0 編集部が注目した重点ポイント
① 運用資産100兆円突破と安定収益モデルへの転換
インベストメント・マネジメント部門において、運用資産残高が過去最高の101.2兆円を記録しました。野村アセットマネジメントを中心に、市場変動に左右されにくい「安定収益(ストック型ビジネス)」を積み上げており、収益構造の質的な改善が着実に進んでいます。
② 海外ビジネスの利益貢献とホールセールの飛躍
ホールセール部門が全社を大きく牽引し、海外3地域合計で9四半期連続の税前黒字を達成しました。特にエクイティ(株式関連業務)が過去最高の収益を上げ、セルフ・ファンディングによる自律成長が加速。グローバル金融機関としての地力が一段と強化されています。
③ 新設「バンキング部門」と野村信託銀行の連携強化
2025年4月に新設されたバンキング部門において、野村信託銀行のシステム更改が完了しました。来年度の「預金スイープ」導入を控え、証券口座との連携を深めることで、リテール領域における新たな顧客体験と安定した利息収益の獲得を目指す攻めの戦略が鮮明です。
1 連結業績ハイライト
出典:2026年3月期第2四半期 決算説明資料 P.2
収益(金融費用控除後)
5,155億円
前年同期比 +7%
税前利益
1,366億円
前年同期比 +3%
当期純利益
921億円
前年同期比 △6%
ROE
10.6%
目標 8~10%+
当第2四半期の純収益は5,155億円、税前利益は1,366億円となりました。前四半期比では不動産売却益の一巡により減益に見えますが、本業の収益力を示す主要4セグメント合計の税前利益は1,326億円と、前四半期比で25%の大幅増益を達成しています。ROEは10.6%となり、6四半期連続で目標水準(8~10%+)をクリアしました。
「資産運用立国」の実現に向けた個人の投資シフトを背景に、野村信託銀行や野村アセットマネジメント等の各事業会社が連携して資産残高を積み上げています。通期業績予想は非開示ですが、上半期累計でのROEは11.3%に達しており、極めて力強い進捗状況にあると言えます。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2026年3月期第2四半期 決算説明資料 P.6
ウェルス・マネジメント部門
【事業内容】
個人顧客や法人オーナーに対し、コンサルティングを通じた資産管理サービスを提供します。
【業績推移】
純収益1,165億円、税前利益455億円(前四半期比17%増)。約10年ぶりの高水準な利益を記録しました。
【注目ポイント】
ストック資産残高が過去最高の26.2兆円に達し、ビジネスの安定性が劇的に向上しています。野村信託銀行等との連携により、ローンや信託といった多様なソリューションをワンストップで提供できる体制を強化しており、高度な提案力を持つプロフェッショナルへの期待が高まっています。
インベストメント・マネジメント部門
【事業内容】
野村アセットマネジメントを中心に、多様な投資信託や資産運用サービスをグローバルに展開します。
【業績推移】
純収益608億円、税前利益307億円(前四半期比43%増)。運用資産残高は101.2兆円を突破しました。
【注目ポイント】
10四半期連続の資金流入を達成し、オルタナティブ運用残高も過去最高の2.9兆円となりました。野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングの移管により、助言機能も一段と強化。高度な運用分析や、新領域(未公開株等)の投資スキルを持つ人材を切望しています。
ホールセール部門
【事業内容】
国内外の機関投資家への金融サービス提供および、企業のM&Aや資金調達のアドバイザリーを担います。
【業績推移】
純収益2,792億円、税前利益531億円(前四半期比27%増)。海外3地域の利益貢献が加速しています。
【注目ポイント】
グローバル・マーケッツのエクイティ部門が過去最高収益を更新。インベストメント・バンキングでは国内M&A首位を堅持しつつ、海外のデジタルインフラ等の成長領域で案件を獲得しています。世界基準の金融実務に挑みたい層には、今が参画のベストタイミングです。
バンキング部門
【事業内容】
野村信託銀行やNomura Bank Luxembourgを実務主体とした、預金、貸出、信託サービスを担います。
【業績推移】
純収益129億円。新設直後ながら、各種残高の拡大により堅調な立ち上がりを見せています。
【注目ポイント】
グループの銀行・信託機能を一手に引き受ける成長の柱です。2027年3月期に予定される「預金スイープ」の導入に向け、証券ビジネスと銀行ビジネスを繋ぐ新しい金融プラットフォームの開発が急務となっており、組織作りから関われる醍醐味があります。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2026年3月期第2四半期 決算説明資料 P.4
野村グループは経営ビジョン「Reaching for Sustainable Growth」のもと、ボラティリティの低い「安定収益」の比率を極限まで高めようとしています。今決算で示された預かり資産の大幅増は、この戦略が正鵠を射ていることを証明しました。10月の足元状況も、投資一任や投信の買付超過が継続するなどトレンドは堅調です。
採用面では、野村信託銀行を含むバンキング部門の強化や、米国資産運用会社の買収・統合に伴うPMI(買収後の統合作業)など、従来の「証券マン」の枠を超えたプロフェッショナル人材の獲得が急務です。多様な金融機能を融合させた新しいビジネスモデルの構築に携われる点は、転職希望者にとって最大の魅力と言えるでしょう。
4 求職者へのアドバイス
- 「安定収益モデルへの転換」という構造改革に対し、自身の専門性や顧客対応力がどのように持続可能な収益に寄与できるかを論理的に構成する。
- 「野村信託銀行」や「野村アセットマネジメント」等、具体的な事業会社を通じて実現したい「新しい金融の形」を自身の言葉で表現する。
- 海外拠点の黒字定着という実績を背景に、日本発のグローバル・トップティアを目指す野村の舞台で、いかに価値を発揮したいかを伝える。
- 「安定収益の拡大が加速していますが、現場のアドバイザーにとって、これまでと最も変わった評価指標(KPI)は何でしょうか?」
- 「バンキング部門の来期予定である『預金スイープ』の導入により、対面コンサルティングの役割はどう進化するとお考えですか?」
- 「米国資産運用会社の統合において、日本国内の運用チームやIT部門とは具体的にどのような連携が始まっていますか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
昔よりは女性の役職者が増えたと思います。ただし営業は体力気力が勝負になるところがあるため、強靭なタイプの方が生き残っているイメージです。産休育休はしっかり取得できますし、お子さんの学校の都合などで急な早退や休暇を取得される方もいました。(野村證券。30代前半女性・正社員)[キャリコネの口コミを見る]
残業代を申請しにくい環境である。朝会が毎日あるため、8時前に出社は必須。大体が7:30に出社していた。新卒社員は6:30出社。福利厚生について、休職制度はしっかりしていた。体調不良になる人が多いからだと思われる。鬱に対しての理解は高い。(野村證券。27歳女性・営業職)[キャリコネで給与明細を見る]
※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
- 2026年3月期 第2四半期 決算説明資料
- 2026年3月期 第2四半期 決算短信〔米国基準〕
- 奥田グループCEO決算コメントおよびハイライト
- 2026年3月期 第2四半期 決算説明会 質疑応答要旨



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。