2018年に上映され話題になった俳優の山下智久主演の映画「コード・ブルー」が、実写邦画ランキングで歴代5位を記録したそうです。この劇中の救急医療の現場で何度も目にするのは、AEDです。AEDは “Automated External Defibrillator”の頭文字で、日本語では「自動体外式除細動器」といいます。このAEDを国内で唯一作っている企業が、今回取り上げる日本光電です。
一般市民がAEDを使用できるようになったのはほんの10数年前からですが、近年は学校教育の現場で心肺蘇生を教えるケースなども増え、AEDは一般社会にも広く深く浸透してきました。現在では、日本光電のAEDは空港、駅、学校、コンビニなど人が集まるところに合計32万台以上もの数が設置されています。日本光電はAEDの国内No.1メーカーとして、一般市民がいつでもどこでもAEDを使用できるように環境に整え、救命率の向上に貢献してきた立役者なのです。
また日本光電(日本光電工業)は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
日本光電工業の平均年収は891.8万円
それでは、はじめに日本光電工業の平均年収について見ていきます。日本光電工業の平均年収は、日本光電工業の有価証券報告書によると、891.8万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した日本光電工業年代別年収レンジは、20歳代で530〜580万円、30歳代で740〜790万円、40歳代で920〜970万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.8倍の額です。
■日本光電の平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 891.8万円 | 41.9歳 | 15.3年 | 3539人 |
2021年3月期 | 847.1万円 | 41.5歳 | 14.6年 | 3482人 |
2020年3月期 | 855.6万円 | 41.1歳 | 14.7年 | 3451人 |
2019年3月期 | 848.5万円 | 40.8歳 | 14.4年 | 3382人 |
2018年3月期 | 840万円 | 40.3歳 | 14.1年 | 3358人 |
出典:日本光電工業・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
日本光電工業の平均年収は前年を上回り891.8万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
日本光電工業の年代別平均年収と中央値
■日本光電工業の年収中央値は30代で756.2万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 547.1万円 | 35.7万円 | 96.3万円 | 492.39万円 |
30代 | 756.2万円 | 48.8万円 | 133.3万円 | 680.58万円 |
40代 | 939.7万円 | 60.4万円 | 165.7万円 | 845.73万円 |
50代 | 1111万円 | 71.1万円 | 195.9万円 | 999.9万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
日本光電工業と競合他社の平均年収を比較
日本光電工業の競合や同業界であるオムロン、ニプロ、テルモ、フクダ電子、オリンパスの6社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、日本光電工業が891.8万円、オムロンが849.7万円、ニプロが658.3万円、テルモが736.5万円、フクダ電子が815.2万円、オリンパスが922.4万円です。
この6社の中で最高額はオリンパスの922.4万円で、最低額がニプロの658.3万円。その差はおよそ265万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では日本光電工業は2番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
オリンパス | 922.4万円 | 42.61歳 | 14.32年 | 3478人 | 3786.37億円 |
日本光電工業 | 891.8万円 | 41.9歳 | 15.3年 | 3539人 | 1619.76億円 |
オムロン | 849.7万円 | 45.5歳 | 16.7年 | 4610人 | 3109.89億円 |
フクダ電子 | 815.2万円 | 42.5歳 | 14.5年 | 669人 | 824.7億円 |
テルモ | 736.5万円 | 40.9歳 | 16.9年 | 5377人 | 3413.64億円 |
ニプロ | 658.3万円 | 40.7歳 | 13.1年 | 4252人 | 3311.71億円 |
日本光電工業の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
日本光電の年収がこれほど高いということはどういう理由があるのでしょうか?
日本光電の年収が高い理由
■脳波計は国内シェア80%
日本光電は冒頭で紹介したAED以外にも、医療現場に欠かせない多くの製品で国内トップシェアを誇っています。たとえば脳波計は国内市場の80%を占め、生体情報モニタにおいても国内No.1です。また、指先にセンサを装着するだけで血液中の酸素飽和度を測定できるパルスオキシメータについては、なんと日本光電が世界で初めて開発に成功しました。
日本光電の顧客リストには大学病院のように規模の大きな「急性期病院」も名を連ねています。急性期病院とは、緊急・重症な状態にある患者に対して高度で専門的な医療を提供する病院のことです。現在、病院側も医療の質や効率の向上のために高度な医療機器を求めており、その結果として医療機器の更新需要がますます高まり、日本光電の売上にも大きく寄与しているのです。
日本光電は売り切りの設備ではなく、消耗品・保守サービスが必要なリカーリングビジネスを多く手掛けており、現在これらが売上の4割を占めています。リカーリングビジネスは安定した収益が望めるため、今後も比重を置いていく構えです。
日本光電内で年収が高いのは誰か
■完全年功序列型 45歳まで行けば1000万円が見えてくる
日本光電は年功序列制度を採用していること、またインセンティブがほぼない特徴ある給与体系を採っています。そのため年功序列により、入社年数に応じた額が支給される仕組みと考えてよいでしょう。
日本光電は初任給も高く昇給幅も大きいといわれています。おおよその給与額の目安は、30歳手前で700万円前後、40歳手前で900万円前後、そして45歳以降で1000万円を超えるイメージです。また職種別手当が存在し、年収に占める割合は低いものの、外勤職には日当が支給されます。
インセンティブがほぼないため、モチベーションをキープするのは自分の心がけ次第となりますが、賞与面では好待遇が用意されていることから、社員からは満足の声も聞かれます。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
日本光電(日本光電工業)社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代で年収に差が!
20代・法人営業(非管理職)の 給与明細
30代・法人営業(非管理職)の 給与明細
同年代・同職種間では差が出ない!?
30代・販売促進(非管理職)の 給与明細
30代・販売促進(非管理職)の 給与明細
日本光電の懸念点・課題は何か
■商材が商材だけに、即応体制にいなければならない
日本光電の顧客の多くは病院のため、緊急対応が必要とされます。病院の機器が故障した際には現地での即時対応が求められ、病院の診療時間外の夕方から夜にかけて対応要請が多くあります。その他にも、一人が担当する取り扱う機種が非常に多く、知識と技術がなかなか追いつかないなどの業務の特性上、サービスエンジニアは苦労することも多いようです。
また取り扱う製品が救急医療用機器であるため、仕方がないことではありますが、いつ何時でも緊急要請の連絡を受けることができるよう、常に携帯電話を手放すことができないといいます。365日24時間ずっと仕事に追われることで、ワークライフバランスを保つことが難しいといった声も耳にします。
日本光電には年収以外にメリットはある?
ここまで日本光電(日本光電工業)の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
前項の懸念点にあった取扱機種の多さについては、逆に考えれば、営業職にとってはより多くの部門に、製品をトータルで提案できるというメリットにつながります。顧客の悩みに多方面からアプローチできる営業職は、顧客からの信頼も厚いものとなり、モチベーションにつながることでしょう。
また日本光電の顧客の割合は、大学病院が20%、官公立病院が29.4%、私立病院が23.1%、診療所が13.7%と官民・大小のバランスがよくとれていることがわかります。このように幅広い顧客と取引関係にあるため、実際の医療現場で自社製品が患者の命を救う現場を直接目にする機会も多く、仕事を通じて大きなやりがいを感じるのではないでしょうか。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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