※本記事は、株式会社ACCESSの有価証券報告書(第42期、自 2025年2月1日 至 2026年1月31日、2026年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ACCESSってどんな会社?
IoTやWebプラットフォーム、ネットワークソリューションを提供し、機器のネットワーク化を支えるIT企業です。
■(1) 会社概要
同社は1984年に有限会社アクセスとして設立され、1986年にオリジナルTCP/IPを製品化しました。1996年には組み込みブラウザ「NetFront」を開発し、現在の組織へと変更しました。2001年に東証マザーズ市場へ上場を果たし、2006年には米国企業を買収してネットワーク事業へ参入するなど、グローバルな技術基盤を構築しています。
現在、同社グループは連結で795名、単体で331名の従業員を抱えています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は個人の清原達郎氏で、第2位は事業会社であるNTT、第3位は金融商品取引業者であるSBI証券となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 清原達郎 | 33.34% |
| NTT | 13.59% |
| SBI証券 | 4.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員ネットワーク事業担当は大石清恭氏が務めており、社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大石清恭 | 代表取締役社長執行役員ネットワーク事業担当 | ソニーを経て、1999年に同社へ入社。マーケティング本部執行役員や海外事業グループ長を歴任。2018年代表取締役社長執行役員に就任し、2025年より現職。 |
| 吉岡勉 | 取締役副社長執行役員CFO | 昭和シェル石油で執行役員等を歴任後、出光興産上席執行役員等を務める。2025年に同社監査役を経て、同年11月より現職。 |
| 夏海龍司 | 取締役専務執行役員IoT事業担当 兼 Webプラットフォーム事業担当 | エヌジェーケーを経て1999年に同社入社。開発本部長や電子出版事業本部長などを歴任し、2022年に専務執行役員IoT事業担当に就任。2026年より現職。 |
社外取締役は、細川恒(元通商産業省通商政策局長)、宮内義彦(元オリックス代表取締役社長・グループCEO)、水盛五実(元大蔵省印刷局長)、富田亜紀(元みずほコーポレート銀行参事役)、池田敬(東日本電信電話代表取締役副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「IoT事業」「Webプラットフォーム事業」「ネットワーク事業」を展開しています。
■IoT事業
通信技術やクラウド技術、センシング技術等を活用し、あらゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)需要に対応できるプロフェッショナルサービスや、自社開発の各種IoTソリューションを提供しています。また、通販事業者向けにオムニチャネルの販路拡大や物流機能を統合した業務支援クラウドサービスも展開しています。
プロフェッショナルサービスの受託開発やサポート費用、クラウドサービスの利用料、ハードウェアの販売により収益を得ています。運営はACCESSおよびACCESS AP Taiwan等の台湾子会社が中心となって行っています。
■Webプラットフォーム事業
国内外の市場において、スマートデバイスや情報家電、車載インフォテインメント用途向けに、豊富な搭載実績を持つ組み込みブラウザ「NetFront Browser」をはじめとしたWebプラットフォーム関連ソリューションを提供しています。
ソフトウェアのライセンス販売やロイヤリティ、受託開発、保守サポート等により収益を得ています。運営はACCESSのほか、ACCESS EuropeやACCESS Seoul等の欧州およびアジアの子会社が行っています。
■ネットワーク事業
通信キャリアやデータセンター事業者向けに、ネットワークインフラの設備投資や運用コストを大幅に低減し、運用の自由度を高めるホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS」などの基盤ソフトウェアを提供しています。
ソフトウェアのライセンス販売やロイヤリティ、プロフェッショナルサービスの提供により収益を得ています。運営は主に米国子会社のIP Infusionや、インドおよびカナダの開発子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5期で約2倍に成長しています。一方、先行投資や研究開発費の負担が重く、経常利益および当期利益は毎期連続して赤字となっており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年1月期 | 2023年1月期 | 2024年1月期 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 98億円 | 130億円 | 151億円 | 159億円 | 192億円 |
| 経常利益 | -29億円 | -9億円 | -19億円 | -19億円 | -26億円 |
| 利益率(%) | -29.9% | -7.0% | -12.7% | -11.8% | -13.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -32億円 | -25億円 | -22億円 | -54億円 | -34億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益では、売上高の成長に伴い売上総利益も増加していますが、研究開発費や支払報酬などの増加により営業赤字が拡大しています。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 159億円 | 192億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.3% | 42.3% |
| 営業利益 | -23億円 | -27億円 |
| 営業利益率(%) | -14.2% | -14.0% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が38億円(構成比35%)、給料及び手当が28億円(同26%)、支払報酬が19億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高が堅調に推移しています。特にIoT事業とネットワーク事業が大きく売上を牽引しており、グループ全体の成長に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年1月期) | 売上(2026年1月期) |
|---|---|---|
| IoT事業 | 56億円 | 85億円 |
| Webプラットフォーム事業 | 23億円 | 23億円 |
| ネットワーク事業 | 81億円 | 85億円 |
| 連結(合計) | 159億円 | 192億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CF、投資CF、財務CFの全てがマイナスとなっており、本業での資金流出に加え、投資負担や財務活動でのマイナスが重なり、資金繰りが厳しくなっている末期型の状態です。
| 項目 | 2025年1月期 | 2026年1月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | -39億円 |
| 投資CF | -11億円 | -16億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -0.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-40.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
スローガンとして「CONNECT YOUR DREAMS TO THE FUTURE.」を掲げています。また、「技術」「知恵」「創造性」と「勇気」で世界を革新し続ける独立系、企画・研究型企業であるというVision Statementを定めており、すべての機器をネットにつないできた先駆的存在として、新たな価値創造に資する技術を社会に提供し続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
意思決定の軸となるCore Valueとして「Unique、Fair、Open-minded」を掲げています。「Unique」は個性や独創性を重んじ前例のない挑戦を称賛する姿勢、「Fair」は多様な価値観や文化を広く尊重し公明正大であること、「Open-minded」は常識にとらわれず国内外に広い視野を持つ姿勢を示しています。
■(3) 経営計画・目標
主な経営指標として、連結ベースでの売上高および営業利益、ならびにそれらの成長性を重視しています。グループ全体の収益性および成長性の中長期的な向上を図ることを目標として経営を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
優先的に対処すべき課題として、内部統制およびガバナンスの改善、多様性のある優秀な人材の確保と生産性向上のための環境整備を掲げています。また、製品力や技術力の強化に向けて製品開発投資を拡大するとともに、M&Aを積極活用して事業を補完できるパートナー企業の開拓や販売チャネルの拡充を進め、売上拡大と収益性の改善に努める戦略です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資本と定義し、従業員一人ひとりの価値観や独創性、プロフェッショナリズムを重んじています。多様な人材の確保や管理職への登用を進めるほか、個の能力が最大限に発揮できるような柔軟な労働環境の整備や、イノベーション創出につながる風土の醸成に取り組んでいます。また、自発的な成長を促す人材育成体系や挑戦機会を提供しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年1月期 | 40.4歳 | 10.0年 | 7,818,948円 |
※平均年間給与には賞与および基準外賃金が含まれます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.5% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 102.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規採用者に占める女性割合(30.8%)、有給休暇取得率(70.2%)、1人当たり研修時間(12時間/年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品開発と事業投資
ソフトウェア業界は技術のライフサイクルが短期化しており、常に市場ニーズが変化しています。適時的確に市場ニーズを捉えた新製品の開発ができなかった場合や、競合他社に画期的な技術を開発された場合、製品の市場優位性が低下し、投資が回収できなくなるリスクがあります。
■(2) 受託開発のプロジェクト管理
受託開発工程において、顧客からの仕様変更や当初の見積りを超える作業が発生し、プロジェクトの進捗が開発計画から大きく逸脱した場合、計画外の追加コストや納期遅延に伴う違約金、信用の失墜による機会損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 優秀な人材の確保と労務管理
IT人材の世界的獲得競争が激化する中、専門技術やグローバルなマネジメント能力を持つ人材を確保・育成できない場合、事業計画の達成に支障が生じます。また、不適切な労務管理やハラスメントが発生すれば企業の信用が著しく低下し、経営成績に大きな影響を及ぼすリスクがあります。



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