【平均年収811.8万円】ニコンの給与・ボーナスが高いのはなぜなのか

「ニコン」と聞いて一般消費者がイメージするものといえば、やはりデジタルカメラでしょうか。
カメラのメーカーとしてよく知られているニコンは、100年以上にわたる歴史を積み重ねる中、光学技術の先駆者として常に時代を切り開いてきました。そんな華々しい存在である同社ですが、技術にまつわる裁判で多くの利益を手にしたことで、世間の大きな注目を集めています。

ニコンは2019年1月、オランダのASMLとドイツのカール・ツァイス2社とのデジタルカメラと露光装置に関する特許裁判が和解したと発表し、総額190億円にものぼる和解金を同社が受け取ることになったというものです。さらに今後10年間については、液浸露光装置の年間売上高のうち、0.8％に相当する金額をライセンス料として受け取ることができると見込まれています。このような、すべての訴訟において和解したという発表を受け、大手証券会社は同社に対し大きく注目した投資判断へと相次いで切り替えました。もちろん、投資家も多大なる好感を寄せています。

またニコンは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。

競合他社の平均年収はさておき、ニコンが安定した高い年収を維持していることに変わりはありません。その背景にあるのが、売上の8割を占める映像事業と精機事業です。
主にレンズ交換式デジタルカメラやコンパクトデジタルカメラ、交換レンズを手がける映像事業は全体の50.3％、フラットパネルディスプレイ（FPD）露光装置や半導体露光装置を手がける精機事業は全体の31.6％もの割合で収益を支えています。

とくに2018年度において、映像事業では高付加価値製品の販売に注力し、選択と集中をする事業戦略によって、デジタル一眼レフカメラの販売が好調に推移し増益となりました。また半導体分野では効率化と採算性重視を徹底する運用体制への転換、そしてサービス収益や中古機の転売収益などの事業戦略の見直しが行われ、収益を大幅に改善しました。これらの戦略が功を奏し、同社の営業利益は555億円増を記録するという見事な黒字化を達成したのです。

ニコンの給与体系は、成果主義ではありません。役職がつく40代半ばまでは、基本的に大きな年収の差はないと考えてよいでしょう。差が出るとすれば、基本給では40代半ば以降、そして事業部と個人評価による賞与、残業時間の多さによるものです。

手当関係を見てみると、ニコンには家賃補助や社宅制度などの住宅手当に充当するものはありませんが、新卒独身者が30歳まで入居できる寮が用意されています。一方で海外駐在員の場合は海外手当のほか、地域に違いはあるものの住宅補助が支給され、手厚い待遇を受けることができるようです。また国内勤務であっても、勤務地は限られていることから転勤は少ないですが、その際にも単身赴任手当を受けられます。

年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。

懸念点として挙げられるのは、これまで主力を担ってきた映像事業と精機事業が成熟化していることでしょう。ニコンの主力であるデジタルカメラや露光装置は、それぞれの市場において頭打ちの状態に突入したとみられています。今後はこれらの事業以外での大きな成長が見込めないと、同社の株価上昇も望めない可能性があるという見立てもあります。

すでにこうした市場変化のあおりを受け、売上収益に影響が出ているのです。デジタルカメラやコンパクトカメラの市場が縮小していることや、FPD露光装置の販売台数が減少していることから、2018年3月期の売上収益は前年比で300億円以上も減収となっている点は、留意しておく必要がありそうです。

ここまでニコンの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか？

市場変化による懸念はあるものの、ニコンは黙って指をくわえているわけではありません。
これまでに追求を重ねてきた光学技術をさらに活用し、情報を取り込むAIの「眼」としての機能開発を進めているのです。AI技術への応用の鍵となるレンズとセンサーについて、同社の技術の活路を見出しています。実際に新たな開発で明るい兆しも見えています。ニコン子会社である英国のOptos Plcは、超広角走査型レーザー検眼鏡で撮影した画像をAIで解析し、医師の診断を補助するというソリューションの共同開発を進めているのです。

ニコンの歴史ある技術を採用した新たなフィールドへの挑戦と、新しい時代への適応に、これからも大いに期待していきたいところです。