オムロン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オムロン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。制御機器、ヘルスケア、社会システム、電子部品、データソリューション事業を展開しています。第88期は、構造改革の効果等により営業利益は増加したものの、制御機器事業等の需要低迷やヘルスケア事業の中国市場減速等が響き、売上高は前期比で減少しました。(133文字)


※本記事は、オムロン株式会社 の有価証券報告書(第88期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. オムロンってどんな会社?


制御機器やヘルスケア機器、社会システム等を展開し、オートメーション技術で社会課題解決に取り組む企業です。

(1) 会社概要


1933年に立石一真氏が立石電機製作所を創業し、レントゲン用タイマの製造を開始しました。1948年に株式会社へ改組し、1959年に商標「OMRON」を制定しました。1990年に現社名へ変更し、2003年にはヘルスケア事業を分社化しました。2023年には医療データサービスの株式会社JMDCを連結子会社化しています。

連結従業員数は26,614人、単体では3,873人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は金融機関の常任代理人として信託銀行が記載されており、機関投資家や金融機関が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 22.65%
日本カストディ銀行(信託口) 10.58%
京都銀行 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長 CEOは辻永順太氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
辻永 順太 代表取締役社長 CEO 1989年同社入社。インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長等を経て2023年4月より現職。
山田 義仁 取締役会長 1984年同社入社。オムロンヘルスケア社長、同社社長CEO等を経て2023年6月より現職。
宮田 喜一郎 代表取締役執行役員副社長CTO 1985年立石ライフサイエンス研究所入社。オムロンヘルスケア社長、同社CTO等を経て2023年4月より現職。
冨田 雅彦 取締役執行役員専務CHRO 1989年同社入社。グローバル人財総務本部長等を経て2023年4月より現職。
行本 閑人 取締役 1985年同社入社。環境事業本部長、デバイス&モジュールソリューションズカンパニー社長等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、上釜健宏(元TDK社長)、小林いずみ(元多数国間投資保証機関長官)、鈴木善久(伊藤忠商事理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インダストリアルオートメーションビジネス」「ヘルスケアビジネス」「ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス」「デバイス&モジュールソリューションズビジネス」「データソリューションビジネス」事業を展開しています。

(1) インダストリアルオートメーションビジネス(IAB)


製造業向けに、プログラマブルコントローラー、センサー、ロボットなどの制御機器を提供しています。独自の価値創造コンセプト「i-Automation!」を掲げ、モノづくりの現場を革新し、生産性とエネルギー効率の向上や、人と機械の協調を実現するソリューションを展開しています。

収益は、製造業の顧客からの製品・ソリューションの対価によって得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) ヘルスケアビジネス(HCB)


家庭用血圧計や体温計、ネブライザなどの健康医療機器や、遠隔診療サービスを提供しています。「脳・心血管疾患の発症ゼロ」などを目指し、グローバルに展開しています。顧客は一般消費者や医療機関です。

収益は、機器の販売代金やサービスの利用料から得ています。運営は主にオムロンヘルスケア株式会社が行っています。

(3) ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(SSB)


鉄道向けの駅務システム、交通管制システム、決済システム、太陽光発電用パワーコンディショナーなどの社会インフラシステムを提供しています。安心・安全・快適な社会の実現に向け、機器の提供に加え、保守メンテナンスも含めたトータルソリューションを展開しています。

収益は、鉄道会社や自治体、エネルギー関連企業などからのシステム納入代金や保守サービス料から得ています。運営は主にオムロンソーシアルソリューションズ株式会社が行っています。

(4) デバイス&モジュールソリューションズビジネス(DMB)


家電、産業機器、モビリティなどの幅広い業界向けに、リレー、スイッチ、コネクター、センサなどの電子部品を提供しています。電気を繋ぐ・切るためのコア部品や、製品の目や耳となるデバイスをグローバルに供給する基盤事業です。

収益は、セットメーカーなどの顧客からの部品販売代金によって得ています。運営は主に同社が行っています。

(5) データソリューションビジネス(DSB)


医療データや現場データなどのビッグデータを活用し、健康経営支援、疾患予防、生産現場の効率化などのソリューションを提供しています。同社グループの製品から得られるデータとデータマネジメント力を掛け合わせ、顧客の課題解決を支援します。

収益は、保険者、医療機関、企業などからのサービス利用料やソリューション対価から得ています。運営は主に同社および株式会社JMDCが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。利益面では、2024年3月期に大幅な減益となりましたが、直近の2025年3月期は構造改革の効果もあり営業利益等は回復傾向を示しています。ただし、当期純利益は過去と比較して低い水準に留まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 6,555億円 7,629億円 8,761億円 8,188億円 8,018億円
税引前利益 651億円 867億円 984億円 350億円 290億円
利益率(%) 9.9% 11.4% 11.2% 4.3% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 433億円 614億円 739億円 81億円 163億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高が減少したものの、売上総利益率は改善しました。一方、構造改革費用やのれんの減損損失などの計上がありましたが、営業利益ベースでは増益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8,188億円 8,018億円
売上総利益 3,465億円 3,571億円
売上総利益率(%) 42.3% 44.5%
営業利益 343億円 540億円
営業利益率(%) 4.2% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が279億円(構成比11%)、手数料が256億円(同10%)、給与及び賞与手当が250億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


インダストリアルオートメーション(IAB)は設備投資需要の低迷により減収となりましたが、構造改革による固定費削減等で増益となりました。ヘルスケア(HCB)は中国市場の減速等で減収減益です。データソリューション(DSB)はJMDC社の連結効果等により大幅な増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
IAB 3,936億円 3,608億円 215億円 363億円 10.1%
HCB 1,497億円 1,459億円 185億円 175億円 12.0%
SSB 1,416億円 1,456億円 140億円 168億円 11.5%
DMB 1,144億円 1,054億円 31億円 3億円 0.3%
DSB 174億円 427億円 22億円 28億円 6.6%
調整額 21億円 13億円 -249億円 -196億円 -
連結(合計) 8,188億円 8,018億円 343億円 540億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**: 営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 449億円 558億円
投資CF -1,071億円 -479億円
財務CF 860億円 -46億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業者・立石一真が制定した社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を企業の拠り所としています。この精神を受け継いだ企業理念を実践し、事業を通じて社会価値を創出し続けることを存在意義としています。

(2) 企業文化


企業理念の実践に向けて、Our Values(私たちが大切にする価値観)として「ソーシャルニーズの創造:私たちは、世に先駆けて新たな価値を創造し続けます。」「絶えざるチャレンジ:私たちは、失敗を恐れず情熱をもって挑戦し続けます。」「人間性の尊重:私たちは、誠実であることを誇りとし、人間の可能性を信じ続けます。」の3つを掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は構造改革プログラム「NEXT2025」を実行中で、2025年9月までを構造改革期間と位置づけています。2025年度は、この改革を完遂し、増収増益を目指す計画を掲げています。

* 売上高:8,350~8,200億円
* 営業利益:650~560億円
* 売上総利益率:44.7~44.2%

(4) 成長戦略と重点施策


「NEXT2025」において、「制御機器事業の早急な立て直し」と「収益・成長基盤の再構築」を最重要課題としています。具体的には、エリア・事業ポートフォリオの最適化、人員数・能力の最適化、固定費生産性の向上などに取り組みます。また、データソリューション事業においては、連結子会社であるJMDC社との協業を深化させ、ヘルスケアのみならず産業オートメーション等の領域でも新たな価値創出を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「SF2030」に向け、企業理念の実践を通じて社会的課題の解決を志す、多様で専門性の高い人財が集う集団を目指しています。会社と社員が「選び・選ばれ、ともに成長する」関係を築くことを前提に、リーダーシップの質の変革や、社員の主体性を引き出す組織カルチャーへの変革をグローバルに進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 15.2年 8,205,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.0%
男性育児休業取得率 67.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントサーベイにおけるSustainable Engagement Index(SEI)のスコア(69.5点)、ピープルマネジメントスキル強化施策への参加率(87.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業ポートフォリオ


中国経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱、米国関税政策の影響など、事業環境の変動リスクがあります。特定の地域や事業への依存度が高い場合、想定以上の環境悪化により業績が低迷する可能性があります。同社は構造改革を通じてポートフォリオの最適化を進め、リスク分散を図っています。

(2) 品質


製品の安全性や品質に対する要求は高く、大規模なリコールや法規制違反が発生した場合、ブランド価値の毀損や多額の損失につながる恐れがあります。特に、AIや製品セキュリティなどの新技術領域でのリスク管理が重要となっており、品質マネジメントシステムの強化やセキュリティ対策を推進しています。

(3) 地政学リスク


米中対立などの地政学的緊張や各国の保護主義的な政策、経済安全保障に関する規制強化は、グローバルに展開するサプライチェーンや事業活動に影響を与える可能性があります。輸出規制や制裁への抵触、紛争による供給停止などのリスクに対し、中長期的な体制の見直しや法規制動向のモニタリングを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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