【年収研究シリーズ】シスメックスの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
健康診断や病院で、誰もが一度は体験したことのある検査に血液検査があります。この血液検査の進化を支えて道を切り開いた会社が、今回紹介するシスメックスです。
ヘマトロジー検査という血液計数検査では、赤血球・白血球・血小板の数や種類、形状を測定するとともに、ヘモグロビンなど貧血に関する項目などを調べます。従来のヘマトロジー検査では、一般的に顕微鏡が用いられていました。しかしデメリットがいくつかあり、人手を必要とするため人件費がかさむこと、直接的な接触による血液感染のリスクがあること、また1つずつ検査するため生産性が低いことなどが問題とされていたのです。
そのような懸念点を払拭したのがシスメックスで、国内において初めてヘマトロジー検査を自動化するという偉業を成し遂げました。これにより血液をセットするだけで、顕微鏡での目視を必要とする検体を検出し、スライドガラスに血液を引いて標本を作成するという過程が自動的に進むように変化したのです。
またシスメックスは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
シスメックスの平均年収は835.5万円
シスメックスの有価証券報告書によると、平均年収は835.5万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考にシスメックスの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で490〜540万円、30歳代で690〜740万円、40歳代で860〜910万円となりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.69倍の額です。
■シスメックスの平均年収推移
シスメックス・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
シスメックスの平均年収は前年を上回り835.5万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
シスメックスの年代別平均年収と中央値
■シスメックスの年収中央値は30代で708.5万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
シスメックスと競合他社の平均年収を比較
シスメックスの競合や同業界であるオムロン、ニプロ、テルモ、日本光電工業の5社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、シスメックスが835.5万円、オムロンが849.7万円、ニプロが658.3万円、テルモが736.5万円、日本光電工業が891.8万円です。
この5社の中で最高額は日本光電工業の891.8万円で、最低額がニプロの658.3万円。その差はおよそ234万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではシスメックスは3番目に位置します。
シスメックスの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
シスメックスの年収がこれほど高いということはどういう理由があるのでしょうか?
シスメックスの年収が高い理由は?
シスメックスの強みは、血液や尿の検査に用いる機器の製造・販売の分野で世界シェア首位を打ち出している点です。なぜそこまでの成長を成し遂げたのか、その所以はシスメックス独自のアフターサビまでセットにしたビジネスモデルにあります。
たとえばこれまで機器の販売には、無償のサポートやサービスが付属していました。そこでシスメックスは、故障の予防やメンテナンスのためのサービスを充実させたり、ITを活用したサービスを展開したりすることで、提供する価値をより高めて生み出すようにしたのです。このことにより、かつてはコストセンターだったサービスとサポートが、現在ではプロフィットセンターへと転換したのです。こうして従来のビジネスモデル自体が発展して成長することで、現在の営業利益率は21.0%と驚異ともいえる数字を叩き出しています。
シスメックス社内で年収(給与・報酬)が高い職種・役職は?
シスメックスでは入社時にコースが分かれており、院卒や大卒、高専卒などの最終学歴に問わず、各コースによって初任給や勤務地の範囲が異なります。まずは総合コースで、複数の職種を経験してマネージャーや社内有数の専門家としてのキャリアを構築するもので、勤務地は国内・海外問わず可能性があると考えておくとよいでしょう。次にグローバルコースは、総合コース応募者の中から会社に選ばれます。そして最後は専門コースで、特定の職務のスペシャリストとしてキャリアを構築します。こちらは地域密着型の働き方となるため、原則転居を伴う異動はなしありません。
2017年4月の初任給で比較すると、総合コースが23万円、グローバルコースが25万円、専門コースの技術系は20万円、事務系は18万円となっています。なお営業職は、みなし残業代として20~25%の営業手当がつくようです。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
シスメックス社員の給与明細(キャリコネ)
30代では、報酬が大きく上昇!
20代・汎用機系SE(非管理職)の
給与明細
30代・汎用機系SE(非管理職)の
給与明細
同じ20代といえども、職種が違えば年収にも差が…
20代・研究開発(非管理職)の
給与明細
20代・MR(非管理職)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
シスメックスの見落としがちな留意点、課題は?
細やかなアフターサービスがシスメックス独自の売りではありますが、それゆえのしわ寄せも存在します。技術職にとっては対応するメンテナンスの分野が幅広いうえに細かく、毎日のように修理が発生します。これに伴って、頻繁に取引先へ訪問をすることもあれば、深夜に作業をすることもあり、現場の疲弊は免れません。とくに技術職を目指す場合は、留意しておくとよいでしょう。
また賞与は年収に占める割合が高く、業績連動型となっています。業績が好調の時期には、年間7か月分ほどの非常に高い賞与が支払われています。しかし一方で、減益減収などで業績不振に陥った場合は年収も減少するというリスクがあることも、十分に注意しておきたいところです。
シスメックスには年収以外にメリットはある?
ここまでシスメックスの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
シスメックスが目指しているものは、社員のワークライフバランスの充実です。たとえば月平均残業時間は16.1時間で、これは1日当たり約1時間という時間数になります。有給休暇においては、年間消化率は65.2%にも上ります。さらに研究開発部門では、フレックスタイム制度を積極的に利用している社員が多く、残業した翌日の出勤時間を9時30分にずらすといった働き方もしているようです。このように翌日の始業を遅らせることで、夜間の就業による疲労を少しでも和らげるなどの効果を生むことができます。
また30歳までは住宅手当が優遇されていることも特長です。住居の賃料のうち9割を会社が負担し、残る1割分を給与天引きとする仕組みがあります。こうしたことから、社員のワークライフバランスを支えようという会社の意思が垣間見えます。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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