メルカリ 2026年6月期 1Q決算詳細レポート

メルカリ 2026年6月期 1Q決算詳細レポート


株式会社メルカリは2025年11月7日、2026年6月期 第1四半期(2025年7月1日~9月30日)の連結決算を発表しました。

今期は、主力のMarketplace事業でのコア体験強化が奏功しGMV(流通取引総額)成長率が回復傾向にあるほか、長年の課題であったUS事業がGMVプラス成長に転じるなど、既存事業の復調が鮮明となりました。

一方で、昨年参入したばかりのスポットワーク事業「メルカリ ハロ」のサービス終了を決定するなど、経営資源の「選択と集中」を強く印象づける決算となりました。

本レポートでは、好調な滑り出しとなった連結業績の詳細、各セグメント(Marketplace、Fintech、US)の深掘り、そして事業撤退の背景と今後の戦略について解説します。

1. 連結業績ハイライト:利益面で大幅な伸長

2026年6月期のスタートとなる第1四半期は、売上収益・利益ともに前年同期比(YoY)で力強い成長を見せました。主要数値は以下の通り。

  • 売上収益:494億円(YoY +10%)
    • 注:ポイント費用の会計処理変更の影響を除いた場合、成長率はYoY +12%となります。
  • コア営業利益:93億円(YoY +128%)
  • 営業利益:89億円(YoY +104.6%)
  • 四半期利益(親会社帰属):50億円(YoY +70.0%)

今期より掲げている「原則として、増益を伴うトップライン成長を目指す」という経営方針の下、主要3事業(Marketplace、Fintech、US)すべてにおいて増収および投資・コストの効率化が進みました。

特にコア営業利益は前年同期の41億円から93億円へと倍増以上となり、通期業績予想(280〜320億円)に対する進捗率も29〜33%と、極めて順調な滑り出しを見せています。

2. セグメント別詳細分析

セグメント別の分析は以下の通りです。

(1) Marketplace(JP):安心・安全施策が奏功しGMV回復

国内CtoC事業を中心とするMarketplaceセグメントは、プロダクトの根幹に関わる改善が進み、再成長の兆しを見せています。

  • GMV:2,703億円(YoY +5%)
  • コア営業利益:84億円(YoY +18億円)
    • 「メルカリ ハロ」を除いた場合のコア営業利益は95億円、利益率は35%と高い収益性を誇ります。

【成長の要因】今期のGMV成長率(+5%)は、前四半期の伸び悩みからQoQ(前四半期比)で回復基調にあります。この背景には、以下の2つの主要な取り組みがあります。

1.コア体験の強化(安心・安全)

  • AIを活用した不正利用者の検知・排除や、高価格帯商品における本人確認(eKYC)の必須化を実施しました。
  • さらに、購入代金や販売利益を全額補償する「全額補償サポートプログラム」を開始。これにより、商品不備等による問い合わせ率はYoYで17%改善し、補償実施に伴う解決率は2.2倍に増加しました。
  • 質疑応答によると、これらの施策は「購入側」には補償による安心感を、「出品側」にはトラブル対応コストの低減をもたらし、双方の利用者数の改善に寄与しています。

2.マーケティングと配送施策

  • 8月から9月にかけて実施した小型便(ゆうパケットポストmini等)の配送料キャンペーンが好評を博し、エンタメ・ホビーカテゴリー等の取引数伸長に貢献しました。

【越境取引のさらなる拡大】新たな成長ドライバーとして期待される越境取引(Crossborder)についても、積極的な手が打たれています。9月末より台湾・香港向けに「メルカリ グローバルアプリ」の提供を開始しました。これまでは代理購入サービスを経由する必要がありましたが、新アプリではAI翻訳や現地決済に対応し、直接的な購入体験を提供することで、中期的に50カ国以上への展開を目指しています。

(2) Fintech:Credit事業が収益の柱へ

Fintechセグメントは、決済から与信(Credit)へのシフトが成功し、グループの収益を牽引する存在へと成長しました。

  • 売上収益:142億円(YoY +22%)
  • コア営業利益:27億円(YoY +23億円、前年比約6.6倍)

【好調の背景】成長を牽引しているのは「定額払い」および「分割払い」を中心としたCreditサービスです。債権残高は2,691億円(YoY +35%)まで拡大しました。特筆すべきは、残高が急拡大する中でも、11か月回収率が99.3%という高水準を維持している点です。独自のAI与信モデルによるリスクコントロールが機能しており、成長と健全性のバランスが保たれています。

第2四半期以降は、「メルカード」会員獲得や「メルペイ」の裾野拡大に向けた投資を強化するため、第1四半期対比で投資額が増加する見通しですが、すでに通期ガイダンス(コア営業利益50〜75億円)に向けて順調に進捗しています。

(3) US:「復活」の兆し、GMVプラス転換

長らく苦戦が続いていたUS事業ですが、今期は明確なターンアラウンドの兆候が見られました。

  • GMV:1億9,400万ドル(YoY +0.4%)
  • コア営業利益:6億円(3四半期連続の黒字/ブレイクイーブン)

【プラス成長への転換】US事業のGMVは、2025年1月からの新体制移行後、手数料モデルの変更などを経て徐々に回復傾向にありましたが、ついに8月からプラス成長に転換しました。主な要因は以下の通りです。

  1. プロダクト改善:タイムセール機能の導入や、「Googleワンクリックサインアップ」による新規登録の簡素化を行い、コンバージョンを改善しました。
  2. カテゴリー戦略:エンタメ・ホビーやファッションなど、メルカリの強みが活きる領域にマーケティングを集中させました。
  3. 配送改革:7月末より競争力のある新配送プランを提供し、利便性を向上させました。

質疑応答において経営陣は、このプラス転換は「一過性のものではない」と自信を示しており、地道なプロダクト改善の積み上げが成果につながっていることを強調しています。

この記事の執筆者

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