【年収研究シリーズ】安川電機の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
産業用ロボット市場の成長が著しいなか、IFR(国際ロボット連盟)は市場の拡大を見込み、2021年までの年平均成長率として14%という数字を発表しました。自動化によって人材不足の解消に対応しようとする需要にくわえて、発達したセンサー技術や人工知能(AI)を活用し、ロボットシステムを高度化しようとする動きがあり、自動化に対する需要は今後も大きな伸びが期待されています。
この見通しを発表したIFRで会長の座につく津田純嗣氏こそ、今回取り上げる安川電機の現会長です。安川電機は1915年に、安川敬一郎氏によって安川電機製作所として設立され、設立当初は安川氏らが当時すでに設立していた明治鉱業の電気用品の開発と製造を目的としていました。
現在では、産業用ロボット業界では世界にその名を知られた企業であり、日本のファナック、スイスのABB、そして中国の美的集団が買収したドイツのクーカと並んで「世界4強」と呼ばれています。その中でも世界シェアNo.1を誇るのが安川電機なのです。
また安川電機は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
安川電機の平均年収は787.7万円
まずはじめに安川電機の平均年収を見ていきましょう。安川電機の平均年収は787.7万円です(安川電機有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考に安川電機の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で460〜510万円、30歳代で650〜700万円、40歳代で810〜860万円という結果がでました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.59倍の額です。
■安川電機の平均年収推移
安川電機・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
安川電機の平均年収は前年を上回り787.7万円でした。
過去5年間では2番めに低い額になりました。
安川電機の年代別平均年収と中央値
■安川電機の年収中央値は30代で668万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
安川電機と競合他社の平均年収を比較
安川電機の競合や同業界であるファナック、横河電機、富士電機の4社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、安川電機が787.7万円、ファナックが1248.8万円、横河電機が877.6万円、富士電機が759.5万円です。
この4社の中で最高額はファナックの1248.8万円で、最低額が富士電機の759.5万円。その差はおよそ490万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では安川電機は3番目に位置します。
安川電機の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
安川電機の年収が高い理由
安川電機が誇る世界No.1シェアは産業用ロボットだけではありません。その他にも電子部品や半導体など高い精度が求められる生産機器にも採用され、指示した位置や速度をすばやく追従させるための装置であるACサーボドライブも世界No.1です。また、六本木ヒルズ丸ビルなどのビルで使われ、モーターの回転数を変えることで自在にエアコンの風量などを調整可能なインバータにおいても、世界首位を獲得しています。このように世界シェアNo.1の製品が3つもあることは、年収が高い理由の1つです。
さらに、これら世界最高レベルの3製品が属する事業の売上高は全体の8割を占め、なおかつこれら事業の利益率が10%を超える点も高年収の背景にあります。ACサーボドライブとインバータが属するモーションコントロール部門の2017年度連結売上高全体に占める割合は47%で、利益率は非常に高い19.7%です。また産業用ロボット部門を見てみると、売上高が全体の36%を占め、利益率は10.9%で高めです。主要製品群の利益率の高さも、安川電機の年収に影響しているといえるでしょう。
安川電機社内で年収が高い職種・役職は?
■30代で600万円
安川電機の年収において、勤続年数が大きく年収に影響を及ぼす要素であるといえます。毎年のベースアップに加えて、昇給のためのステップも多く用意されているため、長く勤務すればするほど給料は上がっていきます。また、賞与は安定して支払われているようですが、業績に連動しているため増えるだけでなく減る場合もあることを理解しておくとよいでしょう。
年代ごとの年収目安は、20代で約400万円、30代で約600万、40代で約700万円、50代で約900万円と、年齢とともに年収が上がっていくことがわかります。さらに管理職になると、年収は1000万円台に大きくアップします。課長は約1000万円、部長になると約1200万円になるようです。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由がチェックできます。
安川電機社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代では年収に違いが!
20代・ソフトウェア研究開発(非管理職)の
給与明細
30代・ソフトウェア研究開発(非管理職)の
給与明細
高い賞与があれば月収の低さをカバーできる?
20代・プラント設計・賞与あり(非管理職)の
給与明細
20代・プラント設計・賞与あり(非管理職)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
安川電機の見落としがちな留意点、課題は?
■国際需要と競争力の低下が懸念点
懸念点は、米中貿易戦争による受注の冷え込みといえます。世界の産業用ロボット需要は中国がけん引しています。前出の国際ロボット連盟(IFR)によると、中国の2017年販売台数は世界の3割強を占める13万8000台でした。しかし2018年夏より状況が変わり、中国国家統計局によると6月以降はロボット生産量の伸びは前年比6~9%にとどまり、2017年の58%増と比較して急に冷え込んでいるのです。とく電子機器向けロボットの需要は大きく落ち込み、ロボット業界にとって厳しい状況にあります。
この冷え込みは安川電機にも大きな打撃となっており、2018年3~8月期決算において、ロボット事業の売上高と営業利益の従来の見通しを下げています。また同社にとって重要顧客という位置づけの中国ですが、将来は中国メーカーがライバルになる可能性も捨て去れません。すでにスマートフォンや家電市場で日本勢は短期間で逆転されています。産業用ロボットでは、まだ日本と中国には技術力の差があるとはいえ、5年後、10年後の立場の変化は不透明で油断できない状況にあります。
安川電機には年収以外にメリットはある?
ここまで安川電機の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
現在の世界No.1の地位はまだまだ揺らぎません。安川電機は新入社員定着率でも高い成果をあげ、2年連続100%という数字をだしています。東洋経済の調べによると、同じく100%を達成した108社のうち、73社が新入社員の採用人数が15人以下となっています。そのなかで安川電機は108社の中で2番目に人数が多い62人にもかかわらず、定着率100%の快挙を遂げているのです。
この背景にはさまざまな理由があると推測されますが、定着率の高さは安川電機の人事制度によるものといえるでしょう。平日に5日連続で有給休暇を取得できる制度では、業務を調整すれば取得することができ、海外旅行や帰省にも利用可能なことから社員に人気が高いようです。このように社員のワークライフバランスを考慮し、社員一人ひとりを大切にする安川電機は、今後も高い技術力を生み出しグローバルリーダーとして活躍する企業といえます。
結論的には、就職・転職先として非常に魅力的だと言っていいでしょう。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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