【年収研究シリーズ】エムスリーの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
会社設立から4年でマザーズ上場、さらにその3年後には東証一部上場を果たした異色の会社があります。それは、外資系コンサルティング会社マッキンゼー出身の谷村格氏によって設立された、株式会社エムスリーです。エムスリーという社名は、Medicine(医療)、Media(メディア)、Metamorphosis(変容)の3つの頭文字に由来しています。
エムスリーのコアビジネスは、「M3.com」という社名を冠した医療ポータルサイトで、その登録者は、2018年7月時点で医師約26万人にも上ります。厚労省が2年に1回行っている医師・歯科医師・薬剤師調査によると、最新の医師数は31万9480人です。すなわち、日本の約81%もの医師が登録している巨大プラットフォームということになります。戦略的に事業を展開しつつ、躍進的な成長を続ける当社の年収はいかほどなのか、大きな興味を引きつけるところです。
またエムスリーは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
エムスリーの平均年収は901.7万円
まずはじめにエムスリーの平均年収を見ていきましょう。エムスリーの平均年収は901.7万円です(エムスリー有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にエムスリーの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で650〜700万円、30歳代で990〜1040万円、40歳代で1280〜1330万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.82倍の額です。
■エムスリーの平均年収推移
エムスリー・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
エムスリーの平均年収は前年を上回り901.7万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
エムスリーの年代別平均年収と中央値
■エムスリーの年収中央値は30代で1009万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
エムスリーと競合他社の平均年収を比較
エムスリーの競合や同業界であるWelby、カナミックネットワーク、ケアネット、メディカルネット、メドピアの6社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、エムスリーが901.7万円、Welbyが741.2万円、カナミックネットワークが506万円、ケアネットが821.7万円、メディカルネットが466.7万円、メドピアが614.9万円です。
この6社の中で最高額はエムスリーの901.7万円で、最低額がメディカルネットの466.7万円。その差はおよそ435万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではエムスリーは1番目に位置します。
平均年収では見えてこない、支給額の実態はキャリコネでチェックできます。同じ職種での違いに注目です。
医療関係者向け情報サイト業界の給与明細(キャリコネ)
一流企業社員が受け取る給与明細のリアル
エムスリー20代・営業(非管理職)の
給与明細
エス・エム・エス20代・営業(非管理職)の
給与明細
EMシステムズ20代・営業(非管理職)の
給与明細
エムスリーの給与が高い理由
■製薬会社からの手数料収入が大きい
エムスリー平均年収が高い背景には、もともと医療関係は参入障壁の高い業界であり、特定の企業に売り上げが集中しやすい傾向があることを前提として、8年連続で最高益を更新している実績が挙げられます。2017年度の売上高は前年比21%増の944億円、純利益は23%増の195億円、営業利益は19%増の297億円という高水準を記録しました。医療ポータルサイトを通じて新薬情報を提供する事業において、製薬会社からの手数料収入が伸びたこと、また製薬会社からの臨床試験を受託する事業も好調だったことが売上増に影響しているといえるでしょう。
さらに伸び続ける背景には、2フェーズに分けて計画されたM&Aによる企業拡大があります。第1フェーズは医師とのリレーション強化や拡大で、ここでは多くの医師が会員として登録している医療情報サイトを買収しています。そして第2フェーズでは、築いてきた医師とのリレーションを生かして、プラットフォームから派生する周辺事業を展開していくのです。このように徹底的に計画されたM&Aによって、企業拡大が果てしない成長を後押ししています。
エムスリーの給与制度
■給与は年俸制 最高1200万円
エムスリーの特徴は、圧倒的に中途入社社員が多いことです。これは、新卒17名に対し中途採用324名という実績にも如実に表れています。中途の募集条件には、年俸制で個人業績に連動した賞与が年2回支払われることが示されています。年俸のうち5~10%を賞与とし、残りを12ヶ月で割って毎月支払われる仕組みです。
2018年9月時点で募集されている職種と報酬額を見てみると、最低は500万円、報酬が高い職種では最高1200万円となっており、職種による多少のばらつきはあるものの、優秀な人材採用に向けて投資を惜しまない姿勢がうかがえます。ちなみに、基本的に前職の年収が引き継がれるようですので、入社交渉時が肝となる可能性が高いといえるでしょう。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由がチェックできます。
エムスリー社員の給与明細(キャリコネ)
同年代でも賞与に倍もの差が出る!
30代・マーケティング関連(非管理職)の
給与明細
30代・マーケティング関連(非管理職)の
給与明細
年齢が倍になれば、給与も倍・・?
20代・営業職(非管理職)の
給与明細
40代・営業職(非管理職)の
給与明細
エムスリーの見落としがちな留意点、課題は?
企業として伸び続けているエムスリーでは、社員側の成長にもスピードが求められることでしょう。たとえば新入社員に用意されているのは、次のような制度があります。1つは、学生のうちから契約社員として働くことも可能な「RocketCarrer制度」です。そしてもう1つは「ローテーション制度」で、入社後の2年間で3部署を経験するというものです。この独自の制度では、短期間のうちに他部署を回って所属し、職務の全体像を把握することが求められます。
さらに裁量労働制導入による契約もあるため、その場合の労働時間は個人の采配で増える可能性もあることは視野に入れておくとよいでしょう。裁量労働制は実労働時間ではなく、一定の時間とみなす制度です。出退勤時間の制限が無くなるので自由である反面、実際の労働時間に応じた残業代が発生しない状況もあるかもしれません。
エムスリーには年収以外にメリットはある?
ここまでエムスリーの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
エムスリーの圧倒的な成長スピードを利用したメリットは、いくつかあります。
たとえば入社後、短期で法人の立ち上げやマネジメントを体験できるチャンスもあるのです。26歳の若さで、買収した会社の経営企画として着任を果たした事例もあります。中途入社した社員の前職は、Mckinsey&CompanyやAccenture、Deloitteなどのコンサル会社をはじめ、ディー・エヌ・エーや楽天、ヤフージャパンといったインターネット業界、リクルートやサントリー、IBMなどの事業会社、そしてJ.P.Morganや野村証券などの金融業界とそうそうたるもので、周囲からさまざまスキルを学ぶ機会にも恵まれていることでしょう。
徹底したクレバーな戦略で成長を続けるエムスリーでは、そこに採用された優秀な人材の中で、たくさんのチャンスが与えられます。その豊かな環境を存分に生かし、自らの力を伸ばし続け、試し続けたい人にはぜひお勧めしたい企業です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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