0 編集部が注目した重点ポイント
① 長期成長に向けた「意志ある下方修正」を決断する
2025年度第2四半期において、18中計(第18次中期経営計画)の新イニシアティブを推進するため、あえて業績予想の下方修正を決定しました。これは目先の数字よりも、日本での人材・DX投資の加速やインドでの構造変換といった持続的成長のための優先課題を打破することを優先した経営判断であり、組織の若返りやマインドセットの定着を図る転職者にとって大きな転換点となります。
② 海外新社長の就任と経営体制を大幅に刷新する
インドではPravin新社長、欧州ではBastian新社長が就任し、グローバル拠点の統率力を強化しています。特にインドでは建築用の構造変換、欧州では「KANSAI HELIOS新戦略」の推進といったリーダーシップの刷新が進んでいます。新体制下での改革が加速しており、グローバルな視点で事業変革に携わりたい人材には非常に魅力的なフェーズです。
③ 中国EVメーカーへの参入拡大と北米収益改善を開始する
海外進出した中国自動車メーカー(OEM)への参入が順調に進み、タイやマレーシアでの新規獲得が続いています。一方で課題の北米市場には、日本からの支援チーム(CFT:クロスファンクショナルチーム)を派遣し、抜本的な収益改善プロジェクトを開始しました。不採算領域の立て直しと成長領域への攻め、両面でのキャリア機会が生まれています。
1 連結業績ハイライト
出典:2025年度 第2四半期 決算説明資料 P.5
売上高
2,892億円
-1.6%
経常利益
286億円
+10.0%
中間純利益
162億円
+3.2%
※セグメント利益 = 営業利益 + 持分法利益(投資先企業の利益のうち出資比率分を取り込んだ指標) ※EBITDA = 営業利益 + 持分法利益 + 減価償却費 + のれん償却費
2025年度上期の連結業績は、売上高が2,892億円(前年同期比1.6%減)となったものの、為替影響を除く現地通貨ベースでは+2.3%の増収を確保しました。営業利益は固定費増や欧州のインフレ影響により243億円(7.6%減)と苦戦しましたが、為替差益の計上などにより経常利益は前年同期を上回る着地となっています。 通期予想に対する進捗については、修正後の営業利益計画510億円に対し、中間期時点で243億円(進捗率47.6%)となっています。数値上は50%を僅かに下回りますが、これは第18次中期経営計画に基づき、将来の成長のためのIT・DX投資や組織改革を「意志を持って」先行させているためであり、計画の範囲内として概ね順調な進捗と評価できます。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2025年度 第2四半期 決算説明資料 P.7
日本:DXとマインドセット改革の先進拠点
事業内容:自動車、工業、汎用、船舶用塗料の国内展開。ヘッドオフィスとビジネスユニットの分離による新体制を構築中。
業績推移:売上高799億円(前年同期比2.4%減)。シェア拡大や単価アップが寄与し、利益率は14.0%へ向上。
注目ポイント:ERP(基幹系統合)導入やOperation DXへリソースを集中投入しています。旧弊の打破と成長マインドセットの定着に注力しており、ITを活用した業務変革やデジタルリテラシー教育(DLA100)をリードできる人材への期待が高まっています。
インド:強みに特化する構造への転換期
事業内容:自動車・工業用が主軸。建築用は市場競争が激化しており、独自ポジションの確立を模索中。
業績推移:売上高702億円(前年同期比6.9%減)。自動車・工業は堅調も、モンスーン長期化で建築用が軟調。
注目ポイント:Pravin新社長のもと、強みがある領域に特化する構造改革を進めています。自動車用は内需に加え輸出も好調でシェアを伸ばしており、成長市場での市場深耕やグローバルSCM(供給網管理)の最適化を担うチャンスがあります。
欧州:新戦略によるハイパーインフレへの対抗
事業内容:KANSAI HELIOSを中心とした展開。トルコを含む欧州全域での工業・自動車用ビジネス。
業績推移:売上高792億円(前年同期比3.8%増)。M&Aの寄与で増収も、トルコのハイパーインフレと高金利が利益を圧迫。
注目ポイント:Bastian新社長により、厳しい経済環境下での「新戦略」が推進されています。特にM&Aによるシナジー創出やリスク管理能力が問われており、欧州戦略説明会で示される新たな成長ロードマップに沿った、タフな事業マネジメント経験を積むことが可能です。
アジア:中華系OEM参入の最前線
事業内容:中国、インドネシア、タイ、マレーシアでの展開。主に日系および中華系自動車メーカー向け。
業績推移:売上高328億円(前年同期比2.2%減)。タイ・マレーシアでの生産減を中国での拡販がカバー。
注目ポイント:中国自動車メーカーのグローバル進出に合わせ、タイやマレーシアで新規に顧客を獲得するなど、ビジネスモデルの多角化が進んでいます。現地法人の収益改善を前倒しで進める実行力と、中華系OEMとのパートナーシップ構築を牽引できる人材が渇望されています。
アフリカ:ONE AFRICA構想の実現へ
事業内容:南アフリカおよび東アフリカでの建築、工業用。ガーナ、アンゴラへの輸出もスタート。
業績推移:売上高226億円(前年同期比4.8%増)。セグメント利益は29.8%増と大幅な伸びを記録。
注目ポイント:「ONE AFRICA構想」を掲げ、経営体制を刷新。東アフリカの活況を追い風に、地域全体の統合運営を加速させています。フロンティア市場での事業拡大を牽引するダイナミズムを体感したい人にとって、今最も勢いのあるフィールドです。
北米:日本主導の再生プロジェクトが始動
事業内容:北米市場における自動車用(特にパワースポーツ分野)の展開。
業績推移:売上高45億円(前年同期比16.9%減)。需要低迷と固定費増により減益が続く。
注目ポイント:現状は厳しいものの、日本支援チーム(CFT)による抜本的な収益改善プロジェクトが動き出しました。関税対応の値上げや、Value Engineering(価値工学)によるコスト削減など、財務・製造・技術が一体となった企業再生のノウハウを実践する場となっています。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2025年度 第2四半期 決算説明資料 P.19
今後の戦略において注目すべきは、2025年度からの株主還元方針の変更です。配当性向を50%以上とし、累進配当を導入することを明言しました。これは、事業のキャッシュ創出力に自信があることの裏返しでもあります。一方で、18中計期間中は「大型M&Aは実施しない」という規律を持ち、その分を既存事業のブラッシュアップやDX投資、人材育成へ振り向ける方針を明確にしています。 また、今後12月から3月にかけて、アフリカ、欧州、インド、日本の各地域で「戦略説明会」が順次開催される予定です。これは経営陣が現場の対話を重視している姿勢の表れでもあります。「塗料で人を幸せにする」というパーパスを具体化するための実行力が、今の関西ペイントには求められています。特に日本国内では、旧来のやり方を打破し、グローバル標準のオペレーションを構築できるプロフェッショナル人材の獲得を急いでいます。
4 求職者へのアドバイス
志望動機のヒント
関西ペイントは今、目先の利益を削ってでも「構造改革」と「デジタル投資」を優先する強い意志を示しています。「安定した日系大手の看板」を求めるのではなく、むしろ「その看板を自らの手でグローバル標準に塗り替えたい」という挑戦心をアピールすることが有効です。特にインドやアフリカといった成長市場、あるいは中国EVメーカーへの参入といった攻めの戦略に、自分のどのような専門性が貢献できるかを具体的に語りましょう。
面接での逆質問例
- 「日本国内でのERP導入やDX投資において、現場のオペレーションをどのように変えようとしていますか?」
- 「中華系OEMのグローバル進出に伴うビジネス拡大において、技術営業やSCMに求められる新しい役割は何でしょうか?」
- 「インドや欧州で新社長が就任されましたが、グローバルでの統治体制(ガバナンス)は今後どのように強化される方針ですか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
使用した主な公開資料
- 2025年度 第2四半期 決算説明資料(2025年11月7日)
- 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。