オムロン株は「割高」か「割安」か?
オムロンの株価は20年6月8日に7550円の年初来高値を更新し、コロナ前の水準を突破。21年3月期第1四半期決算翌日の7月29日には一時上場来高値の7600円をつけています。時価総額は1兆5675億円で国内上場企業の84位まで順位を上げています。
PBR(株価純資産倍率)は2.83倍、PER(株価収益率)は19.7倍と比較的高く、時価総額ランキングでオムロンを上回る79位で昨年来高値をつけた日本電気(NEC)のPBR 1.70倍、PER 15.3倍と比べても高い水準となっています。
この背景には、地合いのよさに加えて、第1四半期決算の増益や、体温計の増産など新型コロナウイルスの感染防止関連の需要への期待、エムティーアイの基礎体温記録アプリ「ルナルナ 体温ノート」のオムロンヘルスケアの女性向けの基礎体温計とのデータ連携(7月)、米国での高血圧症のオンライン医療参入(同)といった材料が好感されていると見られます。
一方で、20年3月期は大きく減収減益。当期純利益こそ増加したものの、その要因は車載事業の売却益によるところが大きいなど事業の収益性に不安があります。21年3月期も大幅減収減益の予想。社員のネガティブな口コミにいくつかの共通点があるのも気になるところです。
21年3月期の業績予想は「大幅な減収減益」
20年3月期決算の時点では、21年3月期の業績予想について、新型コロナウイルスのグローバルな感染拡大が顧客の設備投資や消費者の購買意欲の動向に与える影響を精査中であり、現時点では合理的な算定が困難であるため、未定としていました。
その後、7月28日の21年3月期第1四半期決算とともに発表された通期業績予想は、売上高が前期比13.0%減の5900億円、営業利益が同45.2%減の300億円、株主に帰属する当期純利益が同78.0%減の165億円と大幅な減収減益となっています。
■20年3月期は「制御機器事業」で利益の7割
20年3月期のオムロンの報告セグメントは5つ。収益の主軸はファクトリオートメーション(工場の自動化)に使用するセンサやコントローラなどの製造販売を行う制御機器事業(IAB)です。
このほか、体温計や血圧計などの家庭用医療機器や健康管理サービス、医療機関向け検査装置などを製造販売するヘルスケア事業(HCB)、券売機や自動改札といった駅務サービスなどの社会システム事業(SSB)、機器の直流化・高容量化・スマート化を支える電子部品事業(EMC)、本社直轄のその他事業があります。
2020年3月期の売上高は、制御機器事業が52.3%を占める3528億円。同セグメント営業利益でも、制御機器事業が69.7%の536億円を占め、ヘルスケア事業が17.6%の135億円、社会システム事業が10.6%の82億円、電子部品事業が1.2%の9億円、その他事業が0.9%の7億円でした。
地域別の売上高は、日本が45.6%。海外売上比率は54.6%と過半数を占め、中華圏が18.7%、欧州が16.1%、米州が10.1%、東南アジア他が9.3%などとなっています。
【20年3月期】オムロン、減収減益も株価上昇 「コロナ後の成長機会」に期待集まる
https://corp-research.jp/articles/5595オムロンは家庭用電子血圧計や体温計などの健康医療機器で知られていますが、利益の大半を産業用オートメーションに使用する制御機器が生んでいます。2020年3月期はコロナ禍の影響で売上が下がったものの、今後の展開が期待され株価は急騰しています。財務諸表などを基に会社の現状と将来性を整理します。
■21年3月期第1四半期は「コスト削減」で増益
21年3月期第1四半期は、その他事業の環境事業を社会システム事業に組み入れ、バックライト事業を収束し、セグメントを4つに統合。売上高(除く本社・消去調整)は前年同期比7.8%減の1448億円。自動車販売台数の減少が大きく影響し、制御機器事業が同7.9%減の821億円、電子部品事業が同21.7%減の180億円の大幅減収となっています。
一方、営業利益(同)は、前年同期比14.4%増と全事業で増益または赤字縮小。制御機器事業が同3.8%増の138億円、ヘルスケア事業が同32.4%増の45億円となっています。
利益増には、年間200億円を目標に掲げる固定費の削減が貢献しています。第1四半期だけで販管費を50億円、製造固定費も21億円、研究開発費も12億円減らしています。このうち新型コロナ緊急対応の活動減少による削減は34億円を占めています。
「コロナ後」の需要次第で成長株になる可能性
活動減少によるコスト削減による増益だけでは不安がありますが、その一方で会社は「コロナショック後に加速する新たな成長機会をとらえる準備ができている」として、3つの重点テーマを掲げています。
1つめは製造業における「省人化」ニーズ。製造現場における「3密回避」という新たな省人化ニーズが顕在化しており、ライン制御とロボット制御の統合を1つのコントローラで実現する世界初のシステムをリリースするとしています。
2つめは医療現場における「遠隔診療」ニーズ。グローバルシェアNo.1の血圧計などを起点に、患者の生体データを収集し、院内システムにつなげて医師とデータ共有するビジネスモデルを構築し、米国の医療機関でサービス提供を開始します。また年内に日本で初めて「心電計付き血圧計」を発売予定です。
3つめは鉄道駅務における「遠隔化・省人化」ニーズ。オムロン(旧立石電機)は日本初の自動改札機を開発した会社です。券売機や自動改札などの機器・システムの提供のみならず、サービスをセキュリティや駅窓口業務などにも拡大し、監視・運用や遠隔旅客対応などのサービスセンターを今後の注力領域とするとしています。
社員口コミに見る「社内事情」3つのポイント
企業口コミサイト「キャリコネ」には、オムロンの現役社員および元社員から数多くの口コミが投稿されています。
興味深いのは「ライバル企業」「アウトソーシング」「人事評価」という3つのテーマに触れている投稿が目につくこと。会社の内情と社員の感じ方を強く反映していると思われる口コミをピックアップしてみました。
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