ZOZOに転職したい人のための企業研究【6時間労働制と手厚い住宅手当】

ファッション専業のECサイトとして知られる「ZOZOTOWN」。有名ブランドから「しまむら」などの大手ファストファッションまで幅広くカバーし、2019年3月時点で取り扱いブランド数7000超、常時73万点以上のアイテムをそろえる一大プラットフォームに成長を遂げています。運営会社である株式会社ZOZO（以下「ZOZO」／旧スタートトゥデイ）も、まさに破竹の勢いで成長してきました。計測技術を武器にしたZOZOSUITの展開が話題になっているほか、中国への再進出も計画中です。同社の最新情勢に触れながら、転職を検討する際に欠かせない情報を紹介していきます。

ZOZOはEC（電子商取引）事業を展開していますが、そのなかでも大きく「ZOZOTOWN事業」と「BtoB事業」に分けられます。それぞれのビジネスモデルについてみていきましょう。

まず、「ZOZOTOWN事業」については、買取販売型もあるものの「受託販売」が主流です。テナント形式で出店する各ブランドの商品を同社の物流拠点で預かり、商品の撮影や発送等も含めて全て請け負っています。劣化する心配が少ないアパレル商材に特化しているからこそ、実現できるビジネスモデルといえるでしょう。受託販売手数料が売上となっており、楽天市場やAmazon.co.jpなどに比べて手数料は高め。しかし、顧客にとっては管理・発送作業等の負担が軽減されるという大きなメリットがあります。また、あくまで在庫は顧客から「預かっている」ため、ZOZO側が在庫を抱えて苦しむリスクもありません。

そして、ZOZOTOWN事業には子会社「ZOZOUSED」が展開する古着買取・販売ビジネスも含まれます。ZOZOTOWN内で個人ユーザー等から買い取った古着をファッションモール「ZOZOUSED」で販売するという流れです。査定費や梱包資材、送料、振込手数料などはすべて同社負担。ユーザーは梱包資材を用意する必要がなく、商品をつめて送るだけというフローのため、フリマアプリとの差別化が図られています。ZOZOTOWNで購入した洋服を下取りに出し、割引価格で新たな洋服を購入できる「買い替え割」や、一次流通で得られたノウハウやビッグデータを活かした自動査定システムの導入なども特徴的です。

一方「BtoB事業」では、子会社と連携しながら各ブランドのECサイト運営を支援しています。システム開発から物流、マーケティングまで、ニーズに応じてフルフィルメント業務を受託しています。

その他、ファッションコーディネートアプリ「WEAR」の運営や、計測データを基にユーザーの体型に合わせた商品販売を行うPB（プライベートブランド）事業、広告事業など、ファッションを軸に幅広く事業を展開しています。

2019年3月期の連結決算では、商品取扱高は3231億円で前年比から19.4％増加、売上高は1184億円と20.3％増加したのに対して、営業利益（本業の儲け）は256億円と21.5％減少し、増収減益となりました。営業利益率は7.9％と前年実績12.1％からは4.2ポイントの減少でした。

特にPB事業について、前澤社長は

と決算説明会補足資料に記しており、新しい取り組みが多すぎたことが予算未達の原因と振り返っています。

また、「ZOZOARIGATOメンバーシップ｣サービスも開始から5か月で終了する運びに。「ARIGATO」は、有料会員になることでZOZO負担により10％オフで商品が購入でき、割引分でショップ・支援団体等の応援ができるというサービスでした。しかし、サービス内容に関する説明の乏しさもあって、一部のブランド価値を重視するブランドからの不信を招く結果に。「ZOZO離れ」というマイナスワードの報道も過熱し、新規会員登録数や商品取扱高は当初の想定より下回ってしまいました。

そのほか減益の要因として、配送費用変更に伴う荷造り運賃の上昇、ZOZOSUITの大量配布による広告宣伝費の増加も挙げられます。

つづいて、事業別の業績をみていきましょう。

コア事業であるZOZOTOWN事業の商品取扱高は3113.5億円と前年比18.4％増。全体的には堅調な成長とみてとれますが、「ARIGATO」サービスによる見込みが外れ、割引負担分が重荷となりました。ZOZOWOWN事業の商品取扱高内訳をみると、受託ショップが2942億円と前年比19.2％の増加、買取ショップは1.4億円で10.1％減少、ZOZOUSEDは169.7億円で6.4％増の着地となっています。

また、強化してきたBtoB事業は伸びをみせている一方、前述の通りPB事業は振るわず。売上高は期初計画の200億円を大きく下回る約27億円となりました。ZOZOSUITの計測の煩わしさや、予約から配送まで時間を要したことなどが影響したと考えられます。

では、今後の事業戦略について、注目ポイントをみていきましょう。

まず、大きな方向転換を迫られることになったPB事業については、2019年秋からその発展形ともいえる「MSP（マルチサイズプラットフォーム）事業」の開始を表明しています。出店ブランドと共同で20～50程度のサイズ展開のアイテムを作り、ZOZOTOWNで販売する予定。ZOZOが実施したユーザーアンケートでも、「マルチサイズ」に需要があることは明らか。「ZOZOSUIT」で得た100万件以上の体型データ活用を活用し、ビームスやリーバイス、アーバンリサーチなどの有力ブランドとタッグを組みます。

つづいてBtoB事業については、ZOZO側がECサイト支援を行う際に発生する運営手数料（配送料・出荷代行手数料を除く）の15％を無料化するという思い切った施策（Fulfillment by ZOZO）を発表。顧客にとっては当然コスト削減になり、ZOZOTOWNと在庫を共通化することで、ZOZOは欠品による機会損失を減らすことができます。2019年10月に開始予定ですが、5月時点で20以上のブランドとの提携が決定しています。

キャリコネに寄せられた給与明細から算出した年代別年収レンジは、20歳代で370～470万円、30歳代で520～620万円、40歳代で660～760万円となっています。

月給制で、賞与は年2回の支給です。基本給（役職給を除く）や賞与において個人業績は加味されず、全員が同じ金額を支給されるという独自の報酬体系。前澤社長は「競争が嫌い」と公言しており、社員のボーナスを一律にしたのもその一環です。実際に働く社員の口コミをみても、役職に就かなければ一定の年収が続くようです。

なお、昇格については上長の判断により毎月チャンスがあります。口コミでは、「定期的な昇給交渉の場がない」との意見もあれば「年2回更新があった」との意見もあり、評価に関する話し合いの頻度なども上長によるようです。

ZOZOの口コミには働く環境について様々な意見が届いています。その中でも特徴的な点を３つ挙げます。

ZOZOの福利厚生のなかでも、社員の6割以上が利用する特徴的な制度が「幕張手当」です。ZOZOの本社がある幕張地域の活性化を目的としており、指定エリア内に住むスタッフには月額5万円が支給されます。

通勤ラッシュと無縁の生活を送れ、通勤ストレスが軽減。近隣に住む同僚が多いことで交流を持ちやすいという利点も。ZOZOは平均年齢約31歳（2017年度）と若い社員が多く、自由で明るい社風で知られていますが、同じ地域に住みながら働くことでより一体感を生み出しやすくなっています。口コミでは、「地方出身者でも安心できた」といった声も聞かれました。

ファッション関連業界で働く際の楽しみのひとつが、「社員割引」でしょう。割引率は明らかにされていませんが、同社でもZOZOTOWN経由の購入で従業員割引制度が利用可能です。

実際にサイトやアプリを使用することで得られた気づきをもとに、新たな機能の追加や商品表示の変更、入荷情報の配信にまつわる提案などを行うこともできます。

また、アパレル業界では、自社ブランドの服を着用して業務にあたることを強いられるケースも多くみられます。しかし、ZOZOはその限りでないため、収入が服に消えるといったジレンマに苦しむこともありません。

働く環境の面で最後に紹介したいのが「ろくじろう」です。ろくじろうは「6時間労働制」を意味しており、2012年5月から開始されたZOZO独自の取り組み。ZOZOの就業規則上ではあくまで労働時間は8時間ですが、その日の業務が終わるようであれば、昼休みをとらずに9時～15時の6時間勤務で帰宅してもいいとする驚きの制度です。働く時間を減らしても給与の減額はなく、8時間で換算されるのもポイントのひとつです。

日本にはあまり馴染みのないこの制度。「昼食をとらなくても平気なのか？」という点が気になりますが、軽食はOKとされています。

また、気になるのは現実的に運用できているのかということでしょう。口コミを見ると、夏季や年末年始などの繁忙期は、当然ながら残業が発生しているようです。しかし、日常的に無駄な資料づくりを徹底的に排除する、会議はできるだけ短時間に設定するなど、効率的な働き方が実践されています。終業後は英会話やスポーツを楽しむなど、充実した時間を過ごすメンバーもいるようです。

ここでは、実際にZOZOで募集されている職種を見ていきましょう。

同社の中途採用（2019年5月現在）では、「WEBマーケター」「ビジネスアナリスト・データサイエンティスト」「コールセンターでの顧客対応管理スタッフ」「経理スタッフ」などが募集されています。

プロモーション・販促キャンペーンに関する企画や制作進行を行う「WEBマーケター」は、SQLやGoogleアナリティクスによるデータ抽出・分析経験が歓迎されています。ユーザーを惹きつけるための重要な職種のため、ファッションやトレンドに敏感であることが求められています。

売上改善施策や新規事業立ち上げに伴うデータの検証・分析、KPI定義などに携わる「ビジネスアナリスト・データサイエンティスト」は、SQLによるデータ抽出・分析経験が必須。ただし、実務経験は問いません。新規事業の立ち上げが多いZOZOだからこそ、やりがいある仕事でしょう。

「コールセンターでの顧客対応管理スタッフ」については、お客様対応の案件管理や、実際に対応するオペレーターに対しての指示・フィードバックなどを行います。ZOZOTOWNのサービスの質に直結する仕事です。

「経理スタッフ」は、月次・四半期・年次決算の担当者や税務担当者が募集されています。ZOZOでは、2018年に子会社のZOZOテクノロジーズを発足しているほか、それまでも数社の完全子会社化に取り組んでいます。今後も事業を拡大し続けるなかで、存在感のあるポジションで業務にあたれると考えられます。

選考ステップは、職種を問わず「WEB書類選考→面接（2～3回）→内定」という流れになっています。ただし、ブランド営業・運営サポート職では、通常使用されるバストアップの履歴書写真とは異なり、コーディネートを確認する前提で全身写真を添付する必要があります。気をつけておきたいポイントのひとつでしょう。

また、キャリコネに寄せられた採用面接に関する口コミをみると、「志望動機を掘り下げて聞かれた」「ZOZOが運営するサービスの改善点を質問された」といったコメントも見られました。ZOZOでは、主体性や挑戦意欲がある人、変化を楽しめる人が求められており、代表インタビューでは、

とあります。

こうした社風や理念とマッチしているかどうかもみられるでしょう。志望動機を伝える場面では、企業理念に共感したうえで、裏付けとなる過去の経験や実績を伝えられるかが鍵となります。また、当然ながらあらかじめサービスを利用しておくことも必要でしょう。

ここまでZOZOを見てきましたが、転職者におすすめしたい理由は以下の3点です。

・「天才」前澤社長のもと、さまざまな事業に取り組める
・「ろくじろう」など、新しい働き方を体感できる
・ファッション専業EC運営会社として圧倒的な知名度がある

「ZOZOSUIT」や「ARIGATO」など、賛否両論はあるにせよ革新的なアイデアを他社に先駆けて次々と展開していく前澤社長。その天才肌とも言える社長のもとであれば、挑戦志向の強い人にとって自己実現が叶う転職先になることには違いないでしょう。

また、他の先進国に比べ日本のEC化率は低いため、今後の上昇が期待されます。試行錯誤を繰り返しながらも驚異的な成長を続けるZOZOを転職先として選択すれば、成長のチャンスは豊富にあるでしょう。