇というリスク要因を抱えています。
建設コストの2大要素と言えば労務費と資材費ですが、資材価格については下落傾向であるものの、労務費は上昇していく恐れがあり、影響が懸念されているところです。

建設業界は全体的に若い就業者が少なく、平均年齢が徐々に上がっていることから、将来的には就業者数の減少により労働力が不足するのではないかとの見方があります。

また今世紀最大とも言われる、リニア中央新幹線工事の受注において、大手ゼネコン4社による談合事件が起きました。世界トップレベルの技術を有しているものの、この事件のように幾度も繰り返される談合事件で、社会的信用が低下していく面もあります。

結局清水建設は就職・転職先として選んでもいいのか

建設業に関わる国内需要の伸び悩みは、海外でのプロジェクトを増やすことでカバーできると考えられます。
これまでに積み重ねてきた、国内における環境作りの経験や技術を用いて、世界中のそれぞれの地域で役立てていくことも可能です。

またICT(情報通信技術)の活用や、AI、ロボティクスといった最新技術を導入するなど、建設業界のパラダイムシフトを実際に間近で見ることもできます。

さらには大きな視野の下、地図をも変えてしまうようなビッグプロジェクトに、自分が関われるというやりがいや喜びが感じられるに違いありません。

出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」

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