【財務分析】ビッグデータ・AIで急成長のブレインパッド 豊富なキャッシュはどう使う?

【財務分析】ビッグデータ・AIで急成長のブレインパッド 豊富なキャッシュはどう使う?

ビッグデータ・AI(人工知能)関連企業として、安定的な成長を続けているブレインパッド。近年は深層学習や機械学習といったAI、データサイエンスの活用が注目され、さまざまな場面への応用が期待されます。同社の収益状況やビジネスモデルを概観していきます。


ブレインパッドは、ビッグデータやAIを活用した企業コンサルティング、経営改善を行う会社です。2004年設立、従業員数は306名(2019年6月30日現在)。

収集したデータを分析し、そこから導き出された収益の機会を顧客企業に提供し、対価を受け取るビジネスモデルを構築しています。

さらに、「マーケティング」や「ビジネスインテリジェンス」「データマイニング/機械学習」などの自社製品で経営支援も行い、企業収益を向上させる領域にまで及んでいます。

2019年11月8日現在の株価は5420円

損益計算書(PL):営業利益が前期比2倍超に

ブレインパッドの2019年6月期通期の売上高は56億7700万円と前期比31%増になりました。営業利益は11億8500万円と同102.6%増加し、2倍超に伸長。当期純利益は8億8100万円と同116.5%増でした。

営業利益率は20.9%で前期比7.4ptの伸びで、売上高、利益ともに良好で、売上高は上場した2012年6月期以来、営業利益は2017年6月期から3期連続で前年額を上回っています。


セグメント分析:ストック型からフロー型へ

ブレインパッドの事業セグメントは次の3つです。

  • アナリティクス事業:顧客企業の有する大量データに関するコンサルティングおよびデータマイニング(企業や社会に大量に蓄積されるデータを解析し、その中に潜む重要なパターンや法則性を抽出すること)の実行、ならびにデータに基づく企業行動の最適化支援を行う
  • ソリューション事業:顧客企業に対して、データ蓄積、分析および分析結果に基づく施策実行に必要なソフトウェアの選定および提供ならびにシステム開発および運用を行う
  • マーケティングプラットフォーム事業:主にデジタルマーケティング領域において、当社が着目したデータ分析系のアルゴリズムから独自性の強いソフトウェアを自社開発し、SaaS型サービスを中心とした顧客企業への提供と、その保守業務等を行う

出典:2019年度6月期決算説明会資料

セグメント別の売上高構成比は、アナリティクス事業が23億9700万円(42.2%)、ソリューション事業が18億2600万円(32.2%)、マーケティングプラットフォーム事業が14億5400万円(25.6%)です。

営業利益は、アナリティクス事業が10億2100万円、ソリューション事業が4億9500万円、マーケティングプラットフォーム事業が3億2600万円です。アナリティクス事業が他の2事業を大きく引き離しており、近年の成長度合いも大きくなっています。

出典:2019年度6月期決算説明会資料

貸借対照表(BS): 健全な資産構成

同社の総資産は38億6800万円で、そのうち20億7700万円が現金及び預金です。安全面からみると優れた資産構成を保っています。

流動資産の合計は32億3200万円で総資産の約83%を占めており、自己資本は26億8900万円、自己資本比率69.5%と、財務上の不安は感じられません。

2019年度通期の純利益が8億8100万円であったので、ほぼその額がB/Sの純資産の部の利益剰余金と、資産の部の現金及び預金に割り当てられた形です。



キャッシュフロー計算書(CF):現金を稼ぐ力を強化

2019年度6月期の営業キャッシュフローは10億3800万円で、前期比36.4%増。売上を通じて現金を稼ぐ力を測る営業キャッシュフローマージンも18.3%となり、サービス業平均の7.5%を大きく上回りました。

投資キャッシュフローはマイナス2億2900万円で、マイナス額が51.7%増。この結果、同期末のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計額。企業活動に自由に使えるお金)は8億900万円と、前期比199億円増となりました。

現金及び現金同等物の残高は20.7億円と豊富で、キャッシュリッチな状態です。



資本効率分析:当期純利益が急増

ブレインパッドの当期純利益は、ここ数年で急速に増加しています。

2019年6月期のROEは39.2%(サービス業平均10.7%)ROAは26.9%(同9.5%)であり、資本を効率的に活用し収益をあげていると捉えることができます。

高いROE・ROAの水準を維持しつつ、優秀な従業員の確保を進めていくことは、資本提供者から高い評価を受けることにつながります。


まとめ:目先の利益より「人材」投資を優先

ブレインパッドは、当初の中期経営計画では、月額利用料など継続的に計上される「ストック型」の売上を伸ばすことをめざしていました。

しかし現在では、開発の請負やコンサルティングなどその都度に上がる「フロー型」の売上を重視するよう方針を転換しています。

近年、ビッグデータやAIに対する注目度が急速に高まり、ビジネスの安定性よりも成長性を重視した戦略にシフトしているといえるでしょう。

フロー型の収益を伸ばすことで、新しい案件や顧客サービスを増やし、それを手掛かりとして規模を拡大していく方針と見られます。

出典:2019年度6月期決算説明会資料

同社には総資産に対して潤沢なキャッシュがあります。財務諸表から推察する限りでは、金余り感があるともいえるでしょう。成長への投資先、有効な資金の使いどころの発見が課題です。株主への利益還元として配当を開始し、市場からの注目を浴びることも手段の一つでしょう。

決算資料には、2020年6月期にはあえて利益成長をいったん停滞させながら、「人材採用・育成」「給与体系の見直しと組織再編」「オフィス環境」の3分野に投資を行う、と記載されています。

データサイエンスという領域はまだ新しく専門性の高い分野で、優秀な人材の獲得が難しいと言われています。「知識集約型ビジネス」を行うブレインパッドとしては、人材の待遇を上げモチベーションの維持・向上を図っていることがキーとなりそうです。

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