デジタルアーツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルアーツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルアーツは東京証券取引所プライム市場に上場し、Webやメール向けを中心とした情報セキュリティ製品の開発・販売を主力とする企業です。直近の業績は、売上高が108億円(前期比8.5%増)、経常利益が48億円(同6.1%増)と、公共・企業向け市場の需要を取り込み増収増益のトレンドを維持しています。


※本記事は、デジタルアーツ株式会社の有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デジタルアーツってどんな会社?


セキュリティ関連ソフトウエアの企画・開発から販売までを一貫して手掛ける純国産のセキュリティメーカーです。

(1) 会社概要


1995年にインターネット関連アプリケーションソフトの開発販売を目的として設立され、1998年に国産初のWebフィルタリングソフトを開発しました。2002年にナスダックジャパン市場へ上場、2013年に東証第一部銘柄に指定されました。その後も米国やシンガポール等に子会社を設立し、クラウドセキュリティの認証取得を進めるなど事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結279名、単体279名です。筆頭株主は創業者の道具登志夫氏であり、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
道具登志夫 16.80%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.35%
日本カストディ銀行(信託口) 8.05%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長経営企画本部長は道具登志夫氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
道具登志夫 代表取締役社長経営企画本部長 1997年10月代表取締役社長就任。2006年12月DAM代表取締役社長、2011年4月Digital Arts America,Inc.Director, President and CEO等を歴任し、2026年1月より現職。
松本卓也 取締役開発本部長 1999年4月コマス入社。2003年4月デジタルアーツ入社。2016年10月開発部長、2017年6月取締役開発部長等を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、窪川秀一(四谷パートナーズ会計事務所代表)、上杉昌隆(上杉法律事務所所長)、桒山千勢(桒山公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、セキュリティ事業の単一セグメントで事業を展開していますが、顧客の市場ごとにソリューションを提供しています。

企業向け市場


Webセキュリティ「i-FILTER」、メールセキュリティ「m-FILTER」、ファイル暗号化・遠隔削除ソリューション「FinalCode」、クラウドセキュリティ「DigitalArts@Cloud」などを企業向けに提供しています。これらは既知・未知の脅威に対応する独自の「ホワイト運用」機能等を備え、企業の多様なセキュリティ課題を解決します。

ソフトウエアのライセンス販売やクラウドサービスの利用料から収益を得るモデルです。運営は主にデジタルアーツが担い、一部の販売活動等を海外の連結子会社がサポートしています。

公共向け市場


官公庁や教育機関等の公共機関向けに、企業向けと同様のセキュリティソリューション群を提供しています。とくにGIGAスクール構想や次世代校務DX案件において、安全なインターネット利用環境や学習環境を実現するためのクラウド製品やシステムを展開しています。

製品の導入に伴うライセンス販売やクラウドサービス提供による利用料が主な収益源です。運営はデジタルアーツが行っており、教育現場のニーズに即した製品価値の向上を図っています。

家庭向け市場


一般の家庭や図書館、ネットカフェ等を対象としたフィルタリングソフト「i-フィルター」などを提供しています。スマートフォンやタブレット、PCからの有害サイトへのアクセスを制御し、インターネット利用による危険からユーザーを保護します。

複数年パッケージ製品の販売や、MVNO(仮想移動体通信事業者)等を通じた販売・サービス提供から収益を得るモデルです。運営はデジタルアーツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


5期間の業績を見ると、売上高は第29期に115億円まで拡大したのち、第30期に子会社株式譲渡の影響で減収となりましたが、第31期には再び108億円へと回復しています。利益面では安定的な成長を続けており、経常利益は40億円台後半で推移し、利益率も40%を超える極めて高い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 91億円 104億円 115億円 100億円 108億円
経常利益 41億円 44億円 44億円 46億円 48億円
利益率(%) 45.7% 42.4% 38.6% 45.7% 44.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 30億円 45億円 32億円 34億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに順調に増加しています。売上総利益率は約70%と高く、営業利益率も40%台半ばをキープしており、高付加価値なセキュリティソリューションの提供と効率的な事業運営が実現できていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 100億円 108億円
売上総利益 70億円 75億円
売上総利益率(%) 70.5% 69.2%
営業利益 46億円 48億円
営業利益率(%) 45.7% 44.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比30%)、広告宣伝費が2億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


各市場における売上の推移を見ると、企業向け市場ではクラウド型のWebアクセスセキュリティ対策ニーズの取り込みが堅調に推移し増収となりました。公共向け市場では、GIGAスクール構想第2期案件への対応や次世代校務DX案件の拡大が寄与し大きく売上を伸ばしています。一方、家庭向け市場は横ばいで推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
企業向け市場 48億円 52億円
公共向け市場 48億円 53億円
家庭向け市場 4億円 4億円
連結(合計) 100億円 108億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 28億円 84億円
投資CF -11億円 -12億円
財務CF -21億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.1%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「より便利な、より快適な、より安全なインターネットライフに貢献していく」ことを企業理念として掲げています。あらゆる人やモノ、コトがインターネットで繋がり、人々の生活をより豊かにする創造的・革新的な発展が可能となる社会を実現するため、ソフトウエアメーカーとして安心・安全・快適を提供していくことを使命としています。

(2) 企業文化


同社は大切な価値観の一つとして「人間性の尊重」を掲げており、国籍や性別、障がいの有無などにかかわらず、多様な人材がそれぞれの個性と能力を最大限に発揮し、活躍できる企業を目指す文化があります。また、自己成長に取り組む人材を支援し、主体的なキャリア形成やスキル習得を促進する組織風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期を最終年度とする中期経営計画において、中期的には総合セキュリティメーカーへ成長していくことを目標に掲げています。最終年度の数値目標としては以下を設定しています。

・売上高:120億円
・営業利益:54億円
・連結営業利益率:45.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中期経営計画において「セキュリティ事業の成長」「公共市場シェア拡大」「新施策実行のための人材投資」の3つを重点領域としています。企業向け市場ではゼロトラスト領域などの新しいセキュリティニーズに対応する新製品の投入やクロスセルを推進します。公共市場ではGIGAスクール構想の第2期においてシェアと単価の向上を目指し、同時に直販強化を担う営業人材や自社開発エンジニアへの投資を継続して事業基盤を強化する戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業を通じた社会課題の解決を担うリーダーや、多彩な能力を発揮する人材の育成を重要な経営課題と位置付けています。新卒・中途を問わず体系的な人材育成を行い、各部門の特性に応じた評価項目を設定することで適正な処遇を実現し、従業員の成長意欲の向上と持続的な企業価値向上につながる人材基盤の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.9歳 7.1年 6,990,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要な販売代理店への依存リスク


同社の製品は大部分が販売代理店を経由して販売されているため、主要な販売代理店の販売状況や経営環境の変化、競合製品の優先的な取り扱いなどが発生した場合、同社の売上高や財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 制度や政策方針による影響


同社製品の国公立学校や地方自治体等に対する売上高は、国家予算の変動や地方自治体への予算配賦状況、予算の消化状況等によって大きく影響を受ける可能性があります。また、政府やNPO法人による類似サービスの無償提供が行われた場合も収益モデルの変更を余儀なくされるリスクがあります。

(3) 情報セキュリティインシデントに関するリスク


同社はサーバーを基幹システムと位置付け安定稼働に努めていますが、ハードウェアの障害や第三者によるサイバー攻撃、ランサムウェア攻撃などによりサービスの提供が停止した場合、同社への信頼が低下し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 優秀な人材の確保・定着リスク


新しいセキュリティ対策が次々と生まれる中で、優れた専門性を有した人材の必要性が高まっています。雇用環境の変化などにより、同社が求めるITエンジニア等の人材の確保や定着、育成が計画通りに進まなかった場合、将来の事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。