中国など海外の企業が台頭してきている昨今、電機メーカーの凋落が世間を騒がせています。
経営再建中の東芝は、2016年に中国の家電メーカーである美的集団(マイディアグループ)に白物家電事業を、今年2月には海信集団(ハイセンスグループ)にテレビ事業を売却しました。またV字回復したシャープも、2016年8月に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ってから起死回生を果たします。
その一方で、ソニーの2018年3月期の連結決算(米国会計基準)によると、営業利益が前期に比べて2.5倍の7348億円で着地し、最高益を20年ぶりに更新しました。見事なV字回復で、業界の希望の光になったことは間違いありません。
ソニーが最高益を更新した要因として、半導体事業が好調だったことがあげられます。スマートフォン向けイメージセンターの販売数量が大幅に増加したこと、また経費削減により、営業損益が前期の約80億円の赤字から1640億円の黒字に大幅に改善したことが大きく寄与したといえます。ソニーはこのチャンスを活かし、次に繋げるべく余念がありません。その施策の一つは「人材への投資」です。
それでは、ソニーの年収はいったいどれくらいもらえるのか探っていきましょう。
ソニーの平均年収は1084.5万円
それでは、はじめにソニーの平均年収について見ていきます。ソニーの平均年収は、ソニーの有価証券報告書によると、1084.5万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出したソニー年代別年収レンジは、20歳代で640〜690万円、30歳代で900〜950万円、40歳代で1120〜1170万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.19倍の額です。
■ソニーの平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 1084.5万円 | 42.6歳 | 16.7年 | 2839人 |
2021年3月期 | 1044万円 | 42.2歳 | 16.5年 | 2973人 |
2020年3月期 | 1057.1万円 | 42.4歳 | 16.6年 | 2682人 |
2019年3月期 | 1051万円 | 42.4歳 | 16.7年 | 2519人 |
2018年3月期 | 1013.6万円 | 42.3歳 | 16.7年 | 2428人 |
出典:ソニー・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
ソニーの平均年収は前年を上回り1084.5万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
ソニーの年代別平均年収と中央値
■ソニーの年収中央値は30代で919.3万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 665万円 | 43.1万円 | 117.2万円 | 598.5万円 |
30代 | 919.3万円 | 59.1万円 | 162.1万円 | 827.37万円 |
40代 | 1142.5万円 | 73.1万円 | 201.5万円 | 1028.25万円 |
50代 | 1350.8万円 | 86.2万円 | 238.3万円 | 1215.72万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
ソニーと競合他社の平均年収を比較
ソニーの競合や同業界である日立製作所、三菱電機、日本電気、パナソニック、シャープの6社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、ソニーが1084.5万円、日立製作所が896.9万円、三菱電機が806.7万円、日本電気が814.4万円、パナソニックが758.6万円、シャープが736.9万円です。
この6社の中で最高額はソニーの1084.5万円で、最低額がシャープの736.9万円。その差はおよそ348万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではソニーは1番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
ソニー | 1084.5万円 | 42.6歳 | 16.7年 | 2839人 | 4062.47億円 |
日立製作所 | 896.9万円 | 42.7歳 | 19.3年 | 29485人 | 1623424億円 |
日本電気 | 814.4万円 | 43.6歳 | 18.5年 | 21350人 | 16644.34億円 |
三菱電機 | 806.7万円 | 41.1歳 | 16.9年 | 36700人 | 25574.36億円 |
パナソニック | 758.6万円 | 45.7歳 | 22.5年 | 55088人 | 27559.67億円 |
シャープ | 736.9万円 | 45.5歳 | 22.7年 | 5674人 | 5630.3億円 |
ソニーの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
では一体、ソニーはなぜ業界内でも群を抜いて年収が高いのでしょうか? 理由を探っていきましょう。
ソニーの年収が高い理由
■成長戦略に欠かせない人材流出を防ぐ
年収が高い理由の一つは、厳しい人材獲得競争です。
中国の通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)は、新卒技術者の初任給40万円で採用する方針を固め、新卒の「青田買い」をしようと積極的な姿勢を見せています。また東芝やシャープなど、電機メーカー大手が経営機器に直面している最中、理科系の学生の間では、実力次第で高額給与が望める外資系企業の人気が上昇しているのです。
ソニーはこのような動向の中で、成長戦略の中枢となるIoT(モノのインターネット)AI(人工知能)などの開発をするIT人材の確保を行うべく、新卒採用を33%増加させる方針であると表明しています。
また中堅人材の流出を食い止めるため、過去最高額の年間一時金6.9か月分とあわせて、年収ベースで約5%の賃上げに踏み切りました。AIなど先端技術の開発競争に勝ち抜くためには、月額の基本給に当たるベース給も引き上げる必要があると判断したことになります。
今春の労使交渉では、月収ベースで3%以上の賃上げをすると答えた企業は、わずか22.2%だったことが日本経済新聞の3月14日の調査でわかりました。電機大手メーカーの年収の増加率が2~3%代のなか、ソニーは過去最高益の好業績を反映し5%もの賃上げを実現したのです。
ソニーの給与制度
■エンジニア職にも嬉しいジョブグレード制度を導入
ソニーでは、2015年からジョブグレード制度を導入し、役職ではなく役割で見ています。それまでは年功序列の要素が残ることが課題でしたが、新制度では年功序列の要素を完全に廃し、「役割」にのみ着目して評価をする仕組みとなりました。
社員は、プロフェッショナルとして貢献するグレード「I(インディビジュアルコントリビューター等級群)」と、管理職として貢献するグレード「M(マネジメント等級群)」の2つの道が用意され、個人のグレードに合わせて給与が支払われます。
新入社員は全員が「I」に属しますが、等級I5から昇格する段階で、等級I6と等級M6のどちらかに分かれます。旧制度では、管理職にならなければ給与が上がらなかったため、技術を究めたいエンジニアには不評でしたが、この制度にしたことで等級I6以上の上級専門職を目指すことができる道を開いたのです。
ソニー社員の給与明細(キャリコネ)
30代に入ると、さらにアップ!
20代・経理(非管理職)の 給与明細
30代・経理(非管理職)の 給与明細
ボーナスの有無の差は想像以上!
20代・営業管理・賞与なし(非管理職)の 給与明細
20代・営業管理・賞与あり(非管理職)の 給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
ソニーの見落としがちな留意点、課題は?
前期では過去最高益をたたき出したソニーですが、通算純損益でマイナス4237億円の赤字が消えていないことは、懸念材料の一つです。東洋経済オンラインに掲載された「過去10年で結局赤字だった440社ランキング」では、ソニーは5位という結果でした。
自己資本率においては、ソニーはここ数年14%~15%の低い水準を維持しています。一般的に、自己資本率は高いほど倒産の心配が少なく、経営は安定していると言われています。純資産は負債とは異なり、返済義務がないためです。しかし自己資本率が38.0%の日立製作所と比較すると、ソニーは大きく見劣りしていることがわかります。
ソニーには年収以外にメリットはある?
ここまでソニーの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
赤字が残っているという不安要素はあるものの、業界内でも抜群の高水準の給与であることは間違いありません。人材投資に力を注ぐ姿勢は、同業他社との今後の明暗を分ける可能性が大いにあります。
電機事業以外のソニーの屋台骨であるゲームや音楽事業は、事業と技術との垣根を越えた挑戦が予想されています。あるアナリストは「ゲームや音楽はソニー独自の武器だ。」と高い評価をしています。また前社長である平井氏は、現在のソニーを「感動企業」と銘打っており、それぞれの事業で期待ができます。
ソニーは、その企業規模や報酬のいずれをとっても、就職者・転職者のキャリアとして申し分ない企業です。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」