※本記事は、KLab株式会社の有価証券報告書(第26期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. KLabってどんな会社?
モバイルオンラインゲームの企画・開発・運営を主力とし、エンタメ領域で事業を展開しています。
■(1) 会社概要
KLabは2000年8月にサイバードを親会社とするケイ・ラボラトリーとして設立されました。2004年に現在の商号へ変更し、2011年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。近年は事業の多角化を積極的に進めており、2022年にはブロックチェーンゲーム事業を推進する子会社を設立しています。
同社グループは連結で322名、単体で294名の従業員を擁しています。筆頭株主はINTERACTIVE BROKERS LLCで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は証券会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 12.81% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.52% |
| 楽天証券共有口 | 4.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは真田哲弥氏が務めており、社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 真田哲弥 | 代表取締役社長CEO | 1998年サイバード設立等を経て、2000年同社設立。2022年BLOCKSMITH&Co.社長。2025年より現職。 |
| 五十嵐洋介 | 取締役 | 2000年ソニーグローバルソリューションズ等を経て、2003年同社入社。執行役員COO等を経て2025年より現職。 |
| 高田和幸 | 取締役CFO | 2008年PwCコンサルティング等を経て、2010年同社入社。経営管理部長、執行役員等を経て2025年より現職。 |
| 中根良樹 | 取締役 | 1999年日本電信電話を経て、2005年同社入社。開発本部長、クリエイティブ部長等を経て2019年より現職。 |
社外取締役は、井上昌治氏(弁護士)、松本浩介氏(元時刻表情報サービス社長)、吉川友貞氏(元プライムロード社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ゲーム事業」および「その他」事業を展開しています。
■ゲーム事業
スマートフォン向けアプリを中心としたモバイルオンラインゲームの企画、開発、および運営を行っています。国内外のユーザーに向けて、人気アニメなどの知的財産を活用したタイトルやオリジナルゲームを提供しています。
主にゲームを無料で提供し、ユーザーがゲーム内で使用するアイテム等を購入する際の課金から収益を得ています。運営はKLabや中国子会社の可来軟件开発(上海)有限公司が担っています。
■その他
ゲーム制作等の受託開発やアニメ出資のほか、GPUクラウドサーバーの販売や運用保守、AIタレントの開発、企業向けAIクリエイティブ制作などの新規領域を展開しています。
受託開発費やクラウドサーバーの販売代金、AIエンタメ関連サービスの提供対価として顧客企業等から料金を受け取ります。運営は同社や関連会社のBLOCKSMITH&Co.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は年々減少傾向が続いています。それに伴い経常利益および当期利益もマイナスで推移しており、収益性の改善が急務となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 239億円 | 169億円 | 107億円 | 83億円 | 69億円 |
| 経常利益 | -10億円 | -0.7億円 | -9億円 | -13億円 | -14億円 |
| 利益率(%) | -4.3% | -0.4% | -8.0% | -15.4% | -20.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -42億円 | -8億円 | -17億円 | -26億円 | -45億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も縮小しています。固定費の削減などを進めているものの、営業利益の赤字幅は依然として大きい状態が続いています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 69億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 8億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.6% | 12.1% |
| 営業利益 | -13億円 | -13億円 |
| 営業利益率(%) | -16.2% | -19.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6億円(構成比26%)、広告宣伝費が4億円(同19%)を占めています。また、当期総製造費用においては、経費が48億円(同64%)、労務費が23億円(同31%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力のゲーム事業は既存タイトルの減衰により減収減益となっています。一方、その他事業はGPUサーバーの販売などが寄与し、大幅な増収を記録しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 82億円 | 64億円 | 12億円 | 8億円 | 13.1% |
| その他 | 0.7億円 | 4.9億円 | -0.5億円 | -0.1億円 | -1.2% |
| 連結(合計) | 83億円 | 69億円 | 11億円 | 8億円 | 12.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、運転資金需要に対し、営業活動によるキャッシュ・フローを基本としつつ、必要に応じて金融機関からの借入、投資有価証券の売却、増資等によって資金調達を実施しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失の計上等により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入により増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行収入により増加しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1億円 | -18億円 |
| 投資CF | -10億円 | 25億円 |
| 財務CF | 6億円 | 29億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世界と自分をワクワクさせろ」を企業ミッションに掲げています。エンタテインメントコンテンツで世界中のユーザーをひとつにつなげるべく、日本のみならず世界に向けてモバイルオンラインゲームを配信し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
国や人種、宗教、年齢、性別等に関係なく、全てのユーザーに安心安全にゲームを楽しんでいただけるよう、サービスの安定運営や健全な経営への努力を絶やさない姿勢を重視しています。また、開発体制においては「少数精鋭主義」を徹底する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画として、2028年に以下の数値目標の達成を掲げ、中期的な業績回復と持続的成長の実現を目指しています。
* 売上高350億円
* 営業利益50億円
■(4) 成長戦略と重点施策
モバイルオンラインゲーム事業の抜本的改革と再成長を最優先課題とし、グローバル市場で競争力を持つS級IPを活用したタイトルの開発・運営に注力します。同時に特定の事業環境の変化に左右されない強固な収益基盤を構築するため、「IP/エンタメ」「AI」「ブロックチェーン」の3領域を重点分野と位置付け、新規事業の創出と多様化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
全従業員が働くことを楽しみ、能力を十分に発揮できる職場環境の整備や人材育成の支援を方針としています。多様性の確保を含め、評価・表彰制度やワークライフバランスの確保、各種研修制度を導入し、組織の協働力や生産性の向上を促す取り組みを行っています。また、属性に関わりなく実力に応じた抜擢を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.0歳 | 9.0年 | 6,814,000円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.3% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合環境と技術革新への対応遅れリスク
ゲーム市場は競争が激しく、同業他社や異業種からの新規参入による競争激化が懸念されます。また、生成AI等の先進技術の普及により開発効率化が進む一方、新技術への対応や専門人材の確保が遅れた場合、市場での競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) プラットフォーマーへの収益依存リスク
同社のゲーム事業は、現状Apple Inc.およびGoogle Inc.の2つのプラットフォーマーへの収益依存が大きくなっています。これらプラットフォーマーの規約変更や手数料率の見直しなどが行われた場合、同社の事業や業績に直接的な影響を与える可能性があります。
■(3) ゲームタイトルのヒット動向と開発費の高騰リスク
現状はゲーム事業に収益の多くを依存しているため、新作ゲームのヒット度合いが業績を大きく左右します。また、ゲームに求められる品質向上に伴い開発期間が長期化し、1タイトルあたりの開発コストが増加傾向にあるため、計画通りの収益が上がらない場合は減損損失が発生するリスクがあります。
■(4) 暗号資産(ビットコイン)の保有に関するリスク
財務戦略の一環としてビットコイン等を購入していますが、価格変動リスクや法規制・税制改正リスク、サイバー攻撃による消失リスクが存在します。これに対し、金(ETF等)の保有や規律あるリバランス、適切な外部機関の選定によりリスク低減を図っています。



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