就職活動と同様に転職先候補として、仕事の内容が似通っている同業他社を選択肢にする場合も少なくありません。待遇面を見比べるのは容易だとしても、勤務先の状況や雰囲気など内情を比較することはなかなか難しいものです。そういう場合にもっとも有効的なのは口コミを活用すること。今回はともに関西に本社をおく、電子・電気部品、製品メーカーのオムロンとキーエンスの優良企業2社を比較します。
2021年06月21日
オムロンとキーエンスの社員はの社員は自社の働きやすさについてどう感じているのでしょうか。ライバル関係にある企業との比較でどの項目で違いは? 口コミ投稿者の主観による点数付けと、投稿された口コミから読み取れる本質的な満足度の分析を通じて企業を評価します。
就職活動と同様に転職先候補として、仕事の内容が似通っている同業他社を選択肢にする場合も少なくありません。待遇面を見比べるのは容易だとしても、勤務先の状況や雰囲気など内情を比較することはなかなか難しいものです。そういう場合にもっとも有効的なのは口コミを活用すること。今回はともに関西に本社をおく、電子・電気部品、製品メーカーのオムロンとキーエンスの優良企業2社を比較します。
【図1】働きやすさ評価チャート(キャリコネに掲載されている各社のチャートを編集部にて合成)
まずは「働きやすさ評価チャート」を見て見ましょう。
このチャートは、キャリコネの口コミ投稿者に、労働時間、仕事のやりがい、仕事のストレス度、休日数、給料、ホワイト度の各項目についての満足度を5点満点で評価したものの平均を表しています(総合評価は6項目の平均値)。点数のつけ方には基準を設けておらず、主観的な判断で採点してもらっています。
総合評価ではオムロンは3.7、キーエンスは3.3とさほど差がありませんが内訳をみるとかなりの違いがあることがわかります。
オムロンは各項目がほぼ均等であり、しかも4前後であることから社員の満足度は高いと言えます。特に休日数は4.2とかなり満足していることがうかがえます。
一方でキーエンスは、給料について平均年収が1000万円を越えるとあって評価は高く4.3。しかし、仕事のストレス度の低さでは2.5とかなりの低評価。労働時間も3を下回るなど日々の業務の大変さが如実に表れています。
【図2】独自口コミ分析結果(提供:キャリコネ働き方研究所)
続いて、実際に投稿された口コミを分析していきます。
同じく投稿者の主観的な目線での情報ですが、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論を応用し口コミを分析、数値化しました。
二要因理論にならい、動機づけ要因に「達成」「承認」「仕事」「責任」「昇進と成長」、不満誘発要因に「経営方針」「監督」「人間関係」「作業環境」「賃金と雇用の安定」を設定し、1つの口コミに対し、プラス評価なのかマイナス評価なのかを判断してポイントを加算していきます。そうして算出された結果が【図2】のグラフで、各項目が獲得した数値は左の表に記載しました。
2社を比較したところ、動機づけ要因(モチベーション)ではオムロンが-30ポイント、キーエンスが-16ポイントと、2社ともマイナスという結果になっています。単純にオムロンの社員はキーエンスの社員よりもおよそ倍、不満を抱えているということなのでしょうか?
動機づけ要因、満足度要因それぞれのポジティブ/ネガティブ意見をみていきましょう。
【図3】
グラフを一目見て分かることは、キーエンスよりもオムロンの方がモチベーションをあげる要因が多いということですね。もっとも顕著な「責任」、これは仕事に対しての責任であり、つまりは権限や裁量のことを指しています。
オムロンでは「若手でも手を上げれば、海外や新規分野で採用され、活躍のチャンスがある」「前例主義ではない」といった口コミがありました。一方キーエンスには目立った意見がありませんでした。
これだけで判断すると、オムロンの社員はキーエンスの社員より不満を持っているとは言えません。
【図4】
ところが、モチベーションを下げる要因をみると、キーエンスよりもオムロンの方が多いことががわかります。特に「承認」と「仕事」という要因がモチベーションを下げています。
「承認」は文字通り「誰かから認めてもらうこと」であり、この場合は会社から評価されているかどうかということになります。オムロンの口コミには「目標を達成やコストダウンばかりが評価され、クオリティ担保や業務フローの根本的改善は低く見られる」(30代・生産管理)という、製造者としての矜持を問うものや「評価制度があっても誤差範囲」(30代・SE)といった労働価値に対しての地位的・金銭的なリターンが少ないことに嘆くものが見られました。
動機付け要因は、オムロン社員の意見の振れ幅が大きく、そんなことも影響して振れ幅の小さいキーエンスよりもネガティブポイントが上がっています。
【図5】
続いて満足度についてみていきます。
これは満足度をあげる要因を示すグラフです。
満足度についてはオムロンとキーエンスでさほど大きな差はついていません。
オムロンで特に満足度が高いのは「作業環境」で、これは残業時間や休日出勤を表しています。
ここで満足度が高いということは、残業時間・休日出勤が少ないということ。口コミには「残業時間が月10時間越えるのはまれ」であるとか「勤怠時間と出退勤時間が1時間以上ズレると人事から指導が入るのでサービス残業できない」など好感触な言葉が並んでいます。
キーエンスは「賃金と雇用の安定」で高ポイントがついています。
これは言わずもがな、日本でもトップクラスの年収を誇り、その額1500万円超というキーエンスの最大の特徴が満足度に現れている結果です。口コミには「入社して5年もすれば誰でも1000万は貰える」「年に4回のボーナスがあり、尚且つ額がでかいのでかなり満足している」という情報が寄せられています。
【図6】
続いては不満面です。
オムロンはどこかが突出して不満があるわけではなく、分散しています。ということは不満点は人それぞれであり、大きな欠陥のある制度が存在するわけではないと推測されます。
一方で、キーエンスは「作業環境」に不満が集中しています。高収入の裏返しとして、激務であり長時間労働が日常的になっていることがうかがわれます。口コミには「21時45分が定時と認識」や「朝も7時出社」といった口コミがあり、いかに長時間労働であるかをうかがわせます。ここはオムロンと比べて非常に対照的なポイントです。
戦前から続く老舗企業「オムロン」はドラスティックな動きはないが安定性があるところが、工業高校出身の社長が一代で築き上げた「キーエンス」は個人に多大なプレッシャーがのしかかるが、そのぶん報酬というリターンが大きいところが、社員から評価されていることがわかりました。 転職希望者自身がどちらの企業タイプで自分の能力を活かせるのか見極めて、活動をすることをオススメします。
※基本的に、キャリコネに口コミが100件以上登録されている企業を扱っています。
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