【年収研究シリーズ】IHIの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
航空エンジンシェア国内首位のIHIは、2018年10月18日に新たな生産拠点の建設計画を発表しました。IHIは重工業において日本を代表する企業であり、日本国内のジェットエンジン生産でトップシェアを誇るリーディングカンパニーとして、防衛省が使用する航空機のエンジンの多くを生産しています。
また同社の歴史は非常に長く、ペリーが来航した1853年に欧米勢力に対抗するため、幕府が水戸藩にその前身である石川島造船所設立を指示したことから始まりました。それから時が流れ、今回発表された2019年竣工予定の埼玉県鶴ケ島市の航空エンジン整備工場は、福島県の相馬事業所が開設した1998年から初のIHI本体の新設生産拠点となります。この背景には、近年の格安航空会社の台頭による民間航空エンジンの修理・整備受託事業の需要増加があります。この需要に応えるために最新設備を整えた新工場建設計画は、航空機部品ビジネスにおけるIHIの競争力を高めるといえるでしょう。
さらに埼玉県からは、「IHIの立地を契機に、先端産業・次世代産業のさらなる集積を図り、県経済をより一層発展させたい」とのコメントが出されており、IHIは常に日本社会へ高い技術力で貢献し続ける企業であるのです。
またIHIは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
IHIの平均年収は736.4万円
まずはじめにIHIの平均年収を見ていきましょう。IHIの平均年収は736.4万円です(IHI有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にIHIの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で430〜480万円、30歳代で600〜650万円、40歳代で760〜810万円という結果がでました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.49倍の額です。
■IHIの平均年収推移
IHI・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
IHIの平均年収は前年を下回り736.4万円でした。
過去5年間では最低の額になりました。
IHIの年代別平均年収と中央値
■IHIの年収中央値は30代で624.6万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
IHIと競合他社の平均年収を比較
IHIの競合や同業界である住友重機械工業、三菱重工業、川崎重工業の4社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、IHIが736.4万円、住友重機械工業が806.7万円、三菱重工業が863.8万円、川崎重工業が683.8万円です。
この4社の中で最高額は三菱重工業の863.8万円で、最低額が川崎重工業の683.8万円。その差はおよそ180万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではIHIは3番目に位置します。
IHIの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
IHIの年収が高い理由は?
IHIの年収が高い理由の1つに、不採算事業の整理による営業利益率の改善が挙げられます。赤字受注や事業収支の悪化により、2016年3月期の営業利益率は1%という低い数字でした。しかし景気に影響を受けやすい建設機械事業の売却や採算があわない造船事業に関わる工場の閉鎖をおこない、不採算事業の整理を進めたことで、2018年3月の営業利益率を4.5%にまで回復させています。
さらには、航空エンジン事業を強化することで発生する高い利益率も高年収の背景にあります。IHIは基幹部品であるタービンやシャフトなどを開発し、アメリカのゼネラル・エレクトリックなどに次ぐ世界有数の航空機エンジン・部品供給会社として、グローバル市場において高いシェアを獲得しているのです。消耗が激しいエンジン部品は修理・整備などのアフターサービスが必要となる「リカーリングモデル」の事業であるため、冒頭で触れた工場の新設を含めて、IHIは継続して利益を生み出す航空エンジン・部品事業に注力しています。
IHI社内で年収が高い職種・役職は?
IHIでは、30歳ぐらいまではベース給与にほとんど差がつきません。評価により基本給とボーナスを合わせて年間20万円程度の差が生じることの他には、残業が比較的多い部署であると残業代の分が年収の差として表れる程度のようです。30代前半の一般社員で毎月平均50~60時間の残業時間がある場合は、年収750万円程度になります。
その後は課長代理になることで年間100~200万円ぐらい上昇し、年収が800~900万円弱まで増えます。ただし課長になってもあまり大きな年収の伸びはなく、1000万円台に届くのは一部の部長で、部署の業績などに左右されて年収にも大きな差が出てくるといえるでしょう。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
IHI社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代の同職種で比較してみると…
20代・事務(非管理職)の
給与明細
30代・事務(非管理職)の
給与明細
ボーナスの有り無しでこれだけの差が!
20代・営業管理/代理店管理・賞与あり(非管理職)の
給与明細
20代・営業管理/代理店管理・賞与なし(非管理職)の
給与明細
しかし年収が高いからといっていいことばかりではないのでしょうか。
IHIの見落としがちな留意点、課題は?
懸念点となるのは、担当する業務量によって長時間労働や土日出勤が必要となる恐れがあることでしょう。配属された職場や業務の内容次第ではありますが、残業時間は一般的に毎月45時間~60時間と考えておくとよさそうです。
工事の担当者になると、土日出勤は日常茶飯事となります。代わりに振替休日を取得できますが、家族や友人と一緒に過ごせる休日を確保することが難しくなる可能性がありますので、事前に理解しておくとよいでしょう。さらにプロジェクトに関わる場合は、現地派遣として数週間から長い期間であれば数年にわたって現地派遣されることもあり、とくに技術職に就く方はこの点も考慮しておく必要があります。
IHIには年収以外にメリットはある?
ここまでIHIの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
ワークライフバランスを確保するには、長期休暇をしっかり取得することがポイントになります。IHIでは、9連休がゴールデンウィークと夏季休暇、そして年末年始の年3回あるため、旅行や帰省などでプライベートの時間を充実させることが可能となるでしょう。とくに夏季休暇は、お盆休みの5日間程の休暇とは別に設けられているため、8月の出勤日が非常に少ないだけでなく、お盆のピークを避けてリラックスした休暇を過ごすことが可能です。
IHIの経営理念「技術をもって社会の発展に貢献する」と「人材こそが最大かつ唯一の財産である」にあるように、IHIの財産は技術ではなく人材です。仕事時間もプライベート時間も集中的に費やせる社員とともに、江戸幕末から現在の平成、そして次の時代へとIHIは歴史を刻み続けています。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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