NHKの採用面接前に知っておきたいこと
■組織風土への理解
総務省管轄の特殊法人であり、日本全国を網羅する放送ネットワークを有する日本放送協会(以下、NHK)。日本において公共放送はこのNHKのみとなっており、公共性の高いコンテンツ作りには定評があります。広告収入による経営が認められていないため、視聴者からの受信料を財源とした経営が基本となっていますが、近年、視聴者の受信料未払い問題が世間の耳目を集めています。
そんなNHKの口コミには「縦社会」「年齢ではなく組織歴の長さがものを言う」「真面目」といった言葉が並び、官僚主義的な面を持つ堅い組織風土がうかがえます。完全な実力主義を好む人には向かない風土と言えそうですが、福利厚生や休暇制度の充実など、恵まれた労働環境もあります。「仕事とプライベートのバランスが取れる」という口コミも見受けられました。
一方で多く見られたのが、やりがいについての口コミです。特にクリエイティブ職においては、自分が制作に携わった番組が全国ネットで放送され、社会に影響を与えることに大きなやりがいを感じる人が多いようです。また、公共放送として、公共的価値を重視したコンテンツ作りを行っているため、撮影や編集などの作業は緻密性を求められることから、コンテンツが完成したときの達成感は非常に大きいよう。就業する上でやりがいを重視する人には適した組織風土と言えるでしょう。
公共放送の担い手としての官僚的で堅い体質はあるものの、大きなやりがいを感じながら仕事に取り組むことができる。採用面接では、こうしたNHKの組織風土にフィットする人材かどうかを見極められます。
■選考は何次まで?
書類選考通過後、通常3回の面接があります。職種によっては面接回数が増減する場合や、間に専門的なテストを挟む(翻訳職において翻訳試験を課される、など)ことがあるようです。最終面接通過後、健康診断受診を経て内定が出るプロセスとなっています。内定までに3か月かかったという人もおり、スピーディな選考を望む場合にはその旨を先方に伝えておく必要があるでしょう。
現在、NHKでは記者の募集を行っています(通年採用)。面接では、放送業界に対する意識や考え方を問われる傾向があります。自分のスキルと適性を最大限にアピールできるよう、事前にしっかりと対策をして臨みましょう。面接内容の傾向についての詳細は次項をご覧ください。
■面接内容の傾向は?
「志望動機は?」「これまでどのような仕事をしてきたか」など、中途採用面接としてはオーソドックスな質問とともに、公共放送を担う組織人として必要な知識や考え方を問われることが多いようです。「テレビ放送でワーストワンだと思った番組は?」「未来の放送はどのようになると思うか?」と質問されたとの口コミもあり、放送業界について常にアンテナを高く張っておく必要があります。普段から、意識的に物事の問題点を探る姿勢を持ちましょう。自己分析と志望動機はしっかりと練り上げ、予想されるオーソドックスな質問に対してはスムーズに答えられるよう回答を準備しておくと安心です。
「転勤が多いが大丈夫か?」と確認された人や、「受信料を払っていない人を説得する実演」を求められた人もいました。転勤の有無も含めて自分の希望する職種の業務内容をしっかりと理解しておき、どのような質問をされても落ち着いて対応できるよう心の準備をしておきましょう。
また、「今の会社の経営状況が悪化したからうちに来るのか?」「あなたがそれだけ優秀なら(転職することで)会社に迷惑がかかるのでは?」など、少し穿った視点から質問されることもあるようです。自分の転職について、理路整然とした説明を用意しておくとよいでしょう。全体的に整合性のとれた回答となるよう、質疑応答のシミュレーションもしておくと役立ちます。
NHKの面接攻略法(面接対策)
■NHKの経営計画を踏まえた自己分析
NHKの面接を受ける上では、経営戦略を理解しておくことが不可欠です。
NHKは特殊法人ですが、視聴者からの受信料を財源とした独立採算制での経営を行っており、子会社でも営利事業を展開しているため、経営計画を策定しています。
「大切なことを、より深く、より身近に」と題したこの経営計画では、上記のような「経営14指標」が掲げられ、受信料を財源とするにふさわしい経営を行っていく姿勢が明確に打ち出されています。
これまでの公共放送だけでなく、インターネットも活用することにより、「公共メディア」としての立ち位置を確立したいNHK。わかりやすく良質なコンテンツ制作にこだわりつつ、インターネットや新しい技術に対応した情報収集や報道手法を研究することで、「公共的価値」を向上させていく方針です。これまでの広い放送ネットワークに加え、情報端末に応じたコンテンツ展開により、防災や緊急時対応の面でも優れた、視聴者の生活に役立つ情報提供が行われることが期待されます。
また、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることに合わせ、テレビ国際放送の制作力・発信力およびサービスの広範化を推進していきます。さらに、東京オリンピック・パラリンピックをハイレベルな放送・サービスにするための取り組みを足掛かりに、未来へ向けた新技術開発・サービス研究に力を入れていきます。
マネジメント面では、受信料負担に対する視聴率の理解促進を図り、不公平感を払拭したい考えです。そのためには広報力の強化、視聴者とのコミュニケーション力強化とともに「視聴者の期待に応えるNHKのあり方」を追求します。「働き方改革」も積極的に進め、職員やその他スタッフすべてが健康に働ける環境作りを推進し、より健全な組織を目指します。このように、NHKでは「常に公共性を意識して働くことができる人物」が求められていると言えるでしょう。採用面接に臨むにあたっては、経営計画をしっかりと理解し、自己分析に落とし込んでおくことが必要です。
■「なぜNHKに転職したいのか」の明確化には他社研究が必要
NHKの面接でよく聞かれる質問のひとつに「なぜNHKか」というものがあります。面接官がこの質問を通して知りたいのは、「この人物は何をやりたいのか」「それが当社で可能なのか」「この人の経歴が当社でどう活かされるか」といった視点ももちろんですが、「本当に当社のことを理解しているか」という側面も合わせて見ています。
業界理解や職種理解の枠を超えて、NHKという企業についてしっかりと理解する。そのためには競合となりやすい企業の他社研究も忘れないようにしましょう。広告収入に頼る民放や、地域密着型の地方局との違いなど、細かく調べておきましょう。具体的には、以下のような企業について調べておくことがおすすめです。
- 株式会社テレビ東京
- 日本テレビ放送網株式会社
- 株式会社テレビ朝日
- 株式会社TBSテレビ
- 株式会社フジテレビジョン
NHKの採用面接で実際に聞かれた質問内容
このようにNHKの採用面接を受ける上では、経営戦略に基づいた自己分析や他社研究を踏まえた志望動機の整理が大切です。そして面接の場では「公共放送の担い手としての官僚的で堅い体質はあるものの、大きなやりがいを感じられる組織風土」を意識して、「組織になじみ、公共性を意識した高い志をもって働ける人材」であると印象づけられるよう、さまざまなエピソードを準備しておくといいでしょう。
面接経験者が実際に聞かれた質問をご紹介します。これらの質問をされたらどのように答えるか、しっかりと考えながら面接対策しておきましょう。
30代前半・男性/AD【結果:2次面接で不採用】
20代後半・女性/研究開発【結果:最終面接で不採用】
20代後半・女性/ライター【結果:入社】
20代前半・女性/映像制作【結果:入社】
20代前半・男性/カウンターセールス【結果:入社】
NHKの採用面接に向けて
NHKの採用面接を受けるにあたって、ぜひ押さえておきたい重要なことをご紹介してきました。面接対策として準備しておきたいのは、以下の3つです。
- 「公共放送の担い手としての官僚的で堅い体質はあるものの、大きなやりがいを感じられる組織風土」を理解し、それに合致した行動がとれる人材であることをアピールする。
- NHKの経営計画を理解して、これに沿った自己分析を行い、自己PRへとつなげる。
- 競合他社についての理解を深め、「なぜNHKなのか」に対する答えを明確にしておく。
大阪大学文学部卒業後、インフラ系SIer、大手信用調査会社、製薬会社で総務畑を歩む。企業を俯瞰的に見るのが得意。