アジア航測 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アジア航測 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アジア航測はスタンダード市場に上場する空間情報コンサルタント企業です。航空測量技術を核に、社会インフラの整備・維持管理や国土保全に関するデータ取得、解析、コンサルティングを展開しています。第78期の連結業績は、売上高416億円(前期比3.3%増)、経常利益30億円(同0.5%減)と増収減益でした。


※本記事は、アジア航測株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

アジア航測転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. アジア航測ってどんな会社?


航空測量業のパイオニアとして、空間情報技術を駆使し、社会インフラ整備や防災・環境保全を支援しています。

(1) 会社概要


同社は1954年にアジア航空測量として設立され、1963年に現社名へ変更しました。翌1964年には東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしています。その後、建設コンサルタント会社との資本業務提携や、関連技術を持つ企業のM&Aを通じて事業領域を拡大してきました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

同グループは連結従業員数1,872名、単体1,379名の体制で事業を展開しています。大株主には鉄道事業者や建設関連企業が名を連ねています。筆頭株主は西日本を中心とする鉄道事業者、第2位は広島に拠点を置く建設コンサルタント会社、第3位は総合建設会社であり、事業シナジーのある企業が主要株主となっています。

氏名 持株比率
西日本旅客鉄道 28.01%
復建調査設計 23.94%
日本国土開発 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は畠山仁氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
畠山 仁 代表取締役社長執行役員社長DX戦略本部長(経営全般) 1996年入社。空間情報事業部長、社会インフラマネジメント事業部長などを歴任。常務取締役を経て、2021年より現職。
臼杵 伸浩 常務取締役常務執行役員事業推進本部長 1992年入社。鉄道事業本部長、西日本支社長などを歴任。2021年取締役就任。2024年より現職。
梅村 裕也 取締役執行役員経営戦略本部長 1992年入社。中部支社長、経営戦略本部副本部長などを歴任。2023年取締役就任。2025年より現職。
浦川 晋吾 取締役執行役員新規事業創造本部長 1992年入社。GISセンター長、西日本支社長などを歴任。2023年より現職。
秋山 潤 取締役執行役員経営戦略統括部長 1989年入社。中部支社長、営業統括部長、西日本支社長などを歴任。2024年取締役就任。2025年より現職。
船越 和也 取締役執行役員事業推進本部副本部長 1991年入社。防災地質部長、関東支社長などを歴任。2024年取締役就任。2025年より現職。
髙山 陶子 取締役執行役員関東支社長 1992年入社。社会インフラマネジメント事業部長などを経て、2025年より現職。
中島 達也 取締役(常勤監査等委員) 1988年入社。東北支社長、国土保全コンサルタント事業部長、経営本部長などを歴任。常務取締役を経て、2025年より現職。


社外取締役は、伊藤宏明(西日本旅客鉄道理事)、太田直之(京都大学大学院工学研究科特定教授)、上田豊陽(弁護士)、小尾太志(辻・本郷税理士法人シニアパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「社会インフラマネジメント事業」「国土保全コンサルタント事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 社会インフラマネジメント事業


道路、鉄道、その他公共施設等のインフラマネジメント、行政支援サービス、エネルギー関連ビジネス、土壌・地下水汚染対策、災害復興再生等を行っています。具体的には、3次元レーザ計測を用いたインフラ維持管理支援や、電力施設等のレジリエンス強化に向けた計測・調査などを提供しています。

収益は、主に国や地方公共団体、電力会社等の公益事業体から、測量・調査・設計・システム構築などの業務委託に対する対価として受け取ります。運営は主に同社が担い、一部業務をユニテックやプライムプランなどの子会社が分担しています。

(2) 国土保全コンサルタント事業


河川・砂防、森林・林業支援、環境保全、災害緊急時の計測調査解析等の各種コンサルティングを行っています。航空レーザ計測による森林情報の整備や、災害発生時の状況把握・解析、脱炭素社会に向けた再生可能エネルギー導入支援などを提供しています。

収益は、中央官庁や地方自治体等からの調査・計画策定・データ整備などの業務委託費が主となります。運営は同社を中心に、アドテックやジオテクノ関西などの子会社が連携して行っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない物品販売やシステム開発・販売などの事業を展開しています。自社開発GIS製品の販売や、MMS(モービルマッピングシステム)等の販売などが含まれます。

収益は、製品やシステムの販売代金、保守料などから構成されます。運営は同社およびクロスセンシングなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近5期間で325億円から416億円へと規模を拡大しています。利益面では、経常利益率が7〜8%台で安定的に推移しており、底堅い収益性を維持しています。当期は微減益となったものの、売上高は過去最高を更新しました。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 325億円 337億円 373億円 403億円 416億円
経常利益 26億円 27億円 30億円 30億円 30億円
利益率(%) 7.9% 8.2% 8.0% 7.5% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 14億円 16億円 16億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、販管費の増加により営業利益は横ばいとなりました。売上高営業利益率は若干低下しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 403億円 416億円
売上総利益 110億円 114億円
売上総利益率(%) 27.3% 27.4%
営業利益 29億円 29億円
営業利益率(%) 7.1% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が44億円(構成比52%)を占め、最大の費用項目となっています。売上原価においては、外注費が107億円(構成比35%)、労務費が106億円(同35%)と、これら2項目で原価の約7割を占めています。

(3) セグメント収益


社会インフラマネジメント事業は微減収となりましたが、全体の約6割を占める主力事業です。一方、国土保全コンサルタント事業は防災・減災対策や森林関連業務の需要増により大幅な増収となり、全体の成長を牽引しました。その他事業は減収となりました。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期)
社会インフラマネジメント 254億円 252億円
国土保全コンサルタント 107億円 129億円
その他 41億円 35億円
連結(合計) 403億円 416億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 6億円 7億円
投資CF -22億円 -32億円
財務CF 1億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%でスタンダード市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「事業は人が創る新しい道である」「事業は永遠の道である」「事業は人格の集大成である」「事業は技術に始まり営業力で開花する」「事業は社会のために存続する」「事業はより高い利益創造で発展する」の6つを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、社会観として「地球の未来を創造するわが社の公共性を自覚しよう」を、人物像として「変革を恐れず、自らの信念を持って挑戦・行動しよう」を掲げています。また、高い倫理観を持ち信頼される企業人となること、大局観をもった人を育て活かす風土の醸成、多様性を受け入れ各世代が支え合う企業文化の深耕を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「長期ビジョン2033」および「中期経営計画2026」を推進しており、空間情報技術で社会をつなぎ地球の未来を創造することをミッションとしています。

* 2026年9月期 売上高:450億円以上
* 2026年9月期 営業利益:30億円以上
* 2026年9月期 ROE:9%以上
* 配当性向:35%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「事業ポートフォリオ経営の確立」と「多様な人財が集まる企業グループの形成」をテーマに掲げています。DXへの取り組みを基盤に、M&Aや技術開発・投資、人財育成を強化し、センシングロボットSIerとしてのソリューション開発やスタートアップへの投資を通じた新規事業の創造を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、積極的な人的資本投資と多様性を受容する風土・制度づくりを進めています。キャリアパス制度やDX人財育成プログラムを強化し、次世代管理職の育成やライフイベントに合わせた支援体制を整備しています。多様な人材が成長意欲を持ち、健康で安全に働き続けられるウェルビーイングの追求を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 44.5歳 13.7年 7,301,389円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.7%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 49.3%
男女賃金差異(正規雇用) 67.9%
男女賃金差異(非正規) 72.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職(次世代管理職)比率(19.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 官公庁への高い受注依存


主要顧客が国や地方公共団体であるため、国の予算編成や財政状態の変化による公共事業予算の縮小が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、民間市場での受注拡大に努めています。

(2) 高度な計測機器の損傷


航空カメラやレーザプロファイラー等の高度な計測機器を使用しており、これらの故障や使用不能は生産性低下や工期遅延を招く恐れがあります。また、技術進歩に伴う設備の増強や更新により、多額の投資負担が発生する可能性があります。

(3) 航空機事故


航空機使用事業者として安全運航に万全を期していますが、不可抗力等による事故や故障が発生した場合、事業活動の停止等により業績に影響を与える可能性があります。

(4) 情報セキュリティ


官公庁等の機密情報や個人情報を含む重要データを扱っており、サイバー攻撃等による情報漏洩や滅失が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。