0 編集部が注目した重点ポイント
① 第2四半期の中間利益が過去最高を更新する
2026年3月期の中間決算は、親会社所有者帰属利益が161億円(前年同期比7%増)と過去最高益を記録しました。ICTソリューションや電子・デバイスといったデジタル分野が好調を維持。通期目標300億円に対する進捗率も54%に達しており、極めて堅調な経営状況にあります。
② 中計を「1.1」へ刷新し「提供価値の拡充」へ軸足を移す
中期経営計画を「integration 1.1」へとアップデート。これまでのグループ一体経営から、商社とSIer(システムインテグレーター)の融合による新たな価値創造へ戦略を深化させました。若手社員の提案による新ミッション・バリューを指針に掲げ、挑戦を後押しする組織文化への変革を推進しています。
③ ITエンジニア集団「ルートリフ」の買収で技術力を強化する
2025年10月、高度なネットワーク技術を持つルートリフ株式会社を完全子会社化しました。深刻なエンジニア不足という業界課題に対し、M&Aを通じてハイスキルな人材と教育ノウハウを獲得。大規模・複雑化するIT案件への対応力を高め、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域でのキャリア機会を拡大させています。
1 連結業績ハイライト
出典:2026年3月期 第2四半期(中間期) 決算説明資料 P.2
当中間連結会計期間の実績は、鉄鋼・鋼管事業やエネルギー事業が減収となったものの、デジタル分野(ICTソリューションおよび電子・デバイス)の大幅増益が寄与し、最終利益ベースで第2四半期としての過去最高益を更新しました。売上総利益は前年同期比で60億円(+8%)増加しており、収益力の向上が顕著です。
通期予想の300億円に対する進捗率は54%となっており、当初の計画以上に順調に推移しています。下期に向けては、投資の後ろ倒しによるキャッシュの活用や、M&Aを通じたさらなる利益の積み上げが期待されます。
2 事業別分析:転職者が活躍できるフィールド
出典:2026年3月期 第2四半期(中間期) 決算説明資料 P.18
ICTソリューション
【事業内容】
実務主体の兼松エレクトロニクスが中心となり、ITインフラ、ネットワーク、セキュリティ、DX推進ソリューションを提供しています。
【業績推移】
利益は51億円(前年同期比8%増)。製造業向けサーバーや流通業向けネットワークが堅調で、進捗率49%と計画通りです。
【注目ポイント】
単なるSIerではなく、商社が持つ2万社の顧客基盤と深く入り込む力(トレーディング)を武器に、顧客が気づいていない課題を解決する「独自性」が強み。サイバーセキュリティ分野への先行投資も活発で、「商社×デジタル」の新たなビジネスモデルを創出できる環境です。
電子・デバイス
【事業内容】
実務主体の兼松コミュニケーションズ等によるモバイル事業、および半導体部品・電子材料の販売を担っています。
【業績推移】
利益は54億円(前年同期比33%増)。モバイル販売や半導体部品取引が大きく伸長し、進捗率57%と好調です。
【注目ポイント】
法人向けモバイル事業の拡大やM&A効果が着実に利益に貢献。半導体分野では「兼松フューチャーテックソリューションズ」など専門子会社のプレゼンスが高まっており、デバイス商社の枠を超えた付加価値提供を担う専門人材の需要が急増しています。
車両・航空
【事業内容】
防衛、航空宇宙、車両部品、工作機械のトレーディングおよびソリューションを展開しています。
【業績推移】
利益は16億円(前年同期比19%減)。設備投資の需要低迷により機械事業が苦戦しましたが、航空宇宙は堅調です。
【注目ポイント】
従来の部品供給から「教育・訓練」「サイバーセキュリティ」など、防衛×ICT領域への抜本的変革を進めています。シエラスペース社との宇宙往還機事業など、国家プロジェクト級のビジネスに商社としてどう価値を上乗せするかを設計できる、ダイナミックな構想力を持つ人材が求められています。
食料 / 鉄鋼・素材・プラント
【事業内容】
食品原料、畜産、食糧(飼料)、および鉄鋼・鋼管、エネルギー、化学品のトレーディングです。
【業績推移】
利益は食料で23億円、鉄鋼・素材で20億円。畜産や米国の鋼管事業が市況悪化の影響を受けています。
【注目ポイント】
市況変動への耐性を高めるため、食品事業での高付加価値化や環境関連事業へのシフトを推進。米国の鋼管市況など外部要因に左右される一方で、不採算事業の整理とリソース再配置を迅速に行っており、事業再建やポートフォリオマネジメントの知見を持つ人材にとって変革の余地が大きい領域です。
3 今後の見通しと採用の注目点
出典:2026年3月期 第2四半期(中間期) 決算説明資料 P.12
兼松は、中期経営計画の最終年度である2027年3月期に純利益350億円の達成を目標としています。現在の275億円(2025年3月期実績)からの積み上げとして、オーガニック成長で35億円、M&Aによる利益貢献で40億円を見込んでおり、特に後者の「成長投資」の実行が最優先課題です。
質疑応答では、ICT関連のM&Aについて「シナジー検証を慎重に行っている」一方で、航空宇宙や防衛分野への大型投資も並行検討中であることが言及されました。また、株主還元についても累進配当を導入し下限を105円に引き上げるなど、資本コストを意識した経営を鮮明にしています。こうした攻めの財務戦略と、ルートリフ社のような技術集団の融合により、次世代の商社ビジネスを牽引できる人材の採用が加速していく見通しです。
4 求職者へのアドバイス
兼松の最大の武器は、「商社の顧客基盤」と「SIerの技術力」を一つの組織内で高度に融合させている点にあります。単なる右から左への商売ではなく、顧客の深層課題をデジタル技術で解決する「ソリューションプロバイダー」への進化に携わりたいという熱意は、アップデートされた中計「integration 1.1」の方向性と合致し、強い共感を得られるはずです。
・「中計1.1で掲げた提供価値の拡充において、他部門(例:航空宇宙とICT)が連携した具体的な成功事例や、今後期待しているシナジーは何ですか?」
・「防衛ビジネスがトレーディング中心からソリューション提供へと領域を拡大する中で、具体的にどのようなスキルセットを持つ人材が現場で不足していますか?」
・「若手社員の発案が新ミッション・バリューに反映されたとのことですが、現場のアイデアを新規事業や組織変革に繋げるための具体的な社内制度や仕組みはありますか?」
5 転職者が知っておきたい現場のリアル(口コミ)
自分の手でプロジェクトを進められる
ITパスポートの取得が必須で、取得時期に応じて奨励金が支給されるのは良い制度だと感じます。商社として多様な事業に関与できるのは魅力的です。新しい事業に挑戦する機会が多く、やる気次第で自分の手でプロジェクトを進められるのはやりがいがあります。部署によっては海外駐在や出向のチャンスが豊富で、若いうちから多様な経験を積むことができます。
(30代後半・システムエンジニア・女性) [キャリコネの口コミを読む]人手不足が顕著で残業が常態化している
少数精鋭を掲げているものの、実際には人手不足が顕著で、特に営業部門では残業が常態化しているチームもあります。人事の影響力は限定的です。業務量の偏りや人事制度の限界を認識しておくことが重要です。
(50代前半・システムエンジニア・男性) [キャリコネの口コミを読む]※本記事は、公開されている決算短信、決算説明資料等の公開資料、および社員・元社員の口コミ情報をもとに、編集部の責任において作成しています。
使用した主な公開資料:
- 兼松株式会社 2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)
- 兼松株式会社 2026年3月期 第2四半期(中間期) 決算説明資料
- 兼松株式会社 2026年3月期第2四半期決算説明会 質疑応答(要旨)



2019年より企業口コミサイト「キャリコネ」担当として、数多くの企業の口コミ情報、決算資料、中期経営計画を横断的に分析。現在はリサコ編集部長として、一次情報と現場の声を突き合わせた企業研究コンテンツの企画・編集・品質管理を統括し、転職希望者の意思決定に資する情報提供を行っている。