ACCESS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ACCESS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場。IoT、Webプラットフォーム、ネットワーク事業を展開する研究開発型企業です。当連結会計年度は、IoTおよびWebプラットフォーム事業が黒字化し売上高は増加しましたが、ネットワーク事業の成長鈍化や特別調査費用等の計上により、営業損失および当期純損失となりました。


※本記事は、株式会社ACCESS の有価証券報告書(第41期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ACCESSってどんな会社?


IoT、Web技術、ネットワークOS等の先進ITソリューションをグローバルに提供する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


1984年2月に設立され、1996年にはインターネット閲覧ソフト「NetFront」を開発・製品化しました。2001年2月に東証マザーズ市場へ上場を果たし、2006年にはIP Infusion Inc.を子会社化してネットワーク事業を強化しました。2022年4月には東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は830名、単体では317名です。筆頭株主は個人の清原達郎氏で、第2位は2023年に資本業務提携契約を締結した日本電信電話(NTT)です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
清原 達郎 33.18%
日本電信電話 13.52%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員ネットワーク事業担当は大石清恭氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大 石 清 恭 代表取締役社長執行役員ネットワーク事業担当 1987年ソニー入社。1999年同社米国法人入社。海外事業グループ長、取締役副社長等を経て2017年より代表取締役社長。2025年6月よりIP Infusion Inc. CEOも兼務。
夏 海 龍 司 取締役専務執行役員IoT事業担当 1990年エヌジェーケー入社。1999年同社入社。ソフトウェアソリューション本部長、COO(国内担当)等を経て2022年2月より現職。


社外取締役は、細川恒(元通商産業審議官)、宮内義彦(オリックスシニア・チェアマン)、水盛五実(元オリックス生命保険会長)、富田亜紀(東洋大学教授)、池田敬(東日本電信電話代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IoT事業」、「Webプラットフォーム事業」および「ネットワーク事業」を展開しています。

(1) IoT事業


本社および台湾子会社等が主体となり、主に国内市場においてIoT関連ソリューションやソフトウェア等の提供を行っています。通信、クラウド、アプリ開発技術をワンストップで提供するプロフェッショナルサービスや、業務支援クラウドサービス「CROS」などを展開しています。

主な収益源は、顧客からの受託開発や開発サポートに対する対価、およびクラウドサービスの利用料です。運営は主に同社およびACCESS AP Taiwan Co., Ltd.等の子会社が行っています。

(2) Webプラットフォーム事業


本社、ドイツ、中国、韓国等の子会社が連携し、組み込みブラウザ「NetFront Browser」シリーズをはじめとしたWebプラットフォーム関連ソリューションを提供しています。TVや車載インフォテインメント向けにコンテンツ配信システム等の事業拡大も図っています。

収益は、ブラウザ等のソフトウェア製品のライセンス料やロイヤリティ、および関連する技術サポート料から構成されます。運営は同社およびACCESS Europe GmbH等の海外子会社が行っています。

(3) ネットワーク事業


米国子会社IP Infusion Inc.を中核とし、ネットワーク機器向けソフトウェアおよびホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS」等を提供しています。通信事業者やデータセンター事業者向けに、インフラコスト低減と運用の自由度向上を実現するソリューションを展開しています。

収益は、ネットワークOS等のソフトウェア製品のライセンス販売や保守サポート料が中心です。運営はIP Infusion Inc.およびその開発拠点の海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、第41期には159億円に達しています。一方で、利益面では経常損失および当期純損失が続いており、特に第41期は特別調査費用等の計上もあり当期純損失が拡大しました。親会社株主に帰属する当期純損失は54億円となっています。

項目 2021年1月期 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上高 78億円 98億円 130億円 151億円 159億円
経常利益 -21億円 -29億円 -9億円 -19億円 -19億円
利益率(%) -27.2% -29.9% -7.0% -12.7% -11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -23億円 -32億円 -25億円 -22億円 -54億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善していますが、販売費及び一般管理費の増加により営業損失が拡大しています。営業利益率はマイナス圏で推移しています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上高 151億円 159億円
売上総利益 64億円 71億円
売上総利益率(%) 42.5% 44.3%
営業利益 -20億円 -23億円
営業利益率(%) -13.1% -14.2%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が33億円(構成比35%)、給料及び手当が24億円(同26%)を占めています。売上原価においては、具体的な内訳金額の記載はありませんが、ソフトウェア開発に関連する労務費や外注費が主要な構成要素と考えられます。

(3) セグメント収益


IoT事業およびWebプラットフォーム事業は増収となり黒字転換を果たしました。IoT事業はDX需要を取り込み、Webプラットフォーム事業はライセンス収入が堅調でした。一方、ネットワーク事業は増収ながらも、開発コストの上昇等により赤字幅が拡大しました。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
IoT事業 53億円 56億円 -0.3億円 2億円 2.8%
Webプラットフォーム事業 21億円 23億円 -1億円 0.5億円 2.2%
ネットワーク事業 78億円 81億円 -18億円 -25億円 -30.9%
連結(合計) 151億円 159億円 -20億円 -23億円 -14.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」です。

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 1億円 11億円
投資CF -16億円 -11億円
財務CF -0.3億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-42.9%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「すべての機器をネットにつなぐ」技術により新たな価値創造に貢献することを使命とし、「CONNECT YOUR DREAMS TO THE FUTURE.」をスローガンに掲げています。Vision Statementとして「『技術』『知恵』『創造性』と『勇気』で世界を革新し続ける独立系、企画・研究型企業」を定めています。

(2) 企業文化


意思決定の軸として「Unique(個性、独創性を大切にし、先駆者を称賛する)」「Fair(顧客、社会、多様な文化を尊重し、公明正大である)」「Open-minded(先入観や常識にとらわれず、広い視野を持つ)」という3つのCore Valueを定めています。前例のない挑戦に対する失敗を奨励する風土があります。

(3) 経営計画・目標


主な経営指標として、連結ベースでの売上高および営業利益、ならびにそれらの成長性を重視しています。具体的な数値目標としては、各セグメントの黒字化や収益性の向上を目指し、中長期的な企業価値の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


IoT事業ではプロフェッショナルサービスの拡大とハードウェア提供を含む総合提案を推進します。Webプラットフォーム事業は日本を中心とした地理的拡大とTV・車載事業による収益安定化を図ります。ネットワーク事業では、ホワイトボックス向けOSの提供拡大に加え、AI関連データセンター向け案件の獲得に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を最も重要な経営資本と定義し、多様な人材の確保と育成に注力しています。個々のスキルの卓越性に加え、高い当事者意識を持つ人材を採用し、管理職への登用や成長支援を行っています。また、フレックスタイム制やリモートワークなどの柔軟な働き方を推進し、心理的安全性を確保したイノベーション創出につながる風土の醸成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 40.3歳 9.5年 7,610,036円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含め、株式報酬費用は除いております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 125.0%
男女賃金差異(全労働者) 82.9%
男女賃金差異(正規) 82.9%
男女賃金差異(非正規) 82.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(有給休暇取得平均日数)(62.6%(10.9日))、1人当たり研修時間(12時間/年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品開発・事業投資について


技術開発競争が激しく市場ニーズの変化が速い業界であるため、適時適切な新製品開発ができない場合や他社の革新的技術が登場した場合、競争力が低下し投資回収が困難になる可能性があります。同社は競争優位性のある分野への投資や、市場分析に基づく開発計画の精度向上に努めています。

(2) プロジェクト管理について


受託開発において仕様変更や想定外の作業発生により計画から逸脱した場合、追加コストや納期遅延による損失が発生する可能性があります。同社は契約における責任範囲の明確化や、プロジェクトマネージャーによる管理徹底、体制強化により発生防止に努めています。

(3) 人材確保及び労務管理について


専門技術やマネジメント能力を持つ人材の確保が困難な場合、事業計画の達成に支障が生じる可能性があります。また、不適切な労務管理等は信用低下を招くリスクがあります。同社は多様な採用チャネルの活用、教育制度の充実、公正な評価制度や働きやすい環境の整備に取り組んでいます。

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等


継続的な営業損失や当期純損失の計上に加え、特定の大口顧客との取引の不確実性があることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。同社は顧客基盤の拡大や資金調達の検討を進めるとともに、万が一の場合はコスト削減等により事業規模を適正化する方針です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。