本記事は、EY(Ernst & Young Global Limited)が公表した以下の公式一次資料に加え、EY Japan(EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社やEY新日本有限責任監査法人など)を中心とする日本法人の公式情報に基づき、客観的なファクトを積み上げて作成しています。
- EY Value Realized 2025:EYグローバルネットワーク全体の業績ハイライト、事業戦略、AIへの投資状況、ならびに人材・ESGに関する取り組みを包括的にまとめた年次報告書。
- EY Japan 統合報告書 2025:EY Japanにおけるビジネス戦略、財務業績、多様性(DE&I)推進やウェルビーイング施策など、日本法人の実態を詳述したレポート。
- EY グローバル行動規範 2024:EYのパーパス、バリュー、プロフェッショナルとしてコンサルタントに求める倫理観を定義した公式指針。
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング 採用ブローシャー:EY SCのマトリックス組織体制、キャリアパス、働き方、および各部門(ユニット・セクター)の具体的な採用要件を網羅した公式採用資料。
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング キャリア採用サイト:求める人物像(Transformative Leader)や評価・育成・勤務制度、最新の選考・イベント情報を公開している公式Webサイト。
1.企業の概要とアイデンティティ
■1-1 ネットワークの概要
- EYは、世界150以上の国と地域に展開し、約40万人のプロフェッショナルを擁する世界有数のプロフェッショナル・サービス・ファームのグローバルネットワークです。
- 巨大なグローバルネットワークを統括する仕組みとして、EYの各メンバーファームは法的にそれぞれが独立した組織として運営されていますが、英国の保証有限責任会社であるアーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッド(EYG)がネットワーク全体の調整や連携の促進役を担っています。これにより、EY全体で足並みをそろえて協働し、グローバルで設定された戦略目標を実行する体制が構築されています。
- 事業領域としては、主に「アシュアランス(監査・保証業務)」「税務(Tax)」「ストラテジー・アンド・トランザクション」「コンサルティング」の4つのサービスラインを展開しています。データ、AI、および先進テクノロジーを活用し、クライアントが直面する複雑な課題に対して最適な解決策を導き出し、企業の変革と成長を支援しています。
■1-2 トップと経営陣
- EYのグローバルチェア兼CEOは、ジャネット・トランケール(Janet Truncale)氏が務めています。同氏のもと、EYは多様な価値観とパーパスに基づく経営を掲げ、インクルーシブで協力的な企業文化の醸成を推進しています。
- EY Japanのチェアパーソン 兼 CEO(およびAsia East マネージング・パートナー)を務めるのは、貴田守亮氏です。貴田氏は、気候変動や地政学リスクなどが複雑に絡み合う「ポリクライシス(複合危機)」の時代において、複合的な視点と大局観を持ってクライアントの価値を高めることを重視しています。現在、EYがグローバルで掲げる「All in戦略」のもと、特にサステナビリティとAIの領域へ経営資源を集中的に投資し、日本における社会課題の解決を強力に推進しています。
- 戦略から実行までを担うEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EY SC)は、代表取締役社長である近藤 聡氏(EY Asia East / Japan ストラテジー・リーダー)をはじめとする経営陣によって牽引されています。
- また、コンサルティング部門のトップである吉川 聡氏(代表取締役/マネージング・パートナー)、EYパルテノン(戦略部門)のトップである川口 宏氏(代表取締役/マネージング・パートナー)など、各領域の第一線で活躍してきたプロフェッショナルが代表取締役に名を連ねており、専門性を結集して企業の抜本的なトランスフォーメーションを支援する体制が構築されています。
■1-3 グローバルの企業理念体系
EYは、以下の明確な企業理念体系のもとで事業を展開しています。
◆パーパス(存在意義): 「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」。高品質なサービスの提供を通じて、資本市場と世界経済における信頼の構築に貢献することを目指しています。
◆バリュー(価値観): 以下の3つを掲げています。
- 誠実、相互の敬意、協働、インクルーシブな精神の実践
- 人々をリードする活力、情熱、勇気の保持
- 正しいことを実行することによる信頼関係の構築
◆Ambition(目指すべき姿): 世界で最も信頼される独自性を持ったプロフェッショナル・サービス・ファームとして、4つの長期的価値(Client value、People value、Social value、Financial value)を創出することです。
◆グローバル行動規範(5つのコミットメント)
EYはプロフェッショナルとしての倫理観を極めて重視しており、役職や所在国に関係なく全メンバーに適用される指針として以下の5つのコミットメントを定めています。
- 互いに協力し合うこと
- クライアント及び他者(公益)双方のために働くこと
- プロフェッショナルとして誠実に行動すること
- 客観性と独立性を維持すること
- データ・情報・知的財産を尊重すること
◆特徴的な企業文化
この行動規範の実践において、EYでは倫理上の疑問があれば問題を隠さず、適切な相談を通じて解決する「コンサルテーション(相談)」の文化が根付いています。また、クライアントにとって歓迎されない情報であってもためらわずに伝える「勇気」や、異なる視点やバックグラウンドを尊重する「インクルーシブな環境」を重視している点も、EYのカルチャーを象徴しています。
■1-4 日本法人の企業理念体系と沿革
EY Japanは、1967年に日本初の監査法人として誕生した「監査法人太田哲三事務所」を原点としています。現在は、EY新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EY SC)などの法的に独立した法人で構成され、相互に連携しながらサービスを提供しています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、コンサルティング機能とM&Aアドバイザリー機能を統合する形で2020年10月に発足しました。戦略策定からM&A、トランスフォーメーションの実行支援までをシームレスかつ一気通貫で提供できる体制は、同社の大きな強みとなっています。
EY Japan全体としても、グローバル共通のパーパス「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をあらゆる判断の原点に据えています。
さらにEYストラテジー・アンド・コンサルティングのキャリア採用においては、「情熱を胸に 確信を手に より良い社会を創る」という独自コンセプトを発信しています。複雑化する社会課題を経営課題と捉えて解決に導くこと、そしてメンバー一人ひとりの中にある「未来を形づくる力」を引き出し、自信を持って前進できる環境を築くことを求職者に対して約束しています。
2.業績と事業
EYのグローバルおよび日本法人における最新の財務状況や、各エリア・サービスラインの業績について解説します。
■2-1 主要財務指標
EYはグローバル全体で力強い成長を継続しており、過去5年間(FY20〜FY25)の年平均成長率(CAGR)は8.2%を記録しています。グローバルの総業務収入に関する直近3年間の推移は以下の通りです。
| 指標 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| グローバル業務収入 | 494億米ドル | 512億米ドル | 532億米ドル |
※出典:「EY Value Realized 2025」
一方、日本法人の業務収入に関しては、2025年度実績で2,720億円を記録しており、日本市場においても強固なビジネス基盤を築いていることがわかります。
■2-2 セグメント(エリア)別業績
グローバルの業務収入を主要3エリア(Americas、EMEIA、Asia-Pacific)別に見ると、過去3年間にわたり各エリアで概ね堅調な推移を見せています。2025年度の実績においては、欧州や中東を含むEMEIAが前年比5.5%増(現地通貨ベース)と最も高い成長率を記録しました。
| エリア | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| Americas(北・中・南米) | 236億米ドル | 241億米ドル | 247億米ドル |
| EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ) | 183億米ドル | 199億米ドル | 211億米ドル |
| Asia-Pacific(アジア・パシフィック) | 75億米ドル | 72億米ドル | 74億米ドル |
※出典:「EY Value Realized 2025」
■2-3 製品・サービス別業績
EYの事業は、「アシュアランス(監査・保証業務)」「コンサルティング」「税務(Tax)」「ストラテジー・アンド・トランザクション」の4つの主要サービスラインで構成されています。2025年度のグローバル全体の収益内訳は以下の通りです。
| サービスライン | 2025年度実績 |
|---|---|
| Assurance(監査・保証業務) | 179億米ドル |
| Consulting(コンサルティング) | 164億米ドル |
| Tax(税務) | 127億米ドル |
| Strategy and Transactions(戦略およびトランザクション) | 62億米ドル |
※出典:「EY Value Realized 2025」
EYストラテジー・アンド・コンサルティングへの転職志望者が主に関わる「コンサルティング」領域は、アシュアランスに次ぐ164億米ドルの規模を誇り、戦略から実行支援までを担う「ストラテジー・アンド・トランザクション」と合わせてEYの強固なビジネス基盤を形成しています。
製品・サービスの中でも、近年特に業績の成長を牽引しているのが最先端テクノロジーとサステナビリティの領域です。
- AI・テクノロジーの急成長: AI関連の収益は30%の成長を記録しており、ビジネスのテクノロジーシフトが顕著に表れています。この成長を支える基盤として、EYはグローバル全体で10万人以上のテクノロジー人材を擁しています。
- サステナビリティ関連サービスの拡大: 気候変動やESG対応など、サステナビリティに関連するクライアントサービスはすでに25,000社以上に提供されており、企業の長期的価値の創出を強力に後押ししています。
- エコシステムとアライアンス: 自社単独でのサービス提供にとどまらず、100社以上のエコシステムパートナー企業と連携することで、複雑化する課題に対して総合的なソリューションを提供するビジネスモデルが定着しています。
■2-4 研究開発・設備投資
EYは未来の成長とサービス品質の向上を見据え、テクノロジー分野に対して巨額の投資を継続的に行っています。
- グローバルでのテクノロジー投資: 監査品質向上のためのテクノロジー基盤に対して、グローバルで10億ドル規模の投資を行っています。
- 日本法人でのAI・テクノロジー投資: 日本においても積極的な投資が行われており、EY新日本有限責任監査法人の2025年度のテクノロジー投資は約95億円に達しました。具体的には、機械学習などの従来型AIを活用した異常検知ツールの導入や、生成AIのプロセス活用が進められています。
- コンサルティングおよび他部門でのAI実用化: 税務関連業務においてもAI-OCRなどのデジタルツールを利用した業務プロセスの自動化・標準化が実現しており、クライアントの業務改善支援(DX)にも直接的につながる高度な知見が蓄積されています。
また、こうした最新テクノロジーを扱うプロフェッショナルを育成するため、グローバル全体で人材育成(研修プログラム等)にも多大な投資が行われています(5.人材・キャリア参照)。
3.事業戦略と展望
EYが現在どのようなビジョンを描き、中長期的にどのようなビジネス領域に経営資源を集中させているのか、最新のグローバル戦略と日本市場での展開について解説します。
■3-1 事業戦略(新戦略「All in」と4つの注力領域)
EYは、複雑化する社会課題(ポリクライシス)や急速な技術革新に対応するため、2024年7月に新たなグローバル戦略「All in」を発表しました。この戦略のもと、EYは独自のポジションを確立している以下の4つの重点領域に対して、集中的に経営資源を投資しています。
1. サステナビリティ
- 短期的な利益追求にとどまらず、地球環境や人権問題の解決を通じた「長期的価値(Long-term value)」の創出を最重要視しています。
- 企業が持続的に成長するために不可欠な非財務価値(ESGに関する取り組みなど)の可視化や情報開示支援のほか、気候変動シナリオに基づく戦略立案など、経営の根幹に関わるコンサルティングニーズが拡大しています。
2. AI(人工知能)
- AIを「産業革命級の変革をもたらすもの」と位置付け、ビジネスへのAI導入とその設計を強力に推進しています。
- EY社内においても、全世界のプロフェッショナルに対して「Microsoft Copilot for Sales」などを提供し、最新のAI機能を活用したセールスエクセレンスとビジネストランスフォーメーションを実践しています。コンサルタント自身がAIと共存し、より付加価値の高い戦略的業務に専念できる環境が整備されています。
3. トランスフォーメーション(変革)
- 企業のビジネスモデルやサプライチェーンの抜本的な見直しなど、大規模な構造改革を支援します。EY SCでは、戦略策定からM&A、テクノロジーの実装までをシームレスに連携できるマトリックス組織体制を生かし、クライアントのトランスフォーメーションを一気通貫でサポートしています。
4. マネージドサービス
- 高度な専門知識と最新テクノロジーを組み合わせ、クライアントの特定業務(税務、コンプライアンス、サイバーセキュリティ運用など)を継続的に受託・高度化するサービスです。これにより、クライアントは自社のコアビジネスにリソースを集中させることが可能になります。
これらの戦略を推し進める上で欠かせないのが、外部パートナーとの連携です。EYは現在、世界をリードするテクノロジー企業など100社以上とアライアンス(エコシステム)を結んでいます。
1つのファーム単独では解決できない複雑な課題に対して、社外の最先端技術や知見を巻き込んで最適なソリューションを提供するアプローチが定着しており、実際に直近のグローバル収益成長の55%は、このエコシステムおよびアライアンス関連のビジネスによって牽引されています。
日本法人(EY Japan)においてもこの「All in」戦略はグローバルと歩調を合わせて展開されており、意思決定スピードの加速や、国境を越えた人材の柔軟な配置(モビリティ)の強化など、組織全体の変革が進行しています。
より良い社会の構築を目指して、All in 戦略を推進し、複合化する社会課題の解決に尽力
深刻化するポリクライシスの渦中において、私たちは多様なステークホルダーと協働しながら、複雑な課題の解決を図る必要があります。 私たちEYは、サステナビリティやAIなどへの経営資源の集中的な投入を通じて、長期的価値の創出を図り、社会やクライアントが抱える課題の解決に貢献することで、より良い社会の構築を目指します。
■3-2 戦略を実現する組織とガバナンス
EYは「All in」戦略を迅速かつ強力に推進するため、グローバル規模での組織体制の見直しと、強固なリスク管理体制の構築を行っています。
◆意思決定スピードの加速と組織の簡素化
- グローバル全体で「エリア」という管理レイヤーを縮小し、組織の簡素化を進めています。これにより、クライアントの課題に対してより迅速に対応できる体制を構築するとともに、捻出された資金をAIやサステナビリティといった重点領域への戦略的投資に充てています。
- また、日本を含む主要なグローバルリーダーが緊密に連携し、意思決定のスピードをさらに加速させています。
◆国境を越えた柔軟な人材配置(モビリティ)
- 企業のグローバル化(日系企業の海外展開など)が加速する中、EY Japanでは進出先の海外EY拠点と強力に連携するアプローチを進めています。
- 日本から海外拠点への出向(モビリティ)や、現地でのプロフェッショナル採用を強化することで、短期から中長期にわたる柔軟な人材配置を実現し、国境を越えてクライアントに寄り添うシームレスな体制を整えています。
◆戦略実行を支える統合的リスク管理(ERM)とAIガバナンス
- 急激なビジネス環境の変化に対応するため、EYは強固な統合的リスク管理(ERM)プログラムを運用しています。グローバル全体で「データリスクとガバナンス」「サイバーセキュリティ」「AIによるディスラプション(破壊的変革)」など8つの優先ネットワークリスクを特定し、厳格に管理しています。
- 特にAIの活用においては、自社内のガバナンス体制を強化するだけでなく、規制当局に対する法整備の提言や、AIマネジメントシステムの国際規格(ISO/IEC 42001)に関するクライアント向けサービスの提供など、監査法人をグループに持つファームならではの独立性と客観性を生かしたアプローチでデジタル社会の健全な発展を支えています。
4.報酬・評価制度
EYストラテジー・アンド・コンサルティングにおける報酬の考え方や、独自の採用・評価制度について解説します。
■4-1 報酬体系
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの具体的な給与レンジ(年収例)や詳細な賞与の仕組みについては、公式の採用資料において非公開となっています。詳細な給与水準や最新の待遇については、企業口コミサイト「キャリコネ」や転職エージェント等を通じて確認することが推奨されます。
一方で、採用情報を確認すると、独自の制度として「入社一時金」の仕組みが設けられています。社員経由(リファラル採用)で特定期間に応募し、入社に至った方を対象に一時金が支払われる制度が導入されており、EYストラテジー・アンド・コンサルティングが優秀な人材の獲得に対して積極的に投資を行っていることが伺えます。
■4-2 評価システム
EYでは、変化の激しい時代を牽引する次世代リーダーを育成するため、パフォーマンスと個人のキャリア志向を尊重する評価・育成プロセスを整備しています。
◆独自の評価・支援制度
EYの特徴的な評価・サポート体制として、主に以下の2つが挙げられます。
- カウンセラー制度: メンバー一人ひとりに対して上位職階の同僚が「カウンセラー」として任命されます。日々の業務評価だけでなく、中長期的なキャリアディベロップメントや、個人の「My purpose(自らのパーパス)」の醸成に向けた相談・アドバイスを定期的に行います。
- パフォーマンス主義: 年次にかかわらず、パフォーマンス次第でより高度な仕事を任される実力主義の環境が整っています。
◆柔軟なキャリア形成
- 評価に基づき、コンサルタントからシニアコンサルタント、マネジャーへと段階的に昇格していきますが、EY SCでは入社1年経過後から「キャリアチェンジ制度」を活用することが可能です。これにより、現在の評価に縛られず、自身の新たな目標に合わせて他の専門領域(ユニット)へチャレンジする道が開かれています。
◆昇格者を支える「Milestone Program」
- EYでは、昇格は単なる評価の結果ではなく「新たなステージの始まり」と位置付けられています。昇格者が新職階に適応するためのスキルやマインドセットを獲得し、EYの戦略やビジョンへの理解を深める場として、毎年「Milestone Program」が開催されています。
- このプログラムは職階別に実施され、パートナー昇格者はグローバル全体で、ディレクタークラスはアジア・パシフィック地域で、その他の職階は日本国内で開催されます。世界中、あるいは全国のリーダーが一堂に会して昇格を祝福するこの場は、昇格者同士の貴重なネットワーク構築の場としても機能しています。
◆フィードバックの文化
- また、EYの「グローバル行動規範」においては、「定期的に率直かつ建設的なフィードバックを求め・提供する」ことが全メンバーに期待されています。これにより、互いの成果をポジティブに把握し、プロフェッショナルとしての継続的な成長を後押しする風通しの良い評価カルチャーが根付いています。
5.人材・キャリア
「人」こそが最大の資産であるという考えのもと、EY SCが提供している柔軟なキャリアパスと、世界水準の人材育成制度について解説します。
■5-1 キャリアパス
- EY SCのコンサルタント職のステップは、コンサルタント(平均的目安3〜4年程度)、シニアコンサルタント(3年程度)、マネジャー(4年程度)、シニアマネジャー/ディレクター(4〜6年程度)、パートナーといった職階で構成されています。
- 若手コンサルタントの育成において特徴的なのが、プール組織の採用です。コンサルタント職階の間は「ACG / TCG」と呼ばれるプール組織に所属し、数年の間にさまざまなプロジェクトにアサインされて幅広い経験を積みます。その後、シニアコンサルタントへ昇格する段階で自身の専門性を定め、ひとつのユニットに正式配属される仕組みとなっています。
- また、配属後に関しても、個人のキャリアプランに合わせてチーム間の異動が可能な「キャリアチェンジ制度」が用意されています。入社1年経過後からこの制度を活用して他の専門領域へのチャレンジが可能となっており、カウンセラーと相談しながら自律的で柔軟なキャリア形成を描くことができます。
- さらに、国境を越えて活躍するための「モビリティプログラム」も推進されています。海外赴任やクロスボーダー案件、国際的なプロジェクトなどを通じてグローバルな視野を広げる機会が提供されており、語学力のみならずコンサルタントとしての課題整理力や説明力を実践的に磨く土壌が整っています。
■5-2 人材育成
EYは「人」を最大の資産と捉え、継続的な人材育成に多大な投資を行っています。日本法人における1人当たりの平均研修受講時間は「年間51.2時間」、グローバル全体では「年間61時間」に達しています。
◆中途入社者を手厚くフォローするサポート体制
中途入社者がスムーズに業務を開始できるよう、約10日間の充実した入社後研修(ロジカルシンキングやドキュメンテーション、プロジェクトマネジメントなど)が用意されています。また、日々の業務やキャリアをサポートする仕組みとして、以下の2つの制度が機能しています。
- バディ制度: 年次やポジションの近い同僚が「バディ」として任命され、入社後の環境への適応や日々のお困りごとをサポートします。
- カウンセラー制度: 上位職階の同僚が「カウンセラー」として付き、中長期的なキャリアディベロップメントの相談やスキル向上のためのアドバイス、個人の「My purpose(自らのパーパス)」の醸成支援を定期的に行います。
◆世界水準の学習プラットフォームとプログラム
個人の継続的なスキルアップを支援するため、グローバル共通の画期的なプログラムが提供されています。
- EY Badges(社内資格認定制度): デジタル時代に必要なスキルの習得を支援する仕組みで、グローバル全体ですでに69万3,000以上のバッジがEYメンバーに付与されています。
- EY Tech MBA / サステナブル修士号: 世界的に権威のある教育機関「Hult International Business School」と提携しており、一定の条件を満たした全メンバーは、働きながら無料でオンライン修士号(MBAなど)を取得することが可能です。
- Milestone Program: 昇格時に新職階に適応するためのスキルやマインドセットを獲得するためのプログラムです。パートナー層はグローバル規模、ディレクター層はアジア・パシフィック規模など、職階に応じた枠組みで開催され、世界中のリーダー同士がネットワークを構築する場としても機能しています。
◆最先端領域(AI・サステナビリティ)へのリスキリング
- 昨今のビジネストレンドを反映し、EYではAIとサステナビリティ領域の教育に特に注力しています。グローバル全体で、AIに関する高度な学習コースが8万6,000人のメンバーに提供されているほか、気候変動や自然環境に関するサステナビリティの専門コースは30万回以上受講されています。
- さらに、日商簿記や英語、ITスキルなどの資格取得に向けた補助制度も整っており、プロフェッショナルとして自律的に専門性を磨き続けられる環境が完備されています。
6.経営課題とリスク
EYは複雑化するビジネス環境に対応するため、グローバル全体で統合的リスク管理(ERM)プログラムを運用し、8つの「優先ネットワークリスク」を特定・管理しています。転職志望者が押さえておくべき主要なリスクを簡潔に整理します。
■6-1 財務・収益リスク
- マクロ環境の変化(ポリクライシス): 地政学リスク、サプライチェーンの寸断、インフレ、気候変動などが複雑に絡み合う「複合危機」が世界経済に影響を与えており、企業の投資マインドやコンサルティング需要の変動につながるリスクがあります。
- サービス品質とブランド毀損: 業務品質の低下や不適切なクライアントの受け入れは、EYブランドへの信頼を失墜させ、重大な収益減につながるため、厳格な審査と品質管理が経営の最重要課題とされています。
■6-2 規制・法的リスク
- 規制・基準の違反と制度変更: 多様な市場や管轄区域の規制当局の監督下でビジネスを行っているため、プロフェッショナル基準の違反や急激な法規制・パブリックインタレスト(公益)の変化は大きなリスクとなります。
- AIガバナンスへの対応: 生成AIの急速な普及に伴い、正確性や知的財産権、セキュリティなどに関わる新たな法的リスクが生じており、自社およびクライアント向けの厳格なAIガバナンス体制の構築が急務となっています。
■6-3 その他のリスク
- AIによる破壊的変革(ディスラプション): AIの進化は業務効率化のチャンスである一方、コンサルティングや監査といったプロフェッショナルサービスのビジネスモデルそのものを根本から変革(代替)してしまう戦略的なリスクもはらんでいます。
- 気候変動・自然環境リスク: 異常気象などによる物理的リスクのほか、EY自身の活動やクライアントへの支援内容が「ネットゼロ目標」と合致しないと見なされた場合、グリーンウォッシュ批判などでレピュテーション(評判)が低下する移行リスクを抱えています。
7.日本法人の実態
日本におけるEYの組織体制と、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)の成り立ちや特徴について解説します。
■7-1 日本法人の体制と役割(EY SCの誕生)
◆EY Japanの構成とグローバルにおける位置付け
- EY Japanは、EYの日本におけるメンバーファームの総称であり、EY新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EY SC)などで構成されています。
- これらは法的には独立した組織ですが、パーパスのもと相互に緊密に連携してサービスを提供しています。 グローバルの運営体制において、日本法人は「Asia East」リージョン(日本、韓国、アセアン諸国などで構成)に属しており、国境を越えたシームレスな連携や人材の流動性が強化されています。現在、EY Japan全体で約13,300名のプロフェッショナルを擁しています。
◆EY SCの歴史的組織再編
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)は、戦略から実行支援(M&Aを含む)までをフルスペックで提供するプロフェッショナルファームとして、2020年10月に歴史的な組織再編を経て誕生しました。
- それまで別々の法人として存在していたコンサルティング機能とM&Aアドバイザリー機能(旧EYTAS)を統合し、「コンサルティング組織とM&Aアドバイザリー機能を持つ組織の2社統合で、Big4で唯一シームレスなサービス提供を可能とする法人体制」をスタートさせました。
- これにより、業界別の専門チームを起点として、戦略策定からM&Aの実行、全社的なトランスフォーメーションまでを一気通貫で支援できる強固な体制が完成し、現在では約4,170名(2023年12月時点)を擁する急成長ファームとなっています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社は、戦略的なトランザクション支援を提供する「ストラテジー・アンド・トランザクション」と、変化の激しいデジタル時代にビジネスの変革を推進する「コンサルティング」の二つのサービスラインを担うEYのメンバーファームです。
■7-2 日本市場の注力領域
EYはグローバル全体でサステナビリティやAIへの投資(All in戦略)を強化していますが、日本法人(EY SC)では、日本特有のマクロ環境の変化(人口減少・超高齢社会、社会保障費の増大など)や複雑な社会課題に対応するため、独自のフォーカス分野を設定しています。
採用資料等において、EYがグローバルで拡大する社会課題の中でも「ユニークなテーマをリードできる強み」として特に注力しているのが以下の領域です。
◆カーボンニュートラルへの変革
- 単なる目標宣言にとどまらず、カーボンニュートラルの実現に向けたグローバルな産業構造の再構築シナリオを提供し、企業の脱炭素化に向けたトランスフォーメーションを支援しています。
◆経済安全保障とサイバー
- 地政学リスクが高まる中、経済安全保障政策を起点とするサイバールールへの適応や、それに対するカウンター構想(防衛策)の策定など、企業がグローバルで生き抜くためのルール形成・戦略対応を支援しています。
◆地域医療連携の強化
- 日本の大きな課題である医療・ヘルスケア分野において、大型病院と診療所・クリニックの医療連携を強化し、持続可能な地域医療モデルの構築を推進しています。
◆スポーツデジタルソリューション
- スタジアムでのエンタメ体験を向上させるデジタルソリューションの提供を通じ、スポーツ業界のビジネス化や地域活性化(まちづくり)に貢献しています。
さらに、これらを支える公共・社会インフラ領域(Government & Infrastructure)では、「デジタル田園都市国家構想」への適応をはじめとする地方自治体のDX推進や、官民連携による社会課題解決型の新規事業立案など、国や地域社会に直接インパクトを与えるプロジェクトが強力に推進されています。
■7-3 日本法人の特徴
EYストラテジー・アンド・コンサルティングの組織カルチャーや働き方には、他のコンサルティングファームと比較して大きく3つの特徴があります。
1. セクターとユニットの強固なマトリックス連携
- EY SCは、産業領域ごとの深い知見を持つ「セクター(Sector)」部門と、ソリューションや専門性に特化した「ユニット(Unit)」部門の掛け合わせによるマトリックス組織を採用しています。
- プロジェクトにおいては双方のプロフェッショナルが垣根なく常にコラボレーションし、クライアントの複雑な経営課題に対して戦略策定から実行支援までを一気通貫でサポートできる体制が整っています。
2. 多様性を力にするカルチャー(DE&I)と柔軟な働き方
- 「人」を最重要資産とするEYでは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)の推進が極めて進んでいます。外国籍メンバーの在籍率が約10.2%に達しているほか、「女性が活躍する会社BEST100」での1位獲得や、LGBTQ+に関する「PRIDE指標」での最高評価(ゴールド・レインボー)認定など、外部からも高く評価されています。
- また、個人のライフスタイルやパフォーマンスの最大化を尊重しており、フレックスおよびリモートワークの導入率は100%に達しています。
3. パーパス経営と社会価値創出への強いコミットメント
- 「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」というパーパス(存在意義)を事業の根幹に据えています。利益追求にとどまらず、社会課題解決型のプロジェクトを豊富に手掛けているほか、プロフェッショナルとしての知識やスキルを生かして就業時間内に社会貢献活動に取り組める企業責任プログラム「EY Ripples」が活発に運用されています。
8.採用プロセスと選考対策
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)への転職に向けた選考ステップと、実際の求人データから読み解く具体的な採用要件について解説します。
■8-1 採用プロセスと具体的な求人動向
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)の中途採用プロセスは、応募するポジションや想定される職階(ランク)によって柔軟に設定されています。実際の求人データに基づく選考プロセスの特徴と、現在の採用動向は以下の通りです。
◆採用プロセス
- 面接回数: 基本的には2〜3回の面接が想定されています。ただし、「IT/Data Strategy Consultant」のように2回と想定されているものや、より高度な専門性や戦略的思考が求められる「社会課題ルール形成・戦略コンサルタント」のように2〜4回と幅を持たせて実施されるケースもあります。
- 適性検査・ケース面接: 書類選考や通常の面接に加え、想定される職階(ランク)に応じて適性検査やケース面接が実施される可能性があります。コンサルティングファーム特有の論理的思考力を問われるため、十分な対策が必要です。
なお、選考プロセスはあくまで想定であり、応募者の状況や選考の進捗によって変更となる可能性があります。
◆具体的な求人動向
現在のEY SCは、企業の抜本的な変革や最新の社会アジェンダに直結する以下の領域で特に採用を強化しています。
- 全社的なトランスフォーメーション(変革)の推進: 「Enterprise Transformation推進コンサルタント」や「Organization & Workforce Transformation」のように、CXO(経営層)と伴走し、組織・人材・人事の観点から包括的に大規模な変革を推進するポジションが求められています。
- 社会課題解決とルール形成戦略: 「社会課題ルール形成・戦略コンサルタント」の求人に見られるように、経済安全保障、スマートシティ、データ流通プラットフォーム、そして行動科学を用いたアプローチなど、社会課題を起点としたルール形成や新規事業開発を牽引する人材のニーズが高まっています。
- AI・データ利活用とDX戦略: 「IT/Data Strategy Consultant」に代表されるように、生成AIやデータプラットフォームの構想策定から導入、さらにデータドリブン経営を実現するための組織設計(CDOの設置など)まで、ビジネスとテクノロジーの両面からイノベーションを支援するポジションが急成長しています。
■8-2 選考における評価基準と求める人物像
実際の求人データ(Enterprise Transformation推進、Organization & Workforce Transformation、社会課題ルール形成・戦略、IT/Data Strategy)から読み解くと、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)の中途採用では、単なるコンサルティングスキルにとどまらず、「CxO目線での変革推進力」「最新テクノロジーのビジネス実装力」「社会課題へのアプローチ力」が強く求められていることがわかります。
具体的に評価されるポイントと求める人物像は、以下の4点に集約されます。
1. CxO(経営層)と伴走し、全社変革をリードする力
- EY SCでは、企業の局所的な課題解決ではなく、大規模なトランスフォーメーション(変革)がビジネスの主軸となっています。「Enterprise Transformation推進」の求人にあるように、CXO(現職のCレベルの変革リーダー)と直接対話し、お客様の実現したい変革のジャーニーに寄り添って伴走できる高い視座とプロジェクトマネジメント力が評価されます。
2. AI・データなどの先進テクノロジーをビジネス価値に変換する力
- テクノロジー領域(特にAIとデータ)は、EYが最も注力している分野の一つです。「IT/Data Strategy Consultant」や「Organization & Workforce Transformation」の求人からもわかる通り、AI、アナリティクス、IoT、RPAなどの先進技術を単に導入するだけでなく、それらを用いてクライアントの新規事業創出や、従業員体験(Employee Experience)を向上させる業務改革を構想・実行できるスキルが求められています。
- また、データドリブンな意思決定を実現するためのCDO(最高データ責任者)組織の設計といった、組織論にまで踏み込める知見も高く評価されます。
3. 社会課題・マクロ環境を起点としたルール形成や戦略構築の知見
- EY SCならではのユニークな要件として、社会課題に対する深い洞察力が挙げられます。
- 「社会課題ルール形成・戦略コンサルタント」の求人が象徴するように、経済安全保障政策、サイバー政策、さらには地政学(米中関係など)といったマクロな視点を持ち、企業のサプライチェーン再構築やM&A・アライアンス戦略などのアドバイザーとして立ち回れる人材が強く求められています。
4. 部門の垣根を越えて最適解を導き出す「コラボレーション力」
- EY SCはセクター(業界担当)とユニット(サービス担当)のマトリックス組織で機能しています。「Enterprise Transformation推進」の求人には「ユニットを超えてお客様の改革推進のためのベストな提案をし」と明記されています。
- 自身の専門領域に閉じこもるのではなく、社内外のあらゆるケイパビリティ(能力・専門家)を組み合わせ、クライアントにとって最適なソリューションを構築できる協調性と柔軟性が、カルチャーフィットの観点から非常に重視されます。
採用情報サイト|EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)の採用情報サイトです。グローバルで150カ国以上に展開するEYのメンバーファームとして、EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、業種別の専門チームが起点となり、ストラテジーからエグゼキューション(M&A)、ストラテジーからトランスフォーメーションを一気通貫で支援します。
■8-3 選考対策
EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY SC)の中途採用選考を突破するためには、一般的なコンサルティングスキルのアピールだけでなく、EYならではのカルチャーや求める要件に合わせた対策が必要です。具体的には以下の4つのポイントを押さえておくことが重要です。
1. パーパスへの強い共感
- EYは「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」というパーパス(存在意義)を全ての活動の原点として非常に重視しています。
- 面接では、単に「コンサルタントになりたい」というだけでなく、「社会課題の解決にどう貢献したいのか」「自分自身のパーパス(My purpose)は何か」を言語化し、EYのビジョンとリンクさせて語れるようにしておくことがカルチャーフィットの観点から極めて重要です。
2. 適性検査とケース面接への準備
- 応募する職階(ランク)によっては、通常の面接(2〜4回程度)に加えて、適性検査やケース面接が実施される可能性があります。
- コンサルティングファーム特有の論理的思考力、問題解決力、そして限られた時間内で構造的にアウトプットを出すスキルが問われるため、市販の対策本やエージェントを活用した模擬面接などの事前準備が不可欠です。
3. 英語力とグローバルマインドの提示
- EY SCはクロスボーダー案件や海外のEYメンバーファームとの協働が非常に多いため、多くのポジションで「ビジネスレベル以上の英語力」が歓迎要件、あるいは必須要件とされています。また、語学力だけでなく、異文化を理解し、多様なメンバーとコラボレーションできるグローバルなマインドセットを持っていることも高く評価されます。
4. 「巻き込み力」と「CxO対応力」
- マネージャー以上の職階で応募する場合、単なる実務経験だけでなく「プロジェクトマネジメント経験」や「CxO(経営層)への提案・交渉経験」が必須要件として厳しく問われます。
- 事業会社やSIerからの転職であっても、過去の経験において「周囲のステークホルダーをどのように巻き込み、大規模な変革やプロジェクトを推進したか」を具体的なエピソードとして整理し、面接官に説得力をもってアピールできるように準備しておきましょう。
キャリア採用|採用情報|EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(EYSC)
キャリア採用の情報を各応募部門の説明と共に掲載しオンラインエントリーの受付についても掲載しています。



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