【年収研究シリーズ】東レの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
漫画やSF映画で目にする「空飛ぶ車」の開発に、近年注目が集まっています。現実世界での実現に向けて車体の軽量化に取り組んでいるのが、今回取り上げる東レです。
現在、電気自動車(EV)の普及だけでなく、将来的に空飛ぶ車を実現させようと産学官の協力による研究開発プロジェクトが進められています。車体やタイヤ、窓などの主要となる部品を軽量化し、自動車の重さを半分にすることを目標としているのです。車体の軽量化に取り組んでいる同社は、ポリロタキサンという物質を樹脂に混ぜることにより、これまでより引っ張る力は8倍、曲げる力は50倍を耐えるほどの強度を高める技術を開発しました。この技術をガラス繊維に応用すれば、衝突の際に衝撃を抑える部品になり、また炭素繊維と組み合わせることで車体のフレームに使うこともできます。同社の開発技術により、軽量化だけでなく耐久性の両方をあわせもつ車体の実現が可能になると期待が高まっています。
東レの前身である東洋レーヨンは、1926年に英国からレーヨン糸を輸入販売していた旧三井物産により創立されました。国の製造業を促進する企業として創られた東レは、現在も合成繊維・合成樹脂をはじめとする化学製品を扱う日本の大手化学企業として、日本の自動車の未来をはじめとする私たちの未来を変えようとしている企業なのです。
また東レは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
東レの平均年収は734.3万円
東レの有価証券報告書によると、平均年収は734.3万円と記載されています。キャリコネに投稿された給与明細を参考に東レの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で480〜530万円、30歳代で670〜720万円、40歳代で830〜880万円となりました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.49倍の額です。
■東レの平均年収推移
東レ・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
東レの平均年収は前年を上回り734.3万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
東レの年代別平均年収と中央値
■東レの年収中央値は30代で685.7万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
東レの年収が高い理由は?
東レの年収が高い理由は、祖業の繊維事業が営業利益全体において4割という高さを占めていることにあります。2018年3月期に発表された2017年度の営業利益は1565億円で、そのうちの4割である724億円を繊維事業で担っています。セグメント別営業利益構成比で見ると、他社は非繊維事業が9割を占める中で、同社は繊維事業が安定的に成長し、結果として700億円もの規模の利益を稼ぎ出しているのです。
また炭素繊維複合材料も、成長事業として収益を支えています。東レは炭素繊維の生産能力において世界シェアNo.1であり、全体の4割もの占有率を誇ります。さらに同社が拡大を進めている環境・エンジニアリング事業の営業利益率7~8%と比較をしても、炭素繊維複合材料事業は11%とさらに高い数字を計上しているのです。祖業の強さに加えて、成長事業における順調な拡大が、年収を押し上げているといえるでしょう。
東レ社内で年収が高い職種・役職は?
東レの給与体系は年功序列で、社員に割り振られる「格」が上がるにつれて年収が高くなる制度です。社員には1格から5格までのレベル分けがあり、それより上が管理職層になります。学部卒で入社した場合は、毎年月額5000円~8000円程度の昇給があり、格が上がると1~2万円が毎月の給与に追加されます。管理職に就くようになるのは30代半ばから40代前半で、年収900万円以上は期待できるでしょう。
残業代は全額支給されますが、研究職社員に限り20時間分の残業代が基本給に上乗せされているため、基本給ベースでいえば研究職が高いといえます。また福利厚生の一つにあった家族手当は現在廃止されていますが、制度が廃止される以前に在籍していた社員にのみ、継続して家族手当が支給されているため、その分年収の差につながる可能性があるかもしれません。
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
東レの見落としがちな留意点、課題は?
近年注目されている熱可塑性CFRP(炭素繊維複合材料)において、東レが出遅れている点は懸念材料といえるでしょう。これまで炭素繊維を包む母体として、熱を加えると硬化し元に戻らなくなる樹脂が一般的に使用されていました。しかし最近は、熱を加えると軟化し、冷却すると固まる樹脂を用いた新タイプの熱可塑性CFRPが注目されているのです。現在の航空業界では、機体の部品を効率的に量産できる熱可塑性CFRPの需要が増しています。
東レのライバルである帝人は先行して新タイプに注力をし、2014年に業界初でエアバス旅客機の部品用として供給を開始しました。一方の材料認定すら取得できていない東レは、すでに新タイプの航空機用部品を納品しているオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社(TCAC)を買収し、技術の補填を図っています。旅客機分野において、圧倒的なシェアを誇っていた東レですが、今後シェアが大きく変わる可能性もあります。
東レ社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代の同職種の年収には大きな差が!
20代・研究開発(非管理職)の
給与明細
30代・研究開発(非管理職)の
給与明細
手当の有無で年収に違いが!
30代・研究開発・賞与あり(非管理職)の
給与明細
30代・研究開発・賞与あり(非管理職)の
給与明細
東レと競合他社の平均年収を比較
東レの競合や同業界であるクラレ、カネカ、信越化学工業、クレハ、帝人の6社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、東レが734.3万円、クラレが704.7万円、カネカが755.1万円、信越化学工業が854.5万円、クレハが711.6万円、帝人が739.4万円です。
この6社の中で最高額は信越化学工業の854.5万円で、最低額がクラレの704.7万円。その差はおよそ150万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では東レは4番目に位置します。
東レの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
東レには年収以外にメリットはある?
ここまで東レの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
東レの魅力として特筆すべき点は、祖業を手放す企業が多い中で、業界のリーディングカンパニーとして今でも三大合成繊維すべての生産を続けていることです。国内の繊維各社が繊維事業を縮小・撤退へと追い込まれた状況下で、衣料業界のコスト高の要因がサプライチェーンの分業化であることに着目した東レは、製糸から製織、染色そして縫製までの工程を内装できる体制へと整備し、コストを抑えて利益確保を実現したのです。
熱を持つ繊維、軽い飛行機、空飛ぶ車。新しい技術の開発には、安定した収益源が必要不可欠です。世の中に挑戦を続ける会社は多くありますが、斜陽の祖業を安定収益源に変化させた東レだからこそできる挑戦は多くあるといえます。今後も同社の技術が作り出す新しい挑戦に注目が集まることでしょう。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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