※本記事は、株式会社JPホールディングスの有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JPホールディングスってどんな会社?
保育園や学童クラブなどの子育て支援事業を中心とし、全国で幅広く施設を運営する企業の特徴を解説します。
■(1) 会社概要
1993年にジェイ・プランニングとして設立され、1994年にワゴンサービス事業を開始、2001年に保育所「スマイルキッズ新座園」を開園しました。2002年に店頭登録を行い、2004年に現在の社名に変更後、純粋持株会社へ移行しています。近年では異業種との業務提携や新規受託などを進め、事業規模を拡大しています。
連結従業員数は4,209名、単体では82名です。筆頭株主は事業会社であるダスキンで、第2位はジェイ・ピー従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダスキン | 31.52% |
| ジェイ・ピー従業員持株会 | 6.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は坂井徹氏が務めており、社外取締役比率は83.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂井 徹 | 代表取締役社長 | Pacific Rim Corporation等を経てマザーケアジャパン等を創業。2018年同社取締役、2020年社長に就任。全国保育連盟理事長なども歴任し、2024年12月より現職。 |
| 関 博文 | 取締役(常勤監査等委員) | 1977年工業時事通信社入社、その後アーバン・デベロップメント代表取締役などを歴任。2018年に同社常勤監査役などを経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、柏女霊峰(元厚生労働省入省・大学教授)、佐竹康峰(元東京スター銀行会長)、後藤田由紀(俳優・保育士)、勝又英博(元ヤマトコンサルティンググループ社長)、ロバート アンソニー クリソル サラザール(元立命館アジア太平洋大学教授)、藁谷友紀(元早稲田大学理事・参与)、伊丹俊彦(元大阪高等検察庁検事長)、鶴谷明憲(元近畿管区警察局長)、矢板賢(元国際証券入社・公認会計士)、山村輝治(元ダスキン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「子育て支援事業」および「その他」事業を展開しています。
■子育て支援事業
同社グループは、保育園、学童クラブ、児童館、交流館の運営およびそれに付随する不動産の紹介・管理や人材紹介・派遣を提供しています。利用者は主に保育を必要とする乳幼児や小学生を持つ保護者ならびに自治体であり、全国に多数の施設を展開して地域の子育て環境整備に貢献しています。
収益は、認可保育所では園児数等に応じた自治体からの施設型給付(委託費)、準認可保育所では自治体の補助金と保護者からの保育料、学童クラブ等では委託料や利用料として受け取ります。運営は主に日本保育サービスやジェイキッチンなどの子会社各社が行っています。
■その他事業
子育て支援事業のノウハウを活用し、専門人材の人材紹介・派遣事業などを行っています。ワンズウィルなどの子会社を通じて、国内の労働力不足の解消に向けた有能な外国人材の派遣や、特定技能外国人の支援事業などを展開し、収益基盤の多様化を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、経常利益も毎年増加しています。当期純利益も安定して拡大傾向にあり、子育て支援施設の新規受託や多様な学習プログラムの導入による施設利用者数の増加が、グループ全体の継続的な増収増益に寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 344億円 | 355億円 | 379億円 | 411億円 | 433億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 37億円 | 45億円 | 59億円 | 66億円 |
| 利益率(%) | 9.8% | 10.5% | 11.9% | 14.2% | 15.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 16億円 | 20億円 | 21億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加にともない売上総利益、営業利益ともに堅調な伸びを示しています。収益性の改善が進んでおり、売上総利益率や営業利益率も前期を上回る水準で推移し、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 411億円 | 433億円 |
| 売上総利益 | 87億円 | 96億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.1% | 22.1% |
| 営業利益 | 58億円 | 65億円 |
| 営業利益率(%) | 14.1% | 15.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比19%)、接待交際費が5億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は子育て支援事業を中心としており、売上の大部分を占めています。既存施設の利用者増加や新規受託の拡大、英語やスポーツに特化した特徴ある保育園への転換などの取り組みが奏功し、売上の順調な成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 子育て支援事業 | - | 433億円 |
| その他事業 | - | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 411億円 | 433億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「改善型」の傾向を示しています。営業活動によるキャッシュの創出と資産売却等によって得た資金を活用し、借入金の返済などの財務活動を進めている改善局面にあるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 63億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | 0.5億円 |
| 財務CF | -42億円 | -44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「子育て支援を通じて笑顔溢れる社会づくりに貢献します」を経営理念として掲げています。コーポレートメッセージ「すべてはこどもたちの笑顔のために」のもと、こどもたちの未来と子育てに関わるすべての人々を支える存在であり続けることを使命とし、社会課題の解消と保育の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、保育理念として「未来(あす)を生きる力を培う」を掲げ、自分らしくどんな時代にも対応できる資質と能力を培うことを重視しています。一人ひとりに心をかけ愛情を注ぐきめ細やかな保育を行い、自ら伸びる力や豊かな感性、人と支え合う力など生涯にわたる生きる力の基礎を育む文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期の目標として「長期経営ビジョン」を掲げ、持続的な成長に向けて事業性や収益性を追求しています。具体的な数値目標として以下を設定しています。
・売上高目標(連結):1,000億円を目指す
・営業利益率:14%以上
・ROE(自己資本利益率):20%以上
・連結配当性向:30%を目途
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、少子化への対応や事業環境の変化を見据え、既存事業の質的向上と新規事業の開発を進めています。自治体と連携したALT事業やインターナショナルスクールの新設などグローバル教育を強化するほか、学童クラブなどのドミナント戦略や積極的なM&A、AI活用による経営効率化を推進し競争優位性を高めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の事業の要は「人」であるとの考えから、人財教育・研修体制の拡充と従業員のエンゲージメント向上に努めています。階層別や専門的な研修を充実させるとともに、AIを活用した個別最適化された教育を展開しています。多様なキャリアパスを用意し、働きやすい環境を整えることで、優秀な人財の確保と育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.1歳 | 5.4年 | 5,173,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.4% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 99.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 88.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 69.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、フルタイム労働者一人あたりの月平均時間外労働及び休日労働時間(4.4時間)、男性社員の育児休業の取得率(83.3%)、女性管理職比率(80.8%)、有給休暇取得率(84.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化や待機児童の減少
出生率の低下や在宅勤務の普及など生活様式の変化により、将来的な園児の獲得が困難になる可能性があります。想定した利用児童数が確保できない場合、収益増減に直結し、同社グループの経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(2) 国の方針転換と施設開設のリスク
民間企業による新規開設や公立保育園の民営化が国の方針で制限されたり、設置場所の確保が困難となり開設ペースが鈍化した場合、事業拡大が停滞する可能性があります。これに対し、インターナショナルな教育の拡充等で優位性確保を図っています。
■(3) 補助金制度の変更に伴う影響
同社グループの売上は、公定価格など国や地方自治体による補助金が中心となっています。そのため、政府や自治体の方針変更によって補助金制度の見直しや減額が行われた場合、業績に直接的な影響を与えるリスクがあります。
■(4) 保育士等の人材確保
子育て支援の運営と質的向上のためには、保育士や指導員の確保が不可欠です。採用コストの上昇や予定していた人材確保の遅れが生じた場合、既存施設の運営継続や新規施設の開設が遅延し、業績に影響を与える可能性があります。



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