オムロン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オムロン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するオムロンは、制御機器やヘルスケア機器、社会システム機器などの製造・販売、ならびにデータソリューション事業をグローバルに展開しています。直近の業績では、生成AI関連需要などを捉え、売上収益、当期純利益ともに前期を上回り、増収増益のトレンドとなっています。


※本記事は、オムロン株式会社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. オムロンってどんな会社?


同社は、産業用オートメーション機器やヘルスケア機器の開発・製造・販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1933年に立石電機製作所として創業し、レントゲン写真撮影用タイマの製造を開始しました。1948年に株式会社へ改組し、1966年に東京証券取引所市場第一部に上場しています。1990年に現在のオムロンへ社名を変更しました。近年は、2022年に医療統計データサービスのJMDCと資本業務提携を行い、2023年には同社を子会社化するなど、モノづくりからデータソリューション事業への進化を加速させています。

現在、同社グループの従業員数は連結で26,050名、単体で3,855名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位は金融機関の京都銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 21.49%
日本カストディ銀行(信託口) 10.33%
京都銀行 3.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長 CEOは辻永順太氏が務めています。社外取締役の比率は約37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
辻永順太 代表取締役社長 CEO 1989年同社入社。2016年インダストリアルオートメーションカンパニー商品事業本部長等を経て、2023年より現職。
山田義仁 取締役会長 1984年同社入社。2008年オムロンヘルスケア代表取締役社長、2013年社長CEO等を経て、2023年より現職。
宮田喜一郎 代表取締役執行役員副社長CTO 1985年入社。2010年オムロンヘルスケア代表取締役社長、2015年CTO、2017年代表取締役等を経て、2023年より現職。
冨田雅彦 取締役執行役員専務CHRO 兼 CRO 兼グローバル人財総務本部長 1989年同社入社。2014年執行役員、2017年グローバル人財総務本部長、2023年執行役員専務CHRO等を経て、2026年より現職。
行本閑人 取締役 1985年同社入社。2009年欧州子会社社長、2014年環境事業本部長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、上釜健宏(元TDK代表取締役会長)、小林いずみ(元多数国間投資保証機関長官)、鈴木善久(元伊藤忠商事代表取締役社長COO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「インダストリアルオートメーションビジネス」「ヘルスケアビジネス」「ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス」「データソリューションビジネス」および「その他」事業を展開しています。

(1) インダストリアルオートメーションビジネス(制御機器事業)


同社独自のセンシング&コントロール技術を基盤とし、プログラマブルコントローラやセンサ、産業用ロボットなどの幅広い制御機器を提供しています。製造業を中心としたグローバルの顧客に対し、生産性の向上や自動化によるモノづくり革新を支援する革新的なソリューションを展開しています。

収益は、製造業などの顧客への制御機器コンポーネントの販売や、システム機器の提供により獲得しています。運営は主に同社および海外地域の子会社各社が行っています。

(2) ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業)


使いやすさと医療現場で活用できる精度を兼ね備えた、血圧計や体温計、ネブライザなどの医療機器とサービスを世界130カ国以上に提供しています。近年は遠隔診療サービスの領域にも注力し、患者のバイタルデータを医師がモニタリングするサービスを欧米を中心に展開しています。

収益は、一般消費者や医療機関への医療・健康機器の販売、および遠隔患者モニタリングサービスの利用料などから得ています。運営は主にオムロンヘルスケアとその子会社各社が行っています。

(3) ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス(社会システム事業)


社会インフラを支える事業として、蓄電システムや太陽光発電用パワーコンディショナーなどのエネルギー関連製品を提供しています。また、自動改札機などの駅務システム、交通管制システムやインフラモニタリングなど、幅広い製品・システムを展開し、安全・快適な社会の実現に貢献しています。

収益は、社会インフラ事業者などに対する製品・システムの販売や、エンジニアリングから運用管理・保守メンテナンスを一体で提供するサービス料金から得ています。運営は主にオムロンソーシアルソリューションズが行っています。

(4) データソリューションビジネス(データソリューション事業)


グループ全体をモノづくりからソリューションビジネスへと進化させるため、各事業から得られる現場データと子会社JMDCのデータマネジメント力を組み合わせています。健康寿命の延伸やカーボンニュートラルの実現といった社会的課題を解決する、新たなデータサービス事業を展開しています。

収益は、健康保険組合や医療機関等に由来する匿名加工データの提供・利活用サービスや、企業・生活者向けの健康管理支援サービスの利用料などから得ています。運営は主にJMDCをはじめとする子会社各社が行っています。

(5) デバイス&モジュールソリューションズビジネス(電子部品事業・非継続事業)


EV・モビリティや家電、産業機器など幅広い業界の顧客に対し、電気を繋ぐ・切るためのリレーやスイッチ、センサなどのデバイスやモジュールを提供しています。

収益は、各種メーカーに対する電子部品の販売から得ています。なお、同事業はポートフォリオ最適化の一環として他社への事業譲渡が決定しており、非継続事業に分類されています。運営は主にオムロンデバイスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の売上高は、2023年3月期に8,761億円を記録した後、翌期から一時減少したものの、直近では回復基調にあります。税引前利益および利益率も2023年3月期をピークに一時落ち込みましたが、直近の2026年3月期には利益率が6.9%まで改善し、増収増益のトレンドを示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,629億円 8,761億円 8,188億円 7,154億円 7,674億円
税引前利益 867億円 984億円 350億円 331億円 526億円
利益率(%) 11.4% 11.2% 4.3% 4.6% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 614億円 739億円 81億円 163億円 285億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、売上高の増加に伴い税引前利益や当期純利益も改善しています。これは生成AI関連需要などによる売上の拡大に加え、固定費の効率的な運用や生産性向上を図ったことなどが寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,154億円 7,674億円
営業利益 -242億円 -184億円
営業利益率(%) -3.4% -2.4%

(3) セグメント収益


セグメント別の収益では、主力のインダストリアルオートメーションビジネスが生成AI関連の需要を捉え、売上・利益ともに大きく伸長し全体の業績を牽引しています。また、データソリューションビジネスやソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネスも増収増益となり、成長基盤の強化が進んでいることがうかがえます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
インダストリアルオートメーションビジネス 3,647億円 4,095億円 363億円 428億円 10.5%
ヘルスケアビジネス 1,459億円 1,453億円 175億円 154億円 10.6%
ソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネス 1,436億円 1,443億円 153億円 197億円 13.7%
データソリューションビジネス 427億円 512億円 28億円 36億円 7.0%
消去調整他 185億円 172億円 -185億円 -216億円 -125.6%
連結(合計) 7,154億円 7,674億円 534億円 599億円 7.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 558億円 609億円
投資CF -479億円 -701億円
財務CF -4.6億円 324億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業は社会の公器」であるという考えに基づき、事業を通じてよりよい社会づくりに貢献することを使命とし、企業理念を軸にした経営を実践しています。創業者・立石一真が1959年に制定した社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を礎としており、持続的発展が可能な社会・経済システムづくりへの貢献を存在意義として掲げています。

(2) 企業文化


すべてのステークホルダーに対して、事業を通じて企業理念を実践していくための考え方を示す「経営のスタンス」を設定しています。そこでは「長期ビジョンを掲げ、事業を通じて社会的課題を解決すること」「真のグローバル企業を目指し、公正かつ透明性の高い経営を実現すること」「すべてのステークホルダーと責任ある対話を行い、強固な信頼関係を構築すること」を掲げ、持続的な企業価値の向上を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2030年度までの新たな中期ロードマップ「SF 2nd Stage」を掲げています。ハードウェアの提供だけでなく、現場のデータやノウハウを価値ある情報へ変換して顧客の課題を解決する「GEMBA DX企業」への転換を目指しています。

* 売上高の年平均成長率(CAGR):7%
* 営業利益率:12%
* 自己資本利益率(ROE):10~12%
* 投下資本利益率(ROIC):8~10%
* データサービス売上比率:15%

(4) 成長戦略と重点施策


「SF 2nd Stage」では、「事業ポートフォリオの再構築」をコア戦略としています。収益性や市場成長性などの観点から、グループの成長を牽引する13事業(コントローラやセンサなどのデバイス事業と、データヘルスなどのデータサービス事業)を注力事業に特定しました。まずは注力デバイス事業への投資を集中させて競争優位性を高め、そこから得たキャッシュをデータサービス事業に投資して売上比率を向上させることで、事業ポートフォリオを進化させていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業を通じた社会的課題の解決を実現する原動力は社員一人ひとりであると考え、会社と社員が「共に成長する」新たな関係の構築を目指しています。多様な人材の能力を最大限に引き出すため、パフォーマンスマネジメントとピープルマネジメントを両立させるマネジメントスタイルの変革や、主体性を生む組織カルチャーの醸成を推進しています。注力事業への人材アロケーションや経営人材の計画的な育成にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.5歳 14.8年 8,882,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.4%
男性育児休業取得率 86.2%
男女賃金差異(全労働者) 76.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメント指標(グローバル 67)、Scope1・2の温室効果ガス排出量削減(2016年度比▲33%)、Scope3の温室効果ガス排出量削減(2016年度比▲40%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質と法規制・セキュリティリスク


製品の安全性や正確性の確保、AI利用や製品セキュリティに関する新たな法規制、環境配慮への要請が高まっています。これらに対する対策が十分でない場合、製品の大規模リコールや法規制違反、サイバー攻撃によるネットワーク製品・サービスの稼働停止などが発生し、損失やブランド価値の毀損につながる可能性があります。

(2) グローバルな地政学リスクの顕在化


生産・販売拠点をグローバルに展開する中、米国の関税引上げや各国の経済安全保障政策、技術保護競争、紛争による地政学リスクが高まっています。サプライチェーンの見直しなどへの対応が遅れた場合、競争力の低下や製品供給の停止、大幅なコスト増加、輸出規制違反などが発生し、事業戦略の実現を阻害する可能性があります。

(3) デジタル技術の進展に伴うIT・情報リスク


AIやクラウド等のデジタル技術への依存度が高まる一方、サイバー攻撃の高度化・巧妙化や各国のデータ・プライバシー規制の複雑化が進んでいます。対策が不十分な場合、大規模なシステム障害やサイバー攻撃による情報漏洩、事業の停止、規制違反による行政罰などが生じ、事業活動に重大な支障を来すリスクがあります。

(4) サプライチェーンの分断と事業継続リスク


旺盛なAI需要や地政学的緊張により、半導体等の重要部品や原材料の供給逼迫が拡大する可能性があります。また、自然災害や感染症による社会の機能不全も継続的なリスクです。これらにより、重要仕入先からの長期にわたる供給停止や自社工場の生産停止が発生し、社会的供給責任が果たせなくなる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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