※本記事は、株式会社デジタルアーツ の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. デジタルアーツってどんな会社?
国産初のWebフィルタリングソフトを開発したセキュリティ企業。企業・官公庁・家庭向けに製品を提供しています。
■(1) 会社概要
1995年に設立され、1998年にWebフィルタリングソフトを開発しました。2002年にナスダックジャパンへ上場し、2013年には東証一部へ指定替えとなりました。2024年3月には子会社であったデジタルアーツコンサルティングの全保有株式を譲渡しています。
同社グループ(連結)および同社(単体)の従業員数は272名です。筆頭株主は社長の道具登志夫氏で、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が並んでいます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 道具 登志夫 | 16.59% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 15.19% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は道具登志夫氏です。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 道具 登志夫 | 代表取締役社長 | 1997年より社長。米国、アジアパシフィック、欧州などの子会社取締役を兼務。 |
| 松本 卓也 | 取締役開発部長 | 2003年入社。開発部担当部長、新規開発部長等を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、窪川秀一(元株式会社日本ソフトバンク社外監査役)、上杉昌隆(元アムレック法律会計事務所パートナー弁護士)、桒山千勢(桒山公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「セキュリティ事業」を展開しています。
■(1) セキュリティ事業(企業・公共向け)
企業や官公庁、学校などの公共機関に対し、Webセキュリティソフト「i-FILTER」、メールセキュリティソフト「m-FILTER」、ファイル暗号化・追跡ソリューション「FinalCode」などを提供しています。情報漏洩対策や標的型攻撃対策、GIGAスクール構想に対応した学習環境の安全確保などを支援しています。
収益は、主に販売代理店を通じて販売される製品のライセンス料や保守サービス料、クラウドサービスの利用料から構成されています。運営は同社が行っており、海外の一部地域ではDigital Arts Asia Pacific Pte. Ltd.などの子会社が販売・サポートを担当しています。
■(2) セキュリティ事業(家庭向け)
家庭やネットカフェなどを対象に、有害サイトへのアクセスを制限するWebフィルタリングソフト「i-フィルター」を提供しています。スマートフォン、タブレット、PCなど多様な端末に対応し、青少年のインターネット利用における安全確保を支援しています。
収益は、パッケージ製品の販売や、ISP(インターネットサービスプロバイダ)などを通じた月額課金モデルによる利用料収入が中心です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第26期から第29期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、当期は子会社譲渡の影響で減収となりました。一方、利益率は40%前後の高い水準を維持しており、当期も経常増益を確保しています。当期純利益は、前期に計上された子会社株式売却益の剥落により減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 68.3億円 | 90.5億円 | 104.4億円 | 115.1億円 | 99.8億円 |
| 経常利益 | 29.9億円 | 41.4億円 | 44.3億円 | 44.4億円 | 45.6億円 |
| 利益率(%) | 43.8% | 45.7% | 42.4% | 38.6% | 45.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20.4億円 | 28.3億円 | 30.5億円 | 45.4億円 | 31.9億円 |
■(2) 損益計算書
減収となりましたが、売上原価が大幅に減少したことで売上総利益は前期を上回りました。売上総利益率は向上し、70%を超える高収益体質となっています。販管費も抑制された結果、営業利益は増加し、営業利益率は45.7%に達しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 115.1億円 | 99.8億円 |
| 売上総利益 | 69.3億円 | 70.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.2% | 70.5% |
| 営業利益 | 44.3億円 | 45.6億円 |
| 営業利益率(%) | 38.5% | 45.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7.2億円(構成比28.9%)、広告宣伝費が3.1億円(同12.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
企業向け市場では子会社譲渡の影響で売上が減少しましたが、製品自体は堅調でした。公共向け市場はGIGAスクール構想案件の獲得等により売上が増加しました。家庭向け市場は概ね横ばいとなっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 企業向け市場 | 64.6億円 | 47.8億円 |
| 公共向け市場 | 46.4億円 | 47.9億円 |
| 家庭向け市場 | 4.2億円 | 4.1億円 |
| 連結(合計) | 115.1億円 | 99.8億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
デジタルアーツは、セキュリティ事業を単一セグメントとして展開しています。
当連結会計年度は、営業活動により資金を創出し、投資活動では無形固定資産の取得等で資金を使用しました。また、財務活動では配当金の支払い等により資金が流出しました。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28.3億円 | 28.2億円 |
| 投資CF | 10.1億円 | -11.1億円 |
| 財務CF | -25.5億円 | -21.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「より便利な、より快適な、より安全なインターネットライフに貢献していく」ことを企業理念としています。すべてのモノやコトがインターネットでつながる社会において、ソフトウエアメーカーとして安心・安全・快適を提供し、人々の生活を豊かにする創造的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、事業を通じて社会課題を解決し、イノベーションを牽引するリーダーと多彩な能力を発揮する人材の育成を目指しています。その基盤として「人間性の尊重」を大切な価値観の一つに掲げており、多様な人材が個性や能力を存分に発揮できる企業文化の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、中期的には総合セキュリティメーカーへの成長を目指しています。
* 連結売上高:150億円
* 連結営業利益:78億円
* 連結営業利益率:52.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は中期経営計画において、「セキュリティ事業の成長」「公共市場シェア拡大」「新施策実行のための人材投資」の3つを重点領域としています。セキュリティ事業では新製品のリリースやクロスセル・アップセルの推進、公共市場ではGIGAスクール構想第2期案件でのシェア拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
競争優位性のある製品を自社開発するエンジニアへの投資と、大企業・中堅企業への営業活動を強化するための営業人材への投資を継続的に行う方針です。インセンティブの付与や積極的な採用活動を通じて、優秀な人材の確保と定着を図り、生産性の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.3歳 | 6.8年 | 6,183,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女賃金差異(全労働者・非正規)については、有価証券報告書に記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要な販売代理店への依存
同社製品の大部分は販売代理店を経由して販売されています。そのため、主要な販売代理店の経営環境の変化や販売状況の変動によって、同社の売上が大きく影響を受ける可能性があります。また、販売代理店が競合製品を優先して取り扱うリスクや、債権回収に関するリスクも存在します。
■(2) 公共市場における予算・政策の影響
同社製品の学校や自治体への販売は、国家予算や地方自治体の政策方針に大きく左右されます。GIGAスクール構想などの大型プロジェクトや自治体の予算配賦状況、予算消化の進捗によっては、売上が変動する可能性があります。
■(3) 法規制および無料サービスの競合
インターネットに関する法規制の進行や、政府・NPO法人による同種サービスの無償提供、OSへの機能組み込みなどが行われた場合、同社の事業モデルや収益性に影響を与える可能性があります。無料の代替手段が普及することで、有料製品への需要が減少するリスクがあります。
■(4) セキュリティ事業への特化
同社はWeb・メールセキュリティ等のセキュリティ事業に特化しています。経済環境の悪化や市場ニーズの変化によりセキュリティ市場全体の需要が低迷した場合、業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。また、技術革新のスピードが速い分野であるため、技術の陳腐化リスクも伴います。



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