2021年開催予定の東京オリンピックを控え、政府が企業や大学に呼びかけて多くのボランティアを募っています。その呼びかけに対し、自社の社員にボランティア参加を奨励し社員を選抜したうえで、大会ボランティアのキックオフイベントまで開いた企業があります。五輪大会に協賛するゴールドパートナーでもある、富士通です。
日本の総合エレクトロニクスメーカーであり、総合ITベンダーとして国内最大手の富士通は、1935年に富士電機製造株式会社(現 富士電機株式会社)の電話部所管業務を分離し設立されました。各種のコンピュータや情報システム、電子デバイスなどの製造販売をはじめ、幅広く手掛けていて世間知名度が高い企業です。
また富士通は年収が高いことでも有名で、3000社を超える上場企業の中でも常に上位に位置しています。
では一体どれくらい高いのか、高い理由はなにか、年収の高さ以外のメリットやデメリットはあるのかなどに迫っていきましょう。
富士通の平均年収は859.4万円
それでは、はじめに富士通の平均年収について見ていきます。富士通の平均年収は、富士通の有価証券報告書によると、859.4万円です。キャリコネに寄せられた給与明細から算出した富士通年代別年収レンジは、20歳代で510〜560万円、30歳代で710〜760万円、40歳代で890〜940万円となっています。正規雇用者の平均年収は495.7万円(国税庁・令和2年分民間給与実態統計調査結果)で、比較して約1.74倍の額です。
■富士通の平均年収推移
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数 |
---|---|---|---|---|
2022年3月期 | 859.4万円 | 43.6歳 | 19.2年 | 34430人 |
2021年3月期 | 865.1万円 | 43.8歳 | 19.6年 | 32026人 |
2020年3月期 | 803.7万円 | 43.6歳 | 19.5年 | 32568人 |
2019年3月期 | 798.5万円 | 43.2歳 | 19.2年 | 31827人 |
2018年3月期 | 790万円 | 43.3歳 | 20年 | 32969人 |
出典:富士通・有価証券報告書
過去5年間の平均年収の推移をグラフと表組みで示しています。
富士通の平均年収は前年を下回り859.4万円でした。
過去5年間では2番目に高い額になりました。
富士通の年代別平均年収と中央値
■富士通の年収中央値は30代で728.7万円
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
年代 | 平均年収 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|---|
20代 | 527.3万円 | 34.4万円 | 92.8万円 | 474.57万円 |
30代 | 728.7万円 | 47.1万円 | 128.4万円 | 655.83万円 |
40代 | 905.6万円 | 58.2万円 | 159.6万円 | 815.04万円 |
50代 | 1070.7万円 | 68.6万円 | 188.8万円 | 963.63万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
富士通と競合他社の平均年収を比較
富士通の競合や同業界である日本電気、エヌ・ティ・ティ・データの3社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、富士通が859.4万円、日本電気が814.4万円、エヌ・ティ・ティ・データが852.1万円です。
この3社の中で最高額は富士通の859.4万円で、最低額が日本電気の814.4万円。その差はおよそ45万円で、給与月額3.8円程度の差があります。
この比較企業の中では富士通は1番目に位置します。
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 売上高 |
---|---|---|---|---|---|
富士通 | 859.4万円 | 43.6歳 | 19.2年 | 34430人 | 17423.6億円 |
エヌ・ティ・ティ・データ | 852.1万円 | 39歳 | 14.7年 | 12351人 | 10954.66億円 |
日本電気 | 814.4万円 | 43.6歳 | 18.5年 | 21350人 | 16644.34億円 |
富士通の競合企業の年収についてはこちらの記事をご覧ください
富士通社内で年収が高い職種・役職は?
富士通では、機能別・能力別のグレード制度を導入しています。正式には「Function区分/コンピテンシーグレードによる人事制度」といい、人事評価を年収に反映させています。社員が担うべき機能(Function区分)を分け、各業務で成果に結びつく能力(コンピテンシー)を職務や職責によりランク付け(グレード)し、要件定義書(Job Description)で明確にしたうえで、定期的に見直しや評価を行っているのです。
基本給与はグレードとサブグレードで決まり、コンピテンシー評価によって昇給やグレードが変更します。コンピテンシー評価でサブグレードは変わりますが、グレードを上げるには昇級試験に合格する必要があります。グレードは一般社員で5段階あり、上から2番目のリーダークラスにいくと、大きな昇給が期待できそうです。賞与は企業全体の業績に加え、個人の成果も影響すると理解しておきましょう。
富士通社員の給与明細(キャリコネ)
20代と30代ではこんなに違いが!
20代・法人営業(非管理職)の 給与明細
30代・法人営業(非管理職)の 給与明細
住宅・家族手当や賞与額の違いの差で…
30代・プロジェクトリーダー・賞与あり(非管理職)の 給与明細
30代・プロジェクトリーダー・賞与あり(非管理職)の 給与明細
富士通で働く上での課題はなにか
■世界規模の競争に勝てるかが今後の鍵
留意点の1つは、ITサービス市場の群雄割拠が挙げられます。競合他社との勢力争いは世界規模で、異業種からの新規参入者との競争も激しくなっています。ITサービス市場のシェアをグローバル規模で見てみると、3位に富士通、4位にNTTデータと、日本の2社がトップ10入りを果たしているのです。しかしながらそれぞれ3%、2%のシェアしかありません。1位のグローバル企業、IBMでさえ7%という状況から、いかにシェアを細かく取り合っているのかがわかります。
またIT業界には、年収と残業時間が比例する傾向があることも留意しておきましょう。経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」によると、年収1500万円以上と回答した人の残業時間は、もっとも高い43.0時間/月でした。これからIT業界へ挑戦する方は、年収と残業時間の関連性を考慮しておく必要があります。
富士通には年収以外にメリットはある?
ここまで富士通の年収面を見てきました。ただ就職先、転職先として年収の高さだけで決めることはできません。その他にメリットは無いのでしょうか?
群雄割拠の状態を、富士通が手をこまねいて見ているだけかというと、そうではありません。富士通は次々と新しい技術を送り出しているのです。自動運転の精度を高めるための映像データを1/1000に圧縮できる技術を開発した他、理化学研究所との合同で、胎児の先天性疾患をAIによって検知するシステムを開発しています。
さらに業界の課題である働き方改革も進めています。その一環として、課長職以上の管理職約6400人に対し、平日5連休の取得を義務付けました。
ITサービス業界は、参入障壁の低い業界であるがゆえにどんなに小さな企業でも台頭することができます。国内首位の富士通だからこそできる技術開発、そして働き方改革を世の中は求めているのではないでしょうか。同社の起こしたムーブメントが今後どのように広がっていくのか、大企業としての影響力の大きさが楽しみです。
出典・参考
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2021年企業活動基本調査速報-2020年度実績-」
国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2022年版 業種別 モデル年収平均ランキング」