【年収研究シリーズ】ジャストシステムの年収・給与・ボーナス・報酬について、ただ額面に注目するだけではなく、高い理由や、デメリット、同業他社や、年代、職種間での比較を通じて実態に迫ります。転職先決定の判断材料にご活用ください。
いま、投資家の熱い視線を集め、株価を上げ続けている意外な企業があります。それは、ワープロソフト「一太郎」や日本語入力システム「ATOK(エイトック)」を世に送り出した、株式会社ジャストシステムです。マイクロソフトのWinodws95が発売されて以来、Wordに押され2006年に赤字転落を経験した企業でもあります。
2006年に赤字に転落した直接の原因は、XML文書の作成や編集ができるシステム「xfy」の販売が不振となり、研究開発や欧米の営業拠点への投資が回収できなくなったことが挙げられます。その苦境のなか転機となったのは、計測機器等大手メーカーのキーエンスとの資本・業務提携です。これをきっかけに不採算事業からの撤退、そして2016年3月にはキーエンス出身の関灘恭太郎氏が社長へ就任するなどの大規模な事業再編成を断行し、経営改革を加速させました。
ジャストシステムは、過去にリリースした授業支援ソフト「ジャストスマイル」において、全国の小学校の8割以上での導入を成功させています。新しい経営の大黒柱となるのは、2012年にスタートしたタブレットで学ぶクラウド型の通信教育「スマイルゼミ」です。専用のタブレット端末で学習するという斬新さが受け、会員数が増えるなど好調が続いています。この存在が、ジャストシステムにとっては起死回生の決定打となり、業績右肩上がりの原動力の一つになりました。
またジャストシステムは年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
ジャストシステムの平均年収は1309.2万円
まずはじめにジャストシステムの平均年収を見ていきましょう。ジャストシステムの平均年収は1309.2万円です(ジャストシステム有価証券報告書)。キャリコネに投稿された給与明細を参考にジャストシステムの年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で770〜820万円、30歳代で1170〜1220万円、40歳代で1500〜1550万円という結果がでました。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約2.65倍の額です。
■ジャストシステムの平均年収推移
ジャストシステム・5年間の平均年収・平均年齢・従業員数(単体)の推移
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
ジャストシステムの平均年収は前年を上回り1309.2万円でした。
過去5年間では最高額になりました。
ジャストシステムの年代別平均年収と中央値
■ジャストシステムの年収中央値は30代で1186万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
ジャストシステムと競合他社の平均年収を比較
ジャストシステムの競合や同業界である日本電気、富士通、大塚商会、TIS、オービックの6社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、ジャストシステムが1309.2万円、日本電気が814.4万円、富士通が859.4万円、大塚商会が822.8万円、TISが741万円、オービックが959.6万円です。
この6社の中で最高額はジャストシステムの1309.2万円で、最低額がTISの741万円。その差はおよそ569万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中ではジャストシステムは1番目に位置します。
ジャストシステムの競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
でもなぜジャストシステムの年収は業界内でも群を抜いて高いのでしょうか?
ジャストシステムの年収が高い理由は?
ジャストシステムの主な収入源は、スマイルゼミとファイルサーバ統合管理システム、データベース運用ソフトなどの企業向けITシステムです。これらの営業基盤は手堅く、安定した収益をもたらしています。さらにキーエンス参入による経営改革が功を奏し、2019年3月期の第1四半期の連結業績において、営業利益は前期比52%増の21億3900万円、純利益は37.7%増の15億6500万円となり、四半期ベースでは上場来の最高益となりました。
ジャストシステムはこうした高業績で得た収益を、株主配当より従業員還元を優先する特徴があります。東証一部上場企業の配当性向の平均が20~50%のところ、ジャストシステムは大きく下回る9.1%で、これまで株式市場において冷遇されてきた理由の一つに、この配当性向の悪さがあります。
その一方で社員へのボーナスは、日経が主催するランキングにおいて6位を獲得しているのです。2018年夏のボーナスは141万円で、情報通信業種としてもっとも高額でした。さらに2015年から2017年の推移を見ると、冬には約40~50万円程が毎年追加して支給されています。全産業の平均支給額は83万755円ということですので、ジャストシステムは全産業のボーナス平均支給額より50万円以上も高いということになります。こうした姿勢が年収増加に大きく貢献しているといえるでしょう。
ジャストシステム社内で年収が高い職種・役職は?
ジャストシステムが導入している「利益還元制度」により、給与と年2回の賞与のほかに営業利益を社員に分配しています。この賞与は業績に左右される一面があるものの、制度導入前には587万円だった平均年収が、2015年には新卒入社3年目にして640万円にまで上昇するに至りました。
給与と年2回の賞与では、評価が影響するため同期であっても大きく差が出てくるようです。とくに給与のランク制度では、大ランクが変わるだけで200万円ほど差がついてしまうということですから、利益還元だけではない実力主義であることが見て取れます。ランクが高い人ほど会社に貢献しており、結果多く報酬を貰っているといえるでしょう。
キャリコネに寄せられた給与明細を見ると、世代間での違い、同年代・同職種なのになんでこんなに差が生まれるのかの理由が確認できます。
ジャストシステム社員の給与明細(キャリコネ)
30代にして、満足のいく報酬!
20代・法人営業(非管理職)の
給与明細
30代・法人営業(非管理職)の
給与明細
9年前と比較すると、好調ぶりがはっきり!
30代・ソフトウェア関連職(2009年)の
給与明細
30代・ソフトウェア関連職(2018年)の
給与明細
年収の高さばかりに目を奪われがちですが、就職・転職を検討するにあたり気をつけなければならないことはないのでしょうか。
ジャストシステムの見落としがちな留意点、課題は?
ジャストシステムの給与はランク制度を取り入れており、年2回改定されると同時に全社員へランクを開示されます。公平な評価、そして報酬の支給を心がけているとされていますが、お互いのランクや年収が知られてしまうことは、人によってはモチベーションの低下につながるリスクもありそうです。
またPCの国内出荷実績が年々減少しており、ソフトウェア市場が縮小傾向にある点は懸念されます。10年前の2007年は436万2000台だった出荷実績が2015年には340万8000台に、2017年には321万台へと右肩下がりが続いていることから、市場の縮小傾向は免れないものとなっているのです。ソフトウェアの分野で成長した会社として、この現象は大きな痛手といえるでしょう。
ジャストシステムには年収以外にメリットはある?
ここまでジャストシステムの年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
変化の多い産業だからこそ過去の遺産に頼ってはいられないと、ジャストシステムは新しい制度を導入するなど改革をしています。その1つの現れとして、新しい技術開発を応援するべく、技術内閣制度というユニークな社内制度を導入しました。技術の分野ごとに「データベース大臣」「サーバーシステム大臣」など、計8名が大臣に任命され、技術課題の解決や社内の情報共有などの任務を背負います。各大臣が分野の枠を超えて話し合いをするため、縦割り組織の弊害や縄張り主義に陥る危険性がなくなるようです。
こうした取り組みが、新しい製品の開発につながっています。たとえば最近では、日本語処理技術を応用した医療向けデータウェアハウス「JUST DWH」や、システム開発者と相談しながらプログラミング教育の要素を組み込んだ通信教育「スマイルゼミ」があります。とくにスマイルゼミでのプログラミング教育は、プログラミング思考を養うものとして、言語の変わりやすいIT業界で注目を集めているのです。
以上のようにジャストシステムの改革は、非常に柔軟かつ新鮮です。より使いやすい製品を送り出すだけではなく、世の中に新しい便利さや学びを与える仕組みそのものを送り出しているといえるでしょう。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」
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