【財務分析】コーエーテクモHD 継続的な株価上昇を支える業績と配当性向

【財務分析】コーエーテクモHD 継続的な株価上昇を支える業績と配当性向

「三國志」「信長の野望」「ウイニングポスト」などのゲームブランドを擁するゲーム子会社を傘下に持つ、持株会社のコーエーテクモホールディングス。同社の株価が長期間底堅い上昇を続け、投資家から支持されている理由は何か。同社の配当政策から考えられる株主目線の経営方針に照準を当てて、財務諸表を分析します。


損益計算書(PL):過去最高益を記録

コーエーテクモHDの2019年3月期決算は、売上、利益ともに2009年4月のコーエーとテクモの経営統合以来最高の業績となりました。

売上高は389億6800万円と前期比0.1%増、営業利益は120億9200万円と同3.3%増加しました。営業利益率は前期比0.9pt増の31.0%でした。


セグメント分析:収益の大半はゲーム子会社

コーエーテクモホールディングスの事業は、以下の4つのセグメントで構成されています。

エンターテインメント事業:エンターテインメントコンテンツの開発・販売

アミューズメント事業:スロット・パチンコ事業とアミューズメント施設運営事業で構成

  • スロット・パチンコ(SP)事業:コーエーテクモIPを活用したパチンコ・パチスロ機への版権許諾、パチンコ・パチスロ機の液晶ソフトの企画・開発
  • アミューズメント施設運営(AM)事業:アミューズメント施設「テクモピア」の運営

不動産事業:同社が保有する賃貸用不動産の運用、管理

その他事業:将来有望な企業やビジネスへの投資を行う、ベンチャーキャピタル事業

会社をけん引するのは売上高の89.5%、営業利益の91.6%を生み出すエンタテインメント事業で、同社の中核事業となっています。

なお、有価証券報告書には主要子会社の業績も掲載されており、ゲームの企画・開発・運営などを行うコーエーテクモゲームスの売上高は309億2400万円、ゲームなどの流通・卸・通販を行うコーエーテクモネットの売上高は73億700万円となっています。

このことから、コーエーテクモグループの収益の大半は、子会社のコーエーテクモゲームスが上げていることが分かります。

出典:2019年3月期決算説明会資料

コーエーテクモゲームスを中心とするエンタテインメント事業は、以下のブランドを展開しています。

  • 「シブサワ・コウ」ブランド:歴史をテーマにした「三国志」や、Winning Post(競馬シミュレーションゲーム)「大航海時代」等の商標(IP)をオンラインゲームやロールプレイングゲームなど
  • 「ω-Force」ブランド:「真・三國無双」、「戦国無双」等の無双シリーズや「討鬼伝」等のハンティングアクションゲーム
  • 「Team NINJA」ブランド:「仁王」「DEAD OR ALIVE」「NINJA GAIDEN」等のアクションゲーム
  • 「ガスト」ブランド:アトリエシリーズ、よるのないくにシリーズ、『BLUE REFLECTION』等のロールプレイングゲーム
  • 「ルビーパーティー」ブランド:"女性向けゲーム"を中心に、家庭用ゲームソフトの企画・開発・販売、スマートフォンゲームの企画・開発・運営、コーエーテクモIPを活用した関連グッズや音楽CDの制作、イベントの企画・運営
  • 「midas」ブランド:スマートフォン市場において、組織や会社の垣根を越えて、自由闊達なアイディアによるIPの創発や展開を目指す新ブランド
  • 「その他」ブランド:「みんなでも」「いつもでもどこでも」コーエーテクモがお届けする、楽しいゲームやコンテンツがもりだくさんのSNSサイト

2019年3月期の地域別売上高構成比は、国内が265億4100万円で68.1%、海外が124億2700万円で31.9%でした。海外の51.7%をアジア地域が占め、大きく成長しました。

なお、2020年3月期には海外売上高を161億円、全体の37.4%まで高める計画です。

貸借対照表(BS):財務の安定性は高い

貸借対照表の内訳では、総資産1291億9200万円負債99億800万円純資産1192億8400万円でした。負債割合は前期比19.8%減少した結果、株主資本比率が92.3%と非常に安定しました。

流動負債は89億5700万円で、未払い法人税等が22億4000万円を占めています。短期的な債務の支払い力を示す流動比率は220.8%と、200%以上の安全域を確保しています。


キャッシュフロー計算書(CF):営業CFマージンは高いが漸減

2019年3月期の営業活動によるキャッシュフローは95億9700万円、投資活動によるキャッシュフローはマイナス14億9600万円、財務活動によるキャッシュフローはマイナス77億3000万円となりました。

現金を稼ぐ力を表す指標である営業キャッシュフローマージンは24.6%で、前期比2.1pt下がったもののサービス業の平均7.5%を大きく上回っています。

財務活動によるキャッシュフローのマイナスの主な要因は、配当金の支払い額に65億5100万円、自己株式の取得に15億5600万円を支出したことでした。この二つの項目は主に株主への還元額を表すもので、計81億700万円と株主満足の向上への意識が高い結果と言えるでしょう。


資本効率分析:ROE・ROAは横ばい

2019年3月期のROEは11.6%ROAは10.6%で、当期純利益は136億9400万円です。

ROEとROAは、いずれもサービス業平均をやや上回っています。当期純利益の増加とともに徐々に右肩上がりとなっており、特に大きな問題はなさそうです。


まとめ:高い配当性向に注目が集まる

コーエーテクモグループでは、2020年1月に横浜のみなとみらいに新オフィスを移転し、2021年3月期には売上高510億円(2019年3月期の1.3倍)を目指しています。

出典:2019年3月期 決算説明会資料

コーエイテクモHDの株価は、長期間継続的に向上しています。

同社は利益還元の基本方針として「配当金に自社株買付けを加えた連結年間総配分性向50%、あるいは1株あたり年間配当50円」を掲げています。これに経営統合10周年記念配当を上乗せし、2019年3月期の総配分性向は62.03%まで上昇しています。

そこで気になるのが株主構成ですが、同社の創業者はテクモと経営統合する前のコーエーを設立した襟川陽一氏。いまも陽一氏が社長、妻の恵子氏が会長、長女の芽衣氏が取締役を務めています。

筆頭株主の光優ホールディングスの社長も襟川陽一氏。株主第3位の光優や、襟川陽一・恵子・芽衣各個人の持ち株を加えると合計で全体の55.7%となり、株主の半分以上を襟川一族が占めていることは、頭に置いておいてもいいでしょう。

出典:2019年3月期 決算説明会資料

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