※本記事は、株式会社JPホールディングス の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JPホールディングスってどんな会社?
同社は「子育て支援事業」を主力とし、保育園・学童クラブ・児童館の運営を行うリーディングカンパニーです。
■(1) 会社概要
1993年に前身となる有限会社ジェイ・プランニングを設立し、2001年に埼玉県で保育所を開園して子育て支援事業に参入しました。2002年に店頭登録、2004年に持株会社体制へ移行し現社名となりました。2012年に東証一部へ指定され、現在はプライム市場に上場しています。2024年には外国人材派遣会社を子会社化しました。
連結従業員数は4,157名、単体では83名です。筆頭株主は資本業務提携先のダスキンで、第2位は信託銀行、第3位は従業員持株会となっており、事業パートナーとの関係が深い安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダスキン | 31.55% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.99% |
| ジェイ・ピー従業員持株会 | 6.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は坂井徹氏です。社外取締役比率は83.3%と高く、ガバナンス体制が強化されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂井 徹 | 代表取締役社長 | 2001年アトリウム入社。2012年スターキャピタル創業。2018年同社取締役、2020年より現職。日本保育サービス等の子会社社長も兼任。 |
| 関 博文 | 取締役(常勤監査等委員) | 1977年工業時事通信社入社。東拓企画社長、アーバン・デベロップメント代表取締役等を歴任。2018年同社常勤監査役、2020年より現職。 |
社外取締役は、柏女霊峰(淑徳大学名誉教授)、佐竹康峰(元三菱東京ウェルスマネジメント証券社長)、後藤田由紀(俳優・保育士)、勝又英博(元ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)、ロバート アンソニー クリソル サラザール(立命館アジア太平洋大学客員教員)、藁谷友紀(早稲田大学名誉教授)、伊丹俊彦(元大阪高等検察庁検事長)、鶴谷明憲(元近畿管区警察局長)、矢板賢(公認会計士)、山村輝治(ダスキン顧問)です。
2. 事業内容
同社グループは、「子育て支援事業」および「その他」事業を展開しています。
■子育て支援事業
自治体の許認可を得た認可保育所、準認可保育所、認定こども園、学童クラブ、児童館などを運営しています。乳児から学童期までを対象に、英語・体操・音楽などのプログラムを取り入れた保育・育成サービスを提供しています。
収益は、自治体からの施設型給付(委託費)や補助金、および利用者(保護者)からの保育料・利用料から得ています。運営は主に株式会社日本保育サービス、株式会社ジェイキッチン、株式会社日本保育総合研究所、株式会社子育てサポートリアルティが行っています。
■その他事業
子育て支援事業に付随した事業や、新たな領域への展開を行っています。これには、保育園等への給食提供や、英語教育、リトミック等のプログラム開発、不動産の紹介・管理などが含まれます。また、外国人材の紹介・派遣事業も展開しています。
収益は、外部顧客へのサービス提供対価や人材紹介手数料などから得ています。運営は株式会社ワンズウィルなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は着実に増加傾向にあります。経常利益および当期利益も増加基調で推移しており、特に直近では大幅な増益を達成しました。利益率も上昇傾向にあり、収益性が向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 335億円 | 344億円 | 355億円 | 379億円 | 411億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 34億円 | 37億円 | 45億円 | 59億円 |
| 利益率 | 8.8% | 9.8% | 10.5% | 11.9% | 14.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 13億円 | 16億円 | 20億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益率も向上しており、効率的な事業運営が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 379億円 | 411億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 87億円 |
| 売上総利益率 | 19.0% | 21.1% |
| 営業利益 | 46億円 | 58億円 |
| 営業利益率 | 12.1% | 14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比22%)、支払手数料が3億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
子育て支援事業が売上の大部分を占めており、前期比で堅調に推移しています。その他事業の規模は小さいものの、売上が計上されています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 子育て支援事業 | 377億円 | 410億円 |
| その他事業 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 379億円 | 411億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、継続的な新規施設開設のため、設備費用等の資金を安定的に確保することを重視しています。
営業活動では、子育て支援事業等を通じて資金を獲得していますが、法人税等の支払い等により、前連結会計年度より獲得額は減少しました。投資活動では、長期貸付金の回収があったものの、有形固定資産の取得等により資金の支出がありました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払い等により、資金の支出がありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 56億円 | 42億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -2億円 |
| 財務CF | -40億円 | -42億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「子育て支援を通じて笑顔溢れる社会づくりに貢献します」を経営理念とし、「すべてはこどもたちの笑顔のために」をコーポレートメッセージとしています。こどもたちの未来と子育てに関わる全ての人々を支え、社会問題の解消に努め、保育の発展に寄与することを使命としています。
■(2) 企業文化
「未来(あす)を生きる力を培う」という保育理念と、「なりたい自分になる力を育む」という育成理念を掲げています。一人ひとりに愛情を注ぎ、自ら伸びようとする力を支え、対話する力や想像する力を養うことを重視しています。これらを通じて「選ばれ続ける園・施設」となることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営ビジョンとして、達成期日を設定しないものの、連結売上高1,000億円を目指しています。また、中期的な経営指標として、以下の目標を掲げています。
* 営業利益率14%以上
* ROE20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「成長・競争優位性の確立」「収益構造改革」「経営基盤改革」を重点目標としています。グローバル事業の展開、人材紹介・派遣事業の拡大、M&Aの推進に加え、ドミナント戦略による学童クラブ・児童館の拡大を図ります。また、ICT化による業務効率化やガバナンス強化にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の要は「人」であるとし、人財教育・研修体制を拡充しています。優秀な人財の確保・育成とエンゲージメント向上により意識改革を図り、風土刷新を進めています。また、公正な採用選考・平等な登用制度・ジョブ型処遇制度を通じ、多様な人財が活躍できる環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 5.4年 | 4,973,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 37.5% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 101.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 92.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(79.7%)、男性社員の育児休業の取得率(75.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 少子化や待機児童の減少
出生率の低下による少子化の加速や、待機児童の解消が進む一方で、将来的な園児数の獲得が困難となる可能性があります。想定した園児数が確保できない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 国の方針と保育園等開設のリスク
子育て支援事業に関する国の方針変更により、株式会社による保育園の新規開設や民営化が認められなくなった場合や、設置場所が確保できない場合、事業拡大が停滞し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 補助金制度に伴うリスク
売上の中心は公定価格など国・地方自治体による補助金です。国や地方自治体の方針により補助金制度の見直しが行われた場合、業績が影響を受ける可能性があります。
■(4) 人材確保について
保育士・指導員等の確保が重要ですが、予定していた人材確保に遅れが生じた場合、既存施設の運営や新規施設の開設・受託の遅延等により、業績に影響を与える可能性があります。



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