ソフトフロントホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソフトフロントホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のコミュニケーション・プラットフォーム企業。自然会話AI「commubo」等のソフト開発・販売を行う。最新期は減収ながらも営業黒字化を達成。第三者割当増資により自己資本比率が大幅に改善し、財務基盤が強化されました。今後はAI事業の進化と新規事業に注力します。


※本記事は、株式会社ソフトフロントホールディングス の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソフトフロントホールディングスってどんな会社?


同社は、自然会話AIプラットフォーム「commubo」やクラウド電話サービス「telmee」など、ボイスコミュニケーションを中心としたソフトウェア・サービスの開発・販売を行っています。

(1) 会社概要


1997年に札幌で設立され、2002年にナスダック・ジャパンへ上場しました。2013年のJASDAQ上場を経て、2016年に持株会社体制へ移行しています。2018年には主力のAIサービス「commubo」の提供を開始しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証グロース市場に上場しています。

同グループの従業員数は連結48名、単体17名です。筆頭株主は投資ファンドのJHY Development LPFで、第2位はITコンサルティング等の事業を行うデジタルフォルン、第3位は投資事業組合の三井キャピタルインベストメントとなっています。

氏名 持株比率
JHY Development LPF 12.79%
デジタルフォルン 10.03%
三井キャピタルインベストメント 5.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は二通 宏久氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役は5名で構成比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
二通 宏久 代表取締役社長 日本IBM、デル・テクノロジーズ等を経て、2020年グループ入り。2021年より現職。
史 慶勇 取締役 華潤電力控股傘下の幹部職を経て、2021年協鑫集団控股有限公司副総裁。2025年より現職。
時 慧 取締役 アント・キャピタル・パートナーズ等を経て、ニューセンチュリーキャピタル代表。2025年より現職。
程崎 絵李加 取締役 エイチ・エス証券等を経て、シンフォニー代表取締役。2025年より現職。
宮川 正昭 取締役 野村證券等を経て、アッシェキャピタルジャパン代表。Ashe Capitalパートナー。2025年より現職。


社外取締役は、平岡 秀之(ITコンサルタント)、横山 隆一(環境エネルギー技術研究所代表)、安達 晋(元ツムラ取締役常務執行役員COO)、小泉 博之(パームスプリングアドバイザリー代表)、與 利博(CMRコンサルティング代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コミュニケーション・プラットフォーム関連事業」の単一セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) コミュニケーション・プラットフォーム関連事業(ソフトウェア販売・受託開発)


自然会話AIプラットフォーム「commubo(コミュボ)」やクラウド電話サービス「telmee(テルミー)」、Web構築システム「SITE PUBLIS」などの企画・開発・販売を行っています。コールセンター業務や自治体の電話応対、Webサイト構築を支援し、業務効率化や生産性向上に貢献しています。

収益は、顧客企業からのソフトウェア利用料(ストック型)や受託開発費などから得ています。運営は主に、子会社のソフトフロントジャパンがボイスコンピューティング分野を、サイト・パブリスがWeb関連分野を担当しています。

(2) その他


報告セグメントに含まれない事業として、システムの保守・運用サービスなどが含まれます。

収益は、顧客企業からの保守サービス料などから得ています。運営は同グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は拡大傾向にありましたが、最新期はやや減少しています。損益面では赤字が続いていましたが、最新期は営業黒字に転換しました(※下表の当期利益は単体数値等が混在している可能性がありますが、データ通り記載します)。利益率は改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3.1億円 3.8億円 7.6億円 8.9億円 8.2億円
経常利益 0.4億円 -0.3億円 -0.5億円 -1.7億円 -0.6億円
利益率(%) 12.0% -9.1% -6.8% -18.9% -7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.6億円 0.2億円 -0.4億円 -3.9億円 -1.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は減少したものの、売上原価の削減により売上総利益が増加しています。販管費も抑制されたことで、営業損益が赤字から黒字へと大きく改善しました。コストコントロールの効果が表れています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 8.9億円 8.2億円
売上総利益 2.9億円 4.1億円
売上総利益率(%) 32.1% 49.6%
営業利益 -1.6億円 0.3億円
営業利益率(%) -18.5% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.5億円(構成比38%)、支払手数料が0.8億円(同20%)を占めています。売上原価においては、外注費等の削減が進められています。

(3) セグメント収益


最新期のセグメント別業績は、単一セグメントのため連結業績と同様です。主力製品の「commubo」や「telmee」の引き合いが増加し、ストックビジネスの積み上げが進んでいますが、受託開発の売上計上時期の影響などにより全体では減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
コミュニケーション・プラットフォーム関連事業 8.9億円 8.2億円
連結(合計) 8.9億円 8.2億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、主力製品である「commubo」や「telmee」の営業活動により、資金を獲得しています。投資活動では、主に無形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動では、株式の発行による収入が大きく、資金を獲得しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 0.6億円 0.6億円
投資CF -0.3億円 -0.1億円
財務CF 0.1億円 11.7億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「技術を愛し、技術を提供することによって、社会変革の牽引役となり、豊かな社会を実現する」という企業理念を掲げています。創業以来のボイスコミュニケーション事業を進化させ、市場ニーズに対応した革新的なサービスの提供を通じて、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「売りやすく、作りやすく、使いやすい」を活動方針として掲げ、プロダクト開発に取り組んでいます。社名「ソフトフロント」には、他に先駆けるソフトウェアを育み社会に貢献するという意思が込められており、技術提供によって人、社会、地球が健全であるよう、サステナビリティにも配慮した事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、グループ企業体制の効率的な構築を見越し、売上規模の拡大と収益基盤の強化を目指しています。経営上のKPIとして「収益力(売上営業利益率)」を設定し、既存事業における営業力の強化、事業採算性の評価、徹底した経費削減等に取り組むことで、営業黒字の定着化を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


2025年4月からの2年間を「企業価値向上フェーズ」と位置づけ、既存事業の再構築と新規事業の開始を推進します。既存のボイスコミュニケーション事業を「AIカスタマー・コミュニケーション・プラットフォーム」へと進化させるとともに、新たに「AIデータセンター事業」および「グリーンエネルギー事業」を開始し、事業ポートフォリオの拡充を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


プロダクト開発に携わるエンジニアを重要な経営資本と位置づけています。社員の能力と人間力を向上させ、製品開発力を高めることでサービスを提供するとともに、社員の多様性を高めることで顧客の様々な価値観に応え、更なる高付加価値化を促進する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 7.2年 5,596,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 既存事業の収益基盤について


同社グループは、ボイスコンピューティングやWebシステム関連事業に経営資源を集中し、事業基盤の構築を図っています。しかし、その収益基盤は不確実性を伴っており、想定を超えて事業基盤の構築が進捗しない場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) M&A等について


スピーディな事業展開等のためM&Aを積極的に活用する方針ですが、事前の調査で確認できなかった問題が生じる可能性があります。また、見込んだシナジー効果が想定通りに発揮されない場合、業績が一定の影響を受ける可能性があります。

(3) 研究開発について


他社との競争優位性を保つため研究開発投資を行っていますが、技術動向の読み違いや開発競争の激化により、予想外の支出を迫られたり、製品の普及に失敗したりする可能性があります。

(4) 知的財産権の侵害について


現時点で訴訟等は受けていませんが、扱う技術が比較的新しいため、将来的に第三者から知的財産権侵害のクレームを受ける可能性があります。その場合、損害賠償請求等により事業及び業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。