セントケア・ホールディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セントケア・ホールディング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、訪問介護や訪問入浴、施設系サービス等の介護サービス事業を展開しています。2025年3月期は、M&Aや新規出店により売上高は4.1%の増収となりましたが、人件費や採用関連費用の増加等が利益を圧迫し、営業利益は19.9%減となるなど増収減益でした。


※本記事は、セントケア・ホールディング株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セントケア・ホールディングってどんな会社?


訪問介護や訪問入浴をはじめとする在宅系サービスを中心に、施設系サービスも展開する総合介護企業です。

(1) 会社概要


1983年に日本福祉サービスとして設立され、2002年にセントケアへ商号変更しました。2004年にジャスダックへ上場し、2007年には持株会社体制へ移行して現商号となりました。2016年に東証一部へ指定され、現在はプライム市場に上場しています。事業承継やM&Aを積極的に行い、全国規模で介護事業を展開しています。

連結従業員数は5,033名、単体従業員数は191名です。筆頭株主は創業者である村上美晴氏が代表を務める村上企画、第2位は村上美晴氏本人、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
株式会社村上企画 36.50%
村上美晴 11.41%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名、計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は藤間 和敏氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
村上 美晴 代表取締役会長 1983年同社設立と同時に代表取締役社長就任。2007年代表取締役会長、2008年会長兼社長を経て、2012年より現職。スリーケアホールディングス代表取締役も務める。
藤間 和敏 代表取締役社長 1997年同社入社。セントケア東京、セントケア千葉の社長を歴任。2018年取締役事業支援本部長などを経て、2020年より現職。
田村 良一 専務取締役品質企画本部長 1996年同社入社。ヘルスケア事業部長、事業支援本部長などを歴任。2014年常務取締役品質企画本部長、2020年より現職。
瀧井 創 常務取締役管理本部長 兼人材開発部長 1996年同社入社。セントケア千葉社長、経営企画部長などを経て、2014年取締役管理本部長。2025年より現職。
濵岡 邦雅 取締役デジタル戦略本部長 2017年同社入社。事業企画本部事業開発部長などを経て、2020年取締役事業企画本部長。シーディーアイ社長を兼務し、2025年より現職。
土屋 真 取締役経営企画室管掌 リロ・ホールディング(現リログループ)代表取締役などを経て、2019年同社入社。2020年取締役経営企画室管掌、2022年より現職。


社外取締役は、山口 公明(元東京スター銀行代表執行役副頭取)、湯浅 紀佳(三浦法律事務所パートナー)、白石 智哉(フロネシス・パートナーズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「介護サービス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 介護サービス事業


訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、居宅介護支援などの訪問系サービスや、デイサービス、グループホーム、小規模多機能型居宅介護、有料老人ホームなどの施設系サービス、福祉用具貸与・販売、住宅リフォームなどを提供しています。要介護認定を受けた高齢者や障害者等が主な顧客です。

収益は、主に介護保険法や障害者総合支援法に基づく給付費および利用者からの自己負担金です。運営は、セントケア千葉、セントケア神奈川、セントケア東京、セントケア東北などの連結子会社が地域ごとに行っています。

(2) その他事業


障害のある方を対象とした就労移行支援事業、介護保険請求ASPシステムの販売、介護ロボットの企画・販売事業などを展開しています。なお、システム販売を行う子会社は2025年4月に株式譲渡されています。

収益は、サービス利用料、システム販売代金、商品販売代金などです。運営は、ピアサポート、セントワークス、ケアボットなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 459億円 489億円 526億円 541億円 563億円
経常利益 28億円 28億円 27億円 32億円 25億円
利益率(%) 6.1% 5.8% 5.2% 5.8% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 18億円 17億円 20億円 15億円


売上高は新規出店やM&Aの効果により5期連続で増加傾向にあります。一方、利益面では人件費や採用コストの増加などが影響し、増減を繰り返しています。直近の2025年3月期は、増収ながらも経常利益と当期利益は減益となりました。

(2) 損益計算書

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 541億円 563億円
売上総利益 70億円 66億円
売上総利益率(%) 12.9% 11.8%
営業利益 30億円 24億円
営業利益率(%) 5.6% 4.3%


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、各段階利益は減少しました。特に営業利益率は低下しています。

販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が12億円(構成比28%)、役員報酬が5億円(同12%)を占めています。売上原価においても人件費等のコスト上昇が利益を圧迫する要因となっています。

(3) セグメント収益

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
介護サービス事業 530億円 552億円 21億円 16億円 2.8%
その他 11億円 11億円 1.5億円 1.3億円 12.3%
調整額 -億円 -億円 -24億円 -26億円 -%
連結(合計) 541億円 563億円 30億円 24億円 4.3%


主力の介護サービス事業は、施設系サービスの新規開設やM&A、訪問看護の出店等により増収となりましたが、人件費や外注派遣費の増加、既存拠点の回復遅れなどが響き減益となりました。その他事業も減収減益となっています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 40億円 17億円
投資CF -7億円 -10億円
財務CF -19億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「福祉社会の創造」を理想とし、地域社会とのコミュニケーションを通じてホスピタリティの創造を追求しています。また、「生き甲斐の創造」を目的として掲げ、サービスと商品を通じて顧客に安心と満足、喜びを提供することを目指しています。

(2) 企業文化


「人のケア」「家族のケア」「街のケア」のトリプルケアを通してお客様の生き甲斐を創造することを重視しています。「お客様第一主義」を徹底し、全社員が「お客様から片時も目を離さないこと」を念頭に行動することで、信頼を獲得し、グループの安定成長につなげるという考え方を持っています。

(3) 経営計画・目標


継続的な成長と株主価値の最大化を目標としており、以下の経営指標の達成に努めています。

* 売上高成長率:6%
* 売上高営業利益率:6~7%
* ROE(自己資本利益率):12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「これまでも、これからも、ずっと在宅」をスローガンに、顧客が住み慣れた地域で生活し続けるためのソリューションを提供します。特に訪問看護と看護小規模多機能型居宅介護を重点投資サービスと定め、医療ケア拠点の積極展開を進めています。

* セントケア版地域包括ケアシステム(コミュニティNo.1戦略)の推進
* 収益基盤の強化(既存拠点の強化、商品力・オペレーションの見直し)
* サービス連携の強化(多機能型サービス、訪問看護、訪問介護を組み合わせた拠点展開)
* DXの推進(基幹システム刷新、デジタルツール配置、生成AI活用)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材戦略の推進」を重点課題とし、人材育成や働きがいの向上に注力しています。在宅系サービス全般にわたるリスキリング支援や、職種ごとのキャリアラダー・キャリアマップの整備を行い、専門職としての成長を後押ししています。また、インフレ対応を含めた継続的な昇給や働き方の改善など、待遇改善も実施し、採用促進と定着率向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 11.4年 5,315,563円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 72.9%
男女賃金差異(正規雇用) 74.2%
男女賃金差異(非正規) 98.7%


※同社(提出会社)は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率は記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有資格者の拡充(介護福祉士4,535名、看護師2,411名)、正社員離職率(12.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制とコンプライアンス


介護サービス事業は指定事業所として人員・設備・運営基準や労働法規を遵守する必要があります。不正請求や法令違反等により指定取消処分を受けた場合、収益の喪失や連座制による新規指定停止など、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は法令遵守責任者の配置やマニュアル整備等で管理体制を強化しています。

(2) 介護保険制度の改正


介護報酬は概ね3年に1度改定され、単位数や単価の変更が収益性に直接影響します。社会保障財政の課題に伴う制度見直しにより、顧客負担増など不利な変更が行われた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。2024年度改定では医療連携や専門性向上が求められるなど、制度変化への柔軟な対応が必要です。

(3) 有資格者の確保


サービスの提供には看護師、介護支援専門員、介護福祉士等の有資格者が不可欠です。同業他社や医療機関との人材獲得競争が激化しており、有資格者の確保が計画通り進まない場合、事業の維持・拡大に支障をきたす可能性があります。同社は待遇改善や資格取得支援により人材確保に努めています。

(4) 安全管理と感染症


高齢者を対象とするサービスであるため、転倒事故や体調急変、感染症発生のリスクがあります。重大な事故や感染症拡大が発生し同社の責任が問われた場合、社会的信用の低下や業績への悪影響が懸念されます。マニュアル整備や研修、感染症対策等のリスク管理に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。