【年収研究シリーズ】日立製作所の年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
東洋経済オンラインが発表した、2018年最新の業界別就職人気企業ランキングのメーカー部門において、日立製作所があのトヨタやソニーを抑えて1位に躍り出ました。
このランキングは、2019年春に卒業予定の大学生・大学院生を対象にデータを取った「就活後半に聞いた『就職人気企業』トップ300」の結果に使って作成されたもので、企業や業界へのイメージが先行しがちな就活前半と違い、その企業で働く未来がより現実味を帯びてきた就活生たちの本音が反映されています。
そんな中、日本の主力産業である機械・自動車・電気機器などのメーカー部門で、日立製作所が堂々の1位(総合35位)となったのです。今年は日立グループ全体で採用活動に注力したため元々注目度が高かったことや、情報や鉄道などインフラを中心とした幅広い事業展開が、安定志向の就活生たちの心をつかんだことなどの結果です。
同部門2位には自動車メーカートップのトヨタ自動車(総合55位)、3位は同じ電機メーカーのソニー(総合65位)が続きます。
日立製作所の平均年収は896.9万円
それでは、はじめに日立製作所の平均年収について見ていきます。日立製作所の平均年収は、日立製作所の有価証券報告書によると、896.9万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した日立製作所年代別年収レンジは、20歳代で530〜580万円、30歳代で740〜790万円、40歳代で930〜980万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.81倍の額です。
■日立製作所の平均年収推移
日立製作所・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
日立製作所の平均年収は前年を上回り896.9万円でした。
過去5年間では2番目に高い額になりました。
日立製作所の年代別平均年収と中央値
■日立製作所の年収中央値は30代で760.5万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
日立製作所と競合他社の平均年収を比較
日立製作所の競合や同業界である東芝、三菱重工業、パナソニックの4社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、日立製作所が896.9万円、東芝が892.3万円、三菱重工業が863.8万円、パナソニックが758.6万円です。
この4社の中で最高額は日立製作所の896.9万円で、最低額がパナソニックの758.6万円。その差はおよそ139万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では日立製作所は1番目に位置します。
日立製作所の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
日立製作所の年収が高い理由
■コングロマリットの代表格が「選択と集中」
年収が高い理由の一つに、ボーナスが6か月分になったことが挙げられます。
電機産業および関連産業の労働組合からなる電機連合は、今年の春闘では最低でも4カ月以上のボーナスを各社に要求しました。その中で最低ラインを大きく上回ったのは、電機メーカーではソニー(6.9か月)と三菱電機(6.13か月)、そして日立製作所のみでした。
それを実現できるのは、当然それだけの収益が確保できたためと言えます。日立製作所が発表した2018年4~6月期の連結決算では、最終利益が1052億円で前年同期比40.2%増の過去最高益をたたき出しました。
この業績の裏には、ここまで行ってきた事業の選択と集中が大きく貢献しています。
日立製作所は電機事業や情報通信分野などに加え、ソフトウエアや半導体、医療、物流、金融など業種を超えて幅広い事業を展開していることから、「コングロマリット」の代名詞と語れてきました。事業構造の見直しが進む中、各方面から動向が注目されていた日立製作所は、思い切った事業再編に乗り出します。
中核事業としていたソフトウエアやプラント事業を完全子会社化したり、業績の変動が激しい半導体や液晶関連などは非中核事業と判断し、日立物流や日立工機を投資ファンドなどへの売却によって本体から切り離しを行いました。この思い切った対応が功を奏し、2018年3月期決算で純利益は57%増の3629億円となり、過去最高を更新しました。
日立製作所の報酬体系
■年功序列型から成果型へ
日立製作所では、年齢や勤続年数は大きく加味されない仕組みとなっています。
2014年に電機業界の先陣を切って年功序列制度を廃止し、それまでは給与全体の30%だけを仕事内容や成果に応じて支給してきた体系から、100%それらに応じて支給する給与体系へと変更しました。これにより若い世代や勤続年数が短い人でも、成果や仕事内容に応じて高い報酬が期待できると言ってよいでしょう。
報酬額を決める際は成果や内容に応じて上司の査定が入るため、頑張り次第で大きく上がる可能性があるため、モチベーションアップにつながるのは間違いありません。
日立製作所社員の給与明細
基本給だけでなく、家族手当や通勤手当にも注目!
法人営業・20代(非管理職)の
給与明細
法人営業・30代(非管理職)の
給与明細
賞与のありなしで、これほどの差が!?
研究開発・20代・賞与なし(非管理職)の
給与明細
研究開発・20代・賞与あり(非管理職)の
給与明細
しかし年収が高いからといっていいことばかりではないのでしょうか。
日立製作所の見落としがちな留意点、課題は?
■子会社採用では再編に巻き込まれる可能性あり?
日立製作所は事業再編の促進によって子会社を減らす方向にあるのは前述の通りですが、それでもなお、多くの子会社を抱えていることには変わりありません。東洋経済オンラインの「最新!連結子会社数が多い500社ランキング」によると、2018年7月時点で子会社の数は864社にも上り、ソニーや野村ホールディングスなどに次いで第4位となっています。
また海外での売上比率は48%と高いことから、環境的にも多種多様な人材とのかかわりや協働は避けられません。
こういったコングロマリットならではの煩雑な環境を楽しめる人にはいいのですが、自分のこれまで培ってきた仕事のスタイルにそぐわない人には、大きな懸念点となるでしょう。
日立製作所には年収以外にメリットはある?
■働き方改革が進む
ここまで日立製作所の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
日立製作所は、コングロマリットであるがゆえの先進的な対策に余念がありません。
その取り組みの一つである、個人の内面と行動データをAIで分析し、よりよい人事へと結びつける「個を活かすPeopleAnalytics」が、第3回HRテクノロジー対象に選ばれました。コンピューターや通信技術を駆使した人事管理の大切さが世界的にうたわれ、これはその分野での優れた取り組みを表彰するものです。
また今年の春闘の回答では、報酬面以外の改善として介護や育児との両立、自律的なキャリア形成、能力開発の支援と、よりいっそうの勤務制度の柔軟化などを約束しました。
「大きいことはいいことだ」とは単純に言い切れないものの、複雑で大きな場所だからこそできることも少なくありません。安定した待遇が確保される中、自らの可能性を試したい人にはオススメの企業です。
出典・参考
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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