【年収研究シリーズ】商船三井の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
商船三井は2018年8月、船員の手配や紹介を行うフィリピンの人材会社と設立した商船大学「MOLマグサイサイ・マリタイム・アカデミー」を現地に開校し、同9月12日に首都マニラの南にあるダスマリニャス市で開校式典を行いました。4年制大学で1学年あたり最大300人を育成し、卒業生のうち一定数を船員として商船三井で雇用する予定です。
開校時の会見において社長の池田潤一郎氏は、雇用している船員のうち7割を占めるフィリピン人船員の知識と技術の水準を高め、長期にわたって質の高い人材を確保することへの期待をのぞかせました。
同校は全寮制で、機関士としての知識を身に付ける機関科と船長を目指す航海科があり、各科の定員は1学年につき150人です。一般教養を含めた座学を3年間受けた後、1年間の実習を経て卒業というカリキュラムが組まれています。卒業生は商船三井とマグサイサイが半数ずつ引き受ける予定です。
海運業界で売上高第2位を誇る商船三井は、このような独自の取り組みが今後どのような結果へ結び付くのか、業界内でも注目されています。
また商船三井は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
商船三井の平均年収は1072.8万円
それでは、はじめに商船三井の平均年収について見ていきます。商船三井の平均年収は、商船三井の有価証券報告書によると、1072.8万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した商船三井年代別年収レンジは、20歳代で790〜840万円、30歳代で1020〜1070万円、40歳代で1160〜1210万円となっています。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ2.17倍の額です。
■商船三井の平均年収推移
商船三井・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
商船三井の平均年収は前年を上回り1072.8万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
商船三井の年代別平均年収と中央値
■商船三井の年収中央値は30代で1039万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
商船三井と競合他社の平均年収を比較
商船三井の競合や同業界である日本郵船、川崎汽船の3社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、商船三井が1072.8万円、日本郵船が1082万円、川崎汽船が990.4万円です。
この3社の中で最高額は日本郵船の1082万円で、最低額が川崎汽船の990.4万円。その差はおよそ92万円で、そこそこの差があります。
この比較企業の中では商船三井は2番目に位置します。
商船三井の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
乗船員は手当が充実
商船三井の職種は、陸上職と海上職の2種に分けられます。このうち海上職では、職務上特有の手当が複数あり、その存在が海上職の年収増加に大きく影響しています。口コミによると、手当の額は等級によって異なり、30万円から60万円ほどの差があるようです。公式ホームページ内の採用情報では、「乗船手当」「航海日当」などの名目が挙げられています。
また、こちらは公式情報ではありませんが、入社10年目までは年功序列方式で昇給していくようです。さらに課長代理や課長、部長といった役職クラスでは、給料はほぼ同一線上ということです。言い換えると、このあたりになると階段的には上がらないということがわかります。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
商船三井社員の給与明細(キャリコネ)
約10年で、何と2倍以上の年収に!!
20代・法人営業の
給与明細
30代・法人営業の
給与明細
残業代が積み重なると、年収で○○○万円もの差が!?
30代・営業・時間外手当ありの
給与明細
30代・営業・時間外手当なしの
給与明細
対応は昼夜問わず
商船三井では、入社後すぐから大きな責任を伴う仕事に就く場合があります。運行管理担当であれば、休日であっても船にトラブルがあった際には対応しなければならず、いつトラブルがあっても的確に対応する姿勢が必要となるようです。24時間365日動いている仕事というこもあり、休日も対応が必要な状況に抵抗を持つ人も少なくないでしょう。
また商船三井は、2018年3月末において857隻と保有船数は日本一です。しかし長期保有によって、修繕コストが発生するリスクが伴います。競合の日本郵船では、不測の事態に柔軟に対処しにくい「自社保有・長期傭船契約」から「フォワーディング(船舶を保有せずに手配業務などを中心に行うこと)・短期傭船契約」へと移行しつつあります。多くの船を保有していることは強みでもありますが、留意しておく必要がありそうです。
商船三井には年収以外にメリットはある?
ここまで商船三井の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
今後業績が拡大する可能性があることは、大きなメリットかもしれません。
CO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)が近年注目されており、近い将来船舶において環境規制が強化されるようです。従来の船舶用燃料であった重油からLNGを導入する動きが広がっていることから、LNGの需要が伸びると予想されています。そのLNGを輸送する船の所有率では、川崎汽船や日本郵船を抜いて商船三井が国内トップですので、大きな戦力となり今後業績の拡大が期待できます。
そして何よりも1253名という決して多くはない社員数で、計500を超える海外拠点と450社のグループ会社、857隻の船を担っているわけですから、大いにダイナミズムを味わえることでしょう。また日本のライフラインといえる産業で、人々の生活に与える影響は果てしなく大きく、やりがいに見合うだけの年収が約束されている会社でもあります。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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