※本記事は、株式会社ルネサンス の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ルネサンスってどんな会社?
全国でスポーツクラブを運営するほか、自治体や企業向けの健康づくり支援、介護リハビリ事業も展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1979年、大日本インキ化学工業(現DIC)の企業内ベンチャーとして創業し、「ルネサンステニススクール幕張」を開業しました。1982年に独立法人化し、2003年に現社名へ変更しています。2004年にジャスダックへ上場後、2006年に東証一部(現プライム)へ指定替えしました。2024年3月には東急スポーツオアシスを完全子会社化し、2025年4月に吸収合併を行っています。
連結従業員数は1,958名、単体では1,578名です。筆頭株主は創業母体である化学メーカーのDICで、第2位は投資ファンドが関与するAAGS S3,L.P.、第3位は資本業務提携関係にある損害保険グループのSOMPOホールディングスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| DIC | 17.82% |
| AAGS S3,L.P.(常任代理人イントリム) | 9.96% |
| SOMPOホールディングス | 7.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性5名の計13名で構成され、女性役員比率は38.5%です。代表取締役社長執行役員最高健康責任者(CHO)は望月 美佐緒氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 望月 美佐緒 | 代表取締役社長執行役員最高健康責任者(CHO) | 1987年同社入社。ヘルスケア事業本部長、シナプソロジー研究所長などを経て、2023年取締役副社長執行役員。2025年4月より現職。 |
| 岡本 利治 | 代表取締役会長執行役員 | 1980年福岡春日ローンテニスクラブ入社。営業本部長、スポーツクラブ事業担当などを歴任し、2020年代表取締役社長執行役員。2025年4月より現職。 |
| 安澤 嘉丞 | 取締役専務執行役員最高財務責任者管理本部長 | 1988年同社入社。経営企画部長、経理財務本部長などを経て、2019年取締役常務執行役員最高財務責任者。2023年4月より現職。 |
| 吉田 智宣 | 取締役専務執行役員ヘルスケア事業本部長 | 1990年同社入社。コーポレート本部長、スポーツクラブ事業本部長を経て、2024年スポーツオアシス代表取締役社長。2025年4月より現職。 |
| 齋藤 敏 一 | 取締役名誉会長 | 1967年大日本インキ化学工業(現DIC)入社。1992年同社代表取締役社長、2011年代表取締役会長などを歴任。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、阿部 奈美(元日本経済新聞社編集委員)、虎山 邦子(DIC執行役員)、松井 拓己(松井サービスコンサルティング代表)、谷口 健太郎(MIRARTHグリーンテック社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スポーツクラブ運営事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) スポーツクラブ運営事業
全国で「スポーツクラブ ルネサンス」等のフィットネスクラブや、スイミング・テニス等のスクール施設を運営しています。また、自治体や企業向けの健康づくり支援、介護リハビリ施設「元氣ジム」の展開、家庭用フィットネス用品の販売など、健康に関連する多角的なサービスを提供しています。
収益は主に個人会員からの月会費やスクール受講料、法人会員利用料、自治体からの業務受託料、商品の販売代金等から構成されています。運営は主にルネサンスが行い、一部のアウトドアフィットネス事業等は子会社のBEACH TOWNが、ベトナムでの事業はRENAISSANCE VIETNAM INC.が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期は感染症拡大の影響で大幅な赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。特に直近の2025年3月期は、オアシスの連結化効果もあり売上が急拡大し、各利益段階でも増益を達成しました。利益率も改善傾向にあり、黒字基調が定着しつつあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 302億円 | 371億円 | 408億円 | 436億円 | 637億円 |
| 経常利益 | -49.0億円 | 6.3億円 | 3.1億円 | 5.6億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | -16.2% | 1.7% | 0.8% | 1.3% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -89億円 | 4.4億円 | -12億円 | 5.9億円 | 3.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で約1.5倍に拡大し、売上総利益率も改善しています。規模の拡大に伴い営業利益も増加しました。販管費も増加していますが、売上の伸びがそれを上回っており、本業の収益性が高まっていることが確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 436億円 | 637億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 57億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.4% | 8.9% |
| 営業利益 | 13億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が10億円(構成比27%)、事業税が3億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「スポーツクラブ運営事業」の単一セグメントですが、サービス別の売上状況を見ると、主力のフィットネス部門とスクール部門が順調に拡大しています。特にフィットネス部門の売上は前期比で大幅に増加しました。また、ホームフィットネスや健康づくり事業などの関連サービスも成長しており、収益源の多様化が進んでいます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| フィットネス部門 | 196億円 | 286億円 |
| スクール部門 | 156億円 | 191億円 |
| プロショップ部門 | 7億円 | 8億円 |
| 地域・企業等の健康づくり | 21億円 | 35億円 |
| 介護リハビリ | 19億円 | 20億円 |
| ホームフィットネス | 2億円 | 48億円 |
| その他 | 34億円 | 46億円 |
| 連結(合計) | 436億円 | 637億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と外部からの調達資金を合わせて、積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 48億円 | 35億円 |
| 投資CF | -45億円 | -32億円 |
| 財務CF | 4.4億円 | 11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「生きがい創造企業」を理念として掲げ、顧客に健康で快適なライフスタイルを提案することをミッションとしています。心身の健康を提供することで顧客の生きがい創りを手伝い、その仕事を通じて従業員自身の生きがいも創造することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、高い収益性(事業価値)、社会問題解決への貢献(社会価値)、スタッフの働きがいと成長(人間価値)の3つの価値の調和を目指しています。また、ホスピタリティを重視し、従業員が「心身ともに健康のプロフェッショナル」であることを共通の価値観としています。
■(3) 経営計画・目標
2024年5月に策定した「2024-2027中期経営計画」において、総合型スポーツクラブのリーディングカンパニーとしての地位確立と、フィットネス業界の枠を超えた成長ドライバーの創出を目指しています。最終年度である2027年度の財務目標として以下を掲げています。
* 売上高:750億円
* 営業利益:55億円
* ROE:12.0%
* 自己資本比率:25.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、既存スポーツクラブの収益力向上と、合併したオアシスとのシナジー創出に注力します。また、ROIC経営の導入による投資判断の厳格化や、BtoG(自治体)、BtoB(健康経営)、ホームフィットネスといった施設外収益の拡大を推進します。
* スポーツクラブ事業:設備投資と会費見直し、スクールのDX化
* オアシス統合効果:法人会員集客、ジュニアスクールの導入
* 事業領域拡大:学校水泳受託、介護・医療周辺事業、ホームフィットネスの商品開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自ら学ぶ・みんなで育てる」を価値観とし、個人と組織の成長機会を提供しています。多様な人材の活躍を重視し、女性管理職の登用や柔軟な働き方の推進に取り組んでいます。また、従業員の健康を全ての基盤と捉え、「健康経営」を強力に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.9歳 | 11.3年 | 5,551,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | 94.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 95.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定期健康診断の受診率(100.0%)、定期健康診断の事後措置 要再検査 受診率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 施設の休業に伴う影響
同社の事業は施設への来館を前提としているため、自然災害や感染症拡大により施設の休業や営業制限が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、施設の点検・改修や取引先との連携による早期復旧体制の構築を行っています。
■(2) 会員数の減少に伴う影響
競合店舗の出店や個人消費の低迷により会員数が減少した場合、収益が低下するリスクがあります。対策として、24時間営業化やスクールのICT化による魅力向上、自治体や企業向けの健康づくり支援、ホームフィットネスなど、来館に依存しない事業の拡大を進めています。
■(3) 経済状況および資金調達状況の変化
新規出店や設備投資には多額の資金が必要であり、計画以上の出店や急な改修が発生した場合、資金需要が増大する可能性があります。また、金利上昇による支払利息の増加もリスクとなります。これに対し、出店形態の多様化や効率的な投資、長期固定借入の活用などで対応しています。
■(4) 固定資産の減損
新規出店の判断において立地や投資額の見積もりに誤りがあった場合や、出店後の業績が計画を下回った場合、減損損失が発生し業績に影響を与える可能性があります。出店時の審査基準の厳格化や建築コストの低減、出店後のモニタリングによる軌道修正でリスク低減を図っています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。